ヘイデン君と、ユアン様 6

 

「……なぁ、ちょっと、ヘイデン」

隣を歩いていたはずのユアンが、突然ペースを落とした。

男らしい眉をひそめて、ヘイデンの肩を掴むと、腹に手をやる。

「……腹が……痛い」

「……ええ……っえっ?」

昼からのトレーニングで習得するはずの動きについて話すことに、夢中になっていたヘイデンは、ライトセーバーの訓練によって握力が更に増えたと自慢していたユアンの手で、痛いほどがっしりと肩を掴まれたことで思わずたたらを踏み、それでやっと年上の異変に気付いた。

ほんのさっきまでユアンは大口を開けて笑っていたのだ。

「大丈夫ですか? ユアン?」

「大丈夫じゃねぇ」

ユアンは今にもしゃがみこみそうなほど、険悪に顔をゆがめていた。腹に当てられている手が掴む白のTシャツはくしゃくしゃに皺が寄っている。

「誰か呼んできたほうがいい?」

「……いやだ」

人を呼ぶことに、ユアンは強い抵抗感を顔に浮かべ、見栄っ張りなところのある年上のためにヘイデンは大急ぎで頭を働かす。

「俺、薬を貰ってきましょうか?」

「いや、いい。……ちょっとこっち……」

ユアンは本当に病人なのかというほど、力強くヘイデンの手首を掴み、セットの陰まで年下を引きずっていった。そこは、ベッド一つあるわけではない。どこの撮影所でも同じ、表のセットの華やかさとは裏腹に、ぽかんと空間は開いた、片付けの悪い、ごみごみしただけのスペースだ。木材の切れ端や、中身をだしたまま放置されたらしい緩衝材が散乱している。ユアンの手は、まだ腹を押さえている。

むっつりと噤んだ唇も辛そうで、ヘイデンはユアンをこのままにしておくのは良くないではないかと思う。

「ユアン。遠慮してないで、医務室行った方がよくないですか?」

「いいんだって」

潰され、床に放り出されたままになっていたダンボールを適当にかき集め、その上へとぺたりと座り込んだ映画スターは、立ったまま、手を引っ張ってでもいなければ今にも駆け出していきそうな年下の俳優を見上げた。

余程腹が痛いのか、ふさふさの睫に覆われたユアンの目が潤んでいて、ヘイデンはどきりとする。

心配する気持ちは十分にあるのだが、あまり見ることのできない弱々しさを漂わせた年上はやたらと魅力的だった。

壁に立てかけられた誰かに踏み抜かれたらしいセットの残骸や、赤や青のビニールテープの散乱するこんな薄暗がりで見ているせいか、ユアンが薄倖にすらみえる。

ヘイデンの手首を掴んだままのユアンは、打ち捨てられたかのような風情をかもし出しながら腹を抱えこむようにして、呻くような息を吐き出す。

「痛ってぇ……」

「ユアン。こんなとこに座り込んでたところで治らないんですから、医務室に行きましょう! でなきゃ、先生にこっちに来てもらうか」

「……ヘイ、夕べ恋人に中出しされたせいで、腹が痛いんですって、俺に言わせたいわけ?」

顔色だって十分に悪くしているというのに、いや、ヘイデンの見間違えでなければ、目尻には涙のしずくさえ光らせているくせに、ユアンは片目を眇め意地の悪い表情をしてヘイデンをからかった。

よもや自分のせいだとは思っていなかったヘイデンは、思い切り慌てる。

「えっ! そんな。ユアン。ごめんなさい。えっと、えっと。……あの、大丈夫ですか? 俺になにかできることは……」

ユアンの発言は嘘ではない。夕べ、愛らしいカーブを描く肩にキスしながら年上の隣へともぐりこんだヘイデンは、事前に出すな。と、注意を受け、確かにそれを守るつもりだったのだが、正直に言って、あまりの気持ちのよさに引き抜くだけの時間が我慢できなかったのだ。

「ヘイ。お前は、男の子のベイビーが望み?それともキュートな女の子?」

ユアンから思い切り冷たいため息を吐かれ、じろりと睨みつけられたものの、しゅんと身を縮こまらせたヘイデンがお気に召したのか、それとも、中出しがユアンの快感のボタンをどこかを押したのか、ぬるつく穴の中からペニスを引き抜こうとした年下の腰に、年上の俳優の足は絡みつき、その後はもっとセックスが盛り上がった。

「人の腹の中に出した上に、それをぐちゃぐちゃかき回す奴がいたから、奥まで入りこんじまったのかなぁ。……なぁ、ヘイデン?」

確かに、ヘイデンのペニスは、恋人に過失を許されてしまえば正直さを表して放出後すぐに復活を果たし、精液でぬるつき、滑りの良くなったユアンの直腸を盛大にかき混ぜたわけだが、ユアンだって、ヘイデンの腰を引き寄せ離さなかった。いや、しまいにはユアンはヘイデンの上に乗り上げた。ヘイデンの恋人は、気持ちのいいことが大好きだ。

「あ〜、……あの、ユアン、それは、ここに座り込んでいて、治りますか?」

痛そうにしながらもにやにや笑う余裕のあるユアンに見上げられてもヘイデンは落ち着かない。

自分のせいで迷惑がかかっているのだというのならヘイデンは、何をしてでも早くユアンの苦痛を取り除きたい。

「いいや、便所に行かなきゃなおらないだろうな」

「じゃぁ!」

ヘイデンがユアンを抱き上げかねない勢いで、手を伸ばすと、年上は苦しそうにしながらも破顔した。

「嘘だよ。ヘイ。やっぱ、お前、おもしろいな」

ユアンが、ヘイデンを招きよせた。

「夕べ、お前が全部きれいにしてくれただろう?」

こんな時だというのに耳元で甘く囁くユアンの声にヘイデンはぞくりと肩をすくめる。

セックスの最中はあれほど奔放だというのに、事後の世話をやかれるのをユアンは恥ずかしがって嫌がる。

けれどもそんなユアンがかわいらしくて、一人バスルームに消える恋人の後を、ヘイデンは熱に浮かされたように、追うのだ。そして、諦め声で入って来いといわれるまでドアの前でねだる。セックスの残滓は勿論のこと、髪も、恋人の足の指までも、ヘイデンは丁寧に洗うのだ。

バスタブの中で、さも疲れたといわんばかりにくたりと力をぬいて気持ちよさそうにしているユアンはかわいらしい。頬を赤くし、尻に指を入れられ掻き出される不快感に眉を寄せながら、シャワーヘッドを押し当てられているユアンは格別に愛しい。

「……ユアン」

脳裏によぎった夕べの白い身体を追い払ったヘイデンはがっくりと肩を落とした。

未だ、腹をさすっているくせに、年上は自分のセクシーヴォイスの威力にチャシャ猫のように笑っている。

「……本当に大丈夫なんですか?」

 

ユアンがヘイデンを好きだと思う一つに、この素直さがあった。もし、自分がヘイデンの立場に立たされているのだとしたら、ユアンは、びっくりさせるなと、一つまずヘイデンの頭を叩くところだ。それなのにヘイデンは、まだ、ユアンの心配をする。

「何? 何? どうしても自分のせいにしたいわけか?ヘイデン。自分のペニスは奥まで届くほどでかいとでも言いたいか?」

「……そういうことじゃなくてですね」

ユアンは、真面目な顔で説教でも始めそうなヘイデンにストップをかけると、自分を背中から抱きしめる形で座れと命じた。

「ヘイ。腹が痛いのは本当なんだ。なぁ、撫でてくれよ」

掴まれた手首にキスをされ、その上、上手に甘えてみせる恋人に頬ずりまでされては、ヘイデンはユアンに従う以外に何もできなくなる。

 

自分の身体にすっぽりと恋人を包み込んだヘイデンは、ユアンに誘導されるまま、年上の腹を優しく撫で始めた。

薄暗がりのスタジオの片隅、撮影に携わるものなら慣れ親しんだ埃の匂いがする空気の悪い環境で、ユアンはヘイデンにすっかりもたれかかり、頭すら年下の肩に預けてしまっている。

首筋からは、淡く香るコロンの匂いがする。それよりも、煙草の匂いの方がキツイのだが、それは、ヘイデンも同じ喫煙者だから気にならない。

投げ出されたユアンの足の外側には、大きく開かれたヘイデンの足が寄り添った。

ユアンの綿パンには、床についていたものらしいセロテープがゴミと一緒にくっついてしまっている。ヘイデンのトレーニングウェアーも埃まみれだ。ヘイデンのスニーカーの先には、どこに使われていたのかもわからない鳥の羽が一枚落ちていた。ビニール紐も、くしゃくしゃに丸められたガムテープも。

「ねぇ、……ユアン。ほんとは夕べのせいじゃなんじゃないんですか?」

この場所は汚くはあるが、照明がセットにさえぎられ、薄暗がりになっていることや、奥まった場所であることがユアンに安心感を与えているようだった。ヘイデンが恋人を抱きこみ、ゆっくりと腹をなで始めてから、ユアンの顔つきは少しずつ穏やかになりつつある。しかし、心配性の年下は気が気ではない。

この年上は意地っ張りなところがあるのだ。少々の過失ならば、いやというほどヘイデンをからかい苛めるのだが、本当に困った事態に陥ったとき、ユアンはヘイデンをかばう。何事もなかったかのように、痛みを耐えてしまう。

最初のセックスでユアンに裂傷を負わせたことを、ヘイデンは長い間知らずに過ごしてしまった。

不機嫌に煙草をふかすユアンから「へたくそ!」とは、なじられはしたのだが、次のセックスまでの間にずいぶんと間が空いたことを、下手だったから二度目のチャレンジ権を与えられないのだとばかり年下は悔しく思っていた。

ユアンが、ヘイデンの首へと額を押し付け、ゆっくりと擦りつけた。

「……ヘイデン、もう少し、下の方まで撫でろよ」

少し小さめのユアンの手は、大きなヘイデンの手の甲に重なっており、言葉だけでなく身体でも、ユアンは自分の望むところへとヘイデンを連れて行く。

暖かいヘイデンの手で腹を摩られ、ユアンは満足そうな息を吐き出した。

白いTシャツの下にある柔らかなユアンの腹は、ヘイデンにとっても心地よかった。

「ねぇ、ユアン、俺、あなたに迷惑を……」

ヘイデンはユアンのこめかみにキスを繰り返した。

「迷惑なら、いつでもかけられてる」

くすりと笑ったユアンが、身を捩りヘイデンの頬にキスを返す。

「ほんと、ほんとに、ヘイのせいじゃない。心配するな。それより、なぁ、もっと下の方……」

「どうしたの? 下腹の方が痛いんですか?」

小さく身を丸めた腹へと子供のような熱心さで手を引っ張っていこうとする年上は、本当にかわいらしくて、ヘイデンは、ユアンに誘導されるまま、ずっと下へと手を伸ばした。

「……!」

ユアンの手が、目的地にたどり着き、年上はちろりと赤い舌を覗かせる。

ヘイデンは呆れた目をして映画スターを見下ろした。

「……ここが、痛いとでも?」

「そう。ヘイデン」

ユアンがヘイデンに触らせたのは、布越しにでもわかる程度に勃起している自分のペニスだ。

「ずいぶん元気そうに感じるんですけど?」

「そう?」

悪びれなく笑ったユアンは、唇をきゅっと窄めて、虚空にキスの音を飛ばした。
嬉しそうに笑っている。

「ヘイに撫でてもらってたら、勃った」

「……みたいですね」

手のひらに感じるユアンの高ぶりは、ヘイデンの手の温みの中でじわじわと育っていく。

「……腹が痛いって言ってたのは?」

嫌味のつもりで質問を口にしながらも、ヘイデンの手は、ユアンに押さえつけられているからという理由ではなく、硬くなっていくものが愛しくて優しく撫でてしまった。

「もう大分治った」

ユアンは自分から腰を押し付けてくるずうずうしさだ。
もうすっかり腹の調子はいいらしい。

「本当に、腹が痛かったんですか?」
にんまりとユアンが笑う。

しかし、そんな挑発的な年上の態度弱いヘイデンはユアンの頬へと少し焦ったキスを繰り返し始めた。

「ああ、うん。昼に食べ過ぎたからな」

「そんな理由……」

ヘイデンはユアンに呆れてみせるが、しかし、繰り返すキスは湿り気を帯び、とても熱心なのだ。年上の腰に回した腕で、腕の中の身体を更に自分に引き寄せる。

耳の後ろにいくつも、いくつもキスをされて、くすぐったそうにユアンが身を捩った。

「ダメ。逃げないで下さい」

「ヘイ。なんか、俺の尻に当ってるものがあるんだけど」

「ええ、それは、多分、俺がこの手のひらで撫でてあげてるものと同じものだと思います」

「そうかぁ? サイズが違うだろ」

モノの大きさに、ユアンは非常にこだわりをみせるのだ。ヘイデンからみて、それはさほど違いのあるサイズだとは思えないのだが、ユアンは決して自分の優位を譲らない。

「はい。あなたのより、ちょっと小さいものです。ねぇ、それよりユアン……」

夢中になりはじめた年下をからかうように身体を逃がそうとする恋人を捕まえ、ヘイデンは頬に顎にとキスを繰り返す。

ヘイデンは、布越しにユアンに触れているのがもどかしくなり、ウエストから手を入れようとした。

しかし、じたばたとユアンが暴れだす。

「キツイ。やめろ」

ウエストには、全く余裕がなくて、いや、食い込むほどでヘイデンは呆れた。

「一体、どのくらい食べたんです」

そういえば、撫でていた腹もずいぶんと丸かった。

「いろいろ」

ユアンがにんまりと笑う。

午前中、スタジオの外に出ていたユアンはどうやら旨いものを食って戻ったらしく、とても幸せそうだ。

「なるほど、きっと腹に食い込んでたんで、痛くなったんですよ」

ヘイデンは、問答無用でボタンを外した。

しかし、ふうっと安堵の息でも吐き出すかと思った年上は、ぽこんと膨れるはずの腹を必死に引き締めている。

だが、ボタンがなくなった今、ジッパーはじりじりと下がっていく。

「俺も、このくらい楽に肉が付くといいのに……」

それは決して嫌味ではなかった。

ユアンの柔らかな肉はヘイデンの大好物だったし、だから、ぽこんと膨らんだユアンの腹を撫でながら口にした一言は、増量で苦しむヘイデンがつい心を吐露させたにすぎない。

しかし、ユアンは、その途端にヘイデンの腹へと肘を決めた。

「……ユアン……あなた……!」

容赦ない一撃に、今度はヘイデンが腹を擦る破目になり、ヘイデンは涙ぐんだ目でユアンを見つめることになった。

「あ〜。痛かったか? 悪いな」

ぽりぽりと頭を掻く年上に反省の色はない。

ウエストが緩まったことにより、明らかに顔色の良くなった年上はトレーナーという、伸縮性に富む布地の加減から言ってもプライベートの隠し難い年下の下半身をむやみやたらと撫で回し始める。

「よしよし、撫でてやるからな」

くるりと、向きまで変えたユアンは、勿論重点的に勃起しているヘイデンのペニスを撫でる。

「……ユアン」

布越しとはいえ、恋人の手に撫で回されて、ヘイデンのペニスは完勃ちになった。

トレーナーのズボンの前は完全にテントを張っている。

それを楽しむユアンが、ヘイデンの太ももへと乗り上げる。

「ごめん。ユアン。それ、痛い!」

「お前、俺が重いって言いたいわけ?」

年上は、ヘイデンの腿から決して降りようとはせず、それどころか、上から覆いかぶさるようにしてヘイデンを襲い始めた。

ユアンの舌が、柔らかいヘイデンの唇をいやらしく舐める。

年下の恋人が根を上げて口を開くまでべろりと舐め続けたユアンは、開いた唇の間から舌を忍び込ませた。

ユアンの小さめの手が、ヘイデンのズボンのゴムを潜り抜け、下着越しにペニスを擦る。

「ぬるぬるだぞ、ヘイ。下着なしでトレーニングする気か?」

そこはとても硬い。ユアンはうっとりと目元を緩ませ、キスのために舌を伸ばしている恋人のかわいらしい顔を見つめる。

「ユアン、あなた、もう、お腹は……?」

唇をくっつけたまましゃべる恋人同士のおしゃべりは、キスしている相手にしかはっきり伝わらない不明瞭さだ。

チュ、チュと繰り返されるキスの音の方が大きくて、本当のところ、互いに伝わっているのかどうかも怪しい。

ヘイデンの手が、ユアンのペニスに触ろうと伸ばされ、それが、ユアンのたっぷりの昼食のせいで膨らんだ腹に触れると年上は身体を逃がした。

「触らしてください。気持ちいいですよ。あなたのお腹」

「当たり前だ」

柔らかく舌が絡む。湿ったヘイデンの唇をユアンが覆う。

キスをリードしながらも、ユアンの視線は、自分がヘイデンの腹へと注がれていた。

ユアンの恋人はとてもスマートで、ユアンは、ヘイデンの腹を見るたび、明日のトレーニングに腹筋を追加しようと思うのだ。目が覚めたころには忘れているが。

しかし、締まった腹をこれみよがしに見せ付けられている今、ユアンは、ヘイデンを道連れにすることにした。

もう一度あの腹の痛さを経験するのは嫌だから、当分ユアンはズボンのボタンを留める気にはなれない。

そんなセクシーな格好で皆の前に戻らなければならないなんてヘイデンはきっとやきもちを焼くことだろうから、ヘイデンも下着なしのセクシーな格好になってしまえばいいのだ。

いや、これは、痛かった腹を優しく撫でてくれた年下へのご褒美だ。

唾液の絡む音をさせてキスを続ける年上は、痛いといわれた腿の上から降りることもしないで、恋人のペニスを撫で続けた。

「……っぁ、ユアン、……あの、そろそろ俺、ヤバイ」

温度の上がった額はくっつけられたままで、鼻は時折キスのせいでつぶれてしまっている。

「出せよ。ヘイ」

はぁはぁと、熱く湿って吐き出される年下の息遣いに、こちらもすっかり興奮しているユアンが、慌しげにヘイデンの手を捕まえ、自分のペニスへと押し付けた。

ヘイデンの熱い手が、下着の上からユアンのペニスを撫で擦る。

「ユアンも出す……?」

ちゃんと勃起してはいるが、今、どうしても出してしまいたいと思うほどには、年上は切羽詰ってはいない。残念だが、そこまでユアンは若くはない。

「お前、待てるわけ?」

ユアンは、綿パンをずり下げ、ヘイデンの手を股の間に誘導した。

ヘイデンは、ユアンの袋を柔らかく揉み、下着を押し付けるようにして、尻のスリットを辿っていく。

「……っぁ、ユアン、っ……あ!」

年下は、ユアンの白いTシャツの胸に顔を埋めるようにして、大きく息を吸い込みながら下着の中を精液で濡らした。

どくどくと震えるそれを、ユアンは最後まで撫でていてやる。

 

 

「履いてないと、頼りないです」

鏡に映るヘイデンはかなり情けない顔をしていた。

「そうかよ。俺は、出すもの出したから、ほら、ボタンもこの通り」

個室からの脱出を果たし、現在手を洗っているユアンは、すっきりとした笑顔を浮かべている。

「俺だけ……」

「そうか? じゃぁ、俺も脱いでやろうか?」

「いいです。いいです! ユアン、やめてください!」

 

トレーニングルームに向かう前に、トイレに寄ることを余儀なくされた恋人たちは、そっと小さなキスをかわした。

 

 

END