2
*研修
GSG-9は、警察機構に属している。つまりお役所に属しているというわけだ。そのため、様々な研修に事欠かない。
それは、実践的な訓練もあれば、環境に配慮した職場作りなとどいう研修もある。そして、たとえどんな研修であっても非常時でさえなければ、勿論拒否権はない。
「デミア」
ゲープに呼び止められたデミアは、彼の持つ用紙に、自分が逃げ遅れたことを知った。
「3日前から言ってあるよな。環境保護の研修だ。出席の資格があるのはチームのなかじゃ、お前、コニー、カスパーだ。奴らはわざわざ俺の出勤よりも早く来て、しかも、もう打ち合わせに出た」
ゲープは唇に力を入れた凄みのある笑い方をする。
「これの修了書をもって帰ってきたら30ユーロやる。行くよな? デミア」
デミアは、誰も参加したがらない研修に人をやらなければならないことにゲープがほとほと嫌気が差しているのがわかっているだけに、仕方なく肩をすくめた。
「ゲープ。30ユーロの約束は覚えてるか?」
帰るなり金のことを持ち出したデミアに呆れた顔で笑いながらゲープは財布を取りだした。
「いや、いいんだ。ゲープ。お前を節約させてやる。…………いや……あのな、悪い。寝てたのが見つかって、再研修なんだ。しかも、今度は責任者であるお前も指名だ」