ファルク×ゲープ 5
戯言めいた言い方の裏側にある、言葉で辱めたい、というファルクの意図をゲープは読み取ったらしい。
彼はゆっくりと後ろを振り返った。
「・・・・おまえには、関係ない」
静かな怒りが、ゲープの目にはあった。
そんな言葉がゲープの口から聞くのはまったく予想もしていないことだった。
目の前でドアをピシャリと閉められたような冷ややかな拒絶に、ファルクはカッとなった。
「っ!っ、あぅっ、あ、あ、アアッ!」
突然の激しい突き上げに、ゲープの体は机の上に半ば乗り上げるような形となり、がくがくと揺さぶられた。
関係ない?
これまでさんざんヤっておいて、関係がない?
同期で、親友などという言葉は気恥ずかしいが、確かに信頼し合っていた。
(俺は、要らないってことか)
アズランがいれば。
アズランが、いるから。
愛してる、とゲープも言ったのだろうか。
おまえが好きだ、と照れたように微笑んでアズランのキスに応えたのだろうか。
なんの断りもなく、扉は勝手に閉ざされてしまった。
ゲープの仕打ちが、ファルクは許せなかった。
いいだろう。
そういう気なら、力づくでこじ開けてやる。
狂気じみた目をしていることに自分で気づかぬまま、ファルクは白い尻を痕がつくほど強く掴んで、容赦ない突き上げを開始した。
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すすり泣くような声が切れ切れに聞こえていた。
ゲープの声だ。
わかっていたが、ファルクは動きを止めなかった。
特殊部隊員は拷問を想定した訓練を受けているから、苦痛にはある程度の耐性がある。
乱暴に犯されたゲープは、呻きはしたもののファルクに屈する気振りはなかった。
一度射精したあと、ファルクはやり方を変えた。
ゲープが感じるところをじっくりと攻めるように腰をつかい、尖った乳首やぬめる先端を指で嬲り、発見したばかりの弱い箇所、耳の後ろを吸う。
「アア・・・・ッ、も、もう・・・・・」
イく・・・、とゲープはかすれた声で訴えた。
「ファルク・・・・っ・・・・」
イきたい、とかすかな声を絞り出して、ゲープは後ろ手に縛められた手を解こうと試みる。
もう指先を弱弱しく動かすことしかできない。
じっとりと汗の浮いたゲープの背中をファルクはなだめるように撫でて、捉えた腰を後ろから優しく揺すった。
「ヤ、イヤ、だ・・・・ッ、ン、ア・・・・・・ッ」
頼む・・・・、と絶え入りそうな声で懇願を始めたゲープに、ファルクは口をゆがめた。
短い金色の頭が机にこすり付けられているすぐそばには、きっちりと綴じられていた書類が散乱している。
細く黒い綴じ紐はゲープのペニスの根元に巻かれ、どんなに射精したくてもできないようになっている。
よほど苦しいのだろう。
決して弱音を吐かぬ男が、だらしなく涎をたらし舌をもつらせながら、イきたい、イかせて・・・・、と泣いている。
「・・・苦しいか?」
聞くと、ゲープは何度もうなずいた。
「じゃあ、・・・言えよ。そしたら、ほどいてやるから」
イきたいだろ?と聞くと、金色の頭がこくんとうなずく。
「デミアとは・・・・、何回した?」
「いっ、・・・かい・・・」
「1回?」
「んっ・・・・は、はやく・・・・・」
「まだだ」
せっかちなゲープの耳を軽く噛んでお仕置きすると、彼はぶるっと震えて泣き声をあげた。
「デミアはどうしたんだ?さいしょは?」
「キ・・・ス・・・・・」
「ベッドで?」
「ん・・・・」
「愛してるって、言ったか?」
「・・・・・・・」
ゲープは、かすかにうなずいた。呼応したように、後ろがきゅうっと締まる。
呆れるほど正直な体だ。
ゲープは自分の無意識の反応に気づかぬまま、ただ早く射精したがって身悶えを繰り返している。
「デミアは、どこにキスした?」
「っ、・・・・ぜ、ぜんぶ・・・・・」
「・・・・・」
ファルクは目を丸く見開いた。
頭のてっぺんから足のつま先まで、というヤツか。
ロマンチストめ。胸糞の悪い。
「キスされて、感じたか?」
「んん・・・・ぅ」
「ここは?尻にも舌をつっこまれたか?」
浅いところをこねるように刺激すると、そこはひくひくと震えた。
ん、ん、と必死にうなずくゲープをゆったりと揺らしながら、ファルクは優しく尋ねる。
「どうやってした?前から?後ろから?」
「う、うしろ・・・」
「よつんばいで尻を差し出してやったのか?」
ちがう、とゲープははっきりと首を振って否定した。
「デミ・・・がおれを・・・・・・抱き・・・めて・・・・・・」
聞かなくても、わかっていることだった。
この頑丈な男を、こわれものを扱うみたいに抱きしめて、そうっと抱いたのだ。
「・・・・・優しかったか?」
低く囁くと、ゲープはしゃくりあげるように短く喘いだ。そして・・・。
「デミア・・・・・・」
小さな声で名を呼んだ。
まるで、アズランの助けを求めるように。
(つづく)