ハワイの落書き 3

 

*7

 

まだ肉棹をよく締まった尻の中に埋めないまま、チンの身体を撫で回していた。

項へと舌を這わせながら、時々甘噛みし、はぁっと気持ちよさそうに、湿った息を吐くのを聞きながら、しなやかに筋肉をつけた太腿を際どい部分まで撫で上げる。

顎を掴んで、強引に唇を近付けキスを強要すると、くすりと笑ったチンがうっすらと口を開けて、自分から吸いついてきた。

いやらしく舌を絡めてくる薄い唇を噛むようにして息を奪いながら、鍛えられ固く盛り上がった胸へと手を伸ばす。やわらかくはない胸の中心にあるのは、こりこりとしこり立っている小さな乳首だ。

スティーヴの指先がさっきまでは、半ば埋もれていたはずの肉豆に触れると、びくりとチンの身体に力が入った。自分の愛撫を期待して待つ身体は、本当に愛しかった。

指先でしこった小さな膨らみを柔らかく摘まむと、チンが、ぁっと、小さく声を上げる。

そのまま押し潰さないよう慎重に弄ぶと、肩に力を入れたチンがむずかるように大きく身を捩る。

思い通りに悶えるチンに、スティーヴは唇を、いやらしげににやつかせながら、胸肉を揉むために胸を手のひらで覆い尽くし、指の股に小さく突き出している乳首を挟み込んだ。

大きな手がモミモミと胸肉を揉みしだくのに合わせ、緩やかに小さな乳首が指の股で締めつけられる刺激に身悶え、シーツから腰を浮かしたチンが腿を擦り合わせながら、硬く勃った股間をスティーヴの足へと擦りつける。

「本当に好きだな。ここ」

ただ乳首への刺激で、いやらしく口を開けて喘いでいるチンの顔を間近で覗き込んでやったら、今度はチンからキスを仕掛けてきた。首へと腕まで回し、珍しく貪りつくすように唾液を絡めてくるやり方が、チンらしくなくて、チンが、とっととスティーヴをこのキスに満足させて、もっと自分のして貰いたいことを要求したいのだとすぐ知れる。

だが、スティーヴは、嫌がらせのように長くチンにキスし続け、彼のキスがもうおざなりなものに変わると、不満そうにした興奮にチンの赤い顔をにやりと笑ってから、ゆっくりと身体をずらして、指の股に挟んだ小さくむっちりとした肉粒にむしゃぶりつく。

「っ、あっ!」

チンは敏感な反応の声を口から弾けさせた。

そこからは、もう喘ぎ声のオンパレードだった。

指からはみ出ている部分を口に含んで吸い上げると、チンは、高く声を上げたまま、高ぶったままスティーヴの逞しい太腿を挟み込んでいる腰をガクガクと揺する。

そのまま舌を使って吸い上げている小さな肉芽の先を抉るように舐め続けると、短くあ、あっと声を上げ続けながら、張り詰めさせている勃起の先から粘ついた液体が漏らした。

チンが身悶える度に、スティーヴの腿はぬるつくもので汚される。

「……っぅ、ぁ、……もっと、っ、ボス」

スティーヴはべろりと乳輪ごとしこる乳首をざらりとした舌全体で舐め上げながら、突き出すように胸をそらして身悶えるチンの赤い顔をじろりと見上げた。

性交中の、上司呼ばわりは、興奮で混乱した時のチンの悪癖の一つだが、スティーヴの好むところじゃない。するなと言っておいたことを、また繰り返す覚えの悪さに、唾液で濡れた胸を押し付けてくるチンの乳首へと、わざと歯を当てた。

舐められたり、吸われたりは好きだが、噛まれるのが、チンは苦手だ。

蕩けていた身体が、痛みに怯え、途端にびくりと固くなる。

「……スティーヴ?」

しないよなと、足を絡めたまま懇願するように潤みの多い目を開いて、名を呼んできたしおらしさに免じて、スティーヴは、舌を長く伸ばすと、優しく慎重にそれほど大きさのない乳輪をぐるりと一周円を描いて舐め、チンの股間へと手を伸ばした。

おしゃぶりをせがむ小さな肉粒を舌で撫でまわしながら、勃起を扱き、ときおり、指で挟んだ乳首をコリコリと刺激し、痛みのない程度に締め上げていくと、握った下腹部の熱い肉の塊がビクビクと震えてしなる。

「このまま、一回いっとくか?」

もうたまらないと強く目を瞑って快感に息を上げるチンがかわいらしく、スティーヴは笑いながらそう耳元で聞いた。チンは切羽詰まった慌ただしさで、両腕を伸ばして、首へとしがみついてくる。

指に挟んだコリコリのしこりを弄ると、ぎゅっとスティーヴにしがみついた熱く火照り汗をかいた身体が、耐えられないと反り返った。

「……んっ、ン、ううっ……ボスっ、……っぅ、いくっ、イク!」

 

 

 

チンをひっくり返し、まだ息も整っていない尻を掴んで犬這いで這わせたスティーヴは、窄まる場所へいきり立つ高ぶりの切っ先を宛がいながら、鼻の頭に機嫌悪く皺を寄せている。

「いいか? いくときに、もう俺をボスって呼ぶな。わかったな」

 

(終)

 

 

*8

 

昨夜、チンをマグギャレット宅に無断で泊めたら、とんでもないことに巻き込まれてしまったダニーは、出勤するのに大分鬱になったというのに、職場に来てみれば、目が覚めた時にはもう姿を消していた家主兼相棒は、多少不機嫌にしているだけで、チンに至っては、隠れるようにこっそり入って来たダニーを見つけて苦笑していた。

仕方なく、いまさら胸を張り、取り繕うように四方八方に挨拶する。

「おはようさん」

なんで、俺だけがこんなに気を揉んでるんだよ!というのが、ダニーの本音だ。

 

今日はおかげさまでと言うべきか、それともいっそ気不味くてたまらないと言った方がいいのか、すぐさま出動しなければならないような緊急の事件は起きず、通常運転の本部の中は、雑談も多い。

マクギャレットは、知事の元へと呼び出されて打ち合わせで出て行ったが、チンはそのマクギャレットから命じられた継続調査中の事件の資料を集めるため、コンソールパネルを操作中だ。

書類の書き方で、質問していたコノが部屋から出て行って、チンと二人きり部屋に取り残され、ごほんと咳払いしたダニーはぼりぼりと頭を掻く。

「……なぁ、チン。例え、お前がスティーヴの馬鹿とできてようと、俺は変わらずお前の友達だからな」

かけた声に振り返ったチンは、おやおやと面白そうに笑っていた。

「ありがとう。ダニー。そう言ってくれるなんて嬉しいよ」

昨夜から思い悩み、一大決心で伝えた好意を、さらりと受け止めたチンに、ダニーはむっとした。

だから!と、両手を広げてアピールしても、チンは涼しく笑うだけで、負けん気がむくむくと刺激された。

朝からずっと一定距離離れていた距離を一気に縮め、ずかずかと近付いた。

鼻息荒く詰め寄った距離の近さに、チンが驚いて身体を反らした程だ。

「俺は、あんたのこと大事な友達だと思ってる。あんたの好みは、……いまいちっていうか、全然、全く、理解できないけどな、でも、あんたが男が好きなんだとしても、俺は、あんたと手だって繋げる。ほら、手を貸せ。な、変わらず、ちゃんと俺はあんたと手が繋げるだろう?」

びっくりと目を開いたチンに、ざまあみろとダニーは思った。俺のかわいいモンキーちゃんの代わりを務める男が、男と寝られるなんていうのは仰天の事実だが、友情に厚い俺は、それだって受け入れられるんだ。

さぁ、かわいいモンキーの代わりに手を繋がせろと、それとも、俺と手を繋ぐとスティーヴが騒ぐのか? あの馬鹿は、まだ、俺がお前に惚れてるとか、そんなとぼけた嫉妬に燃えてるのか?と、ダニーは、がっちり指まで絡める。

チンは、勢いはさておき、まるで恋人同士のようダニーが絡めてきた指に驚いて目を落としたていたが、しばらく眺めるとくすりと唇を笑みの形に曲げた。

この形で手を繋ぎたい気持ちになる理由に、決して目を向けようとしないダニーの頑迷さが頼もしく、だが、かわいらしいのだ。

「なんだよ。まだ、信じないのかよ。しょうがねぇな。じゃぁ、ほら、ハグだ」

手を繋ぐだけでは飽き足らず、がっちりとチンを腕の中にホールドし、ダニーは頬まで擦りつける。

剃り残しの髭がくすぐったい。

そうして、彼はかわいいグレースにするように、髪に鼻を埋め、匂いを嗅ぎだす。

スティーヴとの仲を見せつけられ生まれた嫉妬心は、ダニーの独占欲に火をつけたらしい。

大真面目にダニーが自分を抱きしめてくるこの状況を、性根悪く自分がかなり面白がっていることを承知で、チンは、あえて最悪な方法で、一気にダニーの炎を消火することにした。

仕方なかった。自分を誤魔化し続けるダニーは、あまりにもかわいらしかった。

意地の悪い真似をしたくなる。

「ありがとう。ダニー。感謝してる」

チンは自分からもダニーを軽く抱きしめると、短く、間近のダニーの口元へと唇を近付ける。ちゅっと音を立てて、皮膚が触れ合うまでダニーは動かなかった。

それから、うわぁ!と大声で叫ぶ。

唇にキスしなかったことを、感謝しろよなと、チンは心の中で笑った。

逃げる余地を残してやった。

そして、これで、ダニーは、乗り越えるべきでないと自分が考える倫理の壁が目の前にそびえたつことを思い出し、また足踏みを始めるはずだ。浮ついた嫉妬心などで無理せず、ダニーには、ぜひ、そこで留まっていてほしいとチンは思う。

 

「何するんだよ。チン!」

「何って、ダニーが自分の限界にチャレンジしてるようだったから、手助けしてやろうかと」

肩を竦めて意地悪くにやりと笑うと、ダニーは思い切り顔を顰めた。

「あんたと、スティーヴの馬鹿はお似合いだ。二人ともとんだ、根性悪だ!」

「でも、友達でいてくれるんだろう、ダニー?」

ダニーは遠慮なく地団太を踏む。

「くそっ! ……モンキー、パパは、こんな奴にかわいいモンキーの代わりなんかさせちまった。……チン、お前、グレースに謝れ!」

「悪いな、ごめんよ。グレース」

「なんだよ。そのにやにや顔は! お前には誠意ってもんがないんだよ! ああ、くそうっ! 会いてぇ!モンキー! 俺のモンキー!」

 

(終)