ダメだって、わかってた。4
服を脱がそうとすると、ショーンは、オーランドを突き飛ばした。
オーランドは、吹っ飛ばされるぎりぎりのところで、ショーンの服を強く掴んだ。
倒れこむオーランドの上に、バランスを崩したショーンが伸し掛かってくる。
「…最悪だな。お前」
上手く手を付いて、身体を支えたショーンは、残った片腕で、オーランドの頭も庇っていた。
ショーンの顔は、オーランドを庇えたことにほっとしたように、後悔と安堵が入り混じっていた。
小さな吐息が、オーランドの頬にかかる。
オーランドは、床の上に横になったまま、ショーンのポロシャツのボタンを外しだした。
打ちつけた尻と背中が痛かったが、そんなことに構っている場合ではなかった。
ショーンの緑の目が冷たくオーランドを見下ろした。
「何をする気なんだ。オーリ」
わかっているくせに、ショーンは、聞いた。
オーランドは、構わず、二つ目のボタンを外した。
「セックスなら、昨日しただろう」
やっぱりショーンはわかっている。
ショーンは、オーランドを引き剥がして立ち上がろうとした。
オーランドは、足を絡め、間接を重ね合わせて、簡単にはショーンが立ち上がれないようにした。
「お前…」
「ショーン。だってさ、そんなのが理由で、今日やらないって決まりにはならないでしょ?」
「おい、マジかよ。なぁ、本気でやる気なのか?」
「ここで、やらなきゃ、いつするって言うのさ」
捲り上げたシャツを首から抜こうとしても、ショーンにその気がないので、肩すら抜けない。
仕方なく、オーランドは、ショーンのズボンに手をかけた。
ベルトの留金をがちゃがちゃと言わせ、下のボタンを外す。
オーランドの頭を支えていたショーンが、手を離して、ジッパーを下げようとしていた手を掴んだ。
「やめろ」
ショーンは、恐い顔で睨んだ。
「ダメ。止めない」
オランドは、肘をついて身体を起こし、ショーンの首を引き寄せるとキスをした。
ショーンの唇は、開かない。
「どうしてなんだ」
オーランドがキスをやめるとショーンが聞いた。
「どうして?なんで、そんなこというのさ。わかってるでしょ。仲違いしてる時こそ、エッチしなくちゃ」
「…俺はしたくない」
ショーンの表情は、硬かった。
「いいよ、別に。ショーンは、転がっていてくれるだけで」
「俺はやりたくないって言ってるんだ」
ショーンは、繰り返した。
「もう、誠実ぶっちゃって」
オーランドは、ショーンの足を挟み込むようにして、ショーンが逃げられないようにすると、ズボンのジッパーを下ろした。
下着の上から、なんの感情も示していないショーンのペニスを撫でた。
手の中のものに、重さはあるが、硬さは無い。
オーランドは布の上から、ペニスを撫で回した。
ショーンが、オーランドを睨んだ。
オーランドはにっこりと笑った。
「じゃぁ、さぁ。ゆっくり、今後のヴィゴ対策について話し合う?」
オーランドは、ショーンのペニスの形を確かめるように、手の中に握りこんだ。
ショーンは、オーランドの鼻を摘んだ。
「どうして、そう、人の嫌がることばかりしたがるんだ」
「ショーンが、ちゃんと話し合いに応じてくれるなら、俺、ベッドのなかで、大人しく隣に寝転んで話合うだけでもいい」
「……だから」
ショーンは、苦い顔をした。
「…でしょ?ヴィゴとの熱い友情について、俺に口を挟んで欲しくないと思ってるんなら、この身体で、ちゃんと俺に愛情をアピールしな。俺を納得させてくれないと」
オーランドは、下着のゴムを引き伸ばし、手を離した。
ゴムがショーンの腹を打つ。
ゴムを伸ばした拍子に、ペニスを覆う金色の毛が見えた。
アソコへのキスは、オーランドにしか許されていない。
そう、ヴィゴは、したことが無いはずだ。
オーランドは、ショーンの顔を見上げて、にやりと笑った。
「得意じゃん。ショーン。この2ヶ月?だっけ。ずっとのらりくらりとヴィゴに打ち明けることかわしてきてさ。その間に、何回、俺のことこの方法で丸め込んだ?ケツ使うの辛くなくなったら、途端に、自分の持ち札の一枚にしちゃってさ。それさえちらつかせれば、俺が言う事をきくって……ほんと、あんたって不誠実な人だよね」
オーランドは、ショーンを散々になじりながら、見えている首筋や、腕、至るところに口付けて回った。
伸び上がり、嫌がって逃げる頬にも何度も、何度もキスをした。
ショーンは、顔を顰めている。
「ショーン。好きだよ。大好きだ。セックスさせてよ。あんたの身体を抱きしめさせて。そうしたら、今日のことは許して上げる」
オーランドは、きつく閉じているショーンの小さな口に齧り付くようにキスをした。
ショーンの協力なくして、脱がずことの難しいポロシャツを諦め、オーランドは、ショーンのズボンのみを脱がせた。
それも、散々、抵抗にあったが、引き摺り下ろしてしまえば、あとは何とかなる。
膝まで降りてしまえば、もう、ズボンは、ショーンの抵抗を封じる道具になりはすれ、ショーンを助けはしなかった。
下肢を裸にして、ショーンがオーランドを睨んだ。
「ショーン。いいでしょ?だって、俺、したいんだもん」
オーランドは、ショーンの上に伸し掛かり、動けないようにして、頬へのキスを繰り返した。
「…俺はしたくないって言ってるだろ」
「なんで?ショーンのこと気持ちよくしてあげるよ。もう、全然大丈夫なんだから、嫌がる理由なんてないでしょ」
ショーンの髪に埃が絡んでいた。
さすがのオーランドでも、床の上では、かわいそうだと思い、ショーンをベッドの上に引きずり上げた。
「大好き。ショーン」
不機嫌な顔にキスをしながら、オーランドは、柔らかいペニスを撫でた。
手の中に握りこんで、きゅっ、きゅっと、何度も力を入れた。
「ショーン。お願い。大好きだから、やらせて」
オーランドは、枕へとショーンを押し付けながら、頬にも顎にも額にも、高い鼻にもキスを繰り返した。
手の中のペニスを決して離さなかった。
片手でショーンの頬に指を食い込ませるようにして、嫌がるキスを承知させると、ショーンが、ぷいっと横を向き、諦めモードに入った。
オーランドは、すかさず、ショーンの足を抱え上げた。
両方の腕に一本ずつ、両足を抱かえ上げ、左右に大きく開いて、その間に頭を突っ込む。
ショーンは、体を起こそうとした。
ショーンは、このポーズでのフェラチオがあまり得意ではない。
確かに、ショーンの過去の彼女たちが、かなりの恥知らずでもない限り、ショーンのような逞しい男をこんなポーズにして、可愛がりたいなどと思う者はいなかっただろう。
だが、オーランドは、ショーンをこうさせるのが好きだ。
「だめ。ショーン。大人しくして」
オーランドは、力の入ったショーンの腹に向かって話し掛けながら、口中に治まるペニスをぱくんと含んだ。
柔らかく滑らかな先端を舌でくりくりと舐め回し、唇で、余っている皮膚を引っ張る。
強制的に快感を与えられたショーンのペニスは、ゆっくりと固くなっていった。
オーランドは、すこしずつ固くなるペニスを口のなかで、くちゅくちゅと吸い上げた。
舌を幹の部分に貼り付けるようにして扱く。
そのついでに、上顎で、ペニスの先を愛撫した。
もう、きつく挟んでいなくても、自分で立っていられるようになったペニスを、ぺろぺろと舐めながら、オーランドはショーンを見上げた。
ショーンは、目の上を手で覆っていた。
不機嫌に閉じられた口元だけが見えた。
「ショーン。こっち見てよ」
「…嫌だ」
「なんで?…俺じゃない人のこと、想像したいから?」
ショーンは、目の上の手を退かした。
嫌なことを口にしたオーランドのことをじろりと睨むと、大きな手で、ぴたんとオーランドの頭を叩いた。
「…痛っ」
「オーランド。自分でどんどん悪い方へと話を進めるな」
オーランドは、小さく舌打ちして、ショーンのペニスをもう一度口に含んだ。
腹いせに、もっと大きくショーンの足を大きく開いた。
ショーンのペニスを唾液でべとべとにし、その下の玉を口に含んだ。
柔らかで、不確かな固さのそこは、ショーンの弱点の一つだ。
嫌だという理由からではなく、ショーンが足を閉じようとした。
力の入った太腿が、オーランドの頭を挟み込もうとした。
オーランドは、柔らかに肉のついた腿を、強く掴んで、大きく開かせたままにした。
それでも、オーランドが吸い上げるたびに、ショーンの足に力が入る。
足の指まで一直線に緊張を表し、指先は、くるんと内側にカールしていた。
オーランドは、金色の毛で埋もれた二つの玉に何度も何度もキスしてやった。
口の中に含んで、ゆっくり舌で舐め回す。
「…オーリ」
ショーンが、オーランドの名を呼んだ。
声が甘く蕩けていた。
オーランドの口から零れた唾液が、ぐっしょりとショーンの股の間を濡らしていた。
オーランドは、鼻先で、ショーンのペニスを擽るようにしなら、濡れた毛を掻き分け、ショーンの皮膚にキスをした。
「…オーリ」
「なに?ショーン」
オーランドは、持ち上げている柔らかな太腿にも唇を這わせた。
薄い産毛が金色に光っていた。
ペニスが、触れて欲しそうに揺れていた。
ショーンの手が伸びて、オーランドのジーンズの前を触った。
張り詰めているその部分を確かめるように触れていく。
オーランドはその手に腰を押し付けた。
ショーンが、苦笑いした。
「やる気なんだろ?…そろそろ、脱いだらどうだ?」
ショーンは、オーランドの顔を見上げながら言った。
「ショーンが脱がしてはくれないの?」
上から見下ろしたショーンは、ちょうど下腹の毛が見えるところまで、ポロシャツが捲れ上がり、オーランドの口元をにやけさせるには十分だった。
だが、ショーンは苦笑いしたままだ。
「そこまで乗り気にはなれない」
舐めれば、オーランドの唾液以外の味だってするペニスを勃たせているくせに、ショーンはオーランドの言いなりにはなからなかった。
オーランドは、仕方なく、自分でガチャガチャと音を立ててベルトを外し、ジーンズを足から抜いた。