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*デミアに相談

 

「じゃぁ、きっぱりと、嫌だって言えばいいんじゃねぇの? はっきりカスパーに思い知らせてやれ」

時折、優しくキスしてきたりするだけのカスパーに、いつまでも自分が振り回され続けることなど、コニーには許せることではなかった。

しかし。

「……もし、そうして、奴が二度とキスしてこなくなったら、どうしてくれるんだ?」

 

 

*多分、伯爵様が払ってくれる!

 

「デミア、こないだのことなんだが……」

「あっ、カスパー、こないだは面倒なこと頼んだのに、すげぇ企画をたててくれてありがとな。ゲープも、みんなと一緒にあんな旨いもの食って、なんか元気がでたようだし、感謝以外に何もないぜ!」

ばんっと肩を叩く、デミアの笑顔に、一点の曇りもなかった。

「……だろうな」

カスパーはため息を吐きだした。

給料日前の今日、先日の店の請求書の行く先を、カスパーは思い悩んだ。

 

 

*キス

 

夕暮れ時の駐車場で、ふと目があった。確かにそんな雰囲気だったが、座席から身を乗り出したのはコニーだ。

「なぁ、カスパー、キスを交わすのは愛の言葉を交わすのと似てると思わないか?」

重なっていた唇が離れ、コニーの緑の目は、じっとカスパーの目を見つめた。

少しいたずらめいたチャーミングな表情で、唇の端をあげる。こんなにリラックスしたコニーは珍しい。

カスパーはゆっくり頷いた。

「ああ、でも、コニー、今のは独り言かと思った」

 

 

*唐変朴

 

「ゲープ。奥さん、風邪ひいてるんだろ? 見舞いでも買って帰ってやれよ」

コニーは、チームの隊長にいらぬ世話を焼いていた。コニーもチームのサブリーダーとして、できるだけ隊長の家庭が安定していて欲しいのだ。

「ああ、昼休みに咳止めを買っておいた」

「はっ? ……咳止め? ゲープ、お前な、そういうものじゃなくて、花束とか」

「コニー。なんで花束なんだ? マヤは、風邪をひいただけだ。死んだわけじゃないんだぞ?」

 

 

*心配り

 

チームに配属されてまだ日の浅いフランクがひどい風邪をひき、出勤できない日が続いた。

「ゲープ。本当に申し訳ない。迷惑をかけるんだが……」

日に日に、申し訳なさを募らせるフランクからの欠勤の電話にゲープは、精一杯力づけていた。

「気にするな。フランク。お前がいなくても、俺たちは、ちっとも困らないから、心配しなくていい」