お口、アーン

 

向かい合って座るテーブルで、遅めの夕食を口に運ぶゲープは、デミアの視線がさっきからずっと自分をじっと見るのに、居心地悪く思っていた。

「なんだよ?」

スープを掬っていたスプーンを置いて、水のグラスを取る。飲みながら、ゲープはデミアを軽く睨んだ。

デミアは、唇に照れたような笑いを浮かべる。

「あ、悪い」

手に持っていたスプーンの柄を額に当てて、はにかむように笑うデミアは黒い目を緩ませた。テーブルに肘を付くデミアは、皿の中身があまり減っていない。ずっと食べるゲープを見つめていたのだ。

サラダの野菜にフォークを突き刺すゲープは、大きく口を開けて頬張る。

「ゲープ。……なんての? そう。ちょっと今、ゲープがうちで俺と一緒に飯食ってるんだなとか、つい、考えちまって」

「メシくらい食うだろ。なんだよ、それは、皿を用意する以上の手伝いをしろっていう、遠まわしな嫌味か?」

ゲープは顔を顰めるようにして言い返したのだが、グラスに口をつけるその目元は赤くなっていた。デミアは、正直に愛情を曝け出し、それに感謝してさえ見せるが、ゲープはそんなことをされることに慣れていない。

出来るだけ平常を装いゲープは残りのスープをスプーンで掬った。

しかし、皿とスプーンのぶつかる音がやけに派手だ。

デミアの手が伸び、ゲープの頬に触れる。まるで確かめでもしているような優しい触り方は恥ずかしく、ゲープの頬が赤くなる。

「デミア、メシを食え。片付かないぞ」

「いいだろ。どうせ、片付けるのも俺だ」

あまりに幸せそうにデミアが笑うので、ゲープは顰めてみせた顔に苦笑を浮かべた。

「俺も、運びはするだろ」

「運ぶだけ、な」

そのまま見つめてくるデミアの目が照れくさくて、わざとデミアを無視したままゲープがパンを噛んでいると、デミアはいきなりなことを言い出した。

「なぁ。ゲープ。後で口でしてくれねぇ?」

「は?」

ゲープが思わず見つめ返した男は、ゲープの頬を撫でながら、照れたように何度か瞬きする。

「や、なんか、お前の口見てたら……」

デミアの指が、自分の唇の上を優しくなぞった。中に入りたそうに、デミアの指がゲープの唇の隙間で動き、ゲープは見開いていた目をさらに大きく開く。

「……それって、つまり、アレか?」

自分の予想が外れることを祈ってでもいるのか、顰め面に近いほど疑い深い顔になったゲープを、照れくさそうにしたデミアが笑う。

「……それで、アレなものが何かはわかんねぇけど、そう、それだ。なっ、ゲープ。してくんねぇ?」

 

ゲープは、手に持っていたパンを静かにテーブルに置いた。

大きくため息を吐き出し、目の前の浮かれた男を睨むように見る。

思い切り嫌そうな顔をしたゲープに、デミアは、慌てて自分の要求を撤回する。

「そ、そうだよな。ゲープしたことねぇし、夕食の最中だってのに、こんなこといい出した俺がアホだった」

そして、機嫌を取るように、自分のスープから肉を掬い上げ、ゲープの口元まで運ぶ。

「調子に乗りすぎたな。悪かったよ。な、これ食えよ。機嫌直してくれって」

スプーンの先で、ゲープの唇をつんと突くと、ゲープは口を開けた。スプーンを咥え、もぐもぐと動く口元にデミアの目尻を赤くした。

「……お前の顔さ、口が動いてると、結構色っぽいんだよ。だから、ちょっと、夢語っちまった」

けれど、ゲープは、口の中のものを租借し終えると、静かに、わかったと言った。

その発言には、もうすっかりゲープにフェラして貰いたいという要求を諦めていたデミアの方が慌てた。

「は? 何がわかったんだ? ゲープ?」

「お前のチンポを、咥えてやるって言ったんだ。デミア」

 

ゲープは、デミアの部屋に転がり込むことになった時点で、一つデミアに約束させた。

『全部の女と手を切れ』

尻の座りの悪いデミアは、短いスパンで、GFがコロコロと変わった。女性にとってデミアは付き合ってもいいようなハンサムに違いなく、別れたと聞いても、知らないうちに次と付き合っている。

ゲープは、まだ、デミアの気持ちを正面から受けとめるつもりにはなれなかったが、それほどの時間を待たず妻と離婚することが決定している今、自分とセックスする関係にあるデミアが他人と深い関係をもつことを許すつもりはなかった。

デミアはなんだか嬉しそうな顔をして、簡単にゲープの条件を受け入れたが、そう言った以上、ゲープは、デミアが女性相手に、果たしてきた欲求を、自分が叶えてやらなければならないことになるのだというも、実は覚悟していた。

いつか、デミアが言い出すだろうとは思っていたのだ。

大分長い間、デミアはゲープに猶予を与えた。

 

まるで嫌なことは、さっさと済ませるに限るといわんばかりに、ゲープはまだ後少しを皿に残したまま、席を立つ。

「デミア」

むっとしたまま手を伸ばされて、席を立つことを要求されたデミアは、思わずおどおどとその手を取った。

「あ、ありがとう。ゲープ。……いいのか?」

 

 

ゲープは、自信家なところがあると、デミアは思っていた。

いや、GSG-9のメンバーになるような人間は、すべからく皆自信家であり、自分は何でもこなせると、初めてのことであろうと、すぐに上手くやることが出来ると己を信じているものが殆どで、またそう思えるだけの才能や能力に恵まれているからこそ、精鋭と誇られる部隊の隊員でいられるのだ。

部隊内では、ゲープなど、慎ましい性格をしている方だ。

けれども、やはり、ゲープも、自分が何かに下手であるなどということは、思いもつかないらしい。

 

ベッドに座るように促され、恋人の手でジッパーを下げられたデミアは、あまりの幸せに、夢見心地だった。

デミアの足の間に跪いたゲープが、下ろした下着の中から出てきた勃起に、むっと唇を突き出すようにして顔を顰めていたとしても、デミアの胸は、ゲープにフェラしてもらえるのだという興奮のあまり、ドキドキと激しく打っていた。

ゲープは、デミアと寝はするのだ。

ただし、そのセックスは、デミアの一方的な奉仕が殆どで、指で慣らすことからじっくりと攻め続けてきた尻のよさに目覚め気味のゲープは、アナルを使うセックスはさせてくれるが、デミアのものにはなかなか触ってくれない。

口を使わせてくれたことは一度もない。

ゲープは、むっと顰められ突き出す形になっている唇をぎゅっと、ペニスの先に押し付けた。

乱暴なやり方だが、多分キスだ。最初にいつもデミアはそうする。

それだけで、デミアのものは、尿道口に先走り盛り上がった。唇が先走りに濡れて、ますますゲープは嫌そうな顔だ。

しかし、ゲープの唇を自分のカウパーで汚したのかと思うと、デミアにはもう、落ち着いて座っていられないほどの興奮だ。

ベッドの上でデミアが身じろぎすると、ゲープが太腿に両手をかけ押さえつけてきた。勢い良く大きく口を開くと、がぶりと咥える。

「!!」

「……ん?」

デミアのペニスを口に頬張ったまま見上げてくるゲープの顔は絶品だったが、歯の当ったペニスの痛みにうめき声が漏れそうだった。思わず口を覆ったデミアを、どう誤解したのか、咥えたままうむうむと頷いたゲープは、唇を使ってペニスを扱き出す。

その時に、歯が当たらないようにする配慮はゲープにはない。ゲープが頭を後ろに引けば、歯がペニスを削っていく。

ちゅうちゅう吸い上げてくれるのは嬉しいが、ゲープは口内の柔らかな粘膜だけでそれを行うのではなく、歯も一緒だった。

もしかしたら、ゲープは甘噛みしてくれているつもりかもしれないが、それよりははるかに強い力で噛まれ、デミアは、ぎゃっとゲープの顔を掴んだ。

「……ゲ、ゲープ、もう少し優しく……」

デミアがお願いすれば、ケチをつけられたとでも思ったのか、途端にゲープは機嫌の悪い顔になる。

しかし、大事なそこが傷まみれになっては、これからのセックスライフが大変なことになるデミアは、柔らかなゲープの頬を撫でながら、一生懸命お願いする。

「俺、もう少しソフトなのが好みで」

軟弱者めとでも思ったのか、ゲープは半眼になってデミアを見上げてきた。

しかし、もともとの力配分を知らないゲープに、手加減されたところで、初心者は加減を知らないから、まだゲープのフェラチオは、十分恐い。

デミアは、何度もゲープのものをフェラしてやったことがあるし、それ以外にだって、ゲープが今までこれをしてもらった経験がないとは思えない。

それなのに、されるのとするのは、全く別物なのか、ゲープのフェラはあまりにも不器用だった。

しかも、本人が全くそれを自覚していないというのが、大問題だ。

口に含まずとも、ペロペロと舐めてくれるだけでも、デミアには十分満足だったというのに、ビギナーのくせにゲープは思い切り喉の奥まで飲み込もうとし、咽頭を突かれて、げぇっと吐きそうになっている。

「む、無理すんなって!」

きゅうっと竦めた肩を慌ててデミアが撫でれば、嘔吐を堪え、目、一杯に涙を浮かべながら、失敗に納得いかないゲープは再チャレンジだ。

口元を拭うと、ゲープはまた深くデミアのものを飲み込み、途端に肌を鳥肌にしてゲープの喉は、ゲェっと音を立て締まった。苦しかったらしく、ゲープは、デミアのものに歯を立てる。

「ひっ!!」

それは、デミアもちょっと涙目になってしまうほどの痛さだったが、デミアは自分の痛みよりも先にゲープを優先させた。吐き気を堪えながら、まだ吸い付いている顔を掴んで無理やりペニスを吐き出させる。

「ゲープ、大丈夫か!?」

ゲープはまだ気持ちの悪そうな顔だ。しかし、やると決めたチーム50の隊長は大変男らしく、こんなことでやめたりはしなかった。

涙で睫を濡らしながらも、ゲープは健気にデミアに笑顔を見せる。

「デミア、平気だ。お前は、楽しんでいればいい」

その、楽しませること自体、ゲープは出来ていないのだったが、初めてだから、ちょっと上手くいかないが、すぐ上達するに決まっていると思い込んでいるゲープは、痛みのため、少し小さくなってしまったデミアのものにも、(たかが吐きそうになっただけで、こいつって、ほんと俺のこと心配しすぎだ)と、心温まる誤解中だ。

幸せな誤解は、仕方なくやっていたゲープに、デミアに対する愛情を湧かせたらしく、手でのサービスまでしてやる気になったゲープは、ぎゅっと力強くペニスを握った。

そして、まるで歯磨きチューブの残りでも絞り出すように力を込めてペニスを扱き上げる。

チーム50の隊長は、またペニスの先をぱくんと口の中に咥え込んだ。敏感なペニスの先端を、歯が掠めていく。

 

「痛いくらいでも、いいんだろ。ゲープ?」

射精寸前のペニスを持て余し、デミアの頭をむっちりとした太腿で挟んで、フェラの続きをせがむゲープのペニスに、デミアは軽く歯を立ててやったことがある。しかし、勿論、デミアは、加減していた。その刺激に足の指をきゅっと丸めるほど感じたゲープがいったほどだ。

その時のことをゲープは誤解していて、こんなに乱暴なフェラをするのだろうか。いや、いつも、デミアがするフェラは、とにかく優しく舐め続け、時間をたっぷり使ってゲープを気持ちよくしてやるものだ。ゲープはただ単におそろしくフェラが下手なのだ。

「……無理しなくても、いいぞ、ゲープ?」

無理しているのは、額に悪い汗が噴き出しているデミアのほうかもしれなかった。ペニスに何かあるたび、ビクンと鍛えられた腹の筋肉が強張り引きつっていた。さっきよりデミアのものが小さくなって咥えやすくなったことで、行動の幅が自由になり、なんだか少し上達した気分のゲープは、ちゅうううううぅっと、力強くデミアのペニスを吸い上げたりしており、痛みに、デミアの視界は、ちょっぴり涙でにじんでいる。

なのに、こんなに奉仕してやってるのに、なんでお前はまだいかないんだ?と、急きたてるような色を浮かべたゲープの目がデミアを見上げ、責める。

その望みを叶えるのは、さすがのデミアにも無理だった。

自分の下生えに金の頭を埋めて、ゲープがペニスを頬張り、頬を膨らませたりへこませたりする様子は、何度見てもデミアに視覚的興奮を与えるのだが、いかんせん、ゲープが強くペニスを握りすぎていた。G―9チームの隊長の握力で握られるそれは、もしかしたら、しばらくは使用できないかもしれないダメージだ。

しかし、ゲープは、不満をさらに色濃くする。

デミアがいかないのは、刺激が足りないせいかとでも思ったのか、様々な暴虐をデミアに加え始め、デミアは、もう、このまま耐えることなどできなかった。

 

「ゲ、ゲープ。俺だけなんて悪いからさ、俺にも舐めさせてくれよ!」

引きつった顔のデミアがそう言うと、なかなか射精しないペニスに、飽きてきていたゲープは、ちょっと心そそられたようだ。ちらりと、目がベッドの上を見る。しかし。

「お前、俺に咥えて欲しかったんだろ? デミア」

変なところで、チーム50の隊長は義理堅く、またデミアのペニスを咥えるために口を開いた。

デミアは慌てた。デミアを恐怖に落としいれる、ゲープの白い歯が、ちかりと光っている。

「あ、あのさ、ゲープ。それなら、二人でしよう!」

もともとセックスの中に自分の快感に夢中になりがちなゲープは、デミアがよくしてやれば、ペニスを咥えたままでなどいられない。

デミアが何を提案したのか、ゲープは気付いたようで、部下を呆れた目でみつめる。

「………………。」

「なっ、よくしてやるから、ゲープ!」

けれど、舐めてもらうことの好きなゲープは、表情に受け入れそうな余地があった。

デミアは懸命に説得する。

「してもらったら、俺も、ゲープのしたくなっちまって」

「よく次ぎ次、そういういやらしいことばかり思いつくなデミア」

 

ゲープの白い股の間に起こした顔を突っ込むようにして、ペニスを舐めるデミアは、たっぷりとした尻の肉をつかんで広げた場所にある窄みに、くちゅくちゅと指を埋めながら、やっと幸せを感じていた。

デミアの上に互い違いになるようにして覆いかぶさっているゲープは、ペニスを吸われながら、尻を指で弄られることで感じてしまい、もうデミアのものをフェラすることもできなくて、尻だけを突き出したかなりいやらしいポーズで太腿に頬を押し付け、はぁはぁと息を吐き出している。

ありがたいことに、デミアのペニスはあんな目に合わされはしたが、ぴりぴりとした痛みはあるもののマックスまで勃起することが出来、ゲープの口が吐き出す熱い息を吐きかけられることに、興奮していた。

デミアは、自分の顔を跨ぐゲープの股の間で、熱心に舌を動かし、ペニスだけでなく、指を入れた穴の周りも舐めてやる。

「んっ、っんん、ん!」

指をずぶずぶと埋め、中を掻いてやれば、むずかるような声をゲープがあげた。乗っかる体は、しっとりと汗をかいている。指を動かせば、はぅっとくねる背中が、汗に濡れて艶かしく光っている。

デミアは、ふっくらとした先端の丸みにある窪みから、先走りをぽたぽたと零すペニスをわざと無視してやって、柔らかな太腿の付け根を舐めて、もういきたそうなゲープを焦らしたりしながら、柔らかく解れた尻の中をぐちゃぐちゃとかき回す。

中は、ぐちゅぐちゅと熱く濡れて、デミアが指を深くするたび、きゅっと強く締めてきた。

「ん、っは、は……っぅん」

デミアの顔を自分から跨ぐ刺激的なポーズは、デミアを興奮させていただけでなく、そんなことは初めてのゲープをも興奮させていた。

デミアが、ドリルのように早く指を動かし、中を立て続けに掘ってやれば、いつもなら、まだ耐えるだろうところで、ゲープの腰がビクビクと揺れた。

柔らかな白い下腹部にぎゅっと力が入る。

ふっくらとした腹がへこむ。

ゲープはデミアの太腿に額を押し付け、キスするように唇を押し当てながら、体に力を入れる。

ビクリと震えたゲープの体が固まる。

「イク、……イクっ! デミアっ!」

油断していたデミアは、ゲープの尻を弄りながら、揺れるかわいらしい二つのボールを弄って遊んでおり、慌てて咥えてやろうと思った頃には遅くて、デミアの顔は、ゲープのペニスから放たれたもので、べっとりと汚れた。

顔を真っ赤にしたチーム50の隊長は、満足の様子で、はぁはぁと息を喘がせている。

 

 

「はーーー。……よかった」

 

ゲープが長い息を吐き出す。

 

 

 

口内射精どころか、ゲープの中に入れることも適わなかったデミアは、暑いとベッドで寝転がるゲープのためにアイスを運んでいた。

その前に、デミアは、汚された顔を洗うついでに、自分のものの状態を確かめようと、バスルームでちょっとペニスを握ってみたのだ。

 

ずきんとそれはかなり痛み、みるみるうちに萎れていった。

これでは、挿入したところで、締め付けのいいゲープの尻相手では、喜ばすことは無理で、早々にゲープだけがいってくれたのは、かえって良かったのかもしれないと、デミアは、自分がいったら、ゴロゴロしだして、もうしたくなさそうだったゲープを思い、ちょっとほっとした。

だが、チーム50の隊長はいきなり気を変えることがあり、特に今回は、せっかくフェラしてやったのに、デミアがいかなかったという事態に納得しかねているようなので、これ以上何かされて、もっと酷い事態を引き起こさないため、3番隊員はさっさとパンツを履く。

 

「ほら、ゲープ。あーんって口開けろよ」

アイスのスプーンを口元に運べば、ゲープは口を開く。

もぐもぐと幸せそうに動く口元はとてもかわいらしい。

 

「ほら、もう一回、あーん」

スプーンに残った甘いアイスを求めて、ぺろりと舐めていった舌の動きは、とても魅惑的だ。

 

END

 

こぶ茶で遊んでくださった皆様に、愛と感謝をこめてv