尻
ドアをノックして、カールは腹に力を入れた。
時刻は、16時。
これから、撮影に入るまでの4時間あまり、カールは、悪魔の招待を受けた。
時間と、場所をカールに告げたショーンは、かわいそうなくらい肩を落していた。
見上げる目は微かに潤んでいて、カールはその場で抱きしめたかった。
諦め悪く、ショーンは、「来ない方がいい」と、カールに告げた。
カールは首を横に振った。
程なく、ドアは開かれる。
開けられたドアの向こうにいた人物に、カールは、笑いたいような、泣きたいような気分になった。
予想通りだったと、言えばそうだ。
だが、そうじゃなければいいと、最初に思った人物ともいえた。
片手でドアを開いてカールを招く人物は、悪戯なきらめきを瞳に浮かべて、魅力的に微笑んでいる。
「どうぞ」
「……ありがとう」
視線を合わせておくことができずに、俯いてドアを通り抜けようとしたカールを、ヴィゴは、ぎゅっと抱きしめた。
カールは身体を固くする。
ヴィゴは、カールの耳元に唇を寄せて、笑いを含んだ声で囁いた。
「カール。まず、ショーンがあげたキスを返してくれないか?」
カールの顔はヴィゴの両手で挟まれて、笑いの形にカーブした唇がカールに近付いた。
カールが逃げる間も与えない。
カールの唇は、ヴィゴによって塞がれた。その上、舌が唇をノックする。
驚きのあまりカールは、一瞬目を閉じてしまった。
じっくりと待っているヴィゴの態度に、恐る々々目を開けると、光の加減で色を変えるとてもセクシーな目が、銀に光って、カールのことを笑っていた。
「カール?」
僅かに唇を離して、ヴィゴが笑う。
「こんなキス?ショーンにしたのはこんなキスだけ?」
ヴィゴは、カールの髪を撫で、もう一度顔を重ねた。
舌が、カールの舌に絡む。
恋人にするように優しく、心地よく。甘やかすようなキス。
さすがだと、言うのになんの遜色もないムードと技巧だった。
大好きなヴィゴとの初キスが、こんなシュチエーションだというのが、カールの覚悟を打ち砕いた。
百万回もカールが胸の中でシュミレーションした、どのパターンとも、ヴィゴの態度は違っていた。
ヴィゴは、カールを優しく迎え入れ、髪を撫で、キスをした。
一発くらい殴られる覚悟をしていたカールは、膝の力が抜ける思いだった。
情けない話だが、取れるものなら、取りたいと思っていたイニシアティブを取る根性も抜け落ちた。
唯々諾々と、ヴィゴのキスに翻弄されている。
どんな舌の構造をしているのか、ヴィゴは、カールの口のなかにある気持ちのいいポイントを的確に刺激していった。
このままでは、カールだけが、気持ちよくしてもらうだけになってしまう。
カールが、だらりと落していた腕を上げて、ヴィゴの背中を抱こうとすると、ヴィゴは、唇を引き上げて、笑う表情をした。
隙間なく、くっついた唇のせいで、カールは、ヴィゴが思い切りこの状況を楽しんでいるが、よくわかって、ますます負けたと、力が抜けた。
それでも、なんとか力を振り絞って、ヴィゴの腰を抱きしめて、重なっている顔を、少し自分に優位な位置に変えた。
ヴィゴは、カールの絡ませる舌に、からかうような動きで触れる。
カールが意地になって追いかけると、笑いながら、顔を離した。
ブルーの目が、カールの目をのぞきこむ。
「ショーンが、気に入るわけだ」
ヴィゴは、歯を見せて、カールに笑った。
カールの腰を抱くと、額を重ね合わせて、カールの髪を優しく撫でた。
「よく来てくれた。逃げ出さずに、ここに来たカールの勇気を歓迎するよ」
ヴィゴは、いつもよりずっと親密に、カールのことを抱きしめた。
勇気だけだったら、ここにはこられなかったカールは、ヴィゴの腕の中で、居心地の悪い思いをした。
「…勇気とは、言えないと思う」
カールは、尊敬するヴィゴに、つい、正直に語ってしまった。
「まぁな。ショーンのこと、ちゃんと、食いたかったんだろ?大丈夫、ちゃんと食わしてやるからさ」
ヴィゴは、にやりと笑うと、カールを部屋の中へと導いた。
手を握っている。
ヴィゴに手を繋がれて導かれていくカールは、繋ぐ手の暖かさに、どうしていいのかわからなかった。
「ショーン、お待ちかねのカールだ」
ヴィゴは、部屋の中央にあるベッドの前で、カールとショーンを引き合わせた。
カールは、ここでも、どういう態度をとっていいのかわからず、ベッドに腰掛けるショーンに、思わず手を振った。
ショーンは、白いガウン姿で、ベッドの端に腰掛けて、困ったような顔をすると、同じようにカールに手を振る。
2人は、目の前の現実にうまく対処出来なくて、ぼんやりとした笑いを浮かべて、間の抜けた行動をするしかなかった。
「キスしないのか?」
ヴィゴは、カールの手を握ったまま、唇を突き出すようにして、ぎこちない2人を笑った。
カールは、握られたままの手が気になって、ショーンの顔をしっかりと見ることもできなかった。
「すればいいのに」
ヴィゴは、愛人との関係を満足に味わおうとしないカールとショーンを不思議そうな目で見ていた。
「ショーン、せっかくカールが来てくれたんだ。挨拶のキスくらいちゃんとするんだ」
ひしゃりとヴィゴがショーンに言いつけた。
落着かない様子でベッドに座っていたショーンが、ヴィゴの言葉に、腰を上げた。
戸惑いがちに視線をそらせながら、カールに近付き、唇を触れ合わせる。
ヴィゴは、ショーンの態度に小さく頷いた。
それに促されるように、ショーンは、唇を開き、カールに深いキスを始める。
ヴィゴが、やっとカールの手を離した。
どうぞ?と、いうように、腕を広げて、カールにショーンを抱きしめるよう示す。
カールは、戸惑う気持ちを捨て去ることはできなかったが、ショーンの腰を抱きしめ、髪を撫でながら、キスに応えた。
「…ショーン、大丈夫?」
触れたいのか、触れたくないのか迷うような舌の動きで、カールの口のなかをさ迷うショーンは、唇を離すと、首筋を赤くして、下を向いてしまった。
「…なんで、来たんだよ」
「だって…」
小さな声で交わされた会話を、ヴィゴは、また、少しばかりきつい言い方で遮った。
「ショーン、カールは、ショーンのために来てくれたんだ。誰だ?何度も何度も、カールを誘惑しようとしていたのは?そんな風な口を利いちゃ、カールに対して失礼だろう?」
どんな弱みを握られているのか、ショーンは、一言の反論もせず、カールのことを抱きしめ、肩に顔を伏せた。
諦めたような態度で、カールに抱きしめられるのを待っている。
「…ヴィゴ?」
カールは、この状況をどう理解すればいいのかわからず、とりあえずショーンの腰を抱きしめたものの、困ってしまってヴィゴを見た。
ヴィゴは、肩を竦めるようにすると「ゲーム中でね」と、笑う。
「今日のショーンは、嫌だと絶対に言わない約束なんだ。だから、カールのしたいことをどんな風にしていもいい。どうせ、沢山考えただろう?そのどれをしても、ショーンは、絶対に嫌だとは言わない」
ヴィゴは、するするとショーンに近寄り、ショーンのガウンの裾を掴んだ。
カールの視線がそこに集まるまでしばらく動きを止めた後、ゆっくりと裾を捲り上げ始める。
腕の中で、ショーンが身体を固くした。
「見てやって?おめかししてカールのこと、待ってたんだぜ?」
ヴィゴによって、ガウンを捲り上げられ、白い尻を晒したショーンは、殆ど布地のないショーツを見せて尻を震えさせていた。
「似合うだろ?ま、俺が履かせたんだけどさ」
白い肌に、どぎついブルーの紐だといっていいような下着が肉を噛むように食い込んでいた。
ショーンがこんな下着を着けているのを、はじめて見た。
目に痛いような光景だった。
「触らないのか?」
ヴィゴは、片手でガウンを捲り上げたまま、片方の尻の肉を掴んで捏ね回した。
ショーンは、カールの肩に顔を伏せたまま、項を赤くして身体に力を入れている。
「触っていいの?」
カールは、戸惑いよりも勝った欲望に唆されて、ヴィゴの目をうかがった。
「勿論。ショーンもカールに触って欲しいよな」
ヴィゴの大きな手で、尻の肉をつかまれ、上に引き上げられたり、広げられたりしているショーンは、カールの肩口で小さくなにか文句を言った。
けれども、なんの行動にもでなかった。
カールがショーンの尻を掴んでも、同じだ。
「前も触っていい?」
滑らかな手触りの尻を撫で回した後、カールは、ヴィゴをうかがった。
この場の決定権は、ヴィゴにあった。
ショーンは、ヴィゴに逆らわない。
ヴィゴが触れていないほうの尻を掴んでいたカールは、白い尻に食い込む下着の前の部分が気になって、ショーンの体を自分から離した。
ショーンは、顔を真っ赤にして、かわいそうなくらい下を向いてしまっている。
カールは、ショーンのガウンを捲った。
「これは、また、セクシーな」
後ろは、ショーンの特殊な体質によって無毛だったから、紐のショーツでも、全く問題なかったが、前の毛は人並みにあるため、ヘアーが小さな布地の部分から、思い切りはみ出していた。
「こういう見せつけるタイプの下着が好き?」
わざとこういう下着をはいて、自分を見せつけるタイプの人間はいるが、ショーンはそんな風に見えなかった。
ショーンは、返事をしなかった。
身体を固くして、カールの肩に顔を埋めている。
膨らみにそって布地が盛り上がり、面積が小さすぎるせいで、ブルーの生地から先っぽがいつ見えても不思議じゃなかった。
「ショーンに、似合うだろ?俺はいつも勧めるんだけどね。なかなか履いてくれないんだ」
カールは、人が悪く笑うヴィゴに、困ったように笑い返すと、どぎついブルーに指先で触れた。
ショーンが、びくりと身体を引いた。
後ろには、ヴィゴがいて、ショーンの体を抱きしめるようにしながら、尻の肉を捏ね回している。
「本当に、俺も、混じっていいの?」
「ショーンに、聞いてみな?ショーンだって、カールのことが欲しくてたまらないはずだぞ?」
カールは、ガウンの裾を離さないままで、ショーンの顎を掴んで、顔を上げさせた。
ショーンは、泣きそうな目をして、必死にカールから視線を反らそうとしている。
「ショーン。ヴィゴは許してくれたんだけど、俺と、セックスしてくれる?」
ショーンは、目線を泳がせ、救いを求めるような顔をした。
「……・嫌、だったら…止めるけど」
カールは、自分の腰をショーンの下着に擦りつけて、欲望をアピールした。
ショーンは、きつく目を瞑る。
カールは、ショーンの表情を見守った。
ここで嫌悪の表情が湧いてきたら、大人しく引き下がるつもりだった。
しばらく沈黙が起きた。
ヴィゴは、にやにやと笑いながら、ショーンの尻をもみしだき、時にカールごと、ショーンを抱きしめた。
「……する。……したい。カール。止めないでくれ」
ショーンは、とても小さな声で呟いた。
ヴィゴは褒め称えるようにショーンを抱きしめ、カールにキスを贈った。
「じゃ、ショーン、カールに準備してもらいな。ベッドにあがって、いつものポーズだ」
カールがヴィゴのキスに驚く間も与えずに、ヴィゴは更にカールを驚かせた。
ショーンが、頭をベッドに擦りつけるような格好で、四つん這いになってベッドに上がった。
足を大きく開いているせいで、下着の食い込み加減が、全てカールたちに丸見えだった。
「ほら、ショーン、お願いして」
ショーンは、小さく口の中でなにか呟いた。
カールには、聞き取れなかった。
「ショーン、カールは、こんな恐い招待に応じてくれたんだぞ?ちゃんとおもてなしして当然だろ?」
ヴィゴがもう一度、ショーンを促した。
ショーンは、耳まで赤くなっていた。
肩が震えていた。
もしかしたら、泣き出してしまっているのかもしれない。
「カール…俺の内を、柔らかくして…くれ」
辛うじて聞こえたショーンの声は、カールの頭を撃ち抜くのに十分だった。
ヴィゴが顎をしゃくって、ベッドボードを示している。
カールは、飛び付くように、引き出しを開けると、中からゴムと、ジェルを取り出した。
ヴィゴが、カールから、ゴムのパッケージを取り上げる。
「綺麗にしたから、そのままで」
ショーンが、ヴィゴの言葉に腰を捩って、反応した。
赤くなっている肩が小刻みに震えている。
確実に泣いていると思った。
「……もしかして、ものすごく、お仕置きした?」
カールはショーンの尻を抱きこむように紐を横にずらし、穴に指で触れながら、ヴィゴを見上げた。
ヴィゴは、嘘つきな顔で、首を横に振る。
「特に問題なく愛情深く、ショーンに触れただけだけど?」
ヴィゴは、楽しそうな顔をしてカールのことを見下ろした。
カールの腕の中で、ショーンが身じろぎをして、抗議を示した。
しかし、なんの文句も言わなかった。
ヴィゴが、ベッドに腰を下ろした。
ショーンの尻に口付けをして、大きく、尻の肉を左右に開く。
穴が、横に向かって延びた。
かわいそうだが、そそる眺めだ。
カールは指先にジェルを搾り出すと、内へとねじ込んだ。
内は、カールを受け入れ、ぎゅっと指を締め付けてくる反応のよさだ。
「柔らかくする必要がないみたいだけど?」
正直な感想を、カールはヴィゴに告げた。
「でも、ショーンは、カールに触って欲しいって言ってた」
ヴィゴは、逃げ出しそうな背中にキスを落としながら、鼻先で、ショーンのガウンを捲っていった。
腰紐の部分で止まって進めなくなっている。
ヴィゴに促され、カールは、ガウンの紐を解いた。
ヴィゴは、ショーンの尻を掴んだまま、背中を首に向かってキスしていく。
「そこが好き?」
優しく愛撫するように、唇でショーンの背中を辿るヴィゴに、カールは、聞いた。
「いろいろ好きだけどな。ここは、大層愛すべき部分だと思わないか?」
ヴィゴは、ショーンの背中に顔を伏せたまま、目だけを上げて、カールに質問した。
目が、不思議な色をしていた。
一言で言い表すのが難しい、不思議で、複雑な魅力に溢れている。
まるで、ヴィゴ自身を形容するように、簡単には言葉で言い表せない。
ショーンの背中の美しさについては、カールに否はなかったので、ショーンの内に入れ込んだ指を激しく出し入れしながら、ヴィゴに向かって頷いた。
ショーンの内の粘膜が、カールの指をくわえ込んでいる。
柔らかいくせに、きつく噛んでくる肉は、ショーンの困惑とは関係なしに、カールのことを煽り立てていく。
カールは、指の数を増やしながら、デリケートな内部を蹂躙しつづけた。
ショーンの腰が揺れる。
ヴィゴが、きつく背中に吸い付くたび、きゅっとカールの指を食いしばる。
「すげー淫乱な尻」
「そうだろ?これで、3人でするのが嫌だと、言ってたんだ。信じられないだろ?」
すっかりガウンが肩に寄ってしまったショーンは、裸よりもいやらしい格好をして、ベッドに顔を伏せていた。
下着の紐が、尻に食い込んで、痛いんじゃないかと思わせた。
前は、ペニスが布地を引っ張っていた。
ショーンのペニスは、大きくなりすぎて、小さな布地から、はみ出していた。
カールはその先端を柔らかく撫でた。
粘液で濡れる部分を指の腹で、優しく愛撫する。
ショーンが、小さな声を漏らした。
息の音だというには、高いうめきに、カールは、口元を緩めてしまう。
「どうする?ショーンにサービスしてもらうか?」
ヴィゴは、ショーンの体を撫で回し、あちこちを唇で啄ばみながら、カールの主張する下半身に視線を送った。
せっかちなカールを笑っている。
「いいの?」
「いいも、なにも。どうせ、もう、したことも、してもらったことがあるんだろ?ショーンを虜にしたお前のものを俺にも見せてみろよ。恥かしい?なんなら、俺も脱いでやろうか?」
カールは、ヴィゴの挑発に、鼻の頭に皺をよせた。
「遠慮するな。待たせたら、ショーンがかわいそうだろう?」
ヴィゴは自分からさっさと脱ぎ出し、カールも慌ててジッパーを下げた。
下着を脱ぎ捨てると、ヴィゴが口笛を吹いた。
カールこそ、大袈裟にため息が尽きたかった。
年や、撮影のきつさなど、そういった悪条件を簡単に無視して、ヴィゴのペニスは、ショーンを威嚇するように立ち上がっていた。
「舐めてもらえば?」
ヴィゴは、下品に口を開けて、舌を突き出すと、カールにどうぞと、手を差し出した。
「ショーン」
それから、優しいけれど、きっぱりとした声で、ショーンの名を呼ぶ。
ショーンは、のろのろと顔を上げた。
睫が涙で濡れていた。
赤い目元で、カールを見上げ、ショーンは口を開く。
「うっわ。ほんとに?」
ショーンは、唇の中にカールのペニスを迎え入れた。
濡れた温かな感触が、カールを包み込む。
ショーンは、恥かしそうに目を伏せたまま、カールのペニスを唇で扱いた。
「本当に、何でも、言う事を聞いちゃうの?」
「そういう約束。まぁ、無理なことをさせるつもりはないけどな」
ヴィゴは、さっきまでカールが座っていた場所に移り、ショーンの尻を広げていた。
ヴィゴの指が前後するのにあわせるように、ショーンが頭を振る。
いいところを擦られるたびに、鼻から甘い声を漏らして、ぎゅっと、ペニスを吸い上げる。
「どうしたら、こんな風に…」
この間より数段気持ちのいいショーンの口のなかに、カールは顔を顰めながら、思わず呟いた。
「愛情。それ以外、なにがいる?」
ヴィゴは、真顔で、カールの顔を覗き込んだ。
こういうところに、カールは、ヴィゴのすごさを知る。
愛情を出し惜しみしないのは、結構難しい行為だ。
簡単にそれを実行できてしまうヴィゴに、カールはまた、気持ちが惹かれる。
「…羨ましい」
「誰が?俺が?」
ヴィゴは、ショーンのことを自慢するように、にやにや笑って、歯をみせた。
「いいだろ?これだけの恋人は、なかなか手に入らないぜ?まぁ、浮気心が押さえられない尻軽ではあるがね。でも、それを補って余りある、すばらしい存在だ」
ヴィゴは、ショーンを甘く鳴かせながら、丸い尻にキスをした。
ヴィゴの指が、小刻みに同じ動きを繰り返していた。
同じ所を刺激している。
ショーンは、時折、舌を動かすが、ひくひくと震えるように口を開けたまま唾液を零してしまっている。
「ヴィゴ。あんまり、しないでよ。ショーン、がんばってくれなくなっちゃったよ」
ヴィゴは、笑いながらカールを手招きした。
顔を近づけたカールに舌を伸ばして、唇を寄せる。
「代わりにこっちを満足させてやろう。俺は、キスには自信があるぜ?」
その噂については、ドアを開けたときに、すでに体験させてもらったので、カールは、そうそうにしっぽを巻いて逃げ出した。
順番を譲られたカールは、ショーンの中にペニスを埋めていた。
あの殆ど役目を果たしていなかった下着も脱がされ、裸にされてしまったショーンは、四つん這いのままカールのペニスを尻一杯に頬張っていた。
口には、ヴィゴのペニスを頬張っている。
ヴィゴは、優しくショーンの顔を撫でていた。
カールに突き入れられるたび、身体を捩って高く鳴く、ショーンの髪を撫で、キスを何度も与えている。
「気持ちいい?ショーン?」
最初のとまどいを忘れ去ったショーンは、ぐすぐすと崩れ落ちるように快感の虜になっていた。
おもしろいほど簡単に、ヴィゴの言葉に頷いている。
「じゃぁ、カールのペニスが気持ちいいって言わないと」
「…カールのペニスが…気持ちいい。なか…もっと、してほし…い」
ペニスを頬張ったままの不明瞭な声が、もぐもぐと聞こえた。
カールは、思わずショーンの尻を掴んでいる指に力が入ってしまった。
爪が、尻肉に食い込んで、その部分が赤くなった。
ショーンは、その刺激にも、尻を振る。
「…エロい」
カールの受けた衝撃は、3Pという異常なシュチュエーションにあっても、まだ、興奮させる要素があったことを示していた。
「もっと、エロいショーンのこと、見たい?」
ヴィゴが、悪戯をそそのかすように、笑いかけた。
「まだ?まだ、なんかあるの?」
「せっかく、3人いるんだから、それを利用して一度してみたかったことを、ね」
ヴィゴは、ショーンの口からペニスを引き出しながら、楽しそうに笑った。
カールは、少し眉を寄せた。
「…無理じゃない?俺、ショーンに怪我させたり、そういうのは、ちょっと…」
ショーンの後ろは、カールのものを受け止めることに無理はないようだったが、ヴィゴのものまで受け入れられるのか。というと、カールは渋い顔になりそうだった。
いくら、恋人の承諾があっても、痛みを与えるには、ショーンのことが愛しい。
例え、やってみたい好奇心があっても、我慢できるほどには、カールは、ショーンを愛している。
「…なに、想像した?」
ヴィゴは、すっかり蕩けているショーンの顔を抱き寄せてキスすると、カールを笑った。
「そんなことは、カールがしたいって言ってもさせない。俺は、ショーンを愛してるからね。ショーンを酷い目に合わせる気なんて、これっぽっちもないんだ」
なんだか酷いお仕置きをしたらしいのに、ヴィゴは、正々堂々カールに主張した。
カールは、困って眉が寄った。
「じゃぁ。なにするの?」
「まず、一回、ショーンから抜くんだ」
ヴィゴの言葉に、カールがショーンから、ペニスを抜いた。
すっかり力の抜けているショーンは、丸くて魅力的な尻だけを突き出すように、ぺたりとベッドに崩れ落ちた。
「ショーン」
ヴィゴは、肩や、胸にキスを与えながら、ショーンを抱き起こし、背中から、ショーンを抱きしめた。
足首をカールに持ち上げるよう指示すると、持ち上がった足を自分で掴んで引き上げる。
ショーンがはっきりと目を開き、真っ赤になった。
ヴィゴに抱き込まれているショーンは、カールに向かってVの字に足を開いて唇を強く噛んでいる。
「カール、いれられる?」
ヴィゴは、ショーンを膝の上に抱き上げるようにして尻の角度を上げた。
深くヴィゴの倒れ込んでいるショーンは、べとべとに濡れた入り口を晒して、小さく震えている。
「こういう感じにしてみたいなぁって、一度思っていたんだよ」
ヴィゴが満足げにカールに視線を送った。
「…趣味悪…」
幼児プレイ?と、首を傾げたくなるポーズは確かにカールをそそった。
しかし、かわいそうなほど震えているショーンに、カールは立場のチェンジを要求した。
「いいのか?」
「いい。俺は、後で、普通にやらせてもらうから」
「バックから、尻を掴んでするのが好き?」
ヴィゴは、目を見開いて食べ物の好き嫌いを尋ねるようにカールに聞いた。
カールは、そんなヴィゴが、大好きだと、力の抜ける思いで思った。
カールとヴィゴが場所を入れ替える時に、小さく首を横に振っていたショーンは、何度か、ヴィゴにキスされると大人しくカールにもたれかかってきた。
「ショーン…あんたさぁ、すごい恋人持ってんね」
「……うるさい」
ショーンは、カールに足を広げられたまま、恥かしそうに顔を背けた。
それでも、自分から身体の力を抜いて、ヴィゴのことを待っている。
「あんた、本当に、ヴィゴのことが好きなんだね」
「…お前だって、ヴィゴのこと、好きなんだろうが」
ショーンが、カールを見上げたので、カールは、その唇にキスをした。
ヴィゴがショーンの中に入り込んで、ショーンの舌が、ぴくぴくと動く。
小さく突き入れられると、ショーンは、カールの口の中に甘い声をもらした。
「…んっ、ヴィゴ」
ヴィゴは、優しい顔をしながら、ショーンを小刻みに揺すっている。
「ヴィゴ、ショーンが俺のこと誘ったのって、あんたとやりたかったからだって、知ってた?」
カールは、ヴィゴの要求どおりに、ショーンの足を大きく開かせたまま、ショーンを抱きこんでヴィゴの顔を見つめた。
ヴィゴは、笑っている。
「知ってるさ。ニュージーランドの来たのは、撮影のためだってことすら、忘れてるような態度だったろ?」
ショーンは、頭の上で交わされる会話に嫌だと首を振っているが、手を伸ばして、ヴィゴを抱きしめようとしていた。
「意地が悪いな。大事な恋人なんだろ?精々かわいがってやればいいのに」
カールを忘れたようなショーンの態度に、カールは、ショーンの乳首を指先で引っ張った。
ヴィゴが顔を顰める。
カールは小さく笑った。
ショーンが強く締め付けて、ヴィゴを離さないでいるに違いない。
「ショーンを精々可愛がる?」
ヴィゴは、渋い顔でショーンのことを見下ろした。
「ショーンをこれ以上我慢のできない身体にして、イギリスに返すなんて真似、そこまでの度量がないんで、俺にはできないな」
ヴィゴは、何度か息を吐き出し、落着こうと努力をしてから、また、腰を動かし始めた。
ショーンが、たまらない声を上げている。
「…我慢させてたわけ?……もしかして、しつけ?」
抱き込んでいるカールすら煽る程、腰を振っているショーンに、調教という言葉が思わず頭に浮かんだが、カールは、あえて、温厚な言葉を使った。
ヴィゴが肩頬を上げてにやりとする。
「まぁそうしようとして、失敗したわけだ。…カールのことは俺も好きだから、問題ないけどな」
カールはまた、ヴィゴのキスを受けた。
何度目になるかわからないキスは、ショーンが虜になるのが全く頷けるほど、上手い。
キスをするため、もどかしくなった腰の動きにショーンが、不平を漏らすような声を上げた。
ヴィゴの背中を抱きしめて、乳首に吸い付くと、チュウチュウ音を立てている。
「……どうしょうもない」
カールとヴィゴは、顔を見合わせてくすくすと笑った。
ヴィゴは、カールにショーンの足を離すよう言うと、自分で肩に担ぎ上げた。
カールは自由になった手で、ショーンのペニスを握った。
自分の腹を粘度の高い液体で濡らしているペニスは、カールの手に握り込まれてぴくぴくと震えた。
うっとりと、瞳が濡れている緑がカールを見て反り返った。
唇が開いて、カールのキスを待っている。
ヴィゴの腰が動き出し、甘い声を上げつづける唇をカールは塞いだ。
カールの口のなか一杯に、ショーンの喘ぎが溢れていく。
カールは、震えるペニスを扱いた。
内を擦られ、ショーンは、限界を迎えている。
重ねた唇の中は、悲鳴に近い声が溢れ出した。
唇を重ね合わせていられなくて、顔を横に振っている。
ヴィゴがカールの肩を指先で叩いた。
「カール、ちょっとだけ、ショーンにキスさせてくれない?」
ヴィゴの顔も苦しそうに顰められていた。
瞳が申し訳なさそうな色を浮かべている。
ショーンが顔を振っていた訳のわかったカールは、恋人同士の習慣を邪魔しては悪いと、ちゃんとその立場をヴィゴに譲った。
ショーンが、ヴィゴの首に縋りつき、しきりに唇を重ね合わせる。
「んんー。んっー」
ショーンは、鼻から甘い声を上げながら、カールの手をべとべとに濡らした。
いってしまって、へとへとになっているショーンは悪かったが、あんまりショーンが煽る姿を見せたせいで、カールも後戻りすることなどできず、ヴィゴに膝に縋りつくように顔を埋めているショーンの後ろを使わせてもらった。
最初、ヴィゴは、ショーンにペニスへの愛撫を強要していたが、カールに揺すられ、とうとう泣いてよがり出したショーンに、頭を撫でてキスを繰り返していた。
ショーンの頬を伝う涙を舌で舐め取っている。
「ラブラブだね」
断続的に締め付けてくるショーンの動きに、もっていかれそうになりながらも、カールは何とか、自分を保っていた。
ヴィゴが見ているせいだ。
見ていなければ、とっくに、ショーンにやられていた。
「ラブラブだろ?でも、カール、お前も混ざる?…つまり、これかも、って、ことだけど。ショーンのことを大事にしてくれるんなら、俺はそれでもいい。ショーンも、お前が気に入ってるみたいだし」
「うそ?」
「本当…ここに来る気になったのは、そういう下心もあったんだろ?」
あまり驚いて、カールは我慢するという義務を忘れてしまった。
締め付けるショーンの動きに引き摺られ、強く腰を打ち付けると、カール自身びっくりするくらいあっさりと射精してしまう。
内壁にかかる精液の感触に、ショーンが小さく痙攣を起こした。
カールは慌てて、腰を動かす。
ショーンが、腰を振って、いかせて欲しいとせがんでいる。
ヴィゴがショーンのペニスに手を伸ばした。
素早く擦り上げ、ショーンに精液を吐き出させる。
ショーンの後ろがきつく締まった。
もう一度、小さくカールに快感の波が押し寄せた。
「ふうー」
カールがため息をつくと、ヴィゴが、同じようでいて違うため息をついた。
汚れていないほうの手で、荒い息を吐き出しているショーンの背中を撫でている。
「混ざるとしたら、もうすこし、技術は磨いておいてくれるか?カール」
ヴィゴが真面目な顔をいい、カールは、真っ赤になって、俯いた。
「努力する?」
ヴィゴがカールの顎に手をかけ顔を上げさせた。
唇が近付いている。
「…努力する。だから、仲間にいれてください」
初めてカールから、ヴィゴにキスをした。
ヴィゴは、にやりと笑ってキスを受けると、カールに、ショーンにもキスをするよう促した。
ショーンを空港まで見送ることはできなかったが、それでも手の開いた人間は、撮影所に最後の挨拶に顔を出したショーンの回りに集まっていた。
たまたま、ブルースクリーンの前で撮影するよう指示の出ていたカールとオーランドは、ショーンの隣で嬉しそうな顔で話しつづける人のいい顔をした監督と一緒に、ショーンの最後を見送ることが出来た。
ショーンは、昨日の姿がうそのように、すっきりとした立ち姿で、にこやかに監督の話に相槌を打っている。
「カール…いい目みた?」
じっと、ショーンを見ていたオーランドが、突然、カールに話し掛けた。
ショーンが姿を現した瞬間に反応して飛び付きに行ったエルフの言葉に、カールはびくりと身体を固くした。
「いいなぁ。どうして、カールなんだろ。俺なんか、一部の時から、アピールしてるのに、全然、ヴィゴ、ガード固くて、指一本触れさせてもらってないのに」
ため息を付くオーランドは、飛び付いたついでに、ショーンにキスしていたはずだった。
エルフに相応しくない笑いを浮かべて、オーランドは、カールを見上げる。
「あの尻。あんなうまそうなの、そんなにないと思わない?」
ブルーコンタクトが、楽しそうな顔で、カールに同意を求めた。
カールは返事ができなかった。
どこで嗅ぎつけたのか、デイヴィッドが慌てたように撮影所の中に駆け込んできた。
衣装を着けたまま、胸で激しく息をしている。
それでも、満面の笑みをたたえて、ショーンに紳士的に近付いた。
ショーンも嬉しそうに微笑む。
「あーあ。また、被害者だ。ヴィゴも苦労が耐えないよな。こんな日に、野外撮影なんて、お気の毒」
オーランドは小さく呟くと、人が悪く笑った。
ねっと、カールにも笑いかける。
ショーンの腰から目を離そうとしないオーランドの隣で、カールはどういう態度をとるべきなのかわからなかった。
デイヴィットは、ハグを装って、ショーンの体の感触を楽しんでいる。
ショーンは、気づかず、抱き返している。
カールは、次々と現れるライバルたちの存在に、誘惑するような顔で笑うな!と、ショーンを叱りつけてやりたかった。
ショーンは、カールの心情などまるで知らずに、皆に向かって、照れたようなくらくらする笑顔を、振りまいている。
相変らずだ。
カールは、自分が気の毒になった。
END
とりあえず、本編終わりvv
お仕置き編は、どうしましょう?
皆さん、もう、おなか一杯なんじゃないですか?(笑)
題名に尻とつけたんですけど、誰も、豆さんのお尻について褒め称えてくれませんでした。
尻というキイなら、何度も叩いたんですけどね(笑)
皆、エッチで忙しかった模様。
書いてて楽しかったです。読んでても楽しいといいんだけどな。(笑)