純真無垢な欲望
部隊内で最も見栄えのいいコニー指名の外遊同行という特別任務に、おまけ同然で随行させられたデミアが警察局の建物に戻ったのは、二週間に後二日足らないだけとなってからだ。上層部にお礼の言葉を述べる大臣の私設秘書が、やっとアンホフのオフィスから立ち去り、顔を顰めながらデミアはネクタイを緩める。
「もう嫌だ。くそっ、疲れるばっかりだったぜ」
まだ後ろで両手を組み立っているコニーは、咎めるような視線のアンホフを前にしても、平気でYシャツのボタンを緩めるデミアにわざとらしくすまし顔で微笑んでくる。
「行儀が学べただろう?」
「ぬかせ。お前のピンナップ、国外にもばら撒かれてるのか? 機嫌を悪くした大臣の孫娘をなだめるのにどれだけ俺が苦労してたと」
「奥様が、お前の子守ぶりに感心してたぞ? お前、ここ、クビになったら、ナニーとして雇ってもらったらどうだ?」
5歳の娘の機嫌に振り回され続けた今回の任務を、恥じることなく上司の前で晒すチーム50の精鋭を前に、アンホフが苦い顔を隠さずにいると、ドアを叩く音がした。
「はいります」
黒いツナギ姿のゲープが、報告書を片手にドアを開ける。デミアの目が輝く。
「ゲープ!」
思いもかけぬ声を聞いて、顔を上げたゲープは、嬉しそうに笑うデミアに小さく頷いて見せた。しかし、デミアは、ゲープのその顔に、驚きが隠せない。
機嫌悪く顔をむっつりとさせているゲープは、表情のせいもあり顔をむくませているようにも見える。
伏せ気味の目は、ねとりと苛立ちを浮かべており、どすどすと歩く行動そのものにも機嫌の悪さがありありと出ていた。
ゲープは、久しぶりに会うチームの二人の前を通りぬけ、アンホフに今日の報告書を突き出す。
「これ、渡しておきます。チーム40の隊員が医務室に運び込まれた経緯をまとめておきました」
強張ったゲープの顔が固い。しかし、デミアが驚きのあまり目を見開いている横では、コニーがおやおやと隊長の様子を面白がっている。
なぜなら、どうやらデミア不在の間に、また不精な生活を続けて口ひげを濃くしているゲープは、ひとめ見ただけで欲求不満に陥っているのだとわかる様子をしていた。
吐き出すことのできなかった欲求溜め込み、ゲープの雰囲気は攻撃的だ。しかし、ツナギから僅かに見える白くやわらかそうな肌の首元からは、何か匂い立つものでも出ているのではないかと思わせるほど、むんとした色気が溢れている。据わった目元だって目付きが悪いだけだというのに、やたらと色っぽく、ゲープはいわゆるフェロモン垂れ流し状態だった。同じだけの期間禁欲させられたデミアには、目の毒としかいいようがない。
ゲープの報告書に目を通していたアンホフが顔を上げた。
「フランクはどうなった?」
「やすませています。……こいつらは、もう、終わりですか?」
「ああ、今日はもう上がってもらう」
アンホフの許可に、ゲープはひたりと自分のチームの隊員へと視線を据えた。ご苦労だったと短く言い、デミアに車の鍵を放って寄越す。
「帰りの足がないだろ。車で待ってろ」
ニヤつく口元を品良く手で隠し、コニーがゲープに問う。
「ゲープ。俺の4番隊員は無事だろうな? フランクがどうしたって?」
ゲープはコニーに視線を向けた。
突き出された口は、ただ機嫌の悪い様子でしかないのに、いつもとはやはり違う。薄い唇が色っぽいのだ。今すぐにでも乱暴なキスをしだしそうな、獰猛さを漂わせている。
からかうように尋ねてはいても、チームのサブリーダーが、不在の間に起きたことを問うている以上、ゲープは答える。
「フランクはのぼせて鼻血が出ただけだ。カスパーが付き添っている」
ゲープはただ見ているだけだろうが、不満げな目付きは、まるでコニーを睨み付けているように見える。しかし、その目に攻撃的な色気がちらつく。
「お前、あいつらに何をさせたんだ? チーム40の隊員が医務室送りってなんだよ」
「熱中症だ」
目を反らしたゲープは、顎をしゃくってコニーをオフィスから連れ出した。
「心配なら、直接見に来い。デミア、すぐ着替えてくるから、車で待ってろ」
あからさまにセクシャルなフェロモンを垂れ流しているというのに、ゲープ本人はそのことに気付いていないようだ。ゲープが歩けば、無自覚だろうがすれ違う同僚たちが、それにやられてゲープの肩を叩いたり、腰を叩いていったりしていた。
そのいちいちに、鬱陶しそうにむっと顔を顰めるゲープの隣を歩くコニーは、確実にそんなゲープの様子を面白がっている。
「待たせたな」
運転席に座って待っていたデミアは、ドアを開けて乗り込んできた色気の固まりに、どうしようかと目をぐるりと回した。やはり、ゲープは体から何か出しているとしか思えない。
それはゲープをも息苦しくさせているのだろう。
ゲープはむっと顔を顰めている。
しかし、警察局の駐車場では、欲求不満に陥っている恋人に、何をしてやるわけにもいかず、デミアは、とりあえず車を出す。
「フランクが何だって?」
「今日は一日、装備一式を着用したまま訓練をしていたせいで、のぼせて鼻血を出したんだ」
「お前の好きな、垂直棒のぼり、50回もメニューに入ってた?」
「排水パイプを伝って登ることができたら、梯子がいらない」
ゲープの言うことはもっともなのだが、今日の気温はかなり高かった。
現場どおり、ヘルメットまで被らされてハードな訓練をさせられ、熱中症にかかったというチーム40の隊員は鍛え方が足りないといえるかもしれないが、それでも、ゲープに八つ当たられたことは間違いなく、不幸だったなと同情心が湧く。
一度目の帰宅ラッシュ時間を僅かに遅れて警察局を出た車は、たまたま周りに一台も車なしに、赤信号で止まった。
すばやく周りをチェックし、シートベルトを外したゲープがデミアに覆いかぶさる。
ゲープの項からは、嗅ぎ慣れたシャワールームの石鹸の匂いがするだけだというのに、デミアは確かに他の、もっとセクシーで獰猛なものの匂いを嗅いだ気がした。
こんな場所でキスしてくるゲープに、デミアは一瞬、戸惑ったが、ペロリと薄い唇を舐めてやった。
目を開いて、じっと見つめてくるゲープの顔はやはり少しむくんでいるようだ。それなのに奮いつきたくなるほど色っぽくて、デミアは口角を上げて微笑んだ。
「青になったんだが、進んでもいいか?」
二週間に二日満たない、それだけの期間で、こんなゲープが見られるのなら、また、コニーに同行するのも悪くないと、ドアに押し付けられたままキスを強要されているデミアは思った。
出国前も、政府職員との煩わしい折衝に振り回され、それもあわせれば、ゲープと最後にセックスしたのは、確かに二週間以上も前だ。
ゲープはデミアの痛みを全く考慮せず、デミアの背をドアに押し付けたまま、かぶりついている。
懸命に舌を動かす、ゲープの瞑った瞼が艶かしくて、デミアはドアに押し付けられた後頭部の痛みを我慢していた。
けれどもそれだけではゲープのお気に召さなかったようだ。
「くそっ!」
デミアの手が、自分を抱かないのに苛立ったゲープが、だらりと伸びたままの腕を掴む。そのまま腰に当て、まだ気に入らない様子で、慌てたように自分のTシャツを捲り、直接肌に触れさせる。
吸い付くようなゲープ特有の滑らかな肌だ。
こんな風にゲープが自ら盛ってくることは珍しく、思わぬ熱烈な歓迎を受けたデミアは、驚きもあってゲープのペースにあわせるだけになっていたが、濡れた目できつく睨み付けてきた恋人に、自分からぐいっとゲープの腰を引き寄せた。
さっきから何度も唇を舐めて湿らさなければならないほど、はぁはぁと息を吐き出しているゲープのジーンズは、前を硬くして、デミアを攻撃してくる。
ごりごりと硬いそこに、自分のものを擦り付けながらキスをするデミアは、せめてこんな玄関の床にゲープを転がすのは避けたくて、狭い廊下の先にあるラグマットまでの距離を確かめた。
しかし、そこは、デミア不在の間を、どうやらだらしなく過ごしたゲープのせいで、皿や、マグカップが置かれ、新聞も数紙、開かれたまま床に放ってある。
それでも、外を足音が通る玄関でやるよりは数段マシだ。
「ゲープ。後ろに下がるぞ」
声をかけ、腰を掴む手に力を込めたデミアは、同じような身長なだけに、辛うじて足の先だけが床から浮いただけのゲープ体を抱き、廊下を奥へと進む。
ゲープは、まだデミアにキスをやめようとしない。進行方向を気にするデミアの顔を挟み動けなくして、噛み付く気なのかと思うようなやり方で激しいキスを続ける。
抱き上げてやるのもやっとだという、ずしりとした体重のくせに、無茶をしてデミアの体をよじ登り、足を腰に絡ませたゲープは、デミアに覆いかぶさってきた。
ゲープが目尻を噛み、そこを舐められたデミアは、眼球まで、舌で舐められそうになり、顔を顰める。
興奮したゲープの顔が真っ赤だ。あまりにも動物的なゲープに、デミアは煽られながらも、くすりと笑う。
「だから、ゲープ。言ったろ? あの時、テレホンセックスしようって」
ゲープはデミアの腰に回した足にぐっつ力を入れ締め上げ、まだネクタイの絡みつく、デミアの喉を噛んできた。
男相手だと思っているせいか、ゲープは手加減を忘れていて、噛んできた一瞬、ひやりとさせられはしたが、デミアは盛るゲープにニヤニヤ顔がかくせない。興奮のあまり、ゲープは泣き出すのではないかと思うほど顔を歪ませている。睨み付けてきているかのようなきつい目付きのくせに、濡れて腫れた目が卑猥なほどに色っぽい。
「……お前の携帯は、いつだって通話内容が盗聴できる状態だったんだ。そんなことできるわけない」
「でも、何かなきゃ、随行警察官の携帯なんて盗聴されない」
「やってる最中に、何かが起きないとは限らないだろ!」
不在の間に同居者が散らかし放題にしたままの床へと、火照る体を横たえたデミアは自分の首からネクタイを毟り取る。
「それは、本当はやりたかったって言ってるな、ゲープ?」
ゲープもせっかちに自分のベルトを引き抜いていた。
「あんなに俺のことアホ呼ばわりしたくせに……」
デミアは、突き出されている不満げな唇にチュっとキスする。ゲープの手が伸び、覆いかぶさる体を捕まえよとしたが、デミアはまだ堅苦しいYシャツだって脱ぎたい。
「電話でだって、俺はお前をいかせてやったぞ?」
Yシャツのボタンを外すデミアを待ちきれないように、興奮で顔を赤くしたゲープが裾を引っ張る。
「やめろって、ゲープ。破れる」
警告を無視し、デミアを引き寄せ、頭の後ろへと腕を回し抱き込んだゲープは、腰に足を絡め、しがみつくと、デミアの項の匂いでも嗅ぐようにそこへと顔を埋めた。
ぎゅっと強く抱きしめられ、デミアも強くゲープを抱き返す。
「……やっと会えた。ゲープ。すげぇ、あんたに会いたかった」
デミアは、ゲープの金の頭を抱き、額に愛しげなキスを何度もする。
しかし、ゲープは、顔を振ってそれを途中で拒み、デミアの項に顔を埋め直す。
「……俺はもう、お前が帰ってこなきゃいいと思ってた」
真摯な声に、デミアの目が見開かれた。
しかし、ゲープは腕に抱いた項に唇を押し当て、キスをし始める。過敏な様子で聞き耳を立てているデミアの耳へと頬を押し付け、ゲープは言う。
「食堂でメシ食ってる最中にまで、お前のことを思い出すなんて、……最悪だ」
ほっと、デミアの肩から力が抜ける。
「俺なんか、いつだってゲープのことばかり考えてるぞ」
「だから、お前は昇格できないんだ」
そう言う去年の最優秀隊員は、手を伸ばせる限り、床に転がるものを押しやる。皿の上に乗っていたフォークは床に転がり、マグカップは倒れた。
乱暴にスペースを確保したゲープは、腰を絡めたまま、デミアのスラックスの前を開け始め、デミアは、ゲープの額に手を乗せて、興奮に赤い目を見つめながら、耳元で囁いた。
「ゲープ、まず、おかえりじゃねぇの?」
笑っている3番隊員を、ぎろりと隊長は睨み上げた。
「悪かった。もうからかわない」
デミアは、ただいまと、独り言のように呟き、ゲープの顔にいくつもの軽いキスをした。羽織っていただけのYシャツを脱ぎ捨て、汗でゲープの体に張り付き始めているTシャツを脱がす。
「こっちにも、ただいま」
愛しげに、そう、またからかい、胸に吸い付いてきた3番隊員の頭をゲープは一つ殴ったが、それもデミアが舌を丸め乳首を包み込むようにして吸い上げ始めれば、自分の胸に押し付けるように抱くようになった。
胸の、ほんの小さな引っ掛かりにしかすぎないものを、しつこくデミアに開発されてきたゲープは、悔しいが乳首を吸い上げられてしまえば、ぎゅっとせつないような痺れを腰に感じてしまうのだ。
触れられる前から柔らかく立ち上がっていた乳首は、片方だけを吸われているだけだというのに、もう片方もきゅっと硬く立ち上がってしまっている。
心臓の音を激しく立てている盛り上がった胸へと顔を押し付けられているデミアは、口の中の小さな肉をちゅぱちゅぱと吸い上げてやりながら、もう片方にも手を伸ばした。
指先に挟んですり潰すように指を動かせば、目を瞑って快感を感受する恋人の口が声を漏らす。
「……ん、っ、……ん」
ジーンズの前の高ぶりを、ゲープは遠慮なくデミアに押し付け、腰を動かす。
デミアは手早くゲープをひっくり返した。
「っ!」
「まず、一回いかせてやる。パンツの中で漏らしたくないだろ」
「馬、鹿が!」
恥ずかしいことを言われ、ゲープは抵抗したが、デミアは、四つん這いにさせた腰からジーンズと下着を一度に引き摺り下ろした。
脱がされてしまえば、ゲープは、大人しくなる。裸にされた下肢は、頼りなさと羞恥をゲープに味あわせたが、それよりも脱がされたことで、先への興奮を煽られてしまっている。
デミアの前に晒された肉付きのいい白い尻は、ほんのりと汗で湿り、すばらしい色艶だった。
その背に覆いかぶさり、デミアはゲープの尻へとスラックスの前を痛いほど押し上げている高ぶりを擦り付ける。
デミアが握ったゲープのペニスは硬く、もうどろどろに濡れていた。
それを知ったデミアは、意地の悪い真似をして、ゲープの肩へと口付けながら、内腿を撫で下ろし、その膝に絡まる下着の状態を確かめる。
「もう、べたべただったか」
「お前っ!」
鋭く肘が突き出されたが、デミアは、ひょいと避ける。
「なっ、ゲープ。ちゃんと自分で抜いたか?」
大きな手で、興奮に硬いペニス包み込み、いやらしく粘つく先走りを全体に塗り広げる。
ゲープが睨んでいる。
「あんまり溜め込むと、体に悪いんだぞ。だから、ちゃんと、おもちゃだって置いていってやっただろ?」
「……一回やった。それ以上は、歯止めがきかなくなりそうで、やめた……」
丸みのある尻をデミアの股間に押し付けるようにしているゲープの告白は、軽くデミアの意識を飛ばせた。
「なっ、嘘!? ほんとか? 俺が押し付けてったあのオモチャ、お前、一回でも使ったのか?」
その姿を想像してしまったデミアの頭は、あまりのいやらしさにのぼせそうになっている。思わずデミアは、自分の鼻の下を触って確かめる。
「どれ、使ったんだ? くそっ、頼む、頼むから、今度俺の前でもやってみせてくれ!」
土下座でもしそうな勢いの恋人を、ゲープは冷たく睨みつけた。
恋人の機嫌を損ねてしまったデミアは、好きだ、好きだと繰り返しながら、ゲープの背中にキスをし、手の中のものを熱心に扱いた。
きゅっととゲープの腰に力が入る。捩られた腰にはかわいいえくぼができている。
ゲープがしきりに腰を捩る。
背中に汗がたまりだし、ゲープの体臭が匂いを強くした。
「……ァ、……っは……」
角度を上げて突き出された尻に高ぶったものを何度も擦られ、デミアも、早くゲープをいかせ、そこの熱く湿った粘膜で、自分のものを包んで欲しくなっていた。
デミアはゲープの耳を噛むようにして舐めながら、ペニスを握る手を素早く動かす。
漏れ出すもので、くちゅくちゅと水音がすごい。
「……んァ、……イイ」
肩を丸めるようにしたゲープの腰がガクガクと揺れる。
「イ、ク、……デミア、でる!……イクっ!!」
突き出した柔らかなラインの顎から汗を滴らせ、ゲープがビクン、ビクンと体を震わせた。
デミアの手の中で数度に渡り発射された、熱い白濁が指の間から溢れていく。
仰向けに寝転がり、まだ早い息を繰り返すゲープを見下ろしながら、デミアは遠ざけられていた新聞を引き寄せ、手を拭った。
まず、靴を脱がせ、ゲープの足に絡んでいたジーンズと下着を剥ぎ取り、靴下も脱がしてしまう。
そして、足の指を舐めた。
それは、デミアの癖だったが、大抵の人間は、足の指を舐められるなどという経験をしたことがなく、誰もが特別な至福感を感じるようだった。
これをされると、ゲープもうっとりと目を潤ませる。
短く切られた爪をデミアは舌で舐める。
しかし、股間で主張する勃起に先を急かされるデミアは、今日は早々に足を手放した。
もう皺だらけになってしまったスラックスを脱いでいると、ゲープがのろのろと起き上がる。
どうするのかと思えば、自分から四つん這いになって床に伏せた。
安定よく開かれた足に、むっちりと白い尻は、うすく赤い色に色づいた窄みまで、なんの秘密もなくデミアの目に晒される。
「煽んなって、ゲープ」
荒くなる鼻息を懸命に抑えながら、デミアは、ゲープににじり寄る。
「多分、その辺に……」
二日前の電話で、ゲープが今食べていると言っていた菓子の袋の側に落ちているジェルを、ゲープの目が教えた。
「なんで、こんなものがここにあるんだ」
「……お前の声、聞きながら、俺がどんな思いしてたかなんて、想像したこともないんだろ」
息を喘がせながら睨んでくるゲープは態度が悪いだけなのだが、デミアは今すぐにでも、この色気でとろとろになっているむっちりとした尻に自分のものを突っ込んで、串刺しにしてやりたかった。
なんてことを言うんだ!
もうあと一度、なにかゲープに告白されたら、突っ込む前にいってしまいそうなものをぶら下げたまま、デミアはジェルを取りに動いた。
普段ほどは優しく出来なかったが、ゲープの中をジェルまみれにし、解す。
二本突っ込まれた指をきゅ、きゅっと締め付けながら、ゲープはむずかるように腰を振っていた。
反らした背中から腰にかけてのラインがたまらなく艶かしい。
曲げた指で中を掻くようにして引き出してやれば、ゲープは柔らかく肉を乗せた肩甲骨をきゅっと寄せて、はっと短い息を吐き出しながら顎を突き出す。
そんな筋肉の動きのいちいちでまで、ゲープはデミアを誘惑した。
急きたてるように、丸みのある白い尻にきゅっと力を入れて中の指を締め付けてくるゲープに、デミアは、もう我慢ができない。
「悪ぃ。ちょっとつらいかも」
辛そうに片目を眇めたデミアのものは、もうマックスまで勃起し、血を集めたペニスは石のような硬さだった。
時々、後ろから覆いかぶさっては、それで陰嚢ごとペニスを突かれていたゲープは、どんなものを入れられるのかわかっていて、頷いた。
ジェルでべたべたと濡れた穴の表面に、硬いものをぐっと押し付けられる。
自分でも欲しがっているのが丸分かりの、あからさま過ぎて恥ずかしくなるような音だと思いながら、はぁーっと息を吐き出しゲープが体の力を抜いていくと、デミアが、ぐぐっと腰を突き出す。
切れそうなほど肉輪を広げ、潜り込んできたものは、奥に進むたび、ゲープを占領していき、下腹を重苦しさのある快感で疼かせた。
「ん、……んっ、んっ」
「ゲープ。悪ぃ。痛いな。けど、頼む、もう少し力を抜いてくれ」
焦ったようなデミアの声が、何度も何度汗で湿った頭の後ろにキスをし、ゲープは胸に溜めてしまっていた息を吐き出した。
力が抜けると、一旦止まっていたデミアのペニスが、また奥を目指して動き出す。
狭いところを、無理やり押しひろげながら進んでいく傘広のそれは、今度は止むことなく中を掘り進み、今ですら下腹を疼かせるゲープにもっと強い快感を予感させていた。
奥までたどり着いたものが、僅かに引かれ、それだけでゲープの喉はすすり泣くような音を立てた。
一杯に広げられたところが、恥知らずにも、ぎゅうぎゅうとデミアのペニスを締め上げている自覚がゲープにもある。
体の中がぱんぱんになるまで、デミアが詰め込まれているような感覚に悩まされ、ゲープは喘いだ。
腰を掴んだデミアが、ずるずるとペニスを引き抜く。
狭いそこの全てを張り出したデミアのもので抉っていかれ、快感のあまりゲープの目には涙が浮かんだ。
「……ぁ、……っァ……っぅん!……!」
デミアが焦った声を出す。
「やべっ」
肛門ぎりぎりまで強引に引き抜かれたものに出て行かれるのが辛くて、ゲープはぎゅっと尻を締めてデミアの行動を阻んだ。
「ちょっと待てって、ゲープ。すっげぇいきそう。いっちまいそうだから、ちょっと待っててくれ」
デミアは、情けなそうに尻からペニスを引き抜こうとしていた。
濡れた中を思い切り良くできる硬いものを取り上げられそうになって、ゲープはしゃにむに自分から尻を突き出す。
そのくらい、これが欲しかった。
「頼むから、ゲープ」
デミアは、困ったように眉を寄せる。
「……い、やだ」
「嫌だってったって、ゲープ……。我慢できねぇ、いきそうなんだ。……くそっ、お前だけ先にいかすなんて格好つけた真似するんじゃなかった」
奥歯を噛み締めたデミアは、額から汗を流しながら、むっちりした白い尻にたたきつけるようにして、腰を振った。
ごつごつと硬いものが、また抉るように淫道を何度も掘り拡げはじめ、じんっと腰から体全体に痺れるような快感の広がるゲープは身を捩りながら、もっととねだりがましく腰を振る。
「くっ、やっぱ、無理だ」
少しでも刺激を減らそうと、デミアがきつく腰を押さえつけるようにして動きを止めても、ゲープはまだ腰を揺すった。
小さな動きにすら、腰の奥が甘さで痺れ、ゲープは喉を反らせる。
「……っぁ、ぁ、……ん」
開いたままの口から、甘く漏れる声を、苦虫でも噛み潰したような顔をしながら、せつなく瞳を濡らして、デミアはみつめていた。
「悪ぃ。もう、……ほんとに、無理」
そう言うなり、デミアは、いきなり力強く何度も突き上げた。
突っ込まれ、ぎりぎりまで引き抜かれるものに、ゲープの尻の穴は、中の赤い粘膜まで晒している。
ぬちゃりとしたゼリーのヌメリで光るそこは、白い肌との対比で、視覚的にも、デミアを興奮させ追い詰める。
熱い中は、デミアをきつく締め付け、蠢いている。
歯を食いしばり、ゲープを突き上げながら、太腿の間で勃起しているものを扱くデミアは、辛うじて、軽い頂点へとゲープを追い上げることができた。
「……ンっ、アぁ!!」
ゲープが背を仰け反らせていき、きゅっと尻穴にきつくペニスを締め上げられるデミアは、やっと、ゲープの中へと弾を撃ち込む。
はぁはぁと息を荒げるデミアが体の力を抜き、ゲープの背に覆いかぶさると、すぐさま、ぴたぴたと頬を叩かれた。
下睫を涙で濡らし、溢れ出た唾液で唇まで汚したひどく淫らな顔のゲープが、緩くデミアに笑いかける。
「デミア、まだ、できるよな?」
「…………」
「……勿論」
十分溜め、デミアが焦らす間、睨むようだったゲープの目が緩まり、二人は笑いあった。
額をごつんと寄せたところまではかわいらしかったが、ゲープはすぐ熱の入ったキスをし始める。
「明日、カスパーと、フランクに昼飯を奢る」
ベッドでの最後の一回戦をし終え、満足の様子で、布団を被っていたゲープが突然言い出した。
思わず、デミアは笑う。
「ああ、それがいいな。是非、奢ってやれよ」
欲求不満が解消されたゲープは、自分がかわいい隊員に行ったしうちを反省するだけの冷静さを取り戻したようだ。
恥ずかしいのか、金色の頭を布団の中に潜り込ませたチーム50の隊長は、足癖悪くデミアを蹴ってくる。
「……お前のせいなんだからな。デミア、お前も半分出せ」
「いいぜ? ゲープが、俺の置いてったおもちゃ使うところを見せてくれるってなら」
ゲープの足はまた、デミアの足を蹴ったが、隊長と同じように布団に3番隊員の頭が潜り込むと、動きは止まった。
またキスの水音が聞こえてくる。
「いや、俺はいい。遠慮する」
翌日、あまりにも健やかで、足取りも軽い隊長に、昼飯を誘われたカスパーは首を横に振った。
昨日は、鼻血を出しながら情けなく肩を落としていたフランクは、既に誘いを受け入れていて、きょとんと目で、なんでだ?と、尋ねてくる。
「先に約束がある」
昨日までの欲求不満な様子を払拭し、ゲープは、明らかに満足するまでやったと分かる、匂い立つような色艶だ。しかも、思い切り、搾り取られたと思しきデミアは、疲れ顔をしている。
「気持ちだけ受け取っておく。悪いな。ゲープ」
こんな二人と一緒のテーブルに着き、周りから訳知り顔でニヤつかれるのなど、4番隊員は絶対に御免だった。
END
読んでくださってありがとうございました(>▽<)