ドギー

 

 

「おいで。ヘイデン」

部屋の中にはたくさんの花の匂いが詰まっていた。

一体どういう注文の仕方をしたのか、積み重ねた花束を背景にして、ユアンは唇に笑いを浮かべている。

久しぶりに会えた恋人に、嬉しさを顔へと溢れさせたヘイデンは、恋人を抱きしめるために、両手を広げてユアンへと近づこうとした。

ヘイデンは床にまで置かれたプレゼントの箱を避け、せわしなく自分が持ってきたカバンを床に置く。

「ユアン!」

しかし、一歩、二歩と、恋人に近づき、ヘイデンは、それがユアンに望まれていないことに気付いた。

ユアンの唇に浮かぶのは、恋人の誕生日を祝うには、少しばかり不穏な雰囲気のする唇のカーブ。

そして、ヘイデンを呼ぶその声だって、誕生日の主役にかける声にしてはさほどふさわしいものとは思えなかった。

ユアンが呼ぶ。

「ヘイ、おいで」

命令口調で重ねてユアンに呼ばれ、ヘイデンは、顔を顰めた。

しかし、恋人は楽しげな目でヘイデンを見つめている。

「さぁ。ドギー。飛びついてきな。チッ、チッ、チッ、こっちだぞ」

行儀悪くソファーに座るユアンは、指で手招きながら舌を鳴らした。

次にとるべき行動を当然の目をした恋人に促され、ヘイデンは一瞬唇を噛んだ。しかし、ヘイデンは、犬のように四つん這いになり床に両手を付いたのだ。

ユアンが利口な年下ににこりと笑う。

これは、ユアンの好きな遊び。

とても性質の悪い年上の大好きな遊びだ。

「さぁおいで。ヘイ」

ヘイデンは、せめてもの、仕返しに、四つ足のまま大きく駆けて、本当に、ユアンに飛びついた。

ユアンにのしかかるようにして、ヘイデンは、ユアンの顔を舐め回す。

「いい子。いい子」

ユアンにのしかかるヘイデンがしているのは、再会のキスなどではない。歓喜する犬が主人の顔を舐めるように、ヘイデンはユアンの顔を舐めていく。

犬なのだから、加減はしない。ユアンの顔中に舌を這わせ、少しばかりユアンに嫌な顔さえさせる。

ユアンの手が、ヘイデンの髪をかき混ぜた。

「やっぱ、ヘイは、かわいいなぁ」

じゃれつく大型犬をいなすようにヘイデンをけん制しながら、ユアンは、ヘイデンを抱きしめた。

「かわいい。かわいい」

乱暴にヘイデンを抱きしめたユアンは、満足そうに笑っていた。

ヘイデンは、顰めたくなる顔を我慢して、自分の髪をかき回すユアンの手を追いかけ、鼻を使って嗅ぎまわる。そして、舌を伸ばして、ぺろぺろと舐める。

「こら。ヘイ。こらって」

ヘイデンを叱ったユアンは、ヘイデンの顔を捕まえ、ゴツンと額を合わせた。

恋人のブルーが、じっとヘイデンを見つめる。

「せっかく、いい子だって褒めてやったのに」

ヘイデンは、言葉のわからない振りで、ユアンの唇をぺろりと舐めた。

「あはは」

ユアンは、笑ってヘイデンの頬へと頬をくっつけた。

ユアンは、真顔でヘイデンに尋ねる。

「かわいいねぇ。ヘイ。お前、いくつになったんだっけ?」

「25です」

「そっか。プレゼント、何がいいかわからなかったから、適当に買っといたぞ」

ユアンは、ヘイデンの視線がプレゼントに流れることを許さず、唇に強引なキスをした。

「誕生日、おめでと」

楽しげに笑うユアンに、ヘイデンは、ようやく人間らしいキスを許された。

年下は、恋人の唇に吸い付く。舌を伸ばして、唇をノックし、恋人の舌を絡め取った。

だが、今日の主役に、ユアンがリードを許してくれたのは、わずかの間だ。

自分から貪欲に求めだしたユアンは、舌をヘイデンの口の中へと押し戻し、年下を翻弄するようなキスをした。

ヘイデンの頬に赤みが差す。

ユアンの舌がヘイデンを追い詰める。

「ユアン……」

キスに夢中のユアンは、大きな目をうっすらと潤ませていた。

ヘイデンの肩を掴んで離さない手が、せわしなく年下の背中をさまよった。

息苦しくなるほどキスは続けられ、くちゅりと、音を立てると、やっと絡んでいた舌が離れた。

名残惜しげにユアンがヘイデンの唇を舐めていく。

「ユアン……」

濡れた唇をした年上にイニシアティブは取られてしまったが、柔らかな舌を絡めあうキスは、とても気持ちがよかった。ユアンは、ヘイデンの額へと優しいキスをしてくれている。

「ねぇ、ユアン……」

さすが誕生日だけに、もうこれで犬ごっこは終わりだろうと、ヘイデンはユアンの身体を抱きしめようとした。しかし、恋人は、ヘイデンを止めるのだ。

「なぁ、ヘイ」

ユアンの唇に浮かんでいるのは、さっき見た、不穏な笑み。ユアンは、ヘイデンの頬に口付け、首が触れ合うほどぺったりと身体を預け、欲情している顔を隠そうとはしないのに、ヘイデンに恋人としての当然の権利を認めなかった。

ユアンは、ヘイデンが不満を持つのをわかっていて、意地の悪い笑みを浮かべる。

「誕生日のお祝いに山ほどのプレゼントを持って駆けつけた俺にも多少の楽しみが与えられてもいいよな」

ヘイデンの知らないうちに、誕生日というものは、プレゼントを用意した者の望みを叶える日になったらしい。

 

誕生日当日だからと、自分だけ幸福であればいいとは、ヘイデンだって思わない。

これだけたくさんの花、そしてプレゼントは、きっとヘイデンのために何かを用意してやろうと思ったユアンの優しさであり、その気持ちの大きさと、そして、大雑把さのために、この形になったのだろうと、ちゃんと年下は理解していた。

ヘイデンは、ユアンの愛を感じることができる。

だが、誕生日に恋人とするセックスが、犬になるよう求められるというものだとしたら、多少泣きたい気持ちになっても別段恥ずかしいことはないと、ヘイデンは思った。

ユアンは、当然のごとく、ヘイデンにソファーから降りるよう命じた。

顎を反らしがちにした主人の命令に、ヘイデンは、恋人の足の間に手をついて、ユアンを見上げる形を取る。

思い通りになる年下に、機嫌のいいユアンの声がヘイデンを呼ぶ。

「ヘイ」

ユアンの足が、床を打って、ヘイデンは、床へと伏せた。

年上の好きなこの遊びの手始めは、徹底的な献身を示すことから始まる。

ヘイデンは、上目がちに年上を見上げた。

ユアンの声がヘイデンを褒める。

「いい子だ」

褒められたヘイデンには、ユアンの手が伸ばされ、その手のひらを舐めることを許された。

恋人が気を変えることへの一縷の望みをかけて、ヘイデンは、小作りな印象のあるユアンの手の中でも感じるところばかりに舌を這わせる。

ぴちゃぴちゃと音を立ててヘイデンが、熱心に指の股へと舌を這わすと、ユアンの目が顰められた。

「んっ」

柔らかい皮膚を湿った舌で舐めまわされ、ユアンの喉から、かすれた声が漏れた。

しかし、目を濡らす恋人は、ヘイデンの唇に指を這わせ、その口の中まで指を入れて楽しんだくせに、自分の欲求を取下げるつもりはないようだ。

舌で舐められることに、快感を見出したユアンが、履いていた部屋履きを脱ぎ捨てると、その爪先をヘイデンへと突き出す。

「ドギー。舐めろよ」

爪が伸びている。

ヘイデンは、伸びた爪へと舌を伸ばした。

ユアンが、ヘイデンにこう求めるのは、はじめてではない。ヘイデンは、ユアンが感じるというのならば、足だってどこだって、いくらでも舐めてやった。

床に手をついたヘイデンが、舌を伸ばして、ユアンの足を舐め始めると、恋人は薄く唇を開く。

くるぶしの下を舐めてやると、ひくんっと、ユアンの足が動く。

ジーンズの裾から鼻を突っ込んで、足首を舐め上げると、ユアンの手が、ヘイデンの頭をなでた。

「気持ちいい。ヘイ」

「うん……」

求められているのが、返事ではなく、愛撫だとわかっているヘイデンは、短く答えを返すと、今度は、ユアンの足の甲を舐める。

感じているらしく、ユアンの舐められていない方の足が床から浮き上がっている。

「……なぁ」

ヘイデンに足を舐めさせたままのユアンが、ソファーの上へと足を引き上げた。恥知らずにもユアンが足をついた位置は、身体の幅より大きく足を開いた位置だ。

ソファーの上へと顔だけを突き出したヘイデンは、ぴちゃりと音を立て、ユアンの足の指を舐めた。

ユアンは、犬としてのヘイデンの行動に満足そうだが、しかし、行儀が良すぎるワンコに物足りなそうだ。

機嫌を損ねている足がヘイデンから逃げていく。

ヘイデンは、わかっていて、ユアンを焦らしていた。

頭のいい犬は、そろそろ人間に戻るお許しがもらえないものかと、焦らすように、上目遣いで恋人の顔を見上げる。

「なぁ、ヘイ、今度、こっち舐めねぇ?」

だが、ヘイデンの作戦は、厚顔な年上には全く通用しなかった。

拒否の言葉を認めない口調のユアンはヘイデンをまだまだ人間扱いするつもりはないらしい。

いやらしく目元を染めた年上は、少し照れくさそうにしていたものの、飼い犬の前でさっさとジーンズのジッパーを下ろしはじめた。たかだか、足を舐められていただけだというのに、いつのまにそれほど大きくしていたのか、ユアンは、ジッパーを下ろしにくそうにしている。

「足は、もう、いいの?」

ヘイデンは、せめてもの矜持で行儀のいい犬のように、ちゃんと『お預け』で待っていた。

ごそごそと身じろぎし、尻を上げたユアンが、太ももの途中までジーンズを下ろす。

「ん〜。こっちのが舐めて欲しい」

行儀の悪い飼い主は、濡れたペニスを掴んで餌のようにヘイデンに見せ付けた。

主人は、犬に命令する。

「舐めろ」

ヘイデンは、ユアンの望みをかなえるために、太ももに手をかけ、恋人の股間へと顔を埋めた。

はしたないほど開かれた股は、もう漏れ出している先走りのせいなのか、ユアンの匂いがしていた。

すっかり興奮しきっているペニスは、ヘイデンが舌を伸ばすと、期待もあらわにひくりと揺れて、恋人の正直さをためらいなく表現する。いつもの犬ごっこだったら、駄犬のようにユアンのそこを嘗め回して喜ばせてやるヘイデンなのだが、さすがに、一年に一度きりの誕生日をこんな風に過ごすことへの当て付けから、ヘイデンは、お上品にもユアンのペニスをピチャ、ピチャと舐めるだけで、口に含んではやらなかった。

汁の零れだす鈴口をしつこいほどぺろぺろと舐め、しかし、口に含んで欲しいとペニスを突き出すユアンを無視して、幹へと舌を動かす。

ヘイデンは、鼻をペニスの裏側へと突っ込み、陰茎と袋の分かれ目辺りをしつこく舐める。

「っ、ん、ヘイデン!」

そこだって感じるのに、ユアンは、言うことを利かない犬を叱った。

先ほどヘイデンがきれいに舐めてやったというのに、もうペニスの先には、ぽちりと透明な液体が溜まっている。

ゆらゆらと堪え性なく揺れる腰に、とうとう先走りはペニスの先を伝いだした。

ヘイデンは、それを舐め上げる。

「……ヘイデン!……」

濡れたユアンの目がペニスを咥えて欲しいと訴えていた。

それを承知しながら、ヘイデンは、その要求に気付かない振りを続けた。

ヘイデンは、性格の悪い飼い主を躾けてやるつもりだったのだ。

ユアンが、ぐずるように落ち着きなく腰を動かしていた。指が、ソファーに爪を立てていた。

滑らかな手触りの表面にユアンが描いた模様が残る。

「ヘイデン!……ヘイデン!」

だが……。

ヘイデンは判断ミスをしたようだ。

 

 

ユアンが、怒り出したのならまだ良かった。

しかし、ユアンは、自分のドギーが思い通りにならないことに、どこか、快感のツボを押されたらしいのだ。

「……ヘイデン」

うっとりと頬を染めて、ねだりがましい目付きをしたユアンは、ヘイデンにとんでもない要求をつきつけた。

誕生日だというのに、ヘイデンがそれほど好んでいるわけでない犬ごっこをしつこく続けたところからも、ユアンは、最初から、こういう狙いを持っていたのかもしれない。

ユアンは、太ももに手をついたままのヘイデンを押しのけた。

「なぁ、ヘイデン……」

するりとソファーからおり、ヘイデンの膝の上に乗ってしまった飼い主は、大型犬の胸へと顔を擦り付けると、犬の耳元でささやいた。

「飼い主に反抗したいんだろう? ドギー」

ユアンが、ヘイデンの顎を舐めた。

「ヘイデン、違うことをしよう。……俺のこと叩けよ」

これは、ユアンが好きな遊びのうちで、一番ヘイデンが苦手とするものだ。

しかし、ユアンは、愛しげに自分の大型犬の首へとキスを繰り返している。

 

ユアンの要求に思わず固まったヘイデンは、一つ大きなため息をついた。

「それ、絶対やりたいんですか?」

ヘイデンは、ユアンの肩へと顔を埋め、鼻を押し当てると、散歩嫌いの小型犬のように主人に甘えてみせた。

ヘイデンは、ユアンに手を上げるのが苦手だ。

しかし、ユアンは、ヘイデンの困惑を知っていて、ぐずり甘える大型犬を押しのける。

「やりたい」

「ユアン、どうしても?」

「どうしても」

ユアンの目は興奮にじわりと濡れていた。

普段あれほど不遜だというのに、被虐的な立場に甘んじる自分というものを時々ユアンは望んだ。

きっぱりと頷いたユアンは、くるりと身体を返すと、自ら、ヘイデンの膝の上へとうつぶせになった。

白い尻がつるりと剥き出しになっている。

ドキドキと音を立てている胸をヘイデンの膝に押し付けているユアンの立ち上がったペニスが、ヘイデンの太ももに触れていた。

ユアンは、頭を伏せ、ヘイデンを待っている。

唇をゆがめたヘイデンが、ユアンの尻に触り、撫でると身体に力を入れた。

丸みのある肩が、これからやってくる痛みに固くなっている。

「……ユアン」

ヘイデンはかがみこみ、きゅっと力の入ったユアンの尻へと口付けた。

ユアンは、とっさに何が起こったのか理解せず、その刺激に小さな悲鳴を上げる。

「ほんとに、あなたは!」

恐がりなくせに、変な楽しみ方まで知っているユアンの尻をヘイデンは、一発引っ叩いた。

ぴしゃん!と、張りのある音が部屋の中に響く。

「っひ!!」

思い切り叩いたから、ユアンの尻は真っ赤だ。

ユアンは、次の痛みに耐えるため、身体を竦め、力を入れている。

だが、ヘイデンは、それだけで、自分の膝の上から白い身体を床へと放り出した。

度重なるユアンからの嫌がらせとも取れる要求に、さすがにヘイデンも切れたのだ。

「今日、パピバースディなのは、誰? ユアン」

ヘイデンは、ユアンに犬のように這わせると、被虐を望むユアンの要求を無視し、尻を持ち上げ、ひくついている肛門に舌を突き立てた。

手の形に赤みを残す尻の谷間に舌をねじ込む。

「今日は、俺の誕生日ですからね。今度は、あなたがドギーになる番ですよ。そうそうユアンのいうことばかりは利いてあげられません」

ヘイデンは、きゅっと窄まった尻穴を尖らせた舌で攻撃した。

「やっ!」

叩かれるものだとばかり思ってたら、急に熱い舌を尻の穴へと突き立てられ、ユアンは思わず拒絶の声を上げた。

自分の出した声の甘ったるさが恥ずかしくて、ユアンは逃げ出したくなる。

身体を丸め、逃げるユアンはまるで子犬のようだ。

「や、じゃないの!」

ヘイデンは、子犬の足を掴み、左右に振られる尻を捕まえ、その中央にある窄まりに遠慮なく舌を押し当てた。窪む皺の中央を尖らせた舌で刺激し、股の間で揺れる袋をやわやわと揉んだ。

手の中で、たわいなく柔らかなものが、くにくにと動く。

「っぁ!」

ヘイデンの掴んでいる右足首が、びくりと引かれた。

袋を握られているユアンは、ヘイデンに尻を突き出さした格好のままだが、急激に与えられた刺激に身体は前に逃げている。

「ドギー、逃げちゃだめ。お尻舐め舐めされるの好きでしょ?」

ヘイデンは、舌でユアンの肛門の中まで舐め上げた。

尖らした舌をずりずりと出し入れする。

舌では指ほど奥深くまで刺激してやることが出来ないが、ユアンは、入り口を弄られるのだって好きだから問題なかった。ヘイデンは、子犬の尻山の間へと顔を埋め、開きの悪い尻の穴に何度も何度も舌をねじ込む。

「んっ!んっ!ん!」

イヤイヤするように振られたユアンの頭を見ながら、ヘイデンは、掴んでいた足首を離した。

すると、子犬は、慌てたように逃げ出そうとする。

「こら。悪い子は叩くよ」

ヘイデンは、自分で言って、思わず舌打ちした。

そうなのだ。ヘイデンは、ユアンを叩くのが嫌いだというわけではない。時に腹立たしいほどわがままになる年上に手を上げ、泣かせるのは、ヘイデンにとって快感だった。そういう嗜好が自分にあることがわかっているだけに、エスカレートしそうで、ヘイデンは、ユアンを叩くのが苦手なのだ。

それなのに、ユアンは、ヘイデンを誘惑する。

手を振り上げているヘイデンに、ユアンの足が止まった。

振り返ったユアンの顔が、どこか自分の勝ちに輝いているのに、ヘイデンは、もう一度舌打ちした。

ヘイデンは、丸みのあるユアンの尻を引き戻し、自分の顔の前に据える。

「叩きませんよ」

ヘイデンは宣言した。

ユアンがちろりとヘイデンを見上げる。

「やりたいくせに……」

「やりたくなんかありません。俺のドギーのお尻は、かわいがるためだけにあるんです」

ヘイデンは、ユアンが逃げ出す前に、尻肉を掴んで大きく広げると、濡れている穴へと、また舌を突っ込んだ。

唾液が顎を伝い、ユアンの股の間が濡れる。

指も使って、尻穴の中を刺激してやると、ユアンの尻は、ヘイデンへと押し付けられるようになった。

「く……ぅん」

子犬がような甘えた声でユアンが鳴く。

「サービス? ユアン」

「……そ…う……っん!」

柔らかく緩み出した穴の中は、真っ赤に濡れて、ヘイデンの指をきゅうきゅうと締め上げていた。

指に沿わせるようにして、ヘイデンは、ユアンの中へと舌を進入させていく。

「ぅ……ん、く……ぅん……く……ぅ……ん」

柔らかい舌の肉で押しひろげられる感覚に、ユアンは腰を振るわせた。

ヘイデンは、すかさず、指を動かし、固いもので中を擦られる甘さもユアンに味あわせる。

「……くぅんっ!んっん!」

ずぼずぼと指を動かすと、ユアンは、ぺたりと身体を床に伏せ、尻だけを突き出すようにしてヘイデンの愛撫を受け入れ出した。

ヘイデンは、ユアンの尻穴の外周を舌で舐めながら中を指でかき回す。

「あんっ!」

余裕をなくしたユアンが、鳴き真似もせず、腰を捩った。

きゅっとユアンの尻が締まり、ヘイデンはそれでも強引に指を動かし続けた。

「あっ!あっ!んんっ!」

「違うでしょ?きゃん。って吼えなきゃ」

「やめっ!んっ!……それ、ダメ!」

ぐつぐつと奥へと掘り進めておきながら、いきなりぐるりと指を回し、翻弄するヘイデンの指に、ユアンは、尻尾のない尻を動かさずにはいられなかった。自分の顔を腕へと擦りつけ、尻を熱くする感覚をなんとかやり過ごそうとしているのだが、でも、それだけでは耐えられない。

「ヘイデン! ヘイデン!……もっ、いく」

「まだ、シーしちゃ、だめですからね」

「もう、出る!ヘイデン!」

「だーめ」

「突っ込めってんだよ。さっさとやれ、なに勿体ぶってるんだよ。畜生!このクソ犬が!!」

ぶちきれる速さは、ユアンのほうが断然早い。

 

凶暴な子犬にのしかかられたヘイデンは、顔を真っ赤にしてぜいぜい言うユアンに毟られるようにズボンを脱がされ、恐ろしいほど熱心にペニスを吸い上げられ、その上、上へと乗っかられた。

ヘイデンの飼い主兼、かわいい子犬は、気持ちよさそうに尻を振っている。

「満足? ユアン」

この性格のどのあたりに、叩かれることを好む部分があるのか、どう見ても王様気質のユアンは、ヘイデンのペニスを勝手気ままに使っている。

頬を赤く染めながら、それでも傲慢にユアンは、ヘイデンを見下ろす。

「……お前は?……ヘイ?」

見下されてヘイデンは、満足するのだから、ヘイデンもどこにユアンを叩くことに興奮する部分を隠し持っているのか謎だ。

ヘイデンは少し照れくさそうに笑った。

「……ユアン、出来たら、キスしたいです」

しかし、バースディを迎えた年下の些細な願いを年上は、無下に断った。

「やだよ。お前、俺の尻舐めたじゃないか」

ヘイデンは、あまりにあっさり断られて、思わずどぎまぎした。

「……えっと、……マジで?」

ユアンがはじける様に笑う。

その振動に、どうやら感じたらしく、尻がきゅっとヘイデンを締め付ける。

「嘘だよ。ん〜。俺のかわいいドギー」

ユアンは、ヘイデンへぺたりと身体を倒して、キスをした。

恋人同士は甘いキスを交わす。

しかし、キスするために伸び上がり、浮き気味になってしまった尻が物足りないのか、キスの途中で、目を開けたユアンが、ヘイデンを促した。

「ほら、ヘイ、動け」

「恐い飼い主だなぁ」

「後でいいものやるから」

「……何か、恐いな」

 

 

ユアンがヘイデンにくれたものは、わぁ、ありがとうと、素直に礼を言いたくなる渋めのアクセサリーや、靴、洋服のほかに、首輪があった。

「……ユアン」

「ドギー。ちゃんとこれ、飼い主のネーム入り」

ユアンは、自分の大事な大型犬に首輪をつけた。

「ほら、こっちには、お前の名前が入ってるし」

そして、ユアンの首にも首輪が嵌められた。

「ドギー、ドギー。ハピーバースディ」

子犬は、飼い主の唇をぺろぺろと舐めた。

勿論、大型犬も、飼い主の唇をぺろぺろと舐め返した。

END

 

 

 

全く間に合いませんでしたが、ヘイ君、お誕生日おめでとう!
(またもやかな〜り読み難い作品で申し訳ない;;)