お仕置き編
カールとの密会を終えたショーンを30分、じっくりと観察し、ヴィゴは、ショーンを、そっとセットの裏へと誘い出した。
1時間は焦らしてやるつもりだったが、明日、最後の仕事であるインタビューを受ける予定になっているショーンがかわいそうになったことと、ヴィゴ自身、残りの30分が待ちきれなくなったというのが、理由だ。
僅かに目配せしただけで、うまくショーンは仲間に囲まれた席から立ち上がった。
どうしたのだと、声をかけてくるキャスト達に、ふわふわと実のない笑顔を返しながら、適当に誤魔化している。
ショーンの隣で居眠りしていたオーランドが、自分の撮影のためにいなかったのも、ちょうどよかった。
煩いくらい自己主張をするエルフは、ヴィゴがショーンを誘い出すサインを見逃さず、きっと、さえずりまくっただろう。
「ヴィゴ?どこへ?」
呼び出されたことに、恐れながらも、どこか浮かれた様子の隠せないショーンは、ヴィゴの背中が見えなくなった場所で、小さな声を出した。
「こっちだ。おいで、ショーン」
ヴィゴは、セオデン王を務めるバーナード・ヒルと気が合い、彼と仕掛ける楽しい悪戯のために、この撮影現場にもスタッフ以上に詳しくなっていた。
つまり、ここを管理しているスタッフ以上に、ここの地理や利用状況を把握していた。
勿論、カールなどよりは、ずっと詳しい。
あんな誰が入ってくるかわからない鍵のない危険な場所に、ショーンを呼び出したりしない。
「ヴィゴ?」
ショーンは、姿のないヴィゴの声に、不安な様子だった。
ヴィゴは、その態度にすこし満足しながら、大道具の影から手を振った。
砦の一部を作ったセットの後ろに、小さな小部屋が1部屋あった。
設計ミスで出来たらしいその部屋は、道具類を仕舞うには手狭で、しかし、つぶしてしまうには、勿体無く、雑多なものを適当に押し込む倉庫として、放置されていた。
勿論、内側からも、鍵が掛かる。
そして、普段は、鍵などかけられていない。
邪魔されずに仮眠を取るには、ぴったりの空間だった。
そして、恋人と密会するにも。
「ヴィゴ」
ショーンは、ヴィゴの姿を確認すると、安心したように、微笑んだ。
それから、すこし、気まずそうに笑う。
自分が、悪いことをしたという自覚はあるようだ。
それが、恋人であるヴィゴに知られてしまっているという自覚も。
ヴィゴは、ショーンに優しい顔で微笑むと、手招きして、秘密の小部屋に招待した。
自分をどうにかして構ってほしいとアピールを繰り返す、困った恋人の肩を抱く。
わざとように、カチリ音を立てて、部屋の鍵をかけた。
ヴィゴは、まず、ショーンの体に鼻を寄せた。
おかしな事を始めた恋人に、ショーンは困った顔をして、ヴィゴのことを見つめていた。
ヴィゴは、ショーンの視線を意識しながら、まず、首筋に顔を寄せた。
「汗の匂いがするね。ショーン」
「…そう?」
ショーンは、嗅ぎまわるヴィゴの鼻から逃げ出したそうだった。
ヴィゴは、ショーンの匂いを探っていった。
胸の立ち寄り、そのまま顔を下げて行く。
ショーンの腹が、せわしなく息を繰り返した。
手が、ヴィゴの頭を捕まえてしまおうかと、迷うように構えている。
ズボンの前まで行くと、ヴィゴは、わざとらしく、盛んに鼻を動かした。
ショーンが、身を固くする。
「精液の匂いがする。ショーン」
ヴィゴは、はっきりと発音した。
「これは、かわいいワンコの匂い?」
ヴィゴは、身体を折り曲げたままで、下からショーンを見上げて、じっとショーンの目をのぞきこんだ。
唇の端を引き上げ、笑う。
ショーンの目に怯えが走る。
そんな顔をしなくてはいけないのなら、浮気などしなければいいのに、視線を泳がせ、言い訳を探すように口元を小さく動かす。
「…ヴィゴ」
ヴィゴは、ショーンの腰を抱きこんで、もっと股間に鼻を埋めた。
「嘘だよ。ショーンのいい匂いがする。可愛がってもらった?気持ちよかった?」
「………・」
ショーンは、唇を噛み締める。
恋人のこの浅はかさを、どうしょうもなく愛しているということを、ヴィゴはショーンに伝える気はなかった。
声を荒げるわけでもなく、ズボンの前に顔を擦り付けるヴィゴのことを抱きしめていいものかどうか、ショーンの手は迷うように、中途半端に持ち上げられていた。
ヴィゴは、身体を起こして、ショーンの顔を覗き込み、軽く首を傾げた。
ショーンは、言い訳を口にしようと唇を動かし、結局、なにも言い出せず、ヴィゴの肩のあたりを見た。
ヴィゴは、ショーンを、じいっと、全身舐め回すように見つめ、その視線にたっぷりとショーンがいろんな想像をしたあたりで、ショーンのことを抱きしめた。
ヴィゴが見つめているうちに、ショーンの表情がめまぐるしく変化し、その中に、叱って欲しいと懇願するような表情があったのに、負けた。
抱きしめる腕の確かさに、ショーンがほっとしたように、小さく息を吐き出す。
「どうしよう。どうして欲しい?ショーンは、俺に何をして欲しい?」
ヴィゴは、ショーンの耳を噛むように、囁いた。
「明日になったら、カールとさせてやるって言っておいたよな。それまで待てないような、淫乱は、どうされるのが当然だと思う?」
ヴィゴは、ショーンの願いを聞き入れることにした。そうした方がいいほどには、ヴィゴ自身、頭にも来ていた。
「……今回は、カールが…」
ショーンは、耳を噛まれる感触に目を瞑りながら、小さく言い訳を始めた。
「今回は、か。まさしくそうだな。今回は、だ。自覚があって嬉しいよ」
抱きしめながらも背中をさ迷うショーンの腕の感触に笑いながら、ヴィゴは、ショーンの髪を軽く噛んだ。
少しだけ引っ張る。
ショーンは、顎を上げて、小さく、あっと、言った。
「ショーン、カールを隣に座らせ、甲斐甲斐しく彼のことを構って、俺を焼かせようとしたのが、彼のプライドを傷付けるんじゃないかとは、思わなかった?」
「……あまり…」
ショーンのこの可愛らしさは、カールの手をさぞ煩わせたことだろう。
ショーンの無駄についている知恵は、恋人を振り向かせるためにするための手段をいくつも実行に移させるが、それが、巻き起こす反応について、まったくフォローを与えていない。
ヴィゴは、キスして欲しそうな唇に、口付けを与えると、少しばかりの懲らしめと、彼の欲する愛情を与えるために、ショーンの服に手をかけた。
こんな場所で、という思いが、きっとショーンにはあるのだろう。
首筋まで、真っ赤になっていた。
でも、こんな場所でも、されるというのが、きっとショーンの気にいるはずだった。
こんな撮影現場の物置のような部屋で、周りの物音を気にしながら、恋人からの慌ただしいセックスの強要。
今回のニュージーランド入りでは、撮影スケジュールが合わない関係もあり、現場では殆ど顔を合わせなかった。
一部のときのように、人目を忍んで、スリルを楽しむという遊びもなかった。
時間のあう限り、ヴィゴはショーンのホテルまで出かけたが、それでも、ショーンに会うためだけに、無理に時間を作らなかった。
理由がある。
自分勝手な理由だが、やっとショーンと一緒に過ごせない時間に少しなれたところだったのだ。
ショーンに全てを奪われる時間を過ごしてしまったら、また、一からやり直しだ。
撮影が済んで、イギリスに帰るショーンを恨んでしまう。
ショーンは、そんなヴィゴの思いなどまるで知らぬ気に、ホテルに出向いたヴィゴに向かって微笑みかけた。
誘惑する気が満々だった。
今まで会えなかった分を埋めるように、ヴィゴの全てを欲しがった。
愛しく、迷惑な存在。大好きなショーン。
ヴィゴは、ショーンとの距離を取ろうとした。
それが、全て裏目に出た。
「ヴィゴ?」
ショーンは、自分だけ、全ての衣装を剥ぎ取られて、不安そうな目をして、ヴィゴのことを見つめていた。
ヴィゴは、撮影用の衣装を身に着け、腰には剣まで下げている。
ヴィゴは、ショーンを視姦した。
自分のものの、どこが、汚され、どこが変わってしまったのか。
ショーンはヴィゴの強い視線に、手で、身体の前を隠そうとした。
ヴィゴは、ショーンの手をとって、身体の真横につけさせた。
ショーンの隠そうとした部分、ペニスが形を変えようとしていた。
いままで、カールに触られていたはずなのに、まだ、欲しがっている。
その正直さに、ヴィゴは笑って、ショーンを抱きしめた。
「ヴィゴは、脱がないのか?」
ショーンは、おずおずとヴィゴの背中を抱きしめながら、背中の衣装を掴んで言った。
「脱がない」
ヴィゴは、きっぱりと答えた。
「…なんで?」
ショーンは、戸惑った声をだした。
「ショーンに対する罰だから」
ショーンの目が悲しそうな色をした。裸の背中が固く強張った。
ショーンが誤解したのが、ヴィゴにはわかった。
セックスを期待しているショーンは、脱がないというヴィゴの言葉に、なにか別のことを強要されるのではないかと、すこし怯えている。
ヴィゴは、ショーンの尻を掴んだ。
ショーンの目がどうしたらいいのかわからないように何度も瞬きした。
「しないとはいってない。ショーンだけヌードでするって言ってるんだ。そう、がっかりするんじゃない」
「…がっかりなんてしていない」
ショーンの顔が赤くなった。
ヴィゴの背中をぎゅっと掴んで衣装をしわくちゃにしようとしていた。
「俺は、この後も撮影があるんだ。衣装を汚さないよう、協力してくれ」
ヴィゴは、緩く立ち上がっているショーンのものを手に握り込むと、にやにやと顔を歪めてショーンを笑った。
ショーンは、壁に手を付いて、ヴィゴのものを受け入れていた。
白い裸の後ろに、つま先まで衣装に覆われたヴィゴが腰を突き出して繋がっていた。
周りには、木材や、シート。雑多なガラクタ。作成中で放り出された発砲スチロールの岩などが、部屋の中に雑然と放り出されていた。
全ての衣装を剥ぎ取られ、白い身体を剥き出しにしたショーンは、一人だけ裸で、薄汚れた野伏に後ろを犯されていた。
「んっ、んん、ヴィゴ」
「ショーン、どうしてこんなに内が柔らかいんだ?」
わかりきっている答えを聞くために、ヴィゴはショーンの耳に囁いた。
ヴィゴは、ショーンを衣装の中に抱き込むようにして、裸の背中に野伏の衣装を擦りつけるよう抱きしめた。
「ショーン、答えて」
ヴィゴは、ショーンの乳首を指先で引っ張り、耳を噛むようにした。
ショーンは、首を振っている。
「ショーン、言わないと、止めるよ?俺は、ショーンの口でしてもらうだけでも、構わない」
ヴィゴは、指先に摘んだ乳首に力をこめた。
ショーンが、更に激しく首を振る。
「ショーン?」
ヴィゴが腰の動きを止めると、ショーンの背中がかぁっと、赤くなっていった。
「……カールに、触ってもらった…から」
小さな声が、ヴィゴの耳に届いた。
「気持ちよかった?」
ヴィゴは更に追い討ちをかけた。
力の抜けてきたショーンの腰を持ち上げるようにして、尻を突きださせる形にした。
ショーンの頭が壁にもたれかかるようにして下がってしまっていた。
「気持ちよかった?ショーン?」
答えないショーンに、ヴィゴは、突き刺さっているペニスをゆっくり引き抜いた。
口を開いている穴の襞にペニスの先端を擦りつける。
「……言わないと?」
ショーンは、項まで赤くして、俯いていた。
「そうだね。言わないと」
ショーンは、壁に縋りつきながら、振り返ってヴィゴを見上げた。
うらむような目をしていた。
「……気持ちよかった」
ショーンは、ヴィゴの目を見上げ、それから、思い切るように勢いよく下を向くと、目を瞑って呟いた。
「そう。それは、よかった」
ヴィゴは、余裕を持った声で答えた。
しかし、ショーンの尻を掴む指に力をこめて、痛みを与えるほど、大きく左右に開かせると、ぐいっと奥まで突き入れた。
ショーンが、喉の奥で唸った。
ヴィゴは、裸の背中に覆い被さり、ショーンの形のいい耳に齧り付いた。
「どういう風に触ってもらった?」
「指は、何本入れられた?」
「舐めて貰ったのか?大きく足を開いた間にカールの舌を入れて貰った?」
ヴィゴの声に、ショーンは、何度も頭を振った。
足が、がくがくと、小さく震えていた。
「ショーン、何もかも、正直に答えを」
ヴィゴは、ショーンの首筋を甘噛みした。
ショーンの体全体が震える。
壁に沿って、ずるずると沈み込み始めた。
ヴィゴは、ショーンと繋がったまま、腰を持ち上げ、甘い声で鳴かせながら、彼を積み上げられた木材に手をつく形で、床に膝を付かせた。
ヴィゴが、ショーンの背中に歯を立てながら、腰を動かすと、アラゴルンのマントが、ショーンの体に被さった。
それは、ショーンだけが裸であるということを強調した。
ヴィゴは、しっかり衣装を着込んでいるのに、ショーンの服は、床の上に脱ぎ散らかされている。
一人だけ丸裸であるのは、恥かしい。心細い。
ショーンは、マントの端を強く握って、ヴィゴに服を脱いでくれるよう目で訴えかけた。
ヴィゴは、勿論、わかっていて、衣装を脱がなかった。
ショーンの体を撫で回して、彼に、自分だけが素肌であることを、もっと自覚させた。
ショーンは、目を伏せたまま恥かしさに耐えていた。
「ショーン、答えがまだだよ?」
ヴィゴは、ショーンの中を浅く焦らすように先端で広げながら、ショーンの顎を掴んで、顔を向けさせた。
「…嫌だ」
ショーンは、ヴィゴを振り返って、縋りつくような目を見せた。
涙を浮かべた緑色がどんな効果を発揮するかわかっていた。
「何が、嫌?ここを奥まで突いてもらえないことが?それとも、尻だけ高くあげた、いつものポーズをとらせて貰えない事が?」
ヴィゴは、意地悪く笑ってやった。
ショーンは、顔を伏せる。
しおらしくみせているが、頭の中では、どうやったら、この状況を自分の優位に持ち込めるのか、めまぐるしく考えていることだろう。
こんな風に苛められるだけでなく、もっと、楽に気持ちよくなれる、ショーンの好きなパターン。
快楽に弱く、愛らしいショーン。
ヴィゴは、わざと、腰を動かす速度を緩めた。
入り口を広げるように捏ね回すだけに、留める。
「さぁ、ショーン、言い訳を聞いてあげよう。自分のしたことを正直に告白して、俺に許して欲しいと頼むんだ」
浅くなった挿入に、ショーンが、尻を振った。
先端の部分で、穴に触れるだけになったヴィゴを追いかけるように、尻を突き出す。
ヴィゴは、笑って、ショーンの背中にキスをした。
「俺も、ショーンの中に入れたいんだ。さっさと告白してくれないと、俺のほうが困ってしまうな」
ヴィゴは、尻の間にペニスを擦り付け、背中に薄く残っている自分の付けた跡に、口付けて回った。
ショーンが、唇を噛み締める。
「意地の悪い真似は…」
「意地が悪いのは、ショーン、あんただよ。そんなに、カールのペニスが味わってみたかったのか?」
ショーンは、ヴィゴを振り返った。
首に縋りつくように、腕を回して、首筋に顔を埋めた。
「だめだよ。そんな真似をしても、許してやらない」
ヴィゴは、腕を一本ずつ外して、じっと顔を覗き込んだ。
「ショーン、カールに何をさせた?あんたは、何をしてやった?」
ショーンは、目を反らした。じっと、埃まみれの床を見た。
ヴィゴはそんなショーンをじっと見つめつづけた。
「…キスを。それと、フェラチオ。…指を、入れてもらった」
「指は何本?」
ショーンは、激しく顔を振った。
「…わからない。あ…あの、気持ちよくて…」
目元を赤くしたショーンに、ヴィゴは、木材の上に置かれていたシートを引き寄せ、床に大雑把に広げ、そこにショーンを横たわらせた。
足を持ち上げ、ずぶりとペニスを入れる。
だが、まだ、奥までは、入れてやらない。
最初に奥深くへと刺激を受けているショーンは、もっと、奥を突いて欲しくて、腰を捩った。
「ショーンは、何をしてあげた?」
ヴィゴは、ショーンの腰を持ち上げて、白い尻を床から浮かせた。
期待だけさせて、そのまま質問を続ける。
「キスは、わかった。ああ、今日だけの話じゃない。今まで全ての日の話だ」
「…フェラをした」
「カールのは、大きかった?」
「…大きかった」
ショーンは、ヴィゴに抱きついた。
肩にしっかり顔を埋めて、引き剥がされまいと必死だった。
「ショーン、カールが好き?」
ヴィゴは、じりじりとショーンの奥へと進みながら、ショーンの耳元で囁いた。
「…好き。かわいい」
正直に答えれば、ペニスを与えてもらえるとわかってきたショーンは、ヴィゴの質問に顔を染めながらも、口を開き始めた。
もっと、指で弄って欲しかったのか?と、聞いても頷いたし、本当にセックスするつもりだったのかと、聞いてもそうだと言った。
ヴィゴは、ショーンの髪を撫でた。
質問の数だけ、ペニスはショーンの奥深くまで埋まっていた。
自分で仕掛けている質問なのに、答えを聞くほどに、ヴィゴの嫉妬心は、煽られていった。
自分が馬鹿馬鹿しくなる。
けれども、しがみついて離れないショーンの体温に、質問で生まれた冷たい感情の塊は、角が溶かされていってしまうのだ。
この仕掛けについては、ヴィゴ自身、信じられない。
いわゆる愛の奇跡とでも、いうのか?
「そんなに…淋しかった?」
どんな質問にも、ショーンは、答えを返していた。
たとえば、カールのを口で含んだ時の感触まで。
そんなことを言いながら、ショーンは、ヴィゴの腰に足を絡め、胸を隙間なく重ね、首に縋りつき、全身でヴィゴに縋りついていた。
とうとう、ヴィゴは、一番聞きたかった質問をして、しがみつくショーンの肩を優しく撫でた。
ショーンが、はっとしたように、ヴィゴの肩口から顔を離した。
じっとヴィゴの顔を見つめて、泣き出しそうな顔をした。
「淋しかった。……ヴィゴが俺のことに、飽きたのかと思った」
胸を突くような、切ない声だった。
言いながら、恥かしいのか、目を反らしていた。
ヴィゴは、思わず、ショーンの頭を抱きこんだ。
涙が零れ落ちそうな目元にキスをくり返し、キスを求めている唇に吸い付いた。
ショーンも吸い返してくる。
けれど、ここで甘やかしてしまうほど、ヴィゴだって、人生経験が少ないわけではなかった。
この尻軽には、反省することを覚えてもらわないといけない。
「だからって、浮気するってのは、どうだろう?」
ヴィゴは、ショーンの額に額をくっつけた。
ショーンは、じっと見つめてくるヴィゴの青い目が見ていられないように、視線を逃がした。
口元が、何か言いかけ、やはりいい、言い訳は見つからなかったようだった。
「おまけに、浮気だけじゃすまなくて、ショーンは、カールに大分心を奪われているようだし?」
ヴィゴは、ショーンの唇を甘噛みした。
歯で、そっと唇を引っ張る。
「ヴィゴは…カールが嫌いか?」
言うに事を欠いて、ショーンは、ヴィゴに尋ねた。
「いや、好きだよ。カールはとても、かわいらしい。じゃなきゃ、明日、誘ったりしないさ」
ショーンは、とこか怖がりな目をしたまま、ヴィゴの真意を探るように目の奥を覗き込んだ。
「そのことだが…本当に、三人でするつもりなのか?」
ショーンは明らかにカールを招待することを嫌がっていた。
だが、ヴィゴは、目の前でショーンをカールと共有することは許せても、見ていないところで、ショーンを好きにさせることなど許せなかった。
狭量で申し訳ない限りだが、あくまでショーンは、ヴィゴのものなのだ。
だれにも、渡すつもりはない。
「ここは、2人分なんて、簡単に飲み込んでしまいそうなのに?」
ヴィゴは、冗談めかして、腰を揺さぶると、ショーンは、高い声を上げた。
ヴィゴは、そのままショーンの好きな部分にあたるよう意識しながら、腰を動かし続けた。
ショーンが、ヴィゴの背中に指を食い込ませる。
散々揺すって、ヴィゴは、ショーンのペニスを手に取って、ぎゅっと、根元を強く掴んだ。
ショーンが目を見開いて、驚いた顔をする。
ヴィゴは、ペニスを愛撫する訳ではなく、本当に、強く握り込んだ。
痛みに、ショーンが顔を顰める。
後ろがきつく締まった。
「ショーン、最初に言ったろう?俺は衣装のままなんだ、汚さないで欲しいんだよ」
ヴィゴは、意識して、ショーンのいい部分ばかりを擦り上げた。
ショーンが腰を捩る。
苦しそうな顔をする。
手が伸びて、ヴィゴの指を引きはがそうとした。
ヴィゴは、手を離さない。
腰をもっと、早く動かす。
ショーンが、身体を丸め込むようにしながら、ヴィゴの腰に回している足をきつく締め付ける。
身体中にものすごく力が入っている。
痛いほど、ヴィゴのペニスが締め付けられる。
動きがままならない。
けれども、ヴィゴは、動きを止めない。
「…ヴィゴ、ヴィゴ!」
ショーンが、じたばたと暴れ出した。
時々、暴れることすら出来ずに、身体を固くもする。
「ショーン、いきたい?」
ひくひくと痙攣をする身体を意図的に更に追い詰め、ヴィゴは、しきりに顔を振りながら、浅い息を吐き出しているショーンに尋ねた。
ショーンは、うっすらと涙に濡れた目を開け、直ぐに苦しそうに目を閉じてしまったが、何度もくり返し頷いた。
「これは、お仕置きだから、我慢してもらおうかと思ってたんだけど…」
ショーンは、激しく顔を横に振って、ヴィゴの身体に縋りついた。
しきりに腰を動かして、ヴィゴの手の中から逃げようとしているのか、ヴィゴにペニスを擦りつけて、快感を得ようとしているのか、わからない動きをした。
もう、本人にも、どうしたいのか、よくわからなくなっているのだろう。
ヴィゴの言葉に、ショーンは、嫌だと強く顔を振った。
「じゃぁ、いくつかの罰を受けるのなら、許してあげよう」
快感に流されているショーンは、許されるのならと、ヴィゴを抱きしめ、何度も何度も頷いた。
ヴィゴ、ヴィゴと、うわ言のようにくり返し呼んだ。
とても、愛しい声だった。
「ここを帰る前に、ちゃんと、カールに明日来るよう、もう一度誘うんだ。いい?」
ヴィゴの言葉に、ショーンは、簡単に頷いた。
「ベッドの上に上がったら、嫌は無しだよ。なんでも、俺のいうことをきくんだ」
これにも、ショーンは、頷いた。
あまりに簡単に頷くので、ヴィゴは、くり返し刺激して追い詰めているポイントを少しだけ外して、ショーンの汗に湿った髪を撫でた。
「カールをお迎えする前に、ショーンの中を綺麗にしてやろうな」
すこし、楽になった刺激に、ショーンは微かに目を開き、困ったように、ヴィゴを見た。
ヴィゴは、にやにやと笑って、張り付いていた髪をかきあげ、額にキスをした。
「そうだ。あの下着。プレゼントしたのに、つき返されたアレ。アレを履いておめかししよう」
ショーンは、まじまじとヴィゴを見た。
顔全体に、嫌だと書いてあった。
「ショーン、『YES』は?」
ヴィゴは、的確に、ショーンを突き上げた。
ショーンが、高く悲鳴を上げる。
続けて突き上げると、せき止められていても、ぬるぬると粘液を零れているペニスの先端が、小さく震えていかせて欲しいとせがんだ。
「ショーン、『YES』だ。それ以外の答えは、要らないよ?」
ヴィゴは、片手で、ショーンの尻を持ち上げた。
角度を付けて、ずぶずぶと犯す。
ショーンは、ヴィゴの腰を足で締め付け、とうとう、YESと、大きく叫んだ。
ヴィゴの名を泣き叫んでいる。
もう、いいのに、YESを、繰り返している。
ヴィゴは、やっと、ショーンを許してやる気になった。
自分の魅力を利用することは知っていても、理解はしていない浅はかな恋人に、キスをしながら、ペニスを握り込んでいた手を離して、彼の最奥を、深く強く抉ってやった。
ヴィゴが、ショーンに服を着せてやっても、ショーンは、まだ、ぼんやりと床に座り込んでいた。
目が茫然として、焦点を結んでいなかった。
「満足した?」
ヴィゴは、小さく笑いながら、少しかがんで、ショーンの髪にキスをした。
髪は、すっかり汗で、湿っていた。
「ショーン、しっかり」
ヴィゴは、ショーンを抱き起こした。
ショーンは、ふらつく足で、なんとか立ち上がった。
「…嫉妬したヴィゴが、こんな風になるなんて、思わなかった」
ショーンは、ヴィゴの抱きついたまま、うっとりとした声を出した。
いかにも、充足したようすのショーンに、ヴィゴは、思わず、くすくすと笑った。
「どんな風にもなるさ。ショーンが、俺の気を惹きたいだけだとわかっていたから、今までは、努力して紳士的に振舞っていただけだ。最初にホテルにカールを連れ込んだ時だって、ショーンの事を犯り殺してやろうかと思ったよ」
ヴィゴは、ショーンの額にキスをした。
「…そうして、くれればよかったのに…」
ちらりと見上げたショーンの目がかなり本気だったので、ヴィゴは笑いながら、ショーンの唇にキスをした。
「今度からは、そうするよ。そうじゃないと、ベッドに招待する人間が増えていきそうだ」
この話題には、ショーンは、嫌そうな顔をした。
「カールを誘うのが、そんなに嫌なのか?」
ヴィゴは尋ねた。
「嫌だ」
「なんで?」
ヴィゴの質問に、ショーンは、難しい顔をした。
「…恥かしいし、気まずい」
ショーンは、小さく呟いた。
ヴィゴは気付かれないようにため息を付いた。
ヴィゴ以外とはセックスしたくないからと、いう答えを期待していたことは、永遠にヴィゴの秘密になった。
「そんな程度の理由じゃ、却下だ。浮気した罰だと思って、ちゃんとカールを誘っておくんだ」
ヴィゴは、そうさせる本当の理由を教えずに、ショーンの背中を抱きしめ、強制した。
「ちゃんと、カールに優しくしてやるから、ショーンは、何も心配しなくていい」
ショーンは、ため息をつき、ヴィゴに抱きしめられていた。
「ショーン、『YES』と」
「YES」
恋人同士は、キスをしてお互いをしっかりと抱きしめあった。
誰もドアをノックしなかった。
END
はい。お約束の、お仕置き編。
題名に捻りがなくて、ごめんさい。
内容にも、捻りがなくてごめんなさい。(笑)
最初は楽しく書いてたんですけどね、みんながどんなこと期待してるんだろう…とか、考えちゃって、ちょっと恐くなりましたよ。(笑)
もしかして、道具…とか、もっと酷い羞恥プレイとか、期待してました??
ごめんなさいねぇ…基本的にぬるいんですよ。私。
そういうのは、また、なんか、ふっきれたときに。(笑)