小話23
*いわゆるひとつの羞恥プレイ
大きなレセプションだった。各国の要人が集まるこの警護に、GSG−9のチームも投入されていた。華やかな歓迎の会が終わり、一同は、講演会の行われる建物へと移動した。
フレディは、国の重鎮でもある聖職者と、とある国の大臣を警護しつつ先導していた。
外は寒かった。そして、フレディの受け持ちである聖職者は、これから、壇上に立ち、長いスピーチをするはずだった。その間、ずっとフレディも壇上にたっていなければならない。
建物に入った現在、警護官の数はかなりのものだ。そして、フランクもいる。
わずかな尿意を覚えていたフレディは、決断し、後ろに続くフランクに小さく頷くと、進むべき道を左に折れた。
しかし、フランクは頷きを誤解した。
聖職者と大臣、そして、その随行官、総勢20名は、フレディを先頭に狭い男子トイレへとぞろぞろと続いた。
*何してた?
見張りの車のドアが小さく叩かれた。
バンのドアを開けたフレディに、交代予定のゲープが口を開いた。
「二時間、御苦労だったな。中に、フランクはいるのか?」
「いるが……何か、あったか?」
ゲープは、至極真面目な顔で、受信用のイアフォンに触れた。
「お前らがあまりにも静かだから、気になってな」
*高尚なる問題
デミアとフレディが揉めていた。
今日もまた、口の達者なデミアに、フレディが劣勢に立たされていて、見かねたフランクが間に割って入った。
「なぁ、デミア」
もうフランクはいい加減にして欲しい。
「例えば、ロバがひっぱたかれてて、それを、止めたとする。その行為はどんな種類の徳だと思う?」
「なんだ、フランク、兄弟愛か?」
*愛はあるんだろうか?
フランクが、2つ林檎を持っていた。
それに気づいたフレディは、少し照れくさそうにしながら言いだした。
「なぁ、フランク、お前は、今、2つの林檎を持っている。もし俺が、一つ欲しいと言ったら、残りはいくつになる?」
「ん? 2つだが?」