アイアンマン小話(アイアンマン1のローディな感じです 笑)
*読心術の達人
自家用ジェットの中では、CA達がそれぞれ、それは、それはすばらしいサービスの提供に努めていた。彼女たちの手から酒を注いでもらうトニーと、ローディは、もうかなりいい気分だ。そんな雰囲気の空気に、目配せし、口を開こうとしたローディをトニーは制す。
「まぁ、待てよ。親友。俺はこれでも、読心術に長けていてね」
トニーの特技に、どっと座が湧く。
「……なるほど」
酔いに火照った顔を額がくっつくほど寄せて、とろりと潤んだ目でローディの顔を覗き込んでいたトニーは、そのまま激しくチューウゥゥっとキスした。ローディは驚きに、後ろへひっくり返らんばかりだ。
「何をするんだ! 俺は、ゴムがどこにあるんだと!」
「ふーん。まぁ、でも、あたらずとも遠からずといったところだ」
*今のは、どういう意味だ!?
レセプション会場で、美女を引き連れ歩いていたトニーは、不意に後ろから肩を叩かれ、振り返ろうとして、毛足の長いじゅうたんに足を取られ、後ろにいた人物の胸へと肘をぶつけてしまった。
「ミスター、もし、あなたのお心が、私の肘が触れた胸のように広ければ、私の無礼などすこしもお気になさらないでしょうね?」
顔をあげたトニーはそこに見知った親友の顔を見つけ、とっておきの笑顔をさっさと引っ込めてしまう。
「なんだ。お前か」
「なんだじゃない。お前、将軍がお前と話をしたいと、さっきから、あちらでずっとお待ちに」
「なぁ、ちょっと思ったんだが、お前の頭ほども、あそこが固いって言うんなら、俺の部屋は1035室だ。俺は、いつまで待つことになっても、ちっとも気にしないぞ」
ぽんぽんと、ローディの胸を叩いて、トニーは歩み去った。
*暗闇のせいです。
それは、突発的な出来事だった。さっきまでのパーティの余韻と、酒と、狭い車の中に二人っきりだという状況がそうさせたのだ。
「ああ、くそっ、入らない!」
「まて、待て、待て!」
「すまない。トニー、お前が初めてなんだってわかっていたら、もうちょっと」
「時間をかけたのに、か? せめて俺がパンツを下ろすまでは、待ったらどうなんだ……」
*懺悔する意味
懺悔室に入ったトニー・スタークが言った。
「神父様、お許しください。私は、過ちを犯してしまいました。私は、強く求められ、同性に関係を許してしまったのです」
神父は言った。
「ミスター・スタークですね」
「はい」
「相手の名前を打ち明けることはできますか?」
「いいえ、神父さま、それは、できません。彼の名誉を汚すことになります」
トニーは、質問をはねつけた。だが、神父は尋ねる。
「ローディ中佐ですか?」
「いいえ、違います。神父様」
神父は確信を持って問いただしてくる。
「あなたを思うローディ中佐に、関係を許してしまったのではないですか?」
「相手の名前は、明かせないと申し上げたはずです」
強く遮るトニーの声に、神父は一瞬息を飲んだ。神父は諦め、トニーに言った。
「あなたはすばらしく友情に厚い。それはすばらしいことですが、罪は清めなければなりません。「我らが父を」を3回と、「アベマリア」を5回唱えなさい。トニー・スタークよ。それであなたの罪は清められます」
懺悔室の外で待っていたローディは、出てきたトニーの肩を強く叩いた。
「お前は謎だな。普段、神を信じてるなんてちっとも感じさせないのに、軍の教会には懺悔に通うんだからな」
よろけたトニーは、髪をかき上げる振りで態勢を立て直す。
「ローディ、たかが、3回の「我らが父を」と、5回の「アベマリア」で、お前の下半身が浮気してないか知ることができるんだ。神はコスト安で、すばらしいと思わないか?」
*質問
まだ、二人は互いを許し合ってするキスを交わしていなかったのだ。
セックスへのニアミスまで犯しておきながら、今更すぎる行為に、柄にもなく、もじもじとローディが切り出せずにいる。
「なぁ、トニー、もし、もしだぞ。俺がお前にキスをしたら、お前は誰かを呼んだりするのか?」
「なんでだ?」
トニーは、不審顔だ。
「お前、助けがいるのか?」