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*いや、……それは、ちょっと。

カスパーは普段から口数が多くないが、それは、こんな時にまでそうのかと、ゲープは驚いた。
犯人の撃った銃弾がカスパーに当たった。
出血の具合は、死という単語が頭にちらちらと浮かぶほどだ。
だが、カスパーは泣き言一つ言わず、うめき声さえ堪え、痛みに息を喘がせている。
緊急手配された救急車の到着が遅い。
だが、仲間たちにできることなど、殆どない。
血相を変えたコニーは、出血を少しでも抑えようと血まみれになりながら、カスパーの傷口を必死に押さえている。
「カスパー! カスパー! 聞こえてるか!? おい、返事をしろ!」」
コニーの目からは涙が溢れ出している。
「俺を、俺たちを置いていく気なのか!? カスパー! この野郎!!」

道路にまで広がる出血のため、白くなっているカスパーの唇が動いた。
「……わかった、コニー。じゃぁ、ついて来るか?……」