コブタさんとオオカミさん 2

 

一方。

「あっ、そこ、もっと間隔をあけてくれていい」

「……。」

ただでさえ、いい加減なつくりの藁の家を、さらに手抜きで作ろうとするこぶたゲープの指示に、手伝いのフレディは半眼になりそうです。

「いいんだ。これはどうせ仮住まいなんだから!」

コブタ自立計画を実施中の本部に真っ向から対抗中のゲープは、言い張ります。

そして、こぶたゲープは、フレディが置いた藁束を最後に、もう家が出来上がったばかり、僅かばかりの藁束で覆われただけの家の中へとさっさと入って行ってしまいました。

けれども、中に入っていったといっても、そこはさほど外と違いがありません。ゲープの家は、藁束を寄せ集めただけの、手抜きもいいほどのしろもので、しかも、あちこちあちこち穴あきなのです。

勿論、ドアなどついていません。

まだ束ねるつもりだった藁を片手に、長男のもう出来た宣言に驚きでぼんやり口を開けているフランクは、外に立っていてさえ、ゲープの茶色い目とばっちり目があっています。

「なんだよ。俺は暑いのは嫌いなんだ。この方が風通しがよくていいだろ」

ドアかわりに、ぺろんと布を張りつけたゲープは、三男坊に、藁のマイホームへ入ってこいと、なんだったら泊っていくか?となんて誘っていましたが、フランクは、ドアどころか、ガラスの入った窓まであるレンガでできたしっかりとした家を持っていました。ちなみに、フレディは、幻の一本檜とかいう、胡散臭い木材で作られた家に30年ローンを組んでいます。

 

そうなのです。藁でできたゲープの家は、まるで、泥棒も、強姦魔も、どうぞおいで下さいと言わんばかりの無防備さでした。

事実、双眼鏡でのぞき中のオオカミデミアも、ゲープが家の中に入ったというのに、あちこちに開いた大穴のおかげで汗に濡れたシャツの中でかわいく勃っている小さな乳首を盗み見るのに全く支障はありません。

いえ、それどころか、ゲープのまわりに穴だらけとはいえ、下手に藁の囲いが出来た分、なんだか、盗撮っぽさがいや増して、オオカミデミアは、興奮度が増していました。

「ああ、ゲープ! もう一歩前に出てくれ。そこじゃ、お前の全部が見えない。くそっ! フレディ、お前邪魔だ。ちいせぇのがチョロチョロすんな。フランク、お前は、でかすぎだ。ゲープが見えねぇ、テメェは死ね!」

 

「暑いって……。本当に、これでいいのか? もっと手伝うぞ、ゲープ?」

二男と三男が、長男のあまりにアバウトさを心配している最中にも、オオカミデミアは、双眼鏡を片手に、もう片方の手が下半身、いえ、はっきり言ってしまえば、股間でフル稼働していました。

はぁはぁ、はぁはぁ、鼻息が荒いです。

「いいんだ。こんなの単に仮住まいだしな」

「くぅぅ! 汗でぴったり張り付いた短パンが、お前のチャーミングな尻の形をはっきり教えてくれるぜっ、ゲープっ! ……っ……はぅっ!」(あっ、オオカミさん、どうやらいっちゃったみたいです)

 

弟ブタたちは、長男ブタの藁のおうちを心配しながらも、帰って行きました。

長男ブタは、野っぱらの中、藁のおうちで一人暮らしスタートです。

コブタのおうちは、警察局にお勤めしながら、防犯意識もなにもあったもんじゃないものでしたが、かわいい子豚をストーキング中のオオカミデミアが目を光らしていたおかげで、鍵どころか、ドアすらないのに決して泥棒に入られませんでした。

勿論、ゲープは、「俺が、警察局の誇るGSG−9の隊長だから、恐れをなしてだな」なんて、誤解して胸を張っていますが。

あっ、ついでに、ゲープがお外に干しておいたパンツが、2、3枚なくなったりしているみたいなのですが、コブタさんは、風が強かったせいかと洗濯ばさみをつけ忘れた自分を反省しているようですが。

 

とこで、ある日のことです。

その日は、そよりと夜風も気持ちのいい晩でした。

勿論、オオカミデミアは鼻息荒く、こぶたゲープを覗き見していました。

高性能双眼鏡を片手のオオカミは、その晩、確かにちょっと鼻息は荒かったかもしれません。

けれども仕方がないのです。

「えっ、ゲープ。脱ぐのか? そ、そんな。帰っていきなり、ちょっと待てって、俺の方が照れちまうじゃねぇか。あああ、ゲープ。その豪快な脱ぎ方。……おい、その脱いだパンツを放っておく癖は、直したほうがいいぞ。お前、よく洗濯しわすれるだろ。え? えっ? ベッド? え? もしかして、そんな、ああああ。な、なんで握る? えっ、お前、まさか、……オナニーする気か!!!???」

そうなのです。

覗き放題の藁のおうちで、こぶたゲープは、秘密のリラックスタイムを過ごそうとしていたのです。

「うそだろ? えっ、マジ? マジで!!??」

下だけ脱いでベッドに大きく足を開いて腰掛け、少しだけ後ろめたそうな顔で、自分のペニスを握って扱くこぶたゲープの様子に、オオカミデミアはフーフーと鼻息が荒くなってしまいます。

どれだけオオカミが興奮し、覗いていようとも、こぶたは全く知らないので、自宅で一人の時間を満喫中のゲープはオナニーを続けます。

「ちょっ、ゲープっ! ぅ! そのやらしい顔! ハァハァ! 俺が握って扱いてやりたいっ! フー、フー、お前のその漏れてるの舐めてやりたいっ! ムフー! ムフー!」

興奮するオオカミデミアの鼻息は、激しいものです。

「くそぅっ! ゲープ、お前、なんちゅうエロ顔っ! 陰毛、陰毛も触るのかっ!! ムフーーー!」

 

びゅーーーー!! ブァサッっ!!!

その時、突然、ゲープの家は吹っ飛び、倒壊してしまいました。

 

吹いていたのは、そよそよと優しい風です。けれども、もともと作りの甘いゲープの家です。

オオカミデミアの鼻息がいくら荒くてもそれが原因とは思えないのですが……。

「えええっ!?」

パンツを脱いで、オナニー中のゲープは、いきなり家がふっとびびっくりです。手が止まり、手の中のものは、しおしおと大人しくなっていってしまいます。

それを、双眼鏡で見ながら、オオカミデミアは月に向かって慟哭です。

「ああああ、ゲープ。家でオナる気なら、どうして、もう少しちゃんとした家を建てておかねぇんだぁぁぁ……!」

 

(つづく)