コブタさんとオオカミさん 9

 

自宅についたフランクは担いでいた2匹の兄さんコブタを、よいしょ、よいしょ、と降ろした。

ついでに、なぜか悪徳業者に己の性生活を洗いざらいしゃべくっているフレディの手から携帯を取り上げ、通話を切ってから、フレディの手のとどかない棚にのせる。

フレディは文句を言いかけたが、フランクが兄さんコブタにまる聞こえだ、という仕草をすると、ハッとした顔で青ざめ、それからじわじわと赤くなってあわあわしている。

二番目の兄さんコブタは、しっかりしてそうに見えて妙に抜けているところがあるのだ。

一番上の兄さんコブタは、まだノーパンのまま突っ立っている。

オオカミに先っぽを突っ込まれた衝撃から立ち直っていないのか、幸いにして、フレディが悪徳業者にべらべらべらべらしゃべり倒した中身についてはノーチェックのようだ。

「ゲープ?大丈夫か?」

「ん?ああ、大丈夫だ。尻がちょっと痛いが」

「薬塗っとくか?よく効くのあるぞ」

「いや、いい。寝れば治る」

寝れば治る、は兄さんコブタの口ぐせで、他にも「食えば治る」というバージョンがある。病は気から、というが、本当にそれで治ってしまうのだからオソロシイ。回復力においてゲープに適うものはいない。

体質までおおざっぱな兄さんコブタは、いきなり着ていたシャツに手をかけて、んしょ、んしょ、と脱ぎ始めた。

「げ、ゲープ!?」

「シャツとパンツ貸してくれ」

べとべとする、と兄さんコブタはご機嫌ななめである。

たしかに、シャツのあちこちに変態オオカミの唾液が付着しており、裾のあたりは別の液で汚れている。

ついさっき、お尻をぺろぺろされていたときには大喜びしていたのに、今はもう忌々しそうな顔をして舌打ちまでしている。

あのオオカミ、見込みなしだな、と異種族ながら気の毒になりつつ、フランクは着替えを貸してやって兄さんコブタをおフロに誘導した。

「湯を浴びればさっぱりするから」

ゆっくり浴びてこいよ、と声をかけてから、フランクは二番目の兄のところに戻った。

実はさっきから、二番目の兄もご機嫌ななめなのである。

「フレディは?大丈夫か?」

大丈夫じゃなさそうなのをひしひしと感じて、フランクはとりあえずフレディのおでこにちゅうをしてみた。

むっとした目がにらんでくるが振り払ったりはしないので、不機嫌とはいってもちょっと拗ねてるくらいだな、と見当をつける。

なんで拗ねてるか、ってこともわかれば楽なのになあ、とのんびり困りつつ、フランクは二番目の兄さんコブタの険悪な目のそばに、またちゅうをした。

「・・・携帯」

「ん?」

「携帯、返せよ」

「いいけど、業者にはもう電話するなよ」

「なんでっ」

「なんでって・・・・」

フランクはまたまた困った。フレディはまだ、自分が詐欺にあったことを自覚していない。はっきり言うのは簡単だが、けっこうプライドの高いフレディがざっくり傷つくことマチガイなしだ。

「ええと・・・、こういうことはおれたちシロウトよりも専門家に任せたほうがいいだろ?」

専門家、というのはなかなかに便利な言葉である。

フランクは、フレディの表情がちょっと和らいだのをみて、ほっとした。

「あした本部でさ、誰かに聞いてみようぜ」

「誰かって・・・、誰に」

「そうだなあ・・・・、アンホフとか・・・・、ヘルムホルツはどうだ?誰か知ってそうじゃないか?」

ヘルムホルツは優秀なシステムエンジニアのキツネである。

女狐、というとなにかイメージがよくないが、裏の世界の情報にも精通しているという噂もある。本部のコブタたちは、皆ヘルムホルツを恐れていた。

「あ、そういえば、アンホフの顧問弁護士も優秀らしいぜ。フレディも前に見たことあるだろ?」

「あのキツネか?」

「そうそう、コニーって言ったっけ。あの綺麗な毛並みの・・・」

「なんで名前知ってんだ?」

「え?」

「仲、いいのか?」

「いや、アンホフのとこまで案内しただけだけど」

これは本当のことである。

そもそも、気位の高いキツネがコブタと仲よくするわけがない。そんなことぐらい、フレディだってわかっているはずなのに、とフランクは困った顔のままで、まぜかまたむっとしている兄さんコブタの寝ぐせのついた髪を見下ろした。

基本的に体も心もすくすくと育ったフランクには、自分がせっせと一番上の兄さんコブタの世話を焼いたり、美貌のキツネの毛並みを褒めたりするせいで、二番目の兄さんコブタがフクザツな心境に陥っている、などとは思いもよらないのであった。

困っているところにちょうどよく、一番上の兄さんコブタのオフロが終了した。

着替えた兄さんコブタはようやくさっぱりした顔で、のしのしと戻ってくる。

が、その姿を見た弟ふたりはゴクリ、と息をのんだ。

フランクのシャツはさすがに大きかったようで太腿にかかっているのだが、お風呂あがりの兄さんコブタの太腿はほんのりぴんく色においしく茹で上がっている。むっちりした太腿がシャツの裾からのぞいている光景は、先っちょをちょろりと見せた姿とはまたちょっと趣が違っていて、悩ましい。一見パンツを履いてないようにみえるのもポイントが高いというか、なかなか絶妙なバランスでマニア向けである。

「ソファ、借りるぞ」

弟コブタたちをちょっと妙な気分にさせてしまったことなど知る由もなく、兄さんコブタはそう宣言すると、むちむちの太腿をさらしたままソファをばばんと占拠した。

ぐう、とあっというまに眠ってしまった兄さんコブタにフランクは「風邪をひくから」という理由で、毛布をかけて罪な太腿を覆い隠した。

ソファを取られてしまえば、あとはもうベッドしか無い。

フランクはフレディの手を握って、寝室へ撤退した。

今夜は何かと刺激的で同じベッドで何もせずに眠れる自信はないのだが、こればっかりはなるようにしかならないよなあ、と、フレディはもう膨らんでいる自分の股間を見下ろした。

いかなる状況においても、一番下のコブタさんはマイペースなのであった。

一方。

オオカミさんはといえば、頭部外傷の失血により巣穴に辿り着いたところで一時意識不明に陥っていた。

目覚めたのは、空が明るくなりはじめたころである。

「ちくしょー、いいところで・・・!」

昨夜のコブタさんの痴態を思い出しながら、デミアはさっそく片手で扱きはじめた。相当量の血が失われたはずなのにオオカミさんの発情はノンストップである。

「はあはあ、ゲープ、ゲープっ、オレのゲープ!」

オオカミさんは、もうすっかり恋人気取りである。

たとえ先っちょだけでも、かわいいコブタさんがあのぷりんぷりんのお尻でくわえこんでくれたのである。

それにコブタさんはデミアの妄想、いや、想像以上にデミアとのエッチが気に入ったらしい。

お尻をぺろぺろしてやったときのコブタさんといったら喘いだり腰を振ったり、かわいくてエロくて最高だった。デミアのが大きすぎる、などと怒っていたが、あれぐらい反応がよければちょっと慣らすだけでぜんぜんいけそうである。

あのお尻にずっぷりはめて得意の腰づかいを堪能したら、コブタさんはきっとものすごく嬉しがってくれるはずなのだ。

コブタさんが気にいったのはキモチいいエッチであって、オオカミさんのことは単なる変態の一種だとおもっていることなど、オオカミさんの預かり知らぬことである。カンチガイもここまでくれば犯罪、もとい、才能かもしれない。

「早くやりてええええ!」

すっかりコブタさんとコブタさんのカラダに夢中なオオカミさんであった。

 

 

(つづく)