小話21

 

*喧嘩上等

 

どうやら、また、チーム50の2番隊員と3番隊員は何か揉めたようだ。

3番隊員が、嫌味なほど、2番隊員の真似をする。

シャワーから戻れば、それほど長くもない前髪をかきあげ、普段ならTシャツを着込んだ上に羽織るカジュアルシャツを、素肌に羽織り、しかもわざわざ胸ボタンをいつまでもかけようとしない。

着替えなど、いつも1分で終わるというのに、いつまでもぐずぐずとし、傷まみれのブーツの埃を払ってみせたりする。

いい加減、誰もが、暗雲を感じていた。やはり、コニーが、デミアの顔も見もせず、冷たく言い放つ。

「デミア、お前、馬鹿にしかみえないぞ」

デミアは、満足の笑みを浮かべた。

「だったら、お前の真似、成功だな」

 

 

*意地悪

 

「あそこにいるのが、ボスだったら、俺は今、本部に戻りたくないな」

作戦中に、情報の伝達ミスが起こることはままある。

今日、コニーは、状況の把握を誤り、ゲープに伝えるべき情報を自分のところで止めてしまった。

そのせいで、一時、現場が混乱に陥ったことは、本部のアンホフも十分知ることだ。

デミアは、足を止めてしまった2番隊員を見やった。気まずそうな顔をしたコニーは、無言のうちに、デミアにあれがアンホフ指揮官であるかどうかの確認を求めている。

デミアは、チームの中では、コニーより下位だ。仕方なくデミアは、確認するため、先に中へとはいる。

「コニー、やっぱり、あれはアンホフだった。会いたくないから確認してこいってお前が言うから、顔見に来たって言ったら、それは良かった。では、私が退職するまで、戻って来るなって言ってたぞ」

 

 

*誤解

 

有能なチーム50の隊長は、意外と電気関係のことに弱く、特に、今まで妻任せにしていた家電の配線に関しては、お手上げだった。

しかし、代休で一日家にいたゲープは、配線の乱雑さが気になって、つい整理しようという気になってしまったのだ。

引き抜きはしたものの、もちろん、元には戻せない。デミアは、割合、こういうことを面倒くさがる。

「ゲープ。……終わった。設定もすませた。俺は帰るぞ」

同じく取っていた代休を、いきなり隊長の呼び出しで半日つぶすことになったフランクは、やっと終わった仕事に、ゲープを呼んだ。

ゲープは急いでフランクの元へと行った。ゲープはフランクが帰ってしまう前に、夕べ、デミアが触って以来、寝室のランプの接触が悪いのも直させたかった。

「まだ帰らないでくれ、フランク。お前に、夕べデミアが触ったところを見てほしいんだ」

 

寝室に連れ込まれたフランクは、大きな体で呆然とベッドの前に立ち尽くしていた。隊長は、ベッドに乗り上げようとしている。本当の理由は、ランプを取るためだが、知らない5番隊員は、泣きそうだ。

「ゲープ、……気持はありがたいんだが……、その、俺、デミアと揉めるのなんて、勘弁してほしいっていうか、もし、どうしても感謝の気持ちを表したいというなら、いっぱいの紅茶でも入れてくれた方が……」

 

 

*カスパーの祖父

 

カスパーが休暇届けを持ってきた。

アンホフは、顔をあげた。

「お前、この日は、合同演習の予定が入っていたんじゃなかったか?」

「急で申し訳ないのですが」

しかし、カスパーの表情は、本当に申し訳ないと思っているのかどうかが分かりにくい。特別休暇の理由をカスパーは説明する。

「祖父が結婚します」

「祖父? めでたい話だが、一体お幾つなんだ? 本当にそんなお年で結婚なさるのか?」

疑問をアンホフは顔に浮かべている。

「86です。……祖父の方はそれほど結婚には興味がないようなのですが」

カスパーは淡々と続けた。

「どうも、来月には俺の叔父だか、叔母だかが生まれるようで、結婚せざるを得ないそうです」