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*コニーはカスパーの保護者

「デミア、大丈夫か?」
さっきから、デミアが呻いていた。酷い腹痛を訴えるデミアを心配したゲープは、交代要員を要請し、到着し次第、病院へとデミアを運ぶ予定だ。
任務の途中だというのに、腹を抱えてうずくまることになったデミアは、悔しさに歯軋りしている。
「コニー、てめぇ……」
監視を4番と5番隊員に任せ、ゲープと共に、チームの負傷隊員に付き添うチームのサブリーダーを、デミアは痛みのあまり湧き出てくる涙で潤んだ目で血を吹かんばかりに睨みつけている。
「……てめぇ、俺の夕食だけ余計なもの入れやがっただろう……!」
デミアは、野営を強いられたこの任務の今日の夕食当番だったコニーを疑っているのだ。
「……コニー、お前、こないだの任務後に、返す予定の防弾チョッキを隠したのが俺だと気付いたんだろ? ……その腹いせだろ」
額に脂汗をかきながら、デミアはコニーを問いただす。少しでも楽なようにとデミアの背中を擦る隊長を手伝うため、3番隊員の体を支えるコニーは違うと短く答えた。
デミアは、嘔吐に耐え体を震わしている。
「じゃぁ、……先週のてめぇの射撃訓練の時間を勝手に入れ替えたのが俺だってわかって、腹を立てたのか!」
疑うデミアに、コニーは、また、違うと首を振る。
デミアは、腹を抱えみ、苦しそうに呻いた。
ゲープは黙っていろとデミアを叱り、無線で交代を急かす。
デミアの症状は食あたりに間違いない。できるだけ安静にし、病院へと急ぐ必要があった。
だが、コニーが犯人だと決め込むデミアは、怒りを納めず黙らない。
「……シャワーを使ってる最中に、元栓を締めたのが気に入らなかったのか!」
「……車のキーを隠した犯人が俺だってやっとわかったんだな」
「……じゃぁ、あれだろ。てめぇが路駐してる時に、交通課に連絡入れたことだ!」
デミアは、コニーがこんな酷い仕返しをしたことが許せず、苦しみに呻きながらも、しつこく問いただす。
「こら、デミア、大人しくしてろ」
ゲープが止めてもやめる気はない。
「……お前が総務の女の子からテル番渡されてたのを、奥さんにチクったのを、まだ、根に持ってるんだな? てめぇは、」
「……いや、デミア、それは知らなかった。なるほど急にドレスを買わされた理由がこれでわかった」
次々と暴露されるデミアの幼稚な悪戯の手口と、散々な言われように、コニーの顔は引き攣っていた。だが、それでもチーム50のサブリーダーは苦しさに体を震わすデミアを優しく支え、ゲープに代わり、背を撫でさえした。
さすがにその手を押しのける元気はないが、デミアは、まだ、コニーを睨み続けている。

「チクショウ。じゃぁ、てめぇは、何に気がついて、こんな陰険なことしやがったんだ。……くそぅ。特定しようにも百も二百も理由が浮かぶ……」
「いい加減にしろ。デミア、コニーはそんなことしない」
とうとうデミアは発熱までしだしたようだ。震えを強くしたデミアの額に浮かんだ汗を、車の到着を待ち道路へと目をやるゲープの代わりにコニーが拭う。
「その百や、二百の理由もそのうちには是非教えてもらいたいんだがなデミア」
コニーは潔く頭を下げた。
「すまない。デミア、こんなことになって」
「やっぱ、テメぇか!!」

デミアが怒鳴り、思わずゲープもコニーの顔を見た。
コニーは、もう一度すまないと深々と頭を下げる。

「……いや、カスパーがちょっとな。これは確か食えたはずだと、取ってきたキノコを好意でお前の皿に載せた」

離れた位置で、監視につくカスパーは顔を曇らせ、デミアの容態を心配していた。