お医者さんごっこ
ホームズが、落ち着かなげに目をしばたくのを、ワトスンは見降ろしている。
「ホームズ、あーと声を出せ」
言われたとおりに、低く、あーと声を出したホームズの濃い茶色の目は、やたらとワトスンの様子を窺っていた。
だが、ワトスンは構わず、銀の器具でホームズの舌を押えこんで、喉の奥を覗き込むと、今度は、首に触れた。軽く押すようにして、リンパの腫れの状態を確かめただけだが、ホームズがきゅっと首を竦める。
「動くな、ホームズ」
「ワトスン君、その」
こんな風に、ホームズを診る必要がないのを、ワトスンは診察せずとも知っていた。どうやら、昨夜も湯を使わなかったこの探偵は多少不潔ではあるが、健康だ。
「じゃぁ、次は、ガウンの前をはだけろ。その下に着ている僕のシャツもだ。君は頭が痛いんだろ?」
殊更、冷たくワトスンが命じると、のろのろとした動作で、ホームズがシャツのボタンを外し始めた。
午後の早い時間、その日のワトスンの予約患者は最後の一人となった。
勿論それを、かの有名な探偵は、嗅ぎつけていて、最後の患者がドアを閉めるのと、ほぼ同時に、居間からの続きドアを開ける。
「ワトスン!」
「あら、ホームズさん」
「……ホームズ」
だが、探偵がドアを開けたタイミングは、最後の患者が廊下へと出るよりも僅かに早く、フランシス夫人は、有名な探偵の登場に、閉まりかかっていたドアを慌てて元に戻した。
夫人からの好意と質問に、露骨に顔を顰めたままのホームズを、ワトスンは、診察室すらも、自分のテリトリーとして癖悪く自由に出入りしようとする探偵にはいい薬だと、助け舟も出さすに診察の道具を片づけ続けた。
だが、
「ワトスン君、診察道具をしまうのは待ってくれ」
「なぜ?」
ワトスンは冷たく目をやったが、構うことなく大げさにホームズは頭を抱える。
「実は、少しばかり頭が痛いんだ」
有名な探偵と出会ったフランシス夫人は、探偵の髪が、レディーの前に姿を現す英国紳士として相応しくないほど飛び跳ねていても、ワトスンの処置後よりよほど顔色をよくするほどだったが、退出時だとは気付いたようだ。
「あら、それは、ホームズさん、お大事になさってくださいな。ワトスン先生、ホームズさんをよく診てさしあげて」
静かに閉まっていくドアを探偵は、フランシス夫人にみせていたよりもはるかに晴れやかな顔で見つめていた。
「ふん、うまく、追い返したじゃないか」
「そんな、ワトスン君。彼女は、病人に対する気遣いをわきまえている令夫人だというだけだ」
振り返ったホームズのにこやかな顔に、ワトスンは、診察椅子を顎で示した。
「ホームズ、座れ」
「ワトスン?」
ホームズは怪訝に首を傾げる。
「ホームズ、君は、フランシス夫人に嘘をついたのか? 彼女を連れ戻してこようか? さぁ、診てやるから、座れ」
ワトスンは、ホームズが口にした頭痛など、仮病だということなど、とっくに見抜いていた。
だが、あえて、探偵に有無を言わせぬ医師の口調で命じる。
「彼女から頼まれたとおり、よく診てやろう。ホームズ」
呆気にとられた顔をしたホームズは、だが、命ぜられるままふらふらと椅子へと腰を下ろした。
仮病のホームズは、椅子に座ったものの所作無げだ。
「ホームズ、あーと声を出せ」
形だけ押し当てた聴診器の音に、耳を傾ける医者の前で、探偵は、その鋭利な頭脳には不似合いな大きな目でじっとワトスンを見つめていた。
「どうした、ホームズ……?」
「こういう時、どうなんですかと聞くのは、患者の方じゃないのか?」
ワトスンは、この友人が、嵌まり込んでいれば、いくら現実の世界に引き戻そうと努力しようとも、戻ろうとしない知識の世界に、珍しく飽いていたのに気付いていた。
つまり、ホームズは退屈を持て余していたということで、自分の都合のいい時ばかり、ワトスンの世界を侵害しようとするこの友人の態度は、許しがたく、ワトスンは、診察を終えたらば、君は健康だとホームズを放りだすつもりだ。
しかし、ワトスンは、耳から聴診器を外すために、ホームズから視線を外したその隙に、探偵は動いた。
「ホームズ!」
医者の膝の上へと乗り上げたホームズは、拳闘の達人であり、鍛えられた体は筋肉で覆われ、決して軽くはない。しかも、許し難いことに、痛む方の足へとホームズは余計に重みを掛ける。
「君は、この診察ごっこがすんだら、出ていけと言う気だ、ワトスン。だが、そう言われるのは、せめて、一時間後を希望する」
「頭痛はどうなんだ?」
力強いホームズからの口づけの合間に、ワトスンは尋ねた。
「あまり酷くはない」
仮病と知りながら、まだ様子を確かめる医者の意地悪さに、軽く顔を顰めたホームズのキスに、もう少し技術があれば、ワトスンも、この探偵の激しい熱に全てを奪われることになっていたのかもしれない。
だが、ぎゅっと唇を押しつけてくるホームズに、情熱はあれど、残念にもそれ以上のものはなく、医者の理性を根こそぎ奪うという彼の理想が実現することは一度もなかった。しかし、その情熱は、医者の苛立ちを押さえ込み、代わりに愛しさを引き出ことには、毎回成功する。
ワトスンは、無精ひげが覆うホームズの顎に手をかけ、口を開かせ、口づける。
舌を吸われることに、とろりと目を潤ませたホームズのなめらかな口内は、無防備に、ワトスンのために明け渡されており、医者は、きつく舌を吸い上げて、ホームズを甘く呻かせることも可能だった。
片手すら満たぬ知人以外には、恐ろしく不遜な態度で挑むホームズが、今、医者の求めのままに口の外へと舌を伸ばし、眉間へと甘い皺を寄せ、命を絶つことすら可能な部分をワトスンに預け、噛ませている。息継ぎの下手な探偵の鼻が甘く鳴る。
「んっ」
ワトスンは、キスするホームズの顔が好きだった。キスに応える懸命な様子は、この偉大な頭脳を持つ男が、まるでワトスンの庇護なしには、生きていけない存在のようにも感じられる。
ホームズのキスが上達しないのは、ワトスンがそう感じているのを知っているからではないかと、友人の知力へと疑い差し挟むこともあったが、苦い疑惑を持ち続けるには、あまりにホームズの技術はまずく、そして、下手ながらに、探偵は懸命だった。
慌ただしく強引なばかりな舌が、ワトスンの口内を舐めまわし、ワトスンは、いなすようにホームズの舌を追い返す。大きな目に浮かんだ、僻むような表情に、ワトスンは内心笑った。
探偵からのアプローチによってずっと押しつけられている唇をなんとか押し返し、ワトスンは、だらしのないひげが覆う顎を垂れていっている唾を舐めてやる。
医師の目の端には、診察用のベッドを捕えられている。固く清潔なベッドは、今日、そこを使う必要がなかったこともあり、軽い頭痛の患者を診るのに、適した状態で整頓されたままだ。
「ホームズ、仮病という重大な病にかかっている君を、そろそろ診ることにしよう」
「ホームズ、そこに仰向けに横になれ」
厚顔な澄まし顔で、医師が指示を出せば、ホームズは、すごすごと移動しはじめた。
もっと抵抗があってよさそうな指示に対し、諾々と従うあっけなさは、思わず肩すかしを食らうほどだ。ワトスンの視線に気づいたのか、狭いベッドへと足を掛けていたホームズが振りかえった。
「ドクターの治療方針に異議を唱える権利があったのか?」
「ない。そこに横になったら、足を立てて、軽く開くんだ」
「少し冷たいぞ」
自然には濡れるわけではない患者のある場所を開かせる医者は、銀色のナイフを使って容器から軟膏を掬い取っていた。
少しばかり落ち着かない呼吸を繰り返しているホームズは、言われたとおり、山に立てた足を軽く開いて、大人しく仰臥していた。予想どおりというか、この身だしなみの悪さについては、一度きつく言ってやらねばならないと思うのだが、ガウンの下へとホームズが身に着けていたのは、ワトスンのシャツ、一枚だけだ。
太腿から続く、晒された生尻の様子に、もし、フランシス夫人のいる前で、ガウンの前がはだけるようなことがあれば、どんな大惨事が起きていたかと、ワトスンの眉間には皺が寄るが、ホームズは、ただ、診察台の上で天井を見つめながら、医者の手が自分に処置を施す時を待っている。
ナイフの上へと掬い取った軟膏を、指で掬う医者はそれほど間をおかずにホームズに近づいた。
まるで本物の患者であるかのように、僅かな緊張を見せて横になるホームズは、ワトスンが側までくると、頭を傾けると、ふいに瞳を緩ませた。
「やぁ、ワトスン」
「これから、痛い治療をされる患者とは思えない態度だな。ホームズ」
その全幅の信頼に満ちた視線は、なぜか、ワトスンの心のどこかを奥深いところに痛みを与えた。
「ワトスン先生の腕を信じているんでね」
「では、仮病の治療を始めようか。ホームズ、君は、口から飲む薬は、上手に飲めないから、下から飲んでもらうことにしよう」
「それは、この間、君が出してくれた苦い風邪薬を隠したのを言うのか? それとも?」
口が回り過ぎるのは、この探偵の美点というより、欠点だ。
ワトスンは、無造作にホームズの膝を割ると、表情ほどはリラックスした様子のない診察台の上の固い尻へと手を掛けた。尻肉を押し開き、ぎゅっと皺を寄せたくすんだ窄まりへと指を、強く押し当てる。
「君が隠した薬のことじゃない。僕が言うのは、君が飲めないアレのことだ」
冷たいワトスンの口調に、窄まりへと置かれた指まで、そのまま捻じ込まれるものだと思ったようで、陰毛に覆われたホームズの下腹部にぎゅっと力が入った。しかし、実際、ホームズの目が不安げに揺れれば、ワトスンは、すぐにでも侵入しそうに指を押し当てていた指で、緊張に固い周囲を丸く撫でまわし、揉みほぐすことから始めている。
「もう何度、喉を詰まらせ、咳あげた? それなのに、何度でもチャレンジする君の積極性には、僕も頭が下がる思いだがね」
ホームズは、遊ぶように触れてくる指に、ほっと詰めていた息を吐き出した。
「君は、あまりに下手過ぎる」
「それは、確かに僕は上手くはないかもしれないが」
ホームズは、言い返そうとして、急に顔を顰めた。
「……いきなりだ、ワトスン」
油断し、力の抜けたところへ、ワトスンは、いきなり指を捻じ込んだのだ。
「そうだな。いきなりだ。ホームズ」
小さく閉じている穴の中へと差し込んだ指を、ワトスンは強引に沈めていく。その上、まだ慣れない狭い肉筒の中で、その指を、折り曲げた。
「……君は、酷いっ、……」
しかし、無理矢理飲み込まされたものに、身体の中を開かれる感覚を、辛そうにして目を潤ませたホームズの様子とは逆に、軟膏に濡れた指へと中の肉襞はぴったりと吸いつくように蠢いた。指を受け入れている窪みも、ひくつくように収縮し、あられもなく欲しがっているように見える。
勿論、医者は、それが過度の刺激への反射的な運動にすぎず、自分の都合のいい解釈だということを自覚している。
「我慢できないか、ホームズ?」
痛みに潤んだ瞳の際へと口づけると、一旦、ワトスンは、深く穿った肉筒から、指をずぼりと引き抜いた。
そして、もう一度、最初から、そろそろと指を埋めていく。
「どうだ?」
一度、軟膏の滑りを塗りつけられた肉襞は、今度の侵入を容易く受け入れた。拡張の動きにも、健気に耐える。
しかも、最悪なことに、ホームズという男も、こういう馬鹿ばかしい場面で、健気さを披露する。
「ワトスン、もう、君のでも平気だぞ」
冗談めかしてはいるが、ホームズが自分の状態へと下した判断は本気だった。まだ、まるで解れていない部分へと、急くようにホームズはワトスンを受け入れたがる。
ワトスンは、足を広げ、腕を伸ばすホームズの態度に、彼のマゾヒスティックに歪んだ欲望をみる思いがして、ぞっとした。
みりみりと引き延ばされ、軋む穴を、強制的に穿たれるのは、喉が焼けつくほどの苦痛のはずで、快感とは程遠い。
しかし、そうして欲しいと、ホームズは急かす。
「僕は、嫌だ。だが、どうしてもというのなら、ホームズ……」
だから、医師は、この気に入らない献身を見せたホームズへの罰として、軟膏で滑るホームズのあの穴に、薬を混ぜ合わせるための乳鉢からずんぐりとした棒を取り上げると押し当てた。
抵抗する間も与えず、ずぶりと突き刺す。
「君は嫌いだろうが、こういったもので、十分、広がっているかどうか、確かめてからにしよう、ホームズ、ほら、まずは、この程度を平気で受け入れることができてから、そういうことは言ってくれ」
ホームズは低く呻いている。
「い、っ、……やだ……」
「ホームズ、これが嫌で、どうして僕のものを受け入れられると思うんだ?」
ぴっちりと口を閉じた尻の穴には、ぼてりと太った乳鉢棒が刺さっている。
「君は、こういう道具が本当に嫌いだな」
陶器の冷たい感触が辛いのか、それとも、いくら締めつけようとも入り込んでくるつるりとした表面が嫌なのか、ホームズは、大人しく受け入れてはいるものの、目にはじわりと新たな涙を浮かべている。
「ホームズ……」
ホームズの口が、不安のせいか、頼りなく開いたまま震えていて、ワトスンは心には憐みの心が芽生えていた。だが、
「ワトスン、確かに、僕は、嫌い……だが、平気、だ」
ワトスンは、手に掴むものを、軽く前後に動かせば、手足の筋肉を強く緊張させたまま、嫌悪感に瞳を揺らす癖に、窄まりは、乳白色の陶器へと吸いつくように口を尖らせていた。
ワトスンの選んだ道具が、ホームズの身体に合わないわけではない。
ホームズは、こういった道具で身体を開かれることに、激しい拒否反応を示すのだ。
ただ、ワトスンとしては、本来受け入れることが目的の器官でない部分での性交だから、できるだけホームズのそこを解して、安堵の上で繋がりたかった。
実際、ワトスンは、こんな間に合わせを使わなくとも、そのための性具を、いくつか揃えており、しかもそれは、拡張のためばかりでなく、それを使う行為そのものを楽しむことだってできるはずのものだというのに、そのすべてが、ホームズは苦手だった。
きついあそこに生身を咥え込む苦痛は喜んで受け入れようとするくせにと、ワトスンは思うのだ。
「では、しばらく、我慢できるか、ホームズ?」
せめて、彼に何が入っているか見えないよう、ホームズの目の上を白い布で覆い、結んでしまった。
だが、それは、反対に酷くホームズを怖がらせたようだ。
「君のマゾヒズムを多少なりとも満足させてやれるかと思ったのに」
白い布で、目の上を覆われたままのホームズの身体は、正直に怯え示し、全身の産毛が総毛だっていた。
ワトスンがその身体に覆いかぶさり、抱きしめると、ホームズはきつくしがみついてきた。
「……ワトスン、君は、何かを誤解している」
目隠しをしたままのホームズと抱き合うのが、ワトスンは気分が悪かった。
そして、探偵の目隠しを外したワトスンは、呆れた。
目隠しも、そして、彼の睫毛も、ぐっしょりと涙で濡れているのだ。
目元に刻まれた皺の溝にも涙は溜まっている。
「……僕には、君のような、頭の冴えがなくて…………ああ、もう、ホームズ、嫌ならば、嫌だと言え、どうして君は、こんなにわかりにくいんだ!」
ワトスンの胸を焼いた自分への腹立たしさは、そのままホームズへと向かった。乱暴にホームズを抱きすくめ、狭い治療台の上で、落ちそうになっている足を腰へと抱える。
彼がずっと欲しがっていたものを、柔らかくなったその穴へ、ぐっと押しつけ、ワトスンは肉襞を割り開いていく。
呻きを上げてホームズがのけぞった。
更に気持ちの良い肉奥へと到達しようとワトスンは、引き締まった腿を引き寄せる。その時、ホームズの上を向いた顎へと、歯を食いしばったまま、軽く口づけると、同じようにきつく歯を食いしばっていたホームズの口元が、僅かに緩んだ。
多分、笑ったホームズは、両足をワトスンの腰へとまわし、全身でひしりとワトスンへとしがみついてきた。
「ドクターの治療方針に逆らうのは許されないんじゃなかったのか?」
ホームズの抱擁は、ワトスンのアレの根元への締めつけや、ぬとりと吸いつく腸孔の肉壁にまで及ぶのだから、たまらない。
「君は、それを、本気で言ってるのか?」
涙に濡れる目元をぬぐいながら、ワトスンはホームズを揺すり始めた。
固い診察台から、浮き上がったホームズの尻ははばかることなくワトスンへと差し出されており、ワトスンのものが引きさがるたび、肉路がきゅっと締まる。奥深くを力強く突き開ければ、柔肉は、うねるような反応を起こして、強くワトスンを締めつけた。
「んっ、……っ」
実直な侵入と退却を繰り返し、肉厚の熱い筒を擦り上げるワトスンの動きに、ホームズの吐き出す息が、喘ぎに、似たものへと変わっていた。
「ホームズ、答えろ。僕の治療方針に、君は必ず従うのか?」
「……いい、や……っ、ん、ん!」
ワトスンは、医師の指示に従わないという探偵の腰をきつく掴むと、叩き込むようにして、突きまくった。そもそも一人用の診察台は、壊れてしまうのではないかというほど、ぎしぎしと軋む音を立てている。
ホームズが感じているはずの下腹部への圧迫感は、相当なもののはずだ。
「ホームズ、それで、いい」
まつわりついてくる粘ついた肉壁の誘惑を振り切りながら、押し分け続ける医師の喉は渇き、額には汗が浮かんでいる。
わななく尻を捩って、探偵は、ワトスンの暴虐に耐えていた。
「っう、……ッ、! ん、ンっ……!」
「ア、っ、……も、う……! ……ああっ、……う、ンっ!」
探偵は、クライマックスに死にたいほどの羞ずかしさを感じるらしい。いつも、真っ赤にした顔を、懸命にワトスンから背けた。
「ワトスンっ、ワトスンっ!」
背中をぐっとそらせ、ガクガクと腰を震わせると、ものすごい力で尻を締めあげてくる。
「んんーっ! ……んんーっ!!」
手助けにと、ワトスンが握ったものの先端からは、勢いよく白いものが飛び出し、それは、ホームズの腹へと降りかかった。
ぎゅうぎゅうと容赦なく絞り上げてくる肉輪の締めつけを、顔を顰めたまま耐えていたワトスンは、汗で湿ったホームズの前髪を撫で上げた。
まだ、内部をヒクヒクと痙攣させるホームズの湿った息に口づける。
「さぁ、ホームズ、薬の時間だ」
「ワトスン、頭が……」
「じゃぁ、服を脱いでそこに寝ろ」
「ワトスン、腹が……」
「よし、じゃぁ、服を脱いで、診察台に寝るんだ」
「ワトソン、もしかしたら、僕は、熱があるのかもしれない」
「わかった。ホームズ、では、服を脱いで、診察台に横になって待ってろ」
鼻をすする探偵に、にやりと医者は笑った。
「君は僕をからかっているな。ワトスン」
「ホームズ、君はただの流感だよ。ふらふらしてないでさっさとベッドに戻るんだ」
END
ツイッターねたです。Aさん、Rさん、すばらしい萌えをありがとうございますー!