加重用の重りを入れた重い荷物を土の上に置いた隊員たちの顔には苦笑が浮かんでいた。

ゲープの不在を埋めるため、指示を出しているチーム50のサブリーダーとその部下であるデミアがまた揉め始めたのだ。

実はもう三度目で、一緒にトラップ越えの訓練に取り組むチーム40の面々も、最初は内紛かと気を揉んだが、さすがにもう、置いた自分の荷物に寄りかかりつつ、面白がって眺めている。

出される指示の無駄を嫌い、はっきりと反発するくせに、三番隊員が、一応サブリーダーの体面を慮って、物陰へとコニーを引っ張っていくのも、隊員たちには笑えた。

もともと同期のコニーとデミアだ。二人の遠慮のない間柄は、皆、承知だ。

コニーとデミアは、物陰とは言え、しだいに大声でやり合いだす。

 

「コニー、てめぇ何回言ったらわかるんだ。そのやり方じゃ、向こうに負けるって言ってんだろ!」

「今日は勝ち負けなど関係ない」

「やるからには、勝てる方法でやれ。大体どうして、そうきっちとばかりやろうとするんだ」

「お前みたいに、勘だけで生きてないんだ。やらなきゃいけない方法も決まってる。黙って従え、この馬鹿!」

 

現在のところ、デミアが優勢で2勝1敗だ。激しく言い合った後の憮然とした顔をしながらも、どこかに勝ち誇った雰囲気を隠さずに戻ってくる3番隊員に、チーム40の隊長はにやにやと笑いかける。

「デミア、お前は、うるさい女房だな」

「この通り、旦那が頼りないもんでね。でも、うるさくいうのも、お前のこと愛してるからだせ。コニー」

隣で機嫌悪く歩くコニーと並ぶデミアは、コニーの手を握った。それもいかにもわざとらしく、仲良さげに指と指を絡めるようなやり方で。

そうされたコンスタンティン・フォン・ブレンドープ伯爵様があまりにも握られた手を嫌そうに見るものだから、デミアは笑いながら、絡めた手を引きよせ、コニーの指へとチュっと唇を寄せる。

休憩中の隊員たちは皆、デミアの悪ふざけに、笑いだす。50の二人も苦笑している。

だが、コニーは、チームの皆に見られながら、このままデミアに負けたままでいられるような、生ぬるい性格ではなかった。

「ありがとう。俺もだよ。ハニー」

伯爵様は、デミアへと引き寄せられていた手を優しく自分へと引き寄せ直し、意趣返しの意味も込め、甘いムードたっぷりに引き寄せた手の甲へとちゅっと音のするキスをする。

それから、コニーは、じっとデミアの黒い目を見つめながら、お前に詰られるのは、それすら快感さ、デミアと囁きながら、絡めた指先をいやらしく舐めたのだ。

あまりになセクシャルのコニーの仕草に、一瞬周りが息を飲む中、デミアも、手を振りほどくことすら忘れ、優しく歯を立て爪を噛むコニーの口元から目を離せずに、ごくりと喉を鳴らした。

「……ざまぁみろ。俺の勝ちだ。デミア」

伯爵様は、にやりと笑ったのだ。

だが、それを、打ち合わせが早く終わったゲープが、チームの様子を心配し、覗きに来て、見てしまった。

 

 

場所が奥まっているせいで、普段はあまり使用する人間のすくない方のトイレへとデミアを連れ込んだゲープは、個室のドアへと鍵をかけた。

黙り込んだまま勢いよく手を引くゲープの気迫に気圧され、何も言えないままここまで連れて来られてしまったデミアは、鍵のかかる音で、少し空気の冷たい、乾いた狭い空間に一気に密閉感が増したのを感じた。

怒ったような顔のままゲープは手を突き出す。

「デミア、ゴムを出せ」

「はっ?」

まだ勤務時間中だ。休み時間ですらない。ゲープが何を言い出したのだと、とっさにデミアが反応を返せずにいると、ゲープは荒っぽくデミアの腕を掴んで体をひっくり返した。

便器と向き合う形でデミアがとっさにパイプへと手をつくと、ゲープがつなぎの尻ポケットを探る。

「お前、ここにゴムを入れてるだろ」

使用する必要のないものの携帯をずばりと言い当てられ、思わずデミアの目は、見るものもない壁のあちこち見てしまった。だが、その間に、ゲープはデミアの右尻ポケットからコンドームのパッケージを取り出した。それを口にくわえようとして、だが、それでは話すことが不都合になると気づいたように深いグリーンのスーツのポケットへと入れる。

「ジャンプスーツの胸ポケットになら、傷薬用の軟膏があるんだが、……お前は持ってないか?」

次の環境ホスピタリティ会議の警備の打ち合わせに出ていて、まだ着替えてもおらず、しゃれたスーツ姿のゲープが言う。その格好で、傷薬を探し、まるで身体検査でもするように、デミアの体を手荒くパンパンと叩いて探る。

意図が分からず、デミアはひたすらゲープの表情から、どんな感情でもってこういうことをしようとしているのかを探ろうとした。

「……傷用の軟膏なら、俺も、胸ポケットに小さいのを一つ、入れてはいるけど」

ゲープは、怒っているかのように、酷くむっとした顔つきなのだ。殆ど密着した状態で荒々しくデミアの胸ポケットに手を入れ、小さな缶の塗り薬を奪い取ったゲープは、脱げと言った。

「脱げ。そして、そこに座るんだ」

便座を顎で示し、自分も音を立てスーツのベルトを緩め始める。

「……ゲープ?」

「お前は、腰まででいい」

ゲープ自身は、スーツのズボンを足から抜き、かがむようにして勢いよく下着まで脱いでしまった。

慌ただしく上着のポケットに手を突っ込み、先ほどの軟膏の小さな缶を取り出すと、たっぷりと指先にすくい取る。

Yシャツの裾をめくって、白くて大きな尻を見せると、その指をそのまま自分の肛門へと近づけるために体をねじるゲープに、デミアは目を見開いた。

ゲープは顔を顰めながら、指についた軟膏をべっとりと尻の穴の表面に塗りつけ、強引に指を沈めていこうとする。

「……ゲ、ゲープ……?」

一回分の軟膏ではうまくいかず、眉を寄せて身を戻したゲープはもう一度指先にたっぷりと薬を掬った。

小さな缶だが、殆使っていなかったものが、もう半分以上減ってしまった。

「やるぞ、デミア、何してる。脱げといっただろ」

ぴしゃりと言うゲープの声は苛立たしげだ。

「で、でも、ゲープ。こんなところで、なんで?」

二人はそういう関係だが、妻との関係がこじれるまで、ゲープは完全なヘテロだったのだ。だから、ゲープにとって、デミアのプラトニックな愛情を受け入れることはどうにか可能でも、ホモセクシャルなセックスを受け入れることは難しかった。

二人は、ゲープの肛門を使って繋がるセックスなど殆どしたことがない。

その数少ないセックスでも、デミアがゲープの気持ちを慎重に誘導し、もちろん、セックスそのものは、ゲープの心理的な負担を減らすために、暗闇の中で行われた。

それなのに、ゲープが、蛍光灯の空々しい光に満ちた昼間の職場の男子トイレで、尻の穴を自分でこじ開け、中へと軟膏を塗りつけながら、やるから早く脱げと顎をしゃくる。とても不機嫌な顔で。

「どうしたんだよ。お前……?」

「いいから脱げ」

デミアが立ちすくんだまま脱ぎもしないことに焦れたのか、ゲープはぐいっとデミアの股間を掴んだ。ねめつけるようにしながら、ゲープはデミアに体をすり寄せる。デミアは汗の匂いを嗅いだ。

「勃ってるじゃないか。さっさと脱げ」

「そりゃぁ、お前のそんな格好見せられちゃ……」

ゲープはスーツの上着を着、ネクタイも緩めないまま、下半身をむき出しにしているのだ。濃茶の靴まで履いている。しかし、めくれ上がったシャツの裾の下からはウエーブのきつい陰毛も、ペニスも見える。

「何を怒ってるんだ?」

ゲープの獰猛な不機嫌さに対して、怒り以外の理由が思い当たらずデミアは必死の思いで質した。しかし、ゲープは押し問答などする気はないようだった。

ジャンプスーツの襟さえ崩さないデミアのジッパーに手をかけ、下まで一気に引き下ろす。袖を抜かせようとしたが、面倒になったのか、そのままどんっと押してデミアを便器へと座らせた。

デミアは、便器に座ったまま、ゲープを見上げることになった。

全開になったデミアのツナギの中へと手を入れたゲープは、下着の中にまで手を入れ、勃起したものを掴みだす。

「ちょっ!!」

いくらゲープが不可解であろうと、自分でこじ開けた尻の穴へと軟膏を塗り込む姿を見せつけられては、デミアのものが、通常の状態を保っているなど不可能なことだ。

ゲープはデミアのものをおざなりに、二、三度扱くと、スーツのポケットから取り出した先ほどのゴムのパッケージを口で破り捨て、被せた。

くるりと背中を向けたゲープが、スーツとシャツの裾を跳ね上げた。

白く大きな尻を見せたまま便座の上へと、つまり、デミアの上へと腰を下ろそうとする。

デミアはあまりのことに目を見開くしかなかった。

ゲープは片手でデミアのペニスを掴み、もう一方の手で、肛門を露出し、引き伸ばすように尻の肉を大きく開いたまま、尻を近づけようとしているのだ。

窄まりに触れれば、デミアは、ニュルリとした軟膏の滑りを先端に感じた。

ゲープは緊張に息を荒くしながら、デミアの両足を跨ぐように大きく足を開いて、ペニスをのみ込もうと腰を落とそうとする。

ゲープの太ももの温かさをジャンプスーツの膝に感じ、先端が狭い穴の中へと埋まりはじめると、ゲープがうめいた。

「痛いんだろ……ゲープ」

痛いのは、デミアも同じだ。ゲープの体には酷く力が入り、白い尻がぷるぷる震えている。それは、緊張のためでもあるだろうが、痛みのためでもある。拡張のための準備を省いた肛口はきつく、こじ開けるデミアの先端は、まるでつぶされるように痛い。

それでも、デミアのものが萎えないのは、息もできないような扇情的な眺めのせいだ。

肉付きのいいゲープの尻が、便器に座るデミアの両足を跨いで大きく開いた酷い格好で、ペニスを飲み込もうと、腰の上へと落ちてこようとしている。

痛みばかりで、上手くいかないゲープは、一旦デミアのものを手放しシャツの裾をかき集めると、もっとよくデミアにその白い尻を見えるようにして、ぐぐっと力をかけてくる。ゲープは食いしばった歯の間から、懸命に長く息を吐こうとしている。太ももは緊張に震えている。

だが、大きく傘を広げたカリがまだ飲み込めない。

 

慣れない肛口へとペニスを迎え入れようと、体を内側から押し開かれるゲープの痛みは想像に難くなく、デミアはゲープの腰を掴んでそれ以上の挿入を止めた。

痛みに歪めた顔の中で、歯を食いしばるゲープが振り返り、睨みつける。

「デミア、離せ」

デミアが見つめても、ゲープのきつい表情は変わらず、それどころか、業を煮やしたゲープは、ぐっと自分の体重をデミアにかける勢いで体を落とし、その勢いのまま、無理やり根本までデミアのペニスを咥え込んだ。

めりめりと肉を割くようにして飲み込んだものに、食いしばった歯の間から、低く長いうめきが零れる。唸り声をあげ、耐えるゲープの目には、一気に涙が湧いた。

ゲープの中へと突き立てられたデミアのペニスは、あまりの衝撃にぎゅっと締まった肉壁にきつく締められ、矢継ぎ早な呼吸のたびに、熱く締め上げられる。

「お、お前っ、無茶すんなよ……」

けれど、デミアには、そこで感じる快感よりも、心配が先にたった。

もともと慣れてもいない肛門を使ったセックスをこんな無茶なやり方でしようとするゲープの体は、辛そうに強張っている。シャツの下から覗く足は総毛立っている。

「何が、どうしたんだよ。ゲープ……?」

ゲープが床についたつま先だけで体を浮き上がらせ、ペニスを飲み込む動きを始めて、デミアはスーツに皺が残るほどぎゅっとゲープを抱きとめた。

「頼む。頼む。頼む。……ゲープ、どうしてこんなことするのか、教えてくれ」

絶対にゲープはセックスを楽しんでいる顔ではない。目元は赤いが、それは怒りに興奮しているためだし、もともとゲープは決して積極的に肛門性交などしたがらなかった。

抱いた腕の下のゲープのペニスは通常よりもほんの僅かに勃起しているだけだ。

 

ゲープは体内に飲み込んだもののせいで下腹全体だけでなく、胸まで重苦しくて、荒くなってしまう息を殺すことができなかった。

やっとのことでペニスを腹の中へと納めたというのに、自由に動くこともままならない自分が情けなく、ひどく腹立たしい。

36にもなって、セックスに初だということはできないが、普通に家庭を持っていたゲープは、自分の肛門にペニスをねじ込みたいと誰かが興奮するなどということは、考えたこともなかったのだ

だから、デミアとのセックスはできれば避けたいもので、特に、不安や違和感が付きまとう肛門性交はしたいものではなかった。

ゲープは極力それを避けてきた。

そのつけを、排泄のための男子トイレの個室という場所で、排泄するための器官にデミアのペニスを飲み込むという真似をしながら、今、ゲープは払っていた。

たかが、腰を浮かすという程度のことが苦しさのあまり思うようにできず、苛立ちのままに足を振り上げ、ドアを一つ蹴れば、デミアがビクリと身をすくませた。

 

「……なんで、こんなことしてるのか、言いたくねぇのか?」

 

ゲープは、確かにこんなことをした理由を言うのはいやだった。第一、ゲープ自身、突然、嵐のような感情に巻き込まれた被害者であり、自分自身にすら、こんな馬鹿げた行動を起こした理由を納得できるようには、説明できない。

ただ、さっきコニーと指を絡めるデミアを見ながら、デミアは、俺のものなのだと思った。

それを、ゲープは、デミアにも、自分自身にも思い知らせる必要があった。

絶対に、ゲープは、思い知らせたかった。

 

もう一度つま先で体を持ち上げようとして、下腹の重苦しさに呻きながら、足へと力を入れると、強くデミアに抱き止められた。

 

「どうしても、する気か?……っていうか、ゲープ、してぇの?」

 

歯を食いしばったまま、ゲープは頷いた。

だが、内臓を押し上げられる苦しさに、ゲープは吐き気すら感じている。デミアのペニスが広げる尻の穴は切れているのではないかと思うほど痛い。

デミアが、こつんと背中へと頭をぶつけた。

「あのさ、ゲープ……」

長話など聞く余裕のないゲープは、デミアの腿へと手をついて無理やり自分の体を引き上げようとした。

「デミア、腕を離せ」

「痛ぇだけだって、ちょっと、ゲープ、落ち着けって」

 

けれどもゲープは、デミアの制止など聞き入れず、懸命につま先に力を入れて体を浮かそうとし、もぞもぞと尻を動かし続け、そんな風にして熱い内側で勃起したペニスを捏ねまわされれば、デミアの興奮は増してしまった。

サイズを増したものに、ゲープの喉が苦しそうな音を出した。

だが、まだ、ゲープは白く柔らかな尻を持ち上げようとし、もう、デミアには我慢が出来なかった。

 

ゲープの靴裏は、個室のドアを押さえるようにして板へと押し付けられていた。

けれど、ドアにはかぎが掛かり、本当はそんなことをする必要はない。

だが、デミアの腰の上に乗せられ、太ももを下から掴まれ開かされているゲープは、硬く勃起したデミアのものが尻の中で抜き差しされるたび、不安定になる体を少しでも支えたくて、ガタガタとドア板に音をさせた。

あまり使用する人間がいないとはいえ、勤務時間中の職場のトイレだ。

不審な物音が、長くし過ぎては誰か気づく。

けれど。

いいところを狙うように腰を揺するデミアのせいで、宙に向かってゆらゆらとペニスは勃たせたゲープが、

「……っ、デミ、ア……、」

「……デミ、アっ……」

何回も名前を呼ぶのだ。

勿論、ゲープは快感ばかりを味わっているわけでない。それは、デミアにもわかっている。顔は苦しそうにしかめられ、噛みしめた唇からは、飲みきれない唾液があふれて伝っていた。

しかし、デミアは、はじめてみるその顔に興奮させられていた。

デミアは、内側から前立腺を押しつぶされ硬く勃起したゲープのペニスを掴んで、突き上げるのに合わせて扱く。

「っ……っデミ、ア……」

 

低く腰を落としたデミアが、太腿を掬いあげるようにしながら、突きあげてきて、ゲープの頭はのけぞった。

デミアへと体を預けたこんな情けのない状態で、はぁはぁと、犬のように喘ぐしかできない自分が恥ずかしい。

中を擦られるうちに、太腿には次第に力が入ってしまい、だんだんと閉じようとしてしまうのを、デミアに何度も大きく開かれる。

大きく開いた股の間で、びくびく揺れる自分のものがいやでも目に入り、中のデミアをぎゅっと締めつけてしまう。

体の中にあるどうしても感じてしまう部分が強くおされ、びくびくと腰を揺らすゲープの喉が鳴る。

 

「……っ、は……はっ、デミ、アっ……ん、……っ」

 

 

ぐるりと内壁を押し広げるように中を捏ねられると、耐えきれず、ゲープのペニスからぽたぽたと精液が溢れ出した。

「あ、……、っあ」

 

真っ赤にした顔をしきりに振るゲープはもう我慢ができなかった。

自分の意志とは関係なく、デミアのものを絞り上げるように、肉壁にはぎゅうっと力が入り、びくびくとその圧力のまま締め上げ続けた。

デミアが、きつく締まった肉の中から、ずるずるとペニスを引き抜き、腹の前あたりを意識しながら、力強く一突きし、手の中のものを強く擦り上げた。

 

「……んんっ……っ、……!!!」

 

体を丸めるようにしたゲープの尿道口がぽっかりと開き、びゅっ、びゅっと、精液が飛び出していった。

射精の最中には、もうこれ以上きつくはならないだろうと思った肉壁が、さらに絞り込むように締まって、予測のつかないリズムで収縮を繰り返していたが、デミアはガタガタと体を揺らすゲープの絶頂を煩わせないため、歯をくいしばって自分の射精を堪えた。

ビクビクと揺れるペニスから飛び出した白いものは、開かれたままのゲープの腿を濡らし、デミアのジャンプスーツの足をも濡らしている。

 

やっと射精の痙攣が終わり、なんとかそれを持ちこたえたデミアは、ふうーっと長く息を吐き出したゲープの腿を撫でた。

「悪ぃ。ゲープ。もう少しだけ」

 

自分のための規則正しいリズムでゲープの中へと抜き差ししながら、デミアはゲープの背中に額を押し付け、好きだと言った。

「……待て、……、もっと、……ゆ、っくり」

射精後の重い体は、まだ快感を欲しがるような段階にはなく、できれば、もうデミアに付き合うこともせず、終わりにしたいだけというのに、デミアの手で広げられたままの腿の間で、ペニスが兆し、頭を上げ始めていることが、ゲープはたまらなく恥ずかしかった。

「デ、ミア、……終わら、せる……っ、なら、……っ、さっさ、と……」

「ゲープ。俺、お前のことすげぇ、好き」

ペニスが勃起したのは、過敏になり過ぎている体を、間をおかずに揺すられているせいだと言い訳したいが、そうではないことなど、ゲープ自身が一番分かっていた。

また、好きだとデミアが言った。

もう一度ゲープを高みに追い上げようという気まではないらしいデミアは、勃ったものを緩く握って擦るだけだが、それの勃った理由が理由だけに、デミアに握られ、陰茎の中に残ったものを絞り出すようにして、くちゅくちゅと弄られるのはたまらなかった。

「……ゲープ。すげぇ、好き」

デミアは、スーツの背中に顔を擦りつけるようにして、囁く。

 

「いきそ。……ゲープ、いって、いいか?」

 

「いけ、っもう、……さっさと、終わら、……せろっ」

 

 

 

 

「なぁ、どうしても、急にこんなことしたわけ、言いたくないか?」

ジャンプスーツの汚れた部分を引き出したトイレットペーパーで乱暴にぬぐいながら、デミアはちらりと目を上げた。ゲープは皺になってしまったスーツの上着に、顔をしかめながら、鏡でネクタイを直している。

赤みの引いた顔は、まだ少し強張り気味だ。

ゲープは、人のことを好きだと言いながら、ふしだらだった自分の行為に全く気づいていないデミアに少し苛立ちを覚えた。

「もう、ずいぶんしてなかったろ。溜まってただけだ」

 

いやだ。いやだ。いやだ。