俺のクマちゃん

 

鍵を開けて入った家の中が明るく、デミアは、不審に思った。だが、玄関から続く部屋の中に落ちている、いくつもの痕跡を見つけて、苦笑する。

キッチンの棚が開いたままだ。机の上には、冷凍のラザニアが食べ散らかしてある。シャツの掛かった椅子の下には、脱いだ靴下。

鞄が、狭い廊下に放ってあって、その全ての近くに、買い置きしてあったビールの空き瓶がセットになって転がっていた。

テレビは点けっぱなしで、ピーナッツの殻が散らかるソファーの周りは特に空き瓶の数が多い。

ぶつかったまま通り過ぎたと思われる棚から、積んであった雑誌が床へと雪崩を起こしていた。

ゲープは、デミアの家の鍵を持っている。そして、確かに、デミアは、いつでも来ていいと言った。だが、不在がわかっていたはずなのに、訪れた恋人は、本当にへそ曲がりだなと、デミアは思う。

部屋の至るところに、ゲープの痕跡を見つけることはできたが、本体の姿が見えず、デミアは、寝室のドアを開けた。

そして、そこの光景に、もうデミアは苦笑を浮かべるほかすることがなかった。

 

「ゲープ。おい、ゲープ。このまま寝る気なのか?」

デミアは、布団もかぶらず、下半身をむき出しのまま丸まって眠っているゲープを揺すった。ゲープの右手は、自分の白い太ももの間に挟まれている。色気が眠気に勝っている間はそれなりの大きさだっただろうものも、今は眠り、柔らかく手首と一緒に太腿に挟まれてしまっている。どうやら、ゲープは一人でオナニーをしているうちに眠気に負けて寝てしまったのだ。

「おい、ゲープ。起きろ。せめて、下に敷きこんでる布団をかけさせろ」

捲れたTシャツから覗く腹や白い尻は、柔らかくデミアの目に映る。

 

ベッドの上にはビールの壜が一本転がり、どうやらそれは、多少中身が残っていたようで、ちょうど枕の辺たりの布が、ぐっしょりと濡れていた。そんなベッドの上で、ゲープはすやすやというには、飲み過ぎのせいか少し苦しそうに額へと皺を寄せていたが、深く眠り込んでいた。

開いたまま寝息を漏らす唇が乾いてしまっている。

「結構最悪だな。お前」

壜を床に置きながら、もう一度デミアは上掛けに片頬を埋めて眠るゲープを揺さぶった。

ゲープが、ぴくりと動いた。ひくりと唇を動かし、次の瞬間には、見ているデミアが驚くほど大きく目を開ける。

「……デミア?」

「そう。俺だ。帰ってきたんだ。布団も掛けずに寝るなよ。お前。風邪引くぞ」

ゲープは口のなかの唾を啜り上げるような音を立てた。そして、顔を起こすでもなく、むっと不機嫌に口を曲げた。

「寝てない」

デミアは笑ってしまった。どうみたってゲープは独りでこそこそオナニーしている間に、酒が作り出した重い眠気に負けて寝てしまったのだ。そうではければ、こんな恥ずかしい状況を作り出すのは難しい。ゲープは、ポロシャツだけを着て、白い尻をむき出しにしたまま、太腿に手を挟んでベッドの上で転がっている。その上、今だって、こんなあられもない姿を見られているというのに、ゲープはそのことを少しも恥ずかしいとは感じていないようだ。

深酒は、ゲープから正常な判断力を奪っている。

開いたゲープの目が、数時間の睡眠程度では、抜けなかった酔いを残し、赤く鈍く動くのに、デミアは事実を言い立てることはやめた。代わりにゲープの言葉を認めてやる。

「そうか、ゲープは起きてたのか」

「そうだ。俺は起きてた」

「それで、お前は、人んちのありったけのビールを一人で飲んで、人のベッドでマスかいてたってわけか?」

ゲープはむっと口を噤んだ。寝そべったままでデミアを睨む。これだけ言われても起き上がろうとしないゲープの酔いは深い。たしかに、あれだけ空き瓶を転がしていたのだ。仕方がないとも言える。

「悪いか?」

悪くはないが、デミアは思い切り機嫌を損ねている恋人をどう扱ってやるべきかと考えていた。酔いの回った体がだるいのか、それとも曲がった臍がデミアの帰宅ごときでは起きてやるものかとでも思わせでもするのか、まだ、ゲープは体を丸め、手を太腿に挟んだまま寝そべりデミアを睨んでいる。

 

デミアは聞いた。

「俺が遅くなるのは、わかってたよな?」

ゲープは色を暗くした目を反らした。

「デートだって言ったの、お前も聞いていただろ」

仕事あがりのロッカールームで、デミアはゲープにも聞こえるよう、はっきりと言ったのだ。

「怒ってるのか?」

 

「怒ってなんかない。だが、お前は嫌いだ。デミア」

ゲープはぷいっと顔をそむけた。

その仕草が酷く子供じみていて、デミアの頬は緩んだ。だが、ゲープの言葉が嘘なのは、約束の無い唐突な来訪や、無茶な飲み方からして確実だった。けれど、デミアとしても、妻帯者であるゲープとの不倫を、長く、上手く続けていこうと思えば、上手くバランスを取る必要があった。

デミアは、ゲープとできるだけ、長く続けたかった。だがそのためには、ゲープとの間にこうやって時々距離を取り、自分をあまり思いつめないようにする必要がある。

デミアは、暖色のカバーシーツの上で、まだ白い体を丸めたままのゲープを見下ろし、言った。

「そうか。じゃぁ、寝てないゲープがしてたことの続きを手伝ってやろうかと思ってたんだが、ゲープは俺になんて触られたくないよな?」

 

チーム内でいざこざが起こる原因の一つは確実に、男たちの負けん気の強さだった。

精鋭と呼ばれるチームへと上り詰めてきた男達は、売られた喧嘩は必ず買った。

深く酒の酔いを残し、理性の箍が外れているゲープは、勿論引く気などみせず、デミアを睨んだまま深く頷いた。ゲープはデミアに挑戦するような気の強い顔をして、太腿に挟んだままだった手を引き抜き、ペニスを掴み、扱き出す。

「デミア、お前は指を咥えて見てろ」

けれど、ゲープの性欲は、酒と眠りでとっくに霧散しており、握った手の中でペニスはなかなか大きくはならなかった。ゲープは悔しそうに眉を寄せる。

しかし、こんな時間まで、一人ゲープを待たせるほど遅くなるデートにデミアが出かけたことは、相当ゲープを傷つけていたようで、ゲープは勃たないペニスから手を離さない。

 

ベッドの端に腰を下ろしたまま、言われたとおり様子を眺めるデミアは、腹立たしそう自分のペニスを扱くゲープの足に触れた。

ゲープがデミアを蹴る。

「触るな!」

それでも、デミアは、ゲープの足を捕まえ、暴れる足の甲へと唇を押し当てた。ごめんなという気持ちを込めて。

白い体を不機嫌に丸め、懸命にペニスを扱くゲープを眺めながら、デミアは仲直りのタイミングを探っていた。

「足だけ」

ゲープの気に沿うよう、卑屈にねだるように言ったデミアは、気難しい酔っ払いが少しでも心地よさを味わえるよう、くるぶしへと舌を這わした。舌が這えば、ゲープはびくりと体をひくつかせた。デミアは、丁寧にゲープの足を舐めてゆき、足の甲も、足の裏も舐めた。

終わると、今度は指を一本一本口に含んだ。

ゲープの目が、デミアをじっと見つめている。酒を残して、反応の鈍いゲープの手の中のものが、僅かに興奮し始めている。小指まで全ての指を丁寧に舐めきったデミアは、緩く口の中の指を歯で噛んだ。

「ゲープ。さっきまでは、どんなこと考えてやってたんだ?」

手にペニスを握ったまま扱くのを忘れていたゲープの手が動き出す。

「お前が、女とやってるとこだ」

「だろうな」

デミアは、ゲープの顔を覗きこんだ。

それが、どれほど屈辱的なことだったのか、経験のあるデミアはわかる。たまらなく悔しいのだ。けれど、おかしなことに、嫉妬はどこかで、快感とつながっていて、腹立たしさで気が狂いそうなのに、ゲープが妻と寝る姿を想像して、何度かデミアは抜いた。

あの気持ちを、ゲープが味わっていたという。

デミアは、ゲープを好くしてやりたくて、ねだるように言った。

「ゲープ。もう少し上のほう、膝までだったら舐めてもいいか?」

「ダメだ」

だが、デミアは、不機嫌に唇の曲がったゲープの顔から言葉とは正反対の答えを読み取り、くるぶしから膝に向かってゆっくりと舐め上げていった。

デミアが掴んでいるため、開いている足の間のもう大分硬くなったペニスの根元では、柔らかくかわいらしい二つのボールが寝そべっている。

デミアは、ふくらはぎを舐めながら、白い足をゆっくりと撫でた。

ごくりとゲープの喉が鳴った音が聞こえた。

ゲープは、今までとは違う色に目元を染めて、じっとデミアの様子を伺っている。手は、同じリズムで、勃起したペニスを扱いている。

だが、まだゲープは、デミアを許す気にはなれないようだ。

ゲープはペニスを握ったまま、空いていた左手を股の間に潜らせ、デミアが見ているのを承知の上で、尻の間の窪んで皺の寄る部分に指で触れる。

 

 

ゲープは、デミアの視線がじっとそこを見つめていることを分かった上で、二本の指でそこを少し開いてデミアに見せつけた。

恥ずかしさに身を焼かれるようだったが、それにも増して、デミアの視線がぴたりとそこから離れず、呆けたように見入っていることに、優越感を感じた。

指を穴の縁に置き、パクパクと口を開けるように動かせば、デミアの視線は益々強くなり、見られているのだという快感は、知らず、ゲープの下腹をも熱くさせる。

 

ゲープは、自分の身勝手を知っていたが、デミアが公然と女とのデートに出かけることに腹を立てずにいることなどできなかった。

 

羞恥に軽く息を喘がせながら、ゲープは、指先で軽く、皺の寄る窪みを撫でた。

さっきのオナニーの時には、そこまで触る勇気がわかなかったが、実は、している最中も、そこを触りたくてたまらなかった。ペニスだけの快感では、もう、ゲープは足りない。

自分の指が触れるだけでも、そこがヒクヒクと動くのが分かった。

ゲープはデミアがよくするように、穴の周りから、ゆっくりと円を描くようにマッサージしていき、その円を小さくしていく。

胸が早鐘のように打つのに、ゲープは息苦しさすら感じている。

 

数時間前、ゲープは、デミア不在の家に上がれば、もっと腹が立つとわかっていながら、デミアの家の鍵を開けた。

やはり、部屋にはデミアは不在で、ゲープは苛立ちを紛らわせるため、家主の許可もなしに、ありったけのビールをつかみ出した。

自分も、デミアにこんな気分を味合わせているのだという反省が僅かでも心にあったのは、酒に口を付けるまでだ。

 

デミアは、ゲープの膝を舐めるのをおろそかにして、じっと指が尻の穴の表面を刺激しつづける動きに見に見入っていた。

きっと、こんな目をしながら、さっきまでのデミアは女の腰を抱えていたのだ。

 

流し込むように飲んでいたビールも最後の一本となり、それを手にもったままゲープは、デミアの匂いのするベッドに寝転んだ。

デミアの匂いがする布団へと鼻を押し付けたが、自分がされたことのあることを、デミアが別の女にしているのかと思えば、腹立たしくてしょうがなかった。吐き気がしてくるほどデミアを頭の中で罵り、いつの間にか、ゲープは、息ができないほど苦しくなっていた。

それをいい訳に、ゲープはジーンズのボタンを緩めたのだ。

 

デミアの唇は、まだゲープの膝へと押し当てられていたが、他に気を取られたままの舌の動きは緩慢で、ゲープはデミアが目を反らせずにいる間に、指を、ひくつく穴の中へとねじ込もうと心を決め、ひとつ息を吐き出した。

白い尻の間にある窄まりへと掛ける力を強め、指を押し込む。

すると、デミアの手が伸びて、ゲープの腕を掴み、止めた。

「ゲープ。そんなことすると痛い」

意外なことに、デミアの声はとても冷静で、自分がこんなことをしてみせれば、デミアが激しく興奮するだろうと思っていたゲープは軽い混乱を味わった。

「ゲープ。お前、まだかなり酔ってるな。ゼリーでもつけなきゃ、お前には入らないだろ?」

 

デミアは、伸び上がり、濡れた枕元の先ある小さな脇机の引き出しから、ゼリーのチューブを取り出し、投げた。

意地っ張りの恋人の様子に、デミアはかなりほだされている。ゲープはデミアに触らせないと言いながら、懸命に誘っている。あとは、どの時点なら、ゲープを傷つけることなしに、彼を抱きしめることが出来るかを、デミアは見極めなければならなかった。

投げられたチューブを少しうつろな目をして、ゲープは取り上げた。

だるそうにベットから体を起こすと、ゲープはチューブを手に持ったまま、デミアに尻を向けて、くるんと体を丸めうつぶせる。

無造作に白い尻が目の前に差し出されるのを、デミアは驚いてただ見ていた。

ゲープは、体の下で折り曲げた足の間へと腕を差し込み、腕を尻へと伸ばし、指先に塗ったゼリーを尻の穴の表面へと塗りたくる。

一旦、ひっこんだ手がまた伸ばされ、べったりとゼリーに濡れて光る指が尻の穴の位置を探れば、思わず、デミアは息を飲んだ。

 

その光景はあまりに扇情的で、デミアは飲まれたようにその姿から目を離すことができなかった。

白い大きな尻が、普段、柔らかな肉の間に隠す柔らかく弱そうな粘膜の部分をデミアに晒して、指を飲み込んでいた。ゼリーの助けは、ゲープに痛みを与えず、指は滑らかに肛口のなかへと飲み込まれていく。

だが、あまりにもゲープはためらいなく事を進めていた。そのことにデミアは気付くべきだった。

デミアは、最初、ゲープの体が小さく揺れるのを、指の動きに、尻が揺れるせいかと誤解した。

しかし、腕を伸ばすために丸まられたゲープの肩が震えていた。

布団へと押し付けられた顔から、小さく嗚咽が聞こえる。

嗚咽にあわせ、白い腹がひくひくと動いていた。

「ゲープ!?」

デミアは、慌ててゲープを抱き込んだ。

顔を上げさせれば、ゲープが泣いている。快感にではなく、泣くゲープの顔など、デミアは、過去に二度しか見たことがなかった。

それは、両方とも酒絡みだ。どうやら、酔いは、ゲープの涙腺を弱くするのだ。

けれど、いくら酔っているせいだとはいえ、目の前のゲープはぼろぼろと涙を零しており、デミアは必死にゲープを抱く。

ゲープは抱かれるのを嫌がり、濡れた手でデミアを押した。酔いで抑制を欠いたゲープはめちゃくちゃにデミアを打つ。

「……お前、なんか、嫌いだ。デミア。お前なんか、もう、絶対に嫌いだ。デミア」

「悪かった。すまなかった。ゲープ」

ゲープを泣かせる前に、仲直りするためのタイミングを掴めなかった自分の鈍さをデミアは悔やんだ。

デミアは、懸命にゲープを抱きしめ、泣く顔にキスを降らせる。

ゲープの手がデミアの顔を叩く。

「嫌だっ! 放せ、デミア!」

「ゲープをこんな目にあわせるなんて、俺はただのアホだ。好きなだけ、殴っていいし、罵っていいから、頼む。ゲープ、泣かないでくれ」

 

涙が、目から溢れれば溢れるほど、ゲープは自分の気分が良くなっていくのに気付いていた。

だが、デミアを打つことも気持ちがよく、それを止める気には、一向になれない。

今日は酷くセクシーに見える、デミアの厚い唇が、ゲープの口を覆っていた。

食われそうなキスは、心地よかった。

それでも、ゲープはまだデミアを叩く。

チームの3番隊員は、叩かれても、蹴られても、ゲープを強く抱きしめてくる。

「お前なんか、デミアのくせに、デミアのくせに」

もっといい罵りの言葉があったはずだと思うのに、自棄酒は後遺症を残し、ゲープの脳裏に罵倒の言葉を蘇らせなかった。その苛立ちに、またゲープはデミアを蹴る。

「痛っ! いや、いい。ゲープ。いくらでも蹴ってくれ」

デミアは、必死の顔で、ゲープの涙を唇でふき取っていく。

暴れるままに汗をかきながら、もみ合うように、お互いの体を近づけていれば、ゲープは、デミアの首筋から立ち上る体臭に、とろりと下腹が熱くなるのを感じた。

やはりデミアのくせにと、理由にもならない理由で腹を立てたゲープはそこへと歯を立てる。

「痛っ!」

酔っ払いの容赦の無さに、さすがのデミアも悲鳴を上げた。

ゲープは、情けなく眉を寄せたデミアの顔に満足し笑った。

そして、ゲープは、デミアの体を押し倒し、ベッドの上へと磔にした。

 

ゲープが、まだ重い体でデミアの上に圧し掛かり、足を開いて、デミアの腰を挟み込んだ。

デミアが息を詰めて見上げているのを承知の上で、ゲープは体に張り付くポロシャツを脱ぎ捨てる。

ジェルで濡れた尻をデミアのジーンズへと擦り付けるようにして何度か動かし、尻肉でデミアのペニスが硬くなっていることを確認していた。

「ざまあみろ。デミア」

にんまりとゲープは笑うと、デミアの手を取り、その指をチューブから押し出したゼリーで濡らす。

足に力を入れて尻を持ち上げたゲープは、股の間にデミアの手を潜らせ、指を尻の窄まりまで連れて行く。

「指だけ入れさせてやる。お前のは入れさせてやらない」

期待してしまっただけに、思わず目で、そんな!と訴えたデミアへと、きっぱりと横へ首を振りながら、ゲープはデミアの指を穴の上へと押し付け、入れるようにと促す。

「指だけなのか? ゲープ?」

「そう、指だけだ」

デミアの片手は、ぐらぐらと揺れるゲープを支えるため、腰を掴んでいた。

酔っ払いは、デミアの眉が寄っているのが、たまらなく嬉しいらしい。

「気持ちよくなってもいいのは、俺だけだ」

 

 

 

デミアが二本の指を揃えて、ゲープの中で動かしてやれば、ゲープは、胸を反らし、顎を突き出すようにして体を揺らしだした。重く弛緩した体は、まだ酒の酔いを残してはいたが熱く発熱し、デミアの指を貪欲に飲み込み、締め付けている。

デミアが特定の箇所を、とくに刺激するようにして擦り上げれば、ゲープは自分から尻をデミアへと押し付け、すこしでも深く味わおうと、懸命に尻を揺する。

「ん、っぅん、……は、っぁ」

湿った息を吐き出し続け、ゲープの唇は濡れていた。

続く快感に、目元も赤く染まり涙ににじんでいる。

たっぷりした尻は、まったく落ち着かず、勃起したデミアのペニスをまるでいたぶるように何度もデミアの股間へと擦り付けられていた。

すこし膨らみ気味の白い腹が、息を吐き出すたびに、へこむ。

熱くしめった腸内で指を痛いほど締め付けられながら、デミアは、濡れた粘膜の中へと何度も指を挿入した。

後ろを弄られ、勃ち上がったものが、ゲープの腹の前で揺れ、快感に腫れている。

だが、酒の酔いのせいか、ペニスは、先走りをあふれ出すばかりで、あと一歩、ゲープの射精を阻んでいた。

いきたいのに出せなくて、ゲープの眉間は苦しそうな皺が寄り始めている。

「ん、っは、……っ、ん、ん」

「ゲープ。大丈夫か?」

「……ん、っん、……ぁ、……ん」

デミアの指を食う尻は、何度も何度も振りたてられているというのに、ゲープは出せない。

「お前、飲みすぎ」

下腹が重苦しく痛むのか、とうとうゲープがむずかりだし、デミアはぐらつく恋人の体を自分の腹の上から下ろした。

全身を汗で湿らせ、ふうふうと苦しそうにゲープは息を吐き出している。

もっと的確にゲープを好くしてやるため、デミアは、ゲープをうつぶせに寝かせ、尻だけを少し高めに持ち上げた。

デミアは、白い尻に一つキスをすると、ゲープのペニスを扱きながら、尻穴の中でゆるく盛り上がりをみせるあの部分で集中的に指を動かしてやる。

「やっ、んっ! んっ!! ン!」

あっけないほど、簡単にゲープのものから、白濁が飛び出した。

それを最後まで絞り出して、きれいにしてやった後、デミアは、ゲープの背中に一つ小さなキスをした。

そして、気付いた。

ゲープはデミアが後始末をしてやっている間に、寝息を立てていた。

大きな尻を突き出した形のまま、チーム50の隊長は、安眠中だ。

 

 

「お前には一生勝てない」

デミアは、表面をゲープの精液で汚す上掛けを捲り、布団の中に、ゲープを押し込んだ。

そして、自分もゲープのせいで汚れた衣類を全て脱ぎ去り、大事な恋人を腕の中に抱き込んで眠る。

「お前、明日、絶対に二日酔いだ」

デミアはゲープの寝顔にそう予言して目を閉じたが、実際、翌日のゲープは悲壮な顔で頭を抱えていた。

 

「ほら。薬」

「悪い。……デミア」

「いいや、夕べのお前の所業にくらべたら」

ところどころ、記憶が飛んでいるらしく、恐ろしく不安そうに、殴られたと思しき痣を残した3番隊員を見上げるゲープに、デミアは幸せな顔で笑うと、頭痛で痛む恋人の頭へとチュっとキスした。

 

END

 

俺のクマちゃん=ゲープとデミが思ってるといいな、とか。

読んでくださってありがとうございました。