ヘイデン君と、ユアン様 5
昼食時にさしかかる休憩時間、ヘイデンの控え室には、ユアンが進入していた。
「ほら、ヘイデン、早く着替えろ」
自前の服を持参でヘイデンの部屋にやってきたユアンは、また年下の俳優を運転手にするつもりだ。
午後からは打ち合わせなことをいいことに、ユアンは乱暴に衣装を脱ぎ捨てていた。
急かすユアンの声に、年下の俳優は、一生懸命に着替えていたが、その視線は年上から不自然に逸らされている。
不意に顔を上げ、鏡の中でそれを知ったユアンは、ヘイデンのそんな様子に舌なめずりをした。
あれほど、ヘイデンを急かし、一秒だって惜しいとわめき立てていたというのに、ユアンは引き上げていたジーンズをぺろりと下ろす。
「ヘイデン、ヘイデン」
声をかけられ、ヘイデンは、はっと顔を上げた。
若い役者は、先輩のあまりな姿に、途端に真っ赤になる。
ユアンが、むき出しに近い尻にひも状に食い込むデザインの白い下着をヘイデンに見せつけていた。
「いいだろ? これ。こないださぁ、グラビアの撮影ん時に、ラインが響くからって、これまで用意してあってな」
ヘイデンの慌て振りに、ユアンは、満足そうに微笑んだ。
わざとらしく尻を振り、金髪は、Tバック部分に指を入れ、引っ張るサービスぶりだ。
「なぁ、見ろよ。見ろ。や〜らしいだろ。これ」
丸みのある尻が、つんとヘイデンに突き出されていた。
ユアンは、気付いていないようだが、ヘイデンの位置からだと殆どヌードのぷりんとした尻だけでなく、ぴっちりと押さえられた前も鏡に映り、よく見える。
サポート力重視のそこは、中にしまわれているものの色や形をうっすらと見せる生地合いだった。
押さえつけられて尚、ふくらみをみせるそこは、濃いめの金色が下着の色を濃くしている。
ヘイデンは、抑えきれなくなってユアンに近づいた。
背中からユアンを抱き締め、うなじに顔を埋める。
「ユアン……やらせて」
「はぁ!?」
荒い息を首筋に吐きかけられ、ユアンは思い切り眉を寄せ、唇を曲げた。
はぁはぁと、薄気味悪く欲情している年下を振り返って睨み付ける。
「飯食いに行くって言ったろ」
「……ユアン、そんな恰好して、俺のこと煽っといて……」
ヘイデンは、せっかく履いた自分のジーンズを慌ただしく引きづり下ろし、ユアンの尻に膨らんだペニスを擦りつけた。
「ねぇ。……ねぇ」
「何が、ねぇだよ。人の尻に気味の悪いもの擦りつけるんじゃねぇ」
「だって、ユアン……」
ヘイデンの手は、ユアンの身体をなで回し、その手は、ユアンの股間をも撫でていった。
「ここ、こんなで、俺、俺……」
ヘイデンの下着を押し上げているものは、ユアンの尻に激しく食い込んだ下着のちょうどその部分、ほんの少しの布きれ部分を何度も押し上げた。
尻の谷間に硬くなったものを擦りつけられて、ユアンは眉をしかめている。
「ユアン、ねぇ、ねぇ……」
興奮のあまり上手い誘いの言葉もでてこないヘイデンは、後ろからつよくユアンを抱き締め、その肩に何度も口付けをした。
ヘイデンの手が、はっきりと形を示すユアンのペニスを下着の上から撫で擦る。
ユアンの尻には、若者の硬いペニスが押しつけられている。
ユアンは、むっと唇を突きだし、せわしない下品な呼吸を繰り返している年下に舌打ちした。
「ヘイデン……俺は腹が減ってるんだよ」
「ユアン、ユアン……」
ヘイデンは、しきりに腰を押しつける。
張りのあるユアンの尻の感触に堪えきれなくなったのか、とうとうヘイデンは、自分の下着をずり下ろした。
硬く立ちあがったペニスが直接ユアンの尻へと擦りつけられる。
ユアンは、食い込みの激しい挑発的な下着をヘイデンに見せつけたことを後悔した。
ほんのちょっとのからかいのつもりだったのだ。
それが、若いということは、これほど簡単にその気になるんだったかと思うほど、すっかりヘイデンは興奮している。
ヘイデンは、荒くなる息を食いしばった歯の間から漏らしながら、しきりにユアンの肩に口付けを贈っていた。
ユアンは、ヘイデンが全く自分に興味を示さないのも嫌だったが、この昼飯前の時間に盛られるのも迷惑だった。
しかし、ヘイデンの左腕は、逃げ出そうともがくユアンを強く拘束し、その上、右手ときたら、尻の間に食い込んでいるパンツを引っ張り穴へと突っ込むための障害物を取り除こうとしている。
「痛ぇって!」
サポート力の強いパンツは、それほど伸びがよくないのだ。
ヘイデンがパンツの後ろを引っ張れば、それだけ前が苦しくなり、おまけに股の間に食い込む力も強くなる。
「ユアン、ユアン……ユアン」
しかし、ヘイデンは聞いている側が恥ずかしくなるほど熱っぽく浮かされた声でユアンの名を呼び、勃起しているペニスを尻穴の上にあてがおうとする。
「てめぇ、ここで突っ込みやがったら、……わかってるんだろうな」
だが、年上の脅しにも負けない強さで興奮しているヘイデンは、ユアンへと押し付けたペニスを引こうとはしなかった。それどころか、ユアンを拘束していた左手は、年上をその気にさせようというのか、せわしなくユアンの腹を這い、そのまま股間にぴったりと張り付きそこの形状をはっきり示している下着の上で揉むように動きだした。
「ユアン……したい……ユアン」
切羽詰った声の年下は、鏡で表情を確かめてみれば、泣きそうに情けない顔をしている。
下着越しにペニスを撫でる手も、押し付けられるペニスの先も、かなり逼迫したヘイデンの熱情をユアンに伝えるのだが、しかし、そこに力づくで、何とかしよう。などという強引さはないのだった。
どこか、遠慮がちなその押しの強くないところが、かわいい。と、ユアンは、そうヘイデンを評価している。
「ヘイ。そんなにセクシーか? この下着」
あまりにヘイデンの様子が必死なので、気をよくしたユアンは、自分からヘイデンの手に下着の中で硬くなり始めたペニスを押し付けたやりながら尋ねた。
ヘイデンは、潤んだ瞳でユアンをかき口説く。
「たまらない……です」
鏡に映るヘイデンのペニスは、ユアンを求めて、取り繕うところなく高ぶっており、行儀よく紳士であるはずの年下の見っとも無さに、ユアンは満足げに笑った。
自分の手に押し付けられる年上の形に、勇気を得たヘイデンは、自分の腰をぴたりとユアンに寄せた。
丸く盛り上がっているユアンの尻の間に、ペニスを擦りつける。
「ユアン……お願い、させて……ユアン」
「おい、ヘイ。俺の尻が汚れる」
濡れだした先端のぬめりを尻に擦り付けられ、ユアンは顔を顰めた。
それと同時に、ユアンの腹の虫が豪快に音を立てる。
すると、
「やっぱ、飯だ。飯」
それなりにその気になっていたはずなのに、ユアンは、腹の虫が騒ぎだすと同時に、するりと現実に戻ってしまった。
ユアンは、強引にヘイデンの腕の中から抜け出し、勃起させたペニスをぶら下げている年下に舌打ちする。
「1分以内に処理しろ」
さっさとジーンズを履いたユアンは腕組みをして、何度か床を爪先で叩いた。
ヘイデンは、年上の変わり身についていけず、呆然と目を見開いている。
「さぁ、ヘイ。早くやれ」
「そんなっ!……ユアン!」
セックスを断られるどころか、目の前で自慰して処理しろ。と、言われ、ヘイデンは言葉もない。
しかし、部屋の明かりを反射させている鏡の前に立つ年上は本気だ。
「出したら、手を洗えよ。ほら、さっさとしろ。後、45秒」
「……嘘っ!」
「ぐずぐずするな。ああ、もう、めんどくせぇ。そのまま我慢しとけ」
ユアンは、ヘイデンの足元に膝をつき、ずり下がっていたジーンズを上げてしまった。
だが、ジーンズのジッパーを上げる際に、ユアンは、楽しげな色を青い瞳に浮かべてヘイデンを見上げた。
「きつきつだな。ヘイ」
ユアンの唇がそこに触れる。
その上、舌なめずりまでしてみせる。
「しょうがねぇなぁ。夜になら、下着も嫌ってほどたっぷり見せてやるから、とりあえず、食いに行こうぜ?」
悪戯にウインクする年上の言い出したことは、大層魅力的だった。
だが、今、ヘイデンが情けなくも前かがみのまま、控え室から出なければならないことには代わりが無かった。
「ほら、行くぞ。ヘイ」
人のことを簡単に煽るくせに、自分の性欲はそれなりにコントロールすることのできるわがままな年上と付き合うヘイデンは、毎日が修行だ。
END