-やってみたいこと。2(事後清掃)

 

「いやだ。嫌だぞ、デミア。嫌だ。」

「なっ、そう言うなよ。ごめんってば」

揉めて、バスルームまでの道のりで抱き合うようにもつれ合うのは、デミアとゲープだ。腰から、デミアの巻いたシーツをずるずると引き摺るゲープは、強く手首を掴むデミアにバスルームへと連行されようとしている。

ゲープは両足を開いて足の裏を床につけ、何とかそれを阻止しようとしているが、さすがに、長く揺さぶられた後の艶かしい腰では普段ほどのふんばりは効かない。

「嫌だっ! 自分でする! 自分でする!」

「分かってる。お前が恥ずかしいってのはよくわかってるけど、お前、上手くできないだろ。また、明日、一日中、腹が痛いの堪えながら仕事することになったらどうするんだ……」

顔を蒼白にして嫌がる恋人を無理やり引き摺る趣味はデミアにはない。けれども、いまは引き摺るしかなかった。方法のよくわかっていないゲープを相手に、遠慮をして、前回デミアはとことん後悔したのだ。

乱暴に巻いただけのシーツから足を覗かせ、抵抗するゲープはさすがにGSGチームの一員で、デミアはそうとう梃子摺っている。

「やだ。嫌だ。自分で出来る。デミア!」

床のラグなど、もうめちゃくちゃだ。隙あらば、ゲープはデミアを突き飛ばし、自分だけバスルームに篭ろうとしているのがアリアリの顔だったが、デミアはその隙をゲープに与えなかった。

バスルームまでの距離を測りつつ、武器になりそうなものを探す姑息なゲープの目に、デミアは小さくため息を吐き、掴んだ腕を離さなかった。

顔を引き攣らせて嫌がる恋人に強要することは、デミアも嫌だが、どう考えても、ゲープの事後処理が飛躍的に改善されているとは思えない。

出してしまったのは、自分だ。

デミアは、明日、ゲープだけに負担が掛からないようにする義務がある。

 

「わかったから、一回だけな。一回だけ」

 

 

「ほら、その壁に手を付いて」

デミアは、できるだけ事務的に言葉を発した。

それほど広くもないバスルームの中、シーツを剥ぎとられ、むっとした顔のゲープは、のろのろと滑らかに筋肉のついた背中をみせる。壁のタイルに手を付いたゲープの背中を愛でながら、デミアは腰を突き出すように言う。

「ゲープ。尻を出せ」

尻ではなく、むっと、ゲープは唇を突き出した。シャワーヘッドを手に、温度を確かめていたデミアは、その素直な顔につい笑った。

「わかった。オーケー。かわいこちゃん。じゃぁ、丁寧にお願いすればいいか? ゲープ。お前の白くて大きいお尻を俺の方まで突き出してくれないか?」

途端、顔を赤くしたゲープは振り向きざま、拳でデミアを狙った。すかさず、デミアは、その顔にシャワーを向け、攻撃を避ける。

少し低めの温度の湯をもろに頭から被ったゲープは、ますます顔を顰めた。ずぶぬれの犬のように大きく頭を振って水を切るゲープを笑うデミアは、丸い肩へと湯をかけながら、流れる湯ごと、撫でていく。

「すぐ、済むから」

耳元で囁けば、しぶしぶといった様子で、もう一度ゲープはデミアに背中を見せた。

デミアは、ゲープの背中から順に湯をかけていき、尻の間にも湯を流した。

気難しそうな顔で耐えているゲープの表情がデミアを微笑ませる。

片手にもったシャワーで尻の谷間を狙うように湯をかけてやりながら、二本指をもぐりこませようと動かすと、ゲープの顔がますます強張っていった。

きゅっと皺を寄せたゲープの肛口の硬さに、いつもデミアは感心させられる。この締め付けが、中の柔らかさと相まって、挿入後のデミアのペニスを包み込んでたまらなくよくしてくれる。

だが、さっきまであれほど堀り広げてやっていたというのに、もう今は、まるでバージンのように締まって、なかなか指を受け入れないゲープの白い尻に、デミアは嫉妬も感じる。

もっと、ユルユルでもいいのに。

 

やっと指を押し込めば、中は、先ほどの余韻を残して、いつもよりずっと柔らかく、ヌルヌルと濡れていた。

内部の様子を確かめるように小さく指を前後させれば、ゲープの視線が、頼りなくバスルームの天井をさ迷う。

よく鍛えられた体は、ここまでの道のりの間も、体内に溜めていたものを僅かに太腿へと漏らしただけで、中に、たっぷりと溜め込んでいる。

「リラックス」

デミアが入れた指を引き抜くように動かすと、指を伝って、デミアの放った白濁がゲープの中からあふれ出し、湯に流され、やわらかな太腿へと伝っていった。

それがわかったのか、ゲープは嫌そうに顔を顰めて体を震わせた。それから、やっとほっとしたように息を吐き出す。

「済んだか?」

ゲープは身を代えそうとしたが、デミアの指が入ったままで、舌打ちが聞こえた。

「抜け」

「悪ぃけど、まだ」

デミアは、宥めるように、肩へとキスを落とすと、もう一度中へと挿入した指を広げた形にし、肛口を広げるようにして引き抜き始めた。

大きく広げたまま引き抜かれる指に、ゲープの口が、息を飲むように開かれる。

また、どろりと、中で溜まっていたものが零れ落ち、シャワーの水流と一緒に流れていった。

だが、残念だが、これでもまだだ。

粘つく内部を擦るようにして挿入し直した指を、動かすと、焦ったようにゲープが首を振る。

「デミア、お前、出すだけだって!」

「わかってる。本当に出してうやろうと思ってるだけだ。ちょっとな、ゲープ。大人しく」

さっきまで擦り上げられていた肛口内の粘膜が敏感になっているのは、わかっていた。

少し擦られただけだが、ゲープのペニスは反応し、上を向きかけている。

デミアは、これから、多分、ゲープが想像もしていないことをしてやらなければならなくて、それほど見るものもないバスルームの中で視線をあちらこちらへと動かし、肛口内から感じる快感を持て余している落ち着かない頬に小さく一つキスをした。

しかし、ゲープはそれほど嬉しくもなさそうだ。視線はデミアを素通りしていく。

精液を溜めた腸内を洗ってやらねばならないデミアは、顔を強張らせたままのゲープをよく見ながら、指を入れて広げている場所にシャワーヘッドを押し当てた。じゅっと、ゲープの体内へと湯が流れ込むのが、デミアの指にも生々しい。

「なっ、に、!?」

中まで入り込む水流に、腸内の粘膜を洗われ、動転したゲープはとっさに逃げようと暴れた。

デミアは、広げていた指を引き抜き、もがいて暴れるゲープの腰を抱きとめる。シャワーヘッドは肛口に押し当てたままだ。懸命に首を捻るゲープは、まるで自分の尻から生えているかのように押し付けられているシャワーを泣きそうに見つめている。

入り込む湯の異様さに、パクパクとゲープは口を開けた。

体内に注ぎ込まれる湯の変わりにか空気を吐き出そうとしているようだ。

「お前さ、こうやって前、洗わなかったろ」

全く予想外のことをされていると、はっきりわかるだけ、目を見開き、顔を蒼白にするゲープを抱きとめているデミアは、ものすごい衝撃を受けているありありと伝えるゲープの強張った頬に不謹慎だと思いつつも小さく笑ってしまった。

「この位して、きれいにしないと、奥まで入り込んだので、腹が壊れるんだぞ」

 

多分、前回、長時間バスルームから出てこなかった恋人は、便座の上に体を小さくするようにしながら座り込んでいただけなのだ。

デミアを呪うゲープは、きっと上目遣いに虚空を睨んで、もしかしたら、なかなか出てこないものに、じりじりと足を開くくらいはしたかもしれない。

そして、翌日、酷く腹を壊して、悲壮な顔をしながら、勤務についていた。

 

 

ゲープはカチカチと白い歯が音を立てるほど、体を震わせている。湯を飲み込んでいく白い腹は、少しせり出してきたようにも見えた。

「やめてくれ。……や、だ。……くる、しい」

体を硬直させるゲープの様子を伺いながら、抱きとめていた腕を放したデミアは、力が入りぎゅっと締まった尻の穴へと、もう一度指を挿入させ、そっと前後させ、入る湯に道を作り、そして、出て行く手助けをした。

「出せばいいんだ。ゲープ」

指で思い切り広げてやらないと、尻の穴は、すぐぎゅっと窄まってしまう。

「嫌だ。い、や」

「出さなきゃ、きれいにならないだろ?」

指を伝って漏れ出すものは、入った分に比べれば、明らかに少なかった。

排泄しないよう、ゲープは懸命に堪えている。

「なっ、出すんだよ。ゲープ。お前、苦しいだろ」

肛口にねじ込んだままの指は無理やり動かさなければならないほど、つよく締め上げられている。

力の入った肩へと、何度もキスしながら、デミアが言っても、ゲープはきかなくて、仕方なく、デミアは、一旦、シャワーヘッドを遠ざけた。

ゲープは明らかにほっと表情を緩めた。だが、腹に溜まったものが苦しく、身を縮こまらせるようにして、ぎゅっと体に力を入れている。

指を伝って、少しづつは湯が漏れ出してはいたものの、入った量に比べれば、そんなものは微々たるものだった。

浅い息を苦しそうに続けるゲープに、デミアは、中に溜まった湯を掻き出し始める。

「や、だ。やめろ、デミアっ!」

鍵型に曲げた指で掻き出すようにしながら、入り口辺りをしつこく刺激してやると、ぎゅっと目を瞑り、肩をすくめるようして、手を付いた壁に縋りつきながら、必死に耐えていたゲープの腰が辛そうに震えだす。

排泄を促すため、強く肛口を掻いてやっても、もう、嫌だと口を開くだけの余裕もない。

もうかなり限界だったせいもあり、とうとう、ゲープはごぼりと、音がするほどの大量の湯を尻の穴から吐き出した。

「あ、っア……ぐンン……っ、!!」

体中を真っ赤にして、相当量の湯を吐き出したゲープは、そのまま床へと、腰が抜けたようにうずくまってしまう。

見下ろす顔の中で、下睫がぬれているのに、デミアは少しばかり罪悪感を感じた。

はぁはぁと、荒い息をするゲープの艶かしい背中に、デミアは湯を当ててやる。

「ゲープ。大丈夫か?」

 

見上げてくるゲープの口は開いたままで、口の中で浮く、舌の頼りなさが、デミアはとても愛しかった。うずくまるゲープの白い尻は、肛口内に受けた強い刺激をまだ処理しきれずに、ヒクヒクと何度も窄みを開閉させ、その度、まだ体内に残ったままだった湯が、ぴゅるりと少しずつ溢れてゆく。

だが、今起こったことの衝撃を受け止めかねて、そんな自分の状態にすら気付いていないゲープは、ただ、呆然とデミアを見上げている。

「次から、自分でできるか? また、手伝ったほうがいいか?」

からかうようにデミアが尋ねても、怒りもせず、ゲープは、目を見開いたまま、ただ見上げている。

「ゲープ」

口元に笑みを刻んで、しゃがみこんだデミアはゲープと同じ位置に視線を合わせた。

「悪ぃけど、こんな感じ。多分、これで、明日腹が痛くなったりはしないと思う」

一人でやるときは、出すの我慢なんかするなよと、言ったデミアは、シャワーを止め、腸内を洗浄された刺激で、かなり勃ってしまっているゲープのペニスを視界に捕らえながら、ぴたぴたと柔らかな頬を叩いた。

 

「なっ、ゲープ。こんなのが嫌だったら、ナマでしてもいいとか、出していいとか、簡単に俺を挑発するのやめろ」

 

 

 

END

 

えっと、ついお調子にのってデミにすっごいセックスさせてやる気になった隊長とか。