16
*ゲープ隊長
嵐の夜だった。
全うな勤め人が活動するには、もう遅い時刻。だが、夜間の定点偵察を命じられていた二人は、やっともぐりこむことのできたベッドで、熱い夜を過ごしていたのだ。
ベッドは大きく軋み、情熱的なデミアに掴んだ腰を突き上げられ、上がるゲープの声も大きかった。しかし、いくら真夜中とはいえ集合住宅地では、恥知らずすぎるそれも、その晩は、問題なかった。それよりも、もっと雨音が大きいのだ。
しかし、大きな雨音にまぎれて、不審な音がした。
ここは、GSG-9の精鋭の住処だ。
物色の選択眼が間抜けにも程があるが、そんな間抜けにドロボウに入られても、こちらも間抜けだ。
異変を感じ取ったデミアは、熱く絡みついてくるゲープへと深く挿したまま、動きを止め、聞き耳を立てた。
だが、
「デミア」
腰を持ち上げられたまま、感じる部分で動かないデミアにせつなく息を喘がせるゲープは、汗が流れ落ちるデミアの頬を、ぱちんとひっぱたく。
「ちょっ、お前。お前も聞こえたろ。今、変な音がしたろ。こんな夜だ。泥棒かもしれないんだぞ。ちょっと、見てくる」
結構な力加減に思わず苦笑いしたデミアが、名残惜しいほどの感触のゲープの尻からペニスを引き抜こうとした。
「待て」
しかし、ゲープの柔らかな太腿が、ベッドから降りようとしたデミアの腰を強く挟み込み、引き寄せる。
そんなに欲しがってくれているのかと、顔にしまりのなくなってしまったデミアは、息を喘がせたままのゲープの髪を撫で、なだめすかし、外の様子を見に行こうとしたのだ。
「馬鹿、デミア、様子をみるんだ。あそこの窓は、こないだペンキ塗りが来てから開かないんだぞ。……もし、奴が、開けたらラッキーだろ」