いやだ。いやだ。いやだ。1.5
夜中を回っても、ゲープはまだ眠りにつくことができなかった。
不眠の原因となっている体の不調を訴えもせず、隣で眠る男のために、身じろぎもせず、ため息もつかず不眠に耐えているのは、全ては自分のせいだからだ。
熱をもったように尻の穴がずきずきと痛い。不適切な場所で、無理な格好でしたセックスのため、体、そのものも重だるい。そして、気分といえば、最悪だった。
隣で布団を被るデミアは、気疲れするばかりだった打ち合わせをしてきたゲープと違い、一日外での訓練で、もう、とうに眠り、うっすらと開いた口から寝息が洩れている。
最初、眠る時もまだ不機嫌だったゲープに気をつかい背中を向けて眠っていたデミアは、一度寝がえりを打った後は、ずっとゲープの方へと向いたままの姿勢だった。
それが、余計にゲープを寝かさない。
ひと月は思い出すたびため息が出そうな、自分でも無茶だったと思う勤務時間中のセックスで酷使した尻が痛み、家に戻った後も、ゲープは自分の不機嫌をどうすることもできなかった。
そして、デミアは、不機嫌なゲープに、どう接していいのか、思いあぐねている様子だった。
だが、慣れない肛口性交をしたゲープを気遣い、長く座っていなければならないかもしれない外食をデミアはさりげなく避け、家の椅子にもゲープが気づけば、やわらかなクッションが置かれていた。
ゲープは自分の性向が、嫌いだ。
すぐイライラする。
眠るデミアの顔は、枕に少し押しつぶされ、みっともないだけだというのに、とても可愛らしく感じた。
手放しで眠るその姿を、かわいいと感じつつ、イラつくのだから、どうしようもないとゲープは思う。
自分の耳を触るような形で布団から出ているデミアの手に触れた。
まるで反応はなく、触れた手は、健康な子供のように体温が高い。
まるでこれから何かを掴もうとでもしているような形の指に、そっと自分の指を絡めた。
ゲープは、下半身のそれも、かなり情けない部分に熱い痛みを抱える体を起し、眠るデミアの顔を見下ろしながら、絡めた手のデミアの指に唇を寄せた。
しばらくためらったが、どうせデミアは寝ているのだと言ってみた。
「好きだぞ。デミア」
そして、自チームのサブリーダーがしたように、デミアの指先を舌の先で舐め、やわらかく爪を噛んでみた。
デミアは寝ている。
とても深く。
もてた経験などないゲープには、どうしたってコニーのように皆に息をのませるような仕草ができるはずもなかった。
ゲープにもそれは分かっていて、なのにそうした自分を馬鹿だと思いながらも、かすかな苛立ちも感じた。
このどうしようもない自分の嫉妬深さが、ゲープは大嫌いだ。
しかし、今日の自分の態度は、ずぎずきと熱く痛む尻の痛みで長時間、罰せられたとしても、まだ反省をしてもいいだけのものだと、ゲープ自身わかっていたから、デミアがぐっすりと眠るのを邪魔するのは、もうやめた。
だが、ゲープは目を瞑り、眠りにつくための努力をしようとして、身を起こしなおした。
「……今日は、悪かった。デミア」
自分のデミアの額に、唇を押し当てた。
END