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今日、ひとつ事件を解決した探偵は、ワトスンの診察室で椅子に腰かけたまま、饒舌な様子で、自分が手がけている研究について、話し続けていた。

「だからね、ワトスン」

事件の調査に協力することができるのだから、今、ワトスンが抱えている患者に、緊急を要するものは一人もいなかったが、それでも、夕食後には、急な往診を頼まれ、患者の家を訪ねる必要があり、やっと戻ったばかりの医者は、はっきりと聞き流しているという態度を取っていても、とめどもなく続く同居人の話に疲れ始めていた。カーテン越しに覗く街並みは、多くの家が明かりを消し始めており、ロンドンの街は、片付けているメスの触れ合う高い音がするのすら憚られる気分になるほど、もうすっかり夜が深い。だが、ホームズは、昼間、群がる記者たちを前にしていた時よりもはるかに饒舌だ。

彼は、話し続ける。

「この半音階が、前半部に与える影響は」

事件を解決し終えた晩のホームズは、大抵、二通りの状態になる。躁になるか、もしくは、いまにも躁になる直前の状態かだ。

難事件を解決するため、フル活動した頭脳は、事件の解決後も興奮をそのまま持続し、もう解決すべき難問もないというのに、活動をやめようとはせず、彼を眠らせなかった。それでも、彼が、新しく追加される事項の増えた犯罪記録を整理している間はよかった。それも終わり、もう、考えるべきこともないというのに、ホームズの脳は、加熱しすぎた炉のごとく、目的地を通り過ぎても列車を止められず、酷い勢いで車輪を回し続け、思考をやめない。

だが、今日は、ホームズの話に頭痛を感じている医者が、その難解な音楽理論が終わるのはいつだと口を挟む時期を見計らいつつ、不機嫌な顔で血圧器をしまっていると、ふいに、あたりは静かになっていた。ワトスンは、気がかりを感じ、友人を振り向いた。

「……ホームズ、君の研究についての意見はもういいのか?」

壁際に椅子を寄せ、座るホームズは、疲れたように額に手をあて、肘掛に肘をついていた。知性で輝いていた瞳は、声をかけられてもワトスンを見ようとはせず、翳された手の作った影のなかで、伏せられたままだ。

ワトスンは、不安を感じた。

「どうしたんだ、ホームズ? 気分でも悪くなったのか?」

ワトスンは、しまい終わったばかりの血圧計を取り出し、ホームズに近づこうと足を進めた。

ホームズが、額を手に、床を見つめたままだ。

乾いた床に跳ね返り、消え入りそうな声がワトスンの耳に届いた。

「……ワトスン、君にキスさせてほしい」

俯いたままの男が発したのは、聞き逃してしまいそうなほど、小さな声だ。拒絶を怖れたホームズの肩は、神経質に尖っている。

ワトスンは、手にした血圧計を机に戻した。その時、大きな音が立てられたのは、医者の意思によるものだ。医者が立てた大きな音に、びくりとホームズの肩が怯えたように動いた。だが、この頭脳明晰で、今日、それもたった数時間前に、凶悪事件を解決し、ロンドン中をあっといわせた探偵は、苛立ちに満ちたワトスンの態度を自分への罰だとでもいうように、受け入れていた。顔さえ上げようとしないホームズの態度が、さらにワトスンを苛立たせる。

「君は、自分が口にしたことが、どういうことかわかって言っているのか?」

ワトスンは、ゆっくりとホームズに近づき、自分のシャツを着た男の襟首を掴み上げた。

ホームズは足の悪い医者が突き出した腕に襟を掴まれ、色を無くした頬を晒してされるがままだ。

椅子の上で身動きもしない友人を、問いただすように睨みつけていると、ホームズの口元がひくりと引き攣る。

「わかっている。……申し訳ないと思っている。……だが、今日は、事件をひとつ解決した。君も喜こんでくれただろう?……だから、」

「だから、何だ?」

「だから、ひとつくらい、褒美が欲しいんだ……」

諦めたようにホームズは、目を閉じていた。

「警察の賛辞は? 警官たちの称賛の目は? 君は事件の詳細を知りたがる記者の質問にも答えず、現場から立ち去ったじゃないか。与えられたはずの褒美を全て欲しくないと放棄したのは、君だ。それなのに、今更、褒美が欲しい? 虫が良すぎないか、ホームズ」

「……知っているだろう、ワトスン」

緩やかに、ホームズの目が開けられた。目を開けば、そこには、高い知性と意思の強さが、はっきりと存在する。だが、今、ホームズの目は、その全てを隠すように、ワトスンの視線を避ける。

「余計な物など、僕は欲しくはないんだ」

怒りが込み上げ、ワトスンは掴んでいたホームズの胸倉をさらに掴み上げた。諦念の色を浮かべている唇ばかりが赤い。ホームズは、目をそらしたままだ。

ワトスンは、諦めたような横顔に、無言で唇を合わせた。ホームズがはっと息を飲むのを、直接、唇に感じた。唇の熱を感じる間もないほど短く触れ合わせ、ワトスンは、ホームズの襟首を掴んでいた手を離した。椅子から浮かび上がっていたホームズの身体は、壁際の椅子の中に落ち、どすんと音を立てた。縋るように見上げてくる大きな目は、まるで神の姿でも見つめるように、ワトスンを映しており、その唇は、今にもありがとうと感謝の言葉でも口にしそうだ。ワトスンは、ホームズが口を開く前に、手を上げ、遮った。ホームズの目の中に浮かぶ色が浮かぶのを見たくなくて、目をそらしたまま命じる。

「ホームズ、君が望むのは、キスだけじゃないはずだ。……先に、寝室に行け」

 

寝室は、階段を上がったところにある。足を引きずるように重く階段を昇っていくホームズの足音を聞きながら、ワトスンは、自分自身のために、重く息を吐き出した。ワトスンの他に、人影を無くした部屋の中は、吐き出された息を部屋の隅々にまで運び去る。

ああいう願いを、ホームズが口に出すのは初めてのことではなかった。

暗闇に潜む罪を暴きだし、ロンドン中の犯罪者たちを震撼させる探偵は、自身の罪をその胸元に抱かえ生きている。ホームズは、たった一人の友人に軽蔑されるのを何よりも怯えながらも、自分の欲求を無視することができずにいる罪人だ。だが、法的に問題のある関係を欲しがるホームズよりも、そんなホームズを諌めるどころか、彼の欲望を叶える手助けをする自分の方が最悪だと、診察鞄を棚に戻すワトスンの手は乱暴になった。

常人とは違う出来の頭脳は、社会的な規範を苦手とし、脱落しがちなのだ。だからこそ、自分が友人としてしっかりと正しい行いをし、ホームズを健全な生活に導き、名探偵の名に傷がつかないよう守ってやらなければならないとワトスンは信じてきた。それが、いや、それだけが、ホームズの足元にも及ばぬ知能しかもたない自分が彼の友人の座に腰掛けることを許される理由に違いない。それなのに、寝室へと昇る階段に足をかける自分が腹立たしく、ワトスンは、つい荒々しく階段を軋ませる。

 

友人に対する肉欲を押えられないのは、ホームズばかりでなく、自分もだ。

 

ドアを開ければ、うなだれたままホームズが寝台に腰掛けていた。

「……ワトスン」

ワトスンは、何度訪れようと、このホームズの寝室に馴染めなかった。昼間、あれほどだらしのない最低の無能者にも、最高の頭脳を誇る闊達な男にもなる男が、寝台の中に着古したワトスンの衣類を重ね置く。友人の衣装棚から盗んだそれを、しかも、この男は隠そうともしない。

ホームズは、とうに冷めている湯で身体を拭いていた。

「早かったな……」

驚いたと少し肩を竦めて見せようとしたホームズの眼差しを、ぴしゃりとワトスンは、撥ねつけた。

「早いから、何だ? それが、君の優位になるとでも? 僕が君の誘いを歓迎しているとでも君は言いたいのか?」

腕を拭く手を止めたホームズは、ワトスンの足元に視線を落とした。

「君を怒らせるつもりはなかったんだ、ワトスン。……いつも、こうして迷惑をかけることを、悪いと思っている」

濡れた布で拭われたホームズの肌は、部屋の冷気に、肌を泡立たせている。それを、ワトスンの目は痛々しく捕える。だが、口は、うなだれる友を容赦なく罵る。

「全く、君は迷惑だ。本来、僕という人間は、君の持つ欲望を許しがたく思う種類の人間だというのに」

医者の神経質そうに見える金の髭が、嘘に引き攣る。だが、ワトスンは、自分がホームズの友人でいられるたった一つの価値を守るためにも、決して、ホームズの欲望の在り方に賛同するわけにはいかなかった。いや、偉大な友人の知能を、自分の欲望でなど、汚すわけにはいかないのだ。

冷ややかな視線で見下してくる友人の視線に深く傷付けられながら、ホームズは、ベッドの上に重なるワトスンの衣類を押しやり、遠慮がちに、友人が腰掛ける場所を作ろうとする。

「わかってるよ、ワトスン。君は、友情に厚い男だ。手に負えない僕を見放しもせず、こんな恥知らずな要求にも目を瞑ってくれようとする」

いつもは自らの才能を讃えこそすれ、卑下することのないホームズが、彼にはいらぬはずの言葉を使う。それ以上酷い言葉で自分を傷つける前に、ワトスンは寝台の上にのしかかった。どうしても塞がなければならない口に、唇を押しつける。途端、必死に求めるように、ホームズの唇がワトスンの唇に吸いつき、腕が元軍医の広い背中をきつく抱いた。ぶつかるように縺れ込んだシーツの上では、背中にホームズが溜めこんでいるワトスンの服のボタンが痛みを与えた。ホームズは、しゃにむにワトスンをきつく抱きしめて離さず、医者の身体の上に乗り上げ、貪るように唇を奪っている。飢えきった熱い舌が、ワトスンの口内を嵐のように荒らしまわっていた。力の入ったホームズの手が、ワトスンのシャツを引き千切りそうなほどきつく掴んでいる。

「少しは、落ち着ついたらどうだ」

しかし、ワトスンが応えるように、軽く舌を動かすと、ホームズはびくりと怯え、臆病に舌を縮こまらせる。

「ワトスン……」

身勝手な自分の行動に怯えたように瞳を揺らしたホームズから、ワトスンは主導権を取り戻し、強引なばかりで拙い口づけを仕切り直す。巣穴に隠れた小動物のように、臆病に頭を隠した、ホームズの舌を誘いだし、ゆっくりと絡み合わせる。ざらりとした舌の表面が触れ合うと、ホームズは見ているこちらが気恥ずかしくなるようなせつない顔をして、甘く鼻を鳴らした。呼ぶことをためらうように、遠慮がちにワトスンの名を呼び、不器用に下肢を絡めてくる。

身体を拭っていたホームズが、身に着けているものは、腰のあたりに絡みつかせている寝着だけだ。

ワトスンは、名残惜しく口付ける唇をもぎ取るように離すと、ホームズの首筋に唇を這わせていった。ホームズがはっと息を喘がせ、身を捩る。医者の舌がそのまま胸へと肌の上を貼っていくと、ホームズの目がぎゅっと強く瞑られる。乳首を責められ、女のように自分が喘ぐことがホームズは苦手なのだ。だが、本来、抱く価値もない身体をワトスンに抱かせて、それをしないでくれと伝えることはできないと耐えている。ワトスンは、大きく喘いでいる胸の上でかわいらしく、ぴくんと勃っている小さな乳首を舌先で捕えた。足先まで力を入れた身体を、びくりとホームズは震わせる。唇で優しく噛んだ乳首を執拗に舌が舐め回し始めると、ホームズは弱い部分への愛撫に耐えられず、ワトスンの頭を抱いて身悶えた。

「んんっ、んっ……っ」

唇を噛んで声を漏らすまいとしている口から、堪えきれず喘ぎが漏れていた。ワトスンは尖った肉の芽を口の中に捕え、ホームズを喘がせたまま、寝着の捲れ上がった下肢に手を伸ばす。ゆるゆると太股を撫で上げていく医者の手に、胸をいつまでも弄られることを嫌うホームズが、自分から熱を溜めた腰を押しつけてきた。ぴたりと、ワトスンの手のひらへと押し当てられ、擦り寄せられる股間は、もう、興奮を示し、恥もなくペニスをそそり立たせ、熱く高ぶっている。それを押しつけ、ホームズは喉を鳴らす。だが、ワトスンは、二、三度、手に押し付けられた勃起をおざなりに扱くと、ホームズの尖った腰骨を掴んで、寝台の上へとうつ伏せに転がした。

「……なにをっ、ワト、スン!」

ホームズは、もともと、プライドの高い男だ。欲望を無視され、シーツへと押しつけられた頭は、猛然と振られた。だが、抵抗の最中、欲望の燠火を瞳の中に灯したワトスンと目が合うと、ホームズはよく回る口を使うことをやめた。

大人しくしているホームズの身体から腰に纏わりついていただけの寝着を毟り取った医者の手が、高く掲げられた尻肉を掴んで左右に割り、普段は決して人目につかぬ場所を冷えた空気に触れさせる。

息を飲む背中は波打つように震えたが、シーツを強く掴んでホームズは震えを押さえ込んだ。まるで検分するかのように、長い間、医師の視線が暴きたてた秘密の場所に留まっても、胸を喘がせながら、ホームズは耐えている。

「そのままでいられるな、ホームズ?」

ワトスンは、探偵が用意しておいた油薬で指先を濡らし準備をすると、本来性器として使うわけではない場所を、押し開き始めた。つぷりと指がきつく皺を寄せた窄まりに捻じ込まれ、ぬるついた肉壁の中へと押し入ると、異物を拒む粘膜は、きゅっと指を締めあげながら押し出そうと抵抗をみせる。ホームズが繰り返す、緊張に早い息に合わせ、窄まり、緩む濡れた肉壁は蕩けそうな熱を孕んでいた。唇を噛み、目を伏せたままホームズは自分の奥深くを探る指を受け入れている。

ワトスンは、不意に、ホームズの耳へと身を伏せた。ずぶり、ずぶりと、繰り返される突き入れは、回数が増すたび、無遠慮に深度を増していく。

「ここに、入れて欲しいか、ホームズ?」

医者の指が、尻の中でいきなりぐいっと曲げられたせいなのか、それとも、意地の悪い問いかけのせいなのか、ホームズの背中が大きく震えた。

ワトスンは、問いかけに答えぬホームズの中へと、更に、指を増やし、熱く絡みついてくる肉壁を拡張させるために指をひろげながら、赤く色づいたホームズの耳に重ねて息を吐く。

「ホームズ、欲しいか?」

ホームズの中で溶けた油薬は、肉壁の中を指が撹拌するように動くたび、くちゅり、くちゅりと恥ずかしい音をさせていた。いやらしい尻穴は、最初のきつさを忘れたように、医者の指を咥え込んで広がり、もうここは、男の欲望を受け入れる準備が出来上がっている。

息がかかる耳がぴくりと動き、きつく掴んでいたシーツから僅かにホームズは目を上げた。充血し、赤く潤む瞳に、ワトスンの胸が痛む。探偵は、悔しげに唇を震わせる。

「……た、頼む、ワトスン」

「何をだ、ホームズ?」

ワトスンは、無慈悲に重ねた。

「……君のが欲しいんだ」

 

 

最高の頭脳を持ち、時にそれをひけらかして恥もせぬ男が、ワトスンが尻の中を突きあげると、痴呆のように喘いでみせた。ワトスンの力強い槍が、尻に深く刺さる時、ホームズには、知性のかけらも見られなかった。ぬるついた肉壁の中をずぶりと貫き、締めつけ離そうとしない肉の中からずるずると無慈悲に引き抜く、ただ、この機械的な運動の繰り返しにしか過ぎないのというのに、汗で濡れたホームズの身体は、背をしならせて反り返り、股間のものは、腹を打つほどに硬く勃起する。大きな声を、この男はあられもなく上げる。

だが、その様子は、ワトスンをも強く興奮させた。

「いいのかっ、ホームズ?」

ホームズは、いつもの澄まし顔をすっかり忘れ、肉欲に理知的な顔を火照らせ、がくがくと何度も頭を振る。

「私に、こうやって扱われるのが、君の望みか?」

「そうだっ……!もっと、っ、もっと、ワトスンっ!」

「君の望みを言ってみろ。ホームズ」

ホームズは、尻に、ぎりぎりと滾った欲望を突き立てられたまま、身を振り絞るようにして訴える。

「僕は、君のもので、尻を貫いてほしいんだ。ワトスン、君を、僕だけのものにしてしまいたい」

「ワトスン、君を愛してる。君からは、軽蔑しかされなくても、僕は君を愛してるんだ」

舌を見せて喘ぐホームズの強く腰を掴んで、更にワトスンは深く突き上げた。

「っ! あーーっ、あ、あ!」

「どうだか……っ、君は結局、ただの肉欲なんだ。気持ちよくてたまらない。と、言ってみろ、ホームズ」

「ワトスン、君のもので、っ、尻の中を擦られるのが、気持ち良くてっ、たまらない……!」

突き上げられる度、硬さを増し、とろとろと涎を零し始めたものを、とうとうホームズは、シーツで擦り始めた。普段、知性の劣るワトスンを見下すこともいとわない友人のそのいやらしい姿は、ワトスンの下腹を熱くする。

だが、ワトスンは、殊更、冷たくホームズにあたった。

熱を孕んで潤みを増した尻を引き寄せ、ぐ、ぐ、と根元まで、ペニスを捻じ込む。

「君はっ、社会の悪を倒すために、その誇らしい頭脳を使っているんじゃなかったのかっ? こんな下品な褒美欲しさに、君はその偉大な頭脳を行使しているのかっ」

「っ……、ワトスンっ」

「君という人間に失望しそうだよ。ホームズ」

ホームズは、せつなく、大きな声を上げて、喘いだ。

「っあ……!んっ、すまない、すまないと思っている、んだ。でも、っ、君の望みに適うような社会奉仕を、僕が成し遂げた時には、頼む、たまにでいいんだ。僕の望みを、叶えて、欲、しい……っ」

ワトスンは、ホームズの望みを叶えた。

濡れた肉壁の奥深くまで埋まっていたものを引き抜き、探偵の足を掴むと、濡れてぽとぽとと先端からいやらしい液を零している股間を晒すようにひっくり返すと、抵抗する間も与えず、腿を大きく割り裂き、幾度もの突き入れにだらしなく緩んでいる尻穴に、硬い槍のようなペニスを捻じ込む。

「……っ、っ!」

医者の硬く大きなもので、蹂躙され続けた肉筒は、ずるりと従順に、肉の槍を受け入れてしまった。

射精にはやる恥ずかしい顔を息がかかるほどの間近でワトスンに見られて、ホームズは、必死になって自分の顔を隠そうと二人の間に手を挿し込む。だが、腰を使い始めたワトスンが、その手を打った。

「見せてみろ。英国一の知性を誇る名探偵がいく顔を」

「ひどいっ、……ワトスン、君は、酷いっ」

しかし、濡れた先端を押しつぶすように、医者の硬く締まった腹に擦られるホームズのものは、ぐ、ぐっと尻の奥深くを探るように突き入れられると、もう耐えきれないとばかりに、ぶるぶると震えだした。

汗で濡れた腿を掴みなおしたワトスンのパンパンと尻を打つ連打に、気丈にも、歯を食いしばり、ホームズは声をこらえようとしていたが、正直に身体は震えを止めない。

「あっ、ワトスンっ……っ、あ、………ああ、っん、は、あ」

「どうしたっ、ホームズ?」

「んんっ……っ、もう、……ぁあっ……っは……ん、ん、っ、んっ」

しかし、いきたいとホームズの身体の身体が訴えれば、腰を強く押さえつけるワトスンが、ホームズを突きあげる強弱を、コントロールし、簡単には、いかせようとしなかった。

「もう一度、聞こうっ、ホームズ、君の望みは、何だ?」

「っ、や、……ワトスンっ! ワトスンっ!」

赤く火照ったホームズの目から、涙が滴る。

「……いきたいっ、……っ、いかせて、くれっ、ワトスンっ」

がむしゃらにしがみついてくるホームズを、ワトスンは抱きとめた。唇を奪おうとするのにも、素直に蹂躙されてやる。

ホームズは、ワトスンものに、尻を刺しぬかれたまま、自分のものを握って、大きく呻いた。

「あーーーーっ、っ、っ!」

ぱっくりと開いた鈴口を覆うホームズの手から、どくり、どくりと、白いものが溢れだし、まだ、力強い力を溜めているワトスンの下腹を汚していく。

 

 

 

ワトスンは、自分の衣服に溢れたホームズの寝台の上から、まだ、着られそうなものを、数枚取り戻した。自分の射精後、ワトスンに尻を使わせた友人は、気まずそうな笑いを浮かべると、何も言わずに背中を向けた。

完全にホームズが眠りに落ちているのを、確認したワトスンは、思いの丈をこめたキスを、乾いた唇にそっと落とした。

 

「……愛してる、ホームズ」

 

だが、ここに眠るのは、英国が誇る宝だ。その価値を知るワトスンは、彼を愛すわけにはいかないのだ。

 

 

END