「お前には節操がない」

「そういうけど、ゲープ……」

「お前には、結婚を決めた相手がいるって言ってたじゃないか。……あー、……たしか、ザビーネだったか? まぁ、名前はいい、それより、そんな状態のお前が、フレディと、ただならぬ関係にあるってどういうことだってことだ!」

「いや、だから、ただならぬとか、そういう捉え方はやめてくれって……」

「じゃぁ、どう言えっていうんだ!」

「だって、そのコニーがいなくなって、俺たちのチームが4人だけになっただろ? でも、ゲープ、あんたとデミアは、その、つまり、はっきりいえば、……べったりだろ? ……フレディは困ってたし」

「相談になら俺がのった」

「ああ、うん、聞いたよ。フレディによれば、ゲープがしげしげ眺めた後、ずかずか立ち入って無理やり相談にのってくれたって」

「あいつ……」

「ゲープは、親身になってくれたんだろうけど、ほら、まぁ、つっこまれたくない話ってあるだろ?」

「……無修正ヌードの雑誌を目の前に開いて、みんなでエロ話に盛り上がってるロッカールームで、勃たないことにか? 心配したら悪いのか? あのときはみんなだって、お前だって勃ってたろ」

「……ゲープ、なんで?」

「そんな目で見るな! たまたまだ。デミアが勃たせてたら、握りつぶしてやるって思って、たまたま目に入ったんだ!」

「で、その目に入った中に、フレディがいて、だからゲープは強引に相談にのってやろうとしたんだろうけど」

「余計なことだったと言いたいのか?」

「なんていうか……、結構デリケートな問題というか、任務もきついし、時々勃たない時があっても、フレディはあまり気にしなかったんだ。っていうか、本当は、気にしないようにしてたってことなんだろうけど、……でも、ゲープが言ったから」

「やっぱり俺が悪かったって言いたいんだな、フランク?」

「……いや、あの、……ゲープ、そんなに怒るなよ。あんたさ、すっげぇ、大げさに力づけて、その上、その、言ったんだろ?」

「なんだよ。力づけちゃダメなのか?」

「フレディは、気付かれたのもショックだったみたいだし、その上、やたらと大丈夫だと繰り返されて、反対に心配になったみたいで、……それから、その、さっきも言ったけど、あんた、……えっと、その……、前立腺についての経験談を持ち出してフレディに助言したろ?」

「……タイガー、あいつ、なんでもしゃべりやがるな」

「いや、だから、フレディもかなり真剣に悩みこんでたんだって。……でも、相談しようにもゲープは言ったらそれっきりだったし、下手にデミアに相談を持ちかけようものなら、どんな誤解を受けて理不尽な目にあわされるかしれたもんじゃないし、だから、迷った末に俺のとこに話にきたんだろうけど……」

「デミアに言うと、どうして理不尽な目にあわされるんだ?」

「はぁ? ゲープ、あんた絡みの下っぽい話が、デミアに冗談で済むと思ってるのか? 違う。問題はそこじゃなく」

「デミアがなんかしてるのか? あいつ、なにしてるんだ?」

「何もしてないって。だから、デミアと複雑にもめるのなんて御免だから、俺達は誰も、あんた絡みの下っぽい話をデミアに持ち込まないし、だから、デミアは、なにもしないんだって。もう、いい加減、このデミアのことから離れてくれ。フレディのことだって。あんたが、変なことフレディに吹き込んだ挙句、放り出すもんだから、あいつ、一人で結構悩み込んだみたいで、……で、意を決して、俺のとこに話にきたんだけど、……、あっ、言っとくけどな、それなりに俺にも葛藤があったんだぞ? なんたって、相手は男だしな。男の尻に指を突っ込むんだしな。でも、情けない顔してフレディの奴、沈み込んでるし、俺には勃たない奴を治してやれるような知識はないし、……勃たなかった経験のあるゲープが勃ったっていうんなら、試してみる価値があるんじゃないかって」

「フレディがしてくれって頼んだのか?」

「いや? いざとなるとあいつ、尻ごみしだして、でも、他の解決法があるわけじゃないし、指入れるだけなんだし、とりあえずやってみようって俺が言って」

「……、ああ、……それで?」

「最初はなかなかうまくいかなくて、フレディはぎゃぁぎゃぁわめくし、こっちも尻の穴に指突っ込んで、真剣な顔しながら、ここか? こっちか? とか、尋ねたりとか、結構、何やってるんだって、情けない感じだったんだけど、…………ゲープ、アレ、すげぇな」

「、…………、……だろ?」

「あんたがその自信ありげな顔で断言したくなったってのもわかったぜ。ほんの一瞬ヒットしただけで、完勃ちでさ! フレディ、あまりのことにびびっちゃって、腰がひけて、すげぇ、かわいくってさ」

「……かわいいって言ったか?……だから、お前ら出来上がったのか?」

「だからぁ……、俺たちはできてなんてないって。ゲープ、変な誤解するなって。一回やったからって、治るものじゃないだろ? 確かにその時は勃ったけど、それからもあんまりフレディのの調子が良くなくて、その後も何回かチャレンジしてみたんだよ。で、その過程で、ゲープのが調子良くなったのは、もしかしたら、指じゃないものでやってるせいなんじゃないかって話になって、ほら、押す力加減とか、そういうのに微妙な差があるのかもしれないだろ?」

「ひとんちの布団の中の事を想像するな! ……それを言い出したのは、どっちだ?」

「うん? 俺だけど、……で、それでやったんだけど、なんか、微妙なチャレンジに挑戦してる割には、結果が今一つというか、……どうなんだ? 4、5回じゃダメなのか? 10回超えると、はっきりと違いが実感できるとか、そんな感じなのか?」

「……しらん」

「ゲープ、助言するなら、もっと具体的に……」

「……フランク、お前は、だから、フレディに突っ込んだりしてるって言うわけか? お前、本当はフレディのことが好きなんじゃないのか?」

「いや、フレディのことは仲間だし、好きだけど、……違うんだって、ゲープ。ゲープが誤解するそういうんじゃなくて、人助けっていうか、治療、治療のために、俺は協力してるだけで」

 

あまりにまじめな顔で言うフランクに、ゲープは枕に向かって大きくため息を吐きだした。そして、首をねじり見上げた。体の大きなフランクは、ベッドの端に少し肩を丸めるようにして腰かけている。

ゲープは睨みつける。

「……やっぱり、お前のとこなんてくるんじゃなかった。お前は、もともと、両方いける素質があったんだ」

意識しなくとも、もう一度ため息は吐き出される。

「なんでだよ。違うって言ってるだろ。それに、夕べのことだって、ゲープがデミアと揉めて、転がり込んだ挙句、飲んで管巻き出したんじゃないか!」

「だからって!」

見上げる位置にあるフランクの目は、怒鳴りつければ、情けない色を浮かべたが、それでも自分の意見の言えぬ男ではなし、小さな声で反論してくる。

「あんた、自分がどんだけ情けない顔して、デミアが浮気した。浮気したって、繰り返してたのか、わかってるか?」

「だから、お前は、こんな結果をすんなり受け入れろっていうのか? 今は、朝だ。二日酔いで頭はガンガンしてるが、今日も気持ち良く朝日が差し込むような天気だ。なのに、ベッドに男二人で全裸だ! ほとんど記憶にないが、……どうしたら、こうなる?」

怒鳴りながらゲープは、二日酔い以外の頭痛も感じていた。やはり、フランクは、小さな声で言い返す。

「腹いせに、やらせろって、馬乗りになったの、ゲープ、あんたで……」

「嫌がればいいだろ!」

実は、記憶はしっかりあるのだ。

家主だというのに布団から追い出され、パンツ一枚の姿でうなだれるフランクのせいだけにしてしまいたいのに、しっかりゲープは覚えている。最悪なことに、力強いインサートを繰り返され、現在違和感に悩まされている部分に、突っ込まれるのがよかった記憶まである。

「大体、お前、本気で嫌がらなかったろ? ちょっと押し倒したら、簡単に転がりやがった。脱がせたら、ボタンが千切れるとかほざいて、自分で外しただろ!」

「なんだよ。やっぱり、ちゃんと覚えてるんじゃないか。……ほっとしたよ。俺のせいにされるのかと思った」

フランクは、安心したのかはにかむように笑った。

その上、フランクは心配そうな顔をする。

「覚えてるんならさ、なっ、ゲープ。夕べも何回も言ったけど、デミアが浮気したなんて絶対にゲープの誤解だし、夕べのことなら、俺、黙っててやるから、デミアんとこ戻れよ。なんなら、電話してやろうか?」

フランクは、本気だ。パンツ一枚で、携帯に手を伸ばそうとしている。

そういう奴だということは、ゲープも嫌というほどよく知っている。

ゲープは、枕に向かって、大きくため息を吐きだした。ヌードの体が、シーツの下で頼りない。

 

「……わかった。フランク。お前は、フレディとも俺とも寝たが、どちらとも本気になる心配は全くなくて、こういうのは、不慮の事故みたいなもんで、いや、お前にとっては、人助けのつもりか?……つまり、お前は迷惑にも、とても面倒見が……いいんだな……」

 

 

気遣いの人