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ゲープの遺伝子

*伯爵さまのお付き合い

シュルラウ家に招かれたコニーは、上機嫌のゲープの隣でリッシーのピアノを聴いていた。
「お前、音楽が好きだって聞いてたから」
愛娘の演奏に、とろけんばかりの笑顔のゲープにコニーは頷く。
「ああ。音楽は好きだ。けれど、気にしないでくれ。リッシーの演奏は最後まで聞かせてもらうよ」


*デミアがモデル

デミアは、ソフィアの学校の課題である人物画のモデルを務めることになった。
しかし、出来上がりに、ソフィアは不満だ。
なんというか、3才の昔から、ソフィアの作風は、昔から人もカバも一緒なのだ。
デミアは口を噤んでいるが、この絵を指名手配用の似顔絵にするなら、俺は動物園から捜索を始めると思っていた。
ゲープが、じっと絵を見つめる。
「ソフィア、すばらしいじゃないか。そうだな、デミアが、この世の中で出来のいい作品じゃないってのが、この作品の唯一のネックだ」


*本当の話

ロッカールームのシャワー室でゲープが鼻歌を歌っていた。
「なんだよ。今日は難しい曲に挑戦してるじゃないか」
隣のブースで頭を洗うデミアが、ゲープをからかう。
「そうか。これは難しい曲なのか」反対側の隣にいたカスパーがぼそりと言った。
「いっそ、まったく歌えないほどの曲ならどんなにいいか……」