小話28
*憧れのきれいな人
訓練後、健康チェックとして、二人ペアで脈を取ることが義務付けられている。
「コニー、さすがだな。あれだけの訓練後だってのに、あんたの脈拍はまるで時計みたいに正確に打ってる」
「……まぁな、フランク」
コニーは、きれいな顔で、新人を冷たく見据える。
「……お前が脈を取ってるのは、俺の腕時計だからな」
*新人
人質事件の救出に向かう車の中には、被害者の両親が、互いに肩を抱き合い、今にも崩れ落ちそうなほど動揺していた。
「子供がこんな酷い目にあっているというのに、どうしたらいいのか、わからないんです。私たち、こんな経験は初めてで……」
「お気持ちはわかります」
新人が声かける。ゲープはちょっとフランクを見直した。力づけようというのか、フランクは、震える二人に、情けないような小さな笑みを見せる。
「俺もこれがはじめての任務で、どうしていんだか……」
*カスパーの希望
事件現場で、避難が間に合わず、爆風に巻き込まれ、カスパーが意識を失うという事態が起きた。
病院への救急搬送後、部屋の外でチームの面々が心配するなか、部屋の中からは、若い医者の声がする。
「……これは……、」
部屋の外では緊迫感が高まる。コニーなど顔色を無くしている。
かちゃりとドアが開いた。
「なぁ、ゲープ。この医者が、後、1時間の命だから、誰か会いたい人がいないかと言うんだが、とりあえず、別の医者に会いたい」
*チーム50ルール
コニーと、デミアが激しく口喧嘩をしていても、ゲープは知らん顔で、決して止めない。
吠える犬は噛まない。少なくとも、吠えている間は。
*移動中
移動手段として、チーム50の全員は、民間機に乗っていた。
離陸後20分も経った後、美人のスチワーデスが、客の中に医者が乗り合わせていないかを尋ねていった。
「あーあ、警察官じゃなくて、医者になればよかったぜ」
無駄口を叩くデミアをゲープが睨んだ。
それから、30分後。
「お客様の中に、牧師様はいらっしゃいませんでしょうか?」
フランクは、激しく動揺し、コニーの目も落ち着きなく泳いだ。