ハロウィン

 

「トリック オア トリート!」

元気よくドアを開けたチャーリーを、ネイサン・ガードナーは、苦笑で迎えた。

「やぁ、チャーリー」

少し照れくさそうな顔をしているのは、出さなければならないレポートがあって、チャーリーが、ここ2週間ほど顔をみせなかったせいだ。まるで悪ふざけが過ぎる学生の態度で、チャーリーはかぼちゃのランタンと、お菓子で一杯のキャンディポットを振って見せる。その態度は、子供っぽくて、とても有名大学の優等生にはみえない。

ネイサンは、チャーリーを迎え入れて、玄関のドアを閉めた。大きな目がじっとチャーリーを見つめてくる。

「ネイサン、トリック オア トリートって、言ってるんだけど?」

ネイサンは、両手を広げてもう渡す菓子がないと肩を竦めてみせた。

「じゃぁ、悪戯してもいいってこと?」

 

高校の教師であるネイサン・ガードナー家は、ご近所の父兄にとって、子供たちがお菓子をねだり歩いても大丈夫な家として認定されている。

実は、チャーリーは、昼過ぎにはもうネイサンの家の近く着いていたのだが、そこに車を止め、それからずっと、かわいらしく仮装した子供たちが次々とガードナー家のチャイムを鳴らすのを眺めていた。一人娘が大学に進学したガードナー家では、子供たちが訪れる度、ネイサンは笑顔で玄関に現れ、ポット一杯にガムやキャンディ、チョコレートなどをプレゼントしていく。それを飽きもせず、チャーリーは愛しげに眺めていたわけだが、長時間の監視は、恋人の姿を眺めて満足するためだけじゃなかった。

ハロウィンおばけの訪問は、何度も何度も繰り返される。とうとう、ネイサンが子供のポットに入れるのが、バナナやリンゴになり、最後にはヨーグルトや、パンまで出現した。そして、チャーリーは腰を上げたのだ。

もう、ガードナー家に、菓子は一品たりともない。

そして、ハロウィンの日に、おばけに菓子が渡せない以上、悪戯されるのは、必然だ。

 

「手伝うよ、ネイサン」

「いいな。来るな! 絶対にドアを開けるな!」

ネイサンが校長だった時や、元カノのパパでしかなかった時には、想像もできなかったことだが、ネイサンは、恋人としては、極上の部類に入るタイプだと思う。

チャーリーが今いるのは、バスルームの扉の前だ。ドアにもたれかかりながら、ネイサンの支度ができるのを待っている。

「いたずら好きのおばけとしては、あまりネイサンが出てきてくれないと、ドアの隙間から覗くかもしれないなぁ」

チャーリーは軽くドアをノックするのを繰り返し、ネイサンを急かす。

「ねぇ、履かせてあげるよ?っていうか、そうしたくて、買ったのに」

「……俺は、現役の高校教師なんだぞ……なのに、こんな……!」

バンっ!と大きくドアが開いた。背中でドアに凭れていたチャーリーは後頭部を思い切り叩かれた形だ。勿論それは、ネイサンの狙いだったろう。頭をさするチャーリーの前で、真っ赤な顔して立ちつくすネイサンは、下半身がヌードだ。恥ずかしがって、大きな瞳をすっかり潤ませている年上の恋人は、色のあせたネイビーブルーのデニムシャツ一枚の姿だ。

吸い寄せられるように、チャーリーは頭の痛みも忘れてネイサンの腰を抱いた。

「履いてくれたの?」

「履かなきゃ、お前が履かすって……!」

抱きしめた腰を丸みのある大きな尻にそって撫でおろした時点で、ほぼ、確信したが、確かめたくて、チャーリーは無遠慮にもシャツの裾から手を入れる。いつもは色気のない下着で守られているはずのそこが、殆ど生の肌だ。たっぷりと肉のついた滑らかな尻を撫で回しても、邪魔する布は殆どない。手に感じるのは、繊細なレースの感触。

「だって、ハロウィンの日に、お菓子の用意のないネイサンが悪いんでしょう?」

チュっと、唇を合わせる音と、悔しそうにしたネイサンの舌打ちの音が重なる。

「悪戯してくださいって言ってるようなもんだよ」

ドキドキしながら、チャーリーは、ネイサンのシャツの裾を持ち上げた。

かっと、ネイサンの頬には、更に赤みが差す。

そして、

「…………すげぇ……!」

思わず、チャーリーは下品に口笛まで吹いた。

 

お菓子がなくて、ハロウィンのおばけに悪戯されているネイサン・ガードナーの下半身を覆っているのは、純白の清純なレースのパンティだ。

面積が小さくて、隠せているとは言い難い。ダークな体毛の色が、下着の色を濃くしている。それよりも、下腹部から続く体毛がいやらしく下着の中へと消える。

もの自体の重量も、あんな小さな布のなかに収まりきるのが難しく、白のレースをこんもりと持ち上げている。そして、肉付きのいいネイサンの下半身では、女性物のパンティは小さすぎて、ゴムはぎりぎりと肉に食い込んでいる。

下着をプレゼントにしたいとショップで選んでいる時には、チャーリーも恥ずかしかったが、自分のセレクトに間違いはなかったと、チャーリーは自信を持った。

高価なレースをあしらった清純な白のパンティは、もじもじと太股を擦り合わせているネイサンにぴったりだ。

レース部分から、赤くなっている中の肌や、ダークな体毛が透けて見えるのもいい。

ネイサンは、見られるのを恥ずかしがって、今にも倒れそうな顔をしているくせに、精一杯耐えて立っている。

緩やかに隆起した腹が、落ち着きのない呼吸を繰り返している。

肌の色が、いつもより、ずっと赤い。

「似合う……」

チャーリーは、ドキドキと激しく自分の心臓が音を立てるのを感じた。そこから、勢いよく押し出される血液は、ドクドクと一か所に集まりつつある。

「……もういいだろう」

だが、女性物のパンティを履いて、悔しげに恥ずかしがっているネイサンの姿はひどくいやらしく、若者としては、もういい時なんていうものは、来ないと断言したかった。

ネイサンを抱き寄せ、白く小さなパンティを食いこませている大きな尻を揉みしだき、その手を、前に回す。レースの上から、小さな布を盛り上げている膨らみを撫でまわした。びくりとネイサンは身体を震わせた。

正直にも、撫でまわされたものはレースの下で大きくなっていく。

「大きくなっちゃった、これじゃもう隠せないね」

恥ずかしげに身をくねらせるくせに、はぁはぁと、ネイサンの息が湿っていく。

「どこかのいやらしいおばけが触るからだ……」

 

チャーリーは、年上の恋人にお願いした。

「ネイサン、お菓子を上げるから、悪戯させて」

嫌だと言われる前に、チャーリーは持ってきたキャンディポットから、チョコを取り出し、甘いキスでネイサンの口に押し込んだ。

 

「……ああ」

小さく、ネイサンが頷き、エッチなおばけの願いは聞き遂げられた。

 

 

 

ハッピー・ハロウィン!

 

END