コブタさんとオオカミさん 8
壊れた家にも呆然だが、それを見守るフランクの股間がまだ膨らんだままなのにも、フレディは呆然としていました。
「……なぁ、……あれ……」
殆ど泣き声で、倒壊した30年ローンについて語ろうと隣を見れば、弟のそこがまだ立派なままでは、フレディの声も喉に引っ掛かってしまうのです。
しかし、埃を巻きあげて壊れた家を見つめる弟こぶたは、股間は膨らんだままながら、機敏な動きをみせました。
「ゲーーープっ!!」
「ああああぁっ!」と、辺りをはばからぬ、はしたない声を上げていっていた長兄こぶたは、瓦礫の下なのです。
ショベルカー並みの推進力でもって、幻のヒノキ(残骸)をかき分けながら、家の中へと進んでいく、フランクの後ろにはフレディが懸命についてきています。
「ゲープ、大丈夫か!? おーい、ゲープ!」
「うわっ、フランク。そ、それ、柱っ! 俺んちの大事な柱っ! わー、そんな、力いっぱい投げないでくれっ、もしかしたら、まだ、使えるっ!!」
「ゲープっ! おいっ、ゲープ、返事をしろ!」
「それ、屋根っ! 屋根だっ! 頼む。もっと丁寧にっ!」
「ゲープ、どこだっ!」
「フランクっ! フランクっ! お前が今踏み抜いたの壁だっ!」
「フレディ……」
30年ローンの崩壊にパニックになっているらしい涙目の下の兄を、さっと振り返ったフランクはぎゅっと抱きしめました。
「フレディ、家のことなら心配するな、俺の家で一緒に暮らせば、それでいいだろう?」
それは、さりげないプロポーズのようでしたが、実際、思わず誤解したフレディは、一瞬、倒壊した新築家屋のことも忘れ、弟の腕の中でドキドキしてしまいましたが、フランクは、喚くフレディがうるさくて邪魔くさかっただけです。
フレディが黙ったのをこれ幸いと、フランクはまた豪快に建材を掘り起こし、投げ捨て始めました。
豪華な建材で重厚に建てられたという触れ込みでしたが、手に取る素材のあまりにも薄く軽い質感に、フランクはもはや、フレディが完璧な詐欺にあったのだという確信があります。
「んんっ、ん」
苦痛を堪えるようなゲープのうめきが聞こえました。
「大丈夫かっ! ゲープっ!」
フランクがかき分け進む瓦礫の先には、こんもりと建材が盛り上がっています。それほど数のなかった柱に運悪く下敷きにでもなっているのかと、フランクが急ぐと、「んんんんっ、っ、ん、……っ、」と、またゲープのうめきが聞こえます。けれど、なんだか、様子が変です。
それでも、フランクがゲープがいるらしい辺りの瓦礫の山を鷲掴み取り除くと、そこには、オオカミの先っちょが、少しだけ入っている状態の長兄がいました。
「うわっ! デミアっ、抜けっ! やめろっ! フランクが見てるっ!」
見てるもなにも、どうして家が全壊してすら、この長兄はエッチをやめようとしないのでしょう……。
ゲープの白い足はぱっかりと開かれ、むっちりとした太股の間にデミアの体を挟むようにして高く掲げられています。
「そんなっ、ゲープ、無理だっ。今更、抜けるかっ!」
フランクもゲープ兄の肝の太さは知っていますが、……あ、ゲープに、抜けと無茶苦茶に蹴飛ばされているオオカミが今にも泣き出しそうです。それでも、オオカミデミアは、肉付きのいいゲープの太腿をがっちりつかんで、突入体勢は崩しません。見上げた根性です。
「ゲープ、お前、していいって!」
家の崩壊に巻き込まれたオオカミは頭からダラダラと血を流しているのです。
普通、頭からあれだけ血を流せば、下の血は収まると思うのですが。
「俺をかばった血まみれのお前が、このまま死んでもいいから俺のバージンをくれって言うからっ!」
なるほど!
さすがの弟こぶたにも、この状況が読めました。と、いうか、またか、ゲープ……と、がっくりと肩を落としました。
ゲープ兄は、ドラマチックな展開に弱いのです。すぐ感激してしまいます。
こないだも、間違って銃撃されたこぶた隊員が、一度でいいからゲープと触りっこしたかったと涙の滲んだ目で訴えると、相手の手をぎゅっと握って「元気になったらさせてやる!」と即答していました。ちなみに、その隊員は、幸い元気になりましたが、復帰の第一日目、ウキウキと通勤中に不審な車にはねられ、再入院中です。車の色は、ファルクと同じ紺だそうです。
「俺は、今も死にそうだっ!」
「弟が見てるんだっ! こんなとこで出来るかっ!……それに、お前、痛くないって言ったけどな、痛いぞっ! そんなデカイもの突っ込もうなんて、俺のケツの穴が裂けたらどうしてくれるっ!」
その裂けそうなものにお尻をぷすりとされたまま、ゲープが喚いています。
「ゲープ、少しだけ、……少しだけでいいから、我慢してくれ。ここんとこが通ったら、あとは、少し楽になるから、そしたら、お前のこと、絶対に気持ちよくしてやるから」
頭から、ぽたぽたと出血中のオオカミがかき口説いています。
弟コブタも、経験上、ここでやめろと言われるのがどれほど辛いのかわかります。嘘でもなんでも、言いくるめて突っ込んでしまいたいものです。
ぬるぬるの先っちょは、許可なしのままゲープの白い尻の中へと埋没しようとじわじわ進み続けています。
「嫌だっ! やめろ、デミアっ!」
もう少し、準備に時間がかけられれば、大きくてもどうにかなることも、フランクは知っていましたが。
なにも、長兄がバージンを失う瞬間をこんな間近でじっくりと見せつけられている必要もないように思われたので。
「 ……あのさー、恩のあるらしいあんたには悪ぃけど、俺の兄ちゃん、嫌がってるみたいだから」
コブタ末弟は、アレの先っちょがお尻に刺さった長兄をオオカミの下からすっぽりと引き抜きました。
「……っえ……ぁ」
途端に、なんだか未練がましい切ない声をゲープ兄が上げて、フランクは自分の判断が間違いだったかと焦ります。
けれども。
「……あー、兄ちゃん、続けるにしても、ここは、やめとかないか? フレディ兄ちゃんも家が壊れちまって、自分も壊れそうになってるから、とりあえず、俺んちに移動ってことで」
フランクは、またもやノーパンでの移動となった長兄こぶたと、カスパーに家が壊れたと電話で抗議中のフレディを両肩に担いで、レンガのおうちに急ぎました。
しかし。
「あなた、そんな、こんなに簡単に家が壊れるなんてっ!」
「なるほど、あの家はこぶた用だから、オオカミの侵入には弱いんですか……」
「えっ、具体的に何をしていて、壊れたかですか? ……あの、その……」
「その、ちょっと長兄が、オオカミに家の中でナニされてしまっていて、それを見た弟が興奮して、……その、」
「ええ、壁に手をついて、後ろから」
「あ? いや、そんな、まだ、入ってはいなかったです! ……握られただけで」
「えっ? 相手ですか? フランクです。あ、弟なんです。……気持ち良かったかですか? ……ええ、まぁ、それは、その……」
「やです……。え、だって、……フランクの大きな手で握られると、俺、腰がじんって痺れる感じで」
「あ、もう、ホントに、ダメで……す。もう、これ以上、俺、恥ずかしくて。……あ、その、あいつのを尻に押し付けられながら……先っぽの辺りを、くちゅ、くちゅされると、俺も興奮しちゃって……」
どうやら、いいようにフレディがカスパーに転がされています!
恥ずかしいことを言わされています。
「えっ、そんな。好きな体位なんて、……あ、あの、うちの弟、体がでかいんですよ。だから、その抱きあげられて、そのまま入れられたり……するのが、好き、だったり……」
フランクのレンガのおうちが見えてきました。
(つづく)