14
悪友
*コニー
撃たれた犯人が出血し、運悪くコニーは、犯人確保の最中に、その血溜まりへと倒れこむことになった。
フランクに連れ出される犯人の後姿を見つめながら、髪を血で汚したコニーの顔が暗い。
「なぁ、あいつ、何か悪い病気なんか持ってないだろうな……?」
「さぁ? もしかしたら、なんか酷い病気にかかってるかもな」
ニヤニヤとデミアはコニーをからかう。
「デミア!」
ゲープから、鋭く叱責が飛んで、デミアは小さく舌を出した。
しかし、3番隊員は、不安を隠しおおせていないサブリーダーに向かってわざとらしくにこりと笑う。
「大丈夫だってコニー。俺は、お前のこと、全然心配してないぜ?」
コニーの目が冷たくなった。
「それが何の保障になると言うんだ? デミア、俺は、例えばお前がたとえば癌だと告白したとしても、全く心配なんてしないぞ?」
「コニー!!」
車のドアを開け待つ、ゲープの叱責が、今度はコニーへと飛んだ。
*デミア
偶にはということで、デミアとコニーの二人が訓練施設で同室となった。
夕べ、遅くまで埒もない喧嘩をし続けた二人は、朝、寝過ごし、見っとも無くもチームの面々の前へと駆け出すことになった。
コニーは恥ずかしくてたまらない。
「悪かった。ゲープ」
「悪ィ。ゲープ! でもな、もし神様が俺に朝日を拝んで欲しいと思ってるなら、日の出はもっと遅いはずだぞ」
「デミア!!」
ゲープは遅れてきた隊員の顔をじっと見つめながら二度頷いた。
チームの隊長は、腕を組んだまま慈悲深く笑う。
「カスパー、フランク。先に朝食に行って来い。ゆっくり休んで来い。デミア、コニー、お前ら二人は、20キロ走って来い」
*居合わせる伯爵様
人というものは、往々として居合わせたくない場所に居合わせるものなのだ。
デミアは、靴紐を結ぶゲープに、シールを見せている。
「ゲープ。リッシーが喜びそうなものを貰った」
「悪い。デミア、リッシーはキャンプに行ってる」
「そうか、それは残念。じゃぁ、マヤは? こないだ聞かれたこと、ちょっと調べといた」
顔を上げたゲープはすこし申し訳なさそうだ。
「リッシーの付き添いだ」
デミアは笑って、ゲープの顔を覗きこむ。
「ソフィアもか?」
「あいつなら、少し待ってもらえば帰ってくる」
腕のボタンを留め、ふと目を上げたコニーは、デミアと目があった。
デミアは挑発的にコニーを見つめたままゲープに言う。
「じゃぁ、それまでお前の家で待たせてもらってもいいか? ゲープ」
「……ああ、いいぞ。デミア」
ゲープの返事は、いつだって一瞬遅れる。
その間がコニーは嫌なのだ。
その含みのおかげで、居心地の悪い思いを味わうコニーはつい目が揺れてしまい、本来なら殴られて当然のデミアにニヤつかれるのだ。