わがままで、甘ったれ
終わった事件に疲れたを繰り返したり、今だに犯人を特定できないままの事件の責任の所在について擦り付け合いをしているうちに、ドンの部屋があるアパートメントが近づいてきていた。もう、30メートルも歩けば、アパートメントの入り口だ。
ドンは、たまたま一緒になった連れが方向を変えないままなのは、彼の気に入っているコーヒーショップがこの通りにあるせいかと思っていたのだが、その店も、もう過ぎた。だが、ダニーの話題は途切れることなく、今は自分たちが担当した事件を報道したキャスターの胸元の空き具合と唇の厚さについて語っている。
「なぁ、ドン、あの、胸、絶対に作りものだぜ? かなり金かけてるから、彼女、元を取ろうとぎりぎりまで見せてるんだ。でも、彼女、厚めの唇がすごくセクシーし、あの胸だし、絶対に人気が出ると思うわねぇ?」
「立ち入り禁止のテープの文字が読めるようになってからなら、人気者にでもなんにでもなってくれればいい」
現場を保安する刑事にとって彼女はただの危険人物だった。ドンは、何度も事件現場に入り込もうとした彼女を止める必要があった。自慢の胸をぐいぐいとドンへと押し付け、自分だけに特別チケットが手渡されることを期待していた彼女との押し問答を、ダニーはニヤニヤと眺めながら、地面の証拠品にナンバーを置いていたはずだ。
ダニーの手が、空間で大きなものを揉むようにいやらしく動き、ドンを見あげる。
「どうだった?」
「さぁ?」
そういえば、ダニーは、この先にあるデリカも気に入っていた。
コツリと音を立てて立ち止まったドンは、さりげなく左右に視線を払いながら、アパートメントのドアを開ける。
当然さよならを言うだろうと思っていたダニーが後ろに続いた。
ダニーはドンから半歩送れて階段を昇りながら、今度はラボ技術者のスカート丈について、独自の意見を披露しはじめる。
「スカート丈は、作業着より短いのがベストだ」
ドンはダニーが、ドンと同じフロアに住む大学生と仲良くなったと自慢していたことを思い出していた。
しかし、ドンが部屋の前に立ち、キィを取り出しても、ダニーはドンの隣りで立ち止まっている。ドアを開けると、当然と、ダニーは中へと入ってくる。
遊びに来いと誘ったわけではないが、ダニーは確かにドンの友達であり、遊びに来るなと言ったわけでもないので、ドンは強引なダニーの行動をどう受け止めるのがベストかと、自分より背の低いCSI捜査官を見下ろした。
すると、ジーンズのポケットに両手を突っ込み、ドンの隣に立っていたダニーも刑事を見上げてくる。
目が合うと、ダニーの唇の端がにんまりと大きく上がった。CSI捜査官はいきなりドンへとしがみついてくる。
「ダニーっ! 何をっ!」
レスリングの選手が敵をホールドするような勢いで、ダニーはドンの項に腕を回し、上げられた足は、ドンの腰に回る。
鼻がつぶれる痛みを味わうキスは、あまりに強引だった。咄嗟に目を見開いて状況を把握しようとしたドンは、眼鏡のレンズ越しに見えるダニーの目がぎゅっと瞑っていることを知ることができた。
ドンは、ダニーを押しのけようと腕を突き出す。
だが、身長こそドンに勝てないものの、よく鍛えてあるダニーの体は、ドンの腕の力にぐらつきはしなかった。
「やめろ。ダニー、離せ!」
「やだね」
目を開けたダニーは舐め上げるようにドンのことを見つめ、舌を伸ばす。舌は、開かないドンの唇を舐めていく。
「別れるって言ったのはお前だ!」
そう。ドンとダニーは友達どころか、セックスをしていた関係だ。
「だからって、たった4日で、粉かけてきた女になびくか?」
ハンサムなドンは、ラボ内でもデートの相手として人気が高い。全ての誘いを感じのいい笑顔で断るドンには、本気で付き合っている相手がいるというのが女性たちの認識だった。しかし、ここ数日のドンは隙があった。
「デート、行くって返事したんだって? ドン?」
まだドンへと齧り付きながら、ダニーが聞く。
「フリーなんだ。どうして断らなきゃいけない?」
年上を押し戻そうとするドンの返事に、途端に機嫌を悪くしたダニーの指が容赦なくドンの頬を抓り上げる。
「フリーになる前だって、俺は一度だって行くなって言ってないだろ? ん? ドン?」
ドンは最悪の性格をしたCSI捜査官の手をやっと振り払った。だが、刑事の頬は指の跡を残し真っ赤だ。
「ダニーっ! お前、ただ単に、俺が人のものになるかと思ったら惜しくなっただけだろ!」
「あたり前だ。俺は俺のものを誰かにくれてやるなんて、死んでもやだね」
滅茶苦茶なことを言うダニーは、もう一度ドンを引き寄せると、べったりと唇が触れるキスを、ドンに強要した。噛み付くようなダニーのキスが、何度もドンを襲っている。強引なだけだが、情熱的なダニーのキスは相変らずそのままで、ダニーは、ドンの唇を食いちぎるような勢いで唇を奪っていく。どれだけもがいても、ダニーは、ドンの頭を抱え込み、離そうとしない。
息苦しさと共に、ドンの中では、馴染みの諦めにも似た感情が湧き上がりはじめ、ドンのダニーを押しやる力が徐々に弱まると、それに、にやりと笑ったダニーからも、必要以上の力は抜けた。
ドアを入っただけの場所で、二人の額が近づく。
ドンは、ため息を吐き出す。
「宝石店勤めのブロンドの彼女はどうしたんだよ? ダニー」
ドンは、眼鏡の奥の瞳に、反省を探そうと試みる。
「いわゆる、二股って奴だな」
けれど、ダニーの青い目には悪びれすらなかった。それどころか、唇のカーブをいやらしくした年上は簡単に自分を許したドンの様子にほくそ笑み、さらに誘惑しようと、ドンの足へと自分の股間を摺り寄せる。
額を押し当てながら、互いの顔を見詰め合っていれば、唇の距離は近い。
「同じ穴の狢だったってわけだ。ダニー」
ドンは、ダニーを引き寄せ、自分から唇を寄せた。
ダニーは口を開けてドンを待ちうけ、自分から舌を絡めてくる。
技巧的なことを言えば、特別ダニーのキスが上手いということはない。ただ、酷く熱心に舌を絡ませてくるのが、ドンの好みに合っていた。
キスを続けながら、相手の苦痛を思いやらないやり方で、ダニーの手はドンのネクタイを外そうとする。
ドンが自分で外そうと手を伸ばしても、振り払われる。優しさや、気遣いというものと無縁のダニーのやり方は、なかなかドンの首からネクタイを外せず、とうとう癇癪を起こしたダニーは、ネクタイをリードのように扱い、ドンを後ろへと引き摺り始めた。動く舌に頬をへこませたり、膨らませたりしている眼鏡の奥の目が、寝室のドアの位置を横目で確認している。
「ダニー、お前が手を離せば」
ダニーの視界に入らない真後ろに椅子が一脚置いてあった。
「黙ってろ」
ダニーは、キスを続けたまま後ずさり、強引にドンを引き摺る。年上の身長にあわせるため、少し身をかがめなければならない刑事は、ダニーの進行方向にあった椅子へと手を伸ばし脇へと避けると、背広の上着を脱ぎ捨てた。
ダニーの手が寝室のドアを掴む。その手にドンは手を重ねた。
ドアを開けようとしていたダニーをドンは阻む。
「よりを戻したいのか? ダニー?」
「それは、これからのセックスしだいだ。ドン」
寝室のベッドの上には、ここ数日のドンの気分を示して、脱ぎ捨てられたYシャツや、パジャマ代わりのTシャツが散乱していた。けれど、そんなことは一向に気にせず、ダニーの尻は、その上へとドスンと下ろされる。リフティングの効果で盛り上がった胸を見せ付けるようにしてポロシャツを脱いだダニーは、みっともなくネクタイを首に巻きつけたままの刑事をからかうように、来いよと、指で差し招く。
ダニーは、近づいたドンのジッパーへと、チュっと音を立ててキスをした。そして、眼鏡の奥からドンを見上げてくる。
「なんだよ。ドン、嬉しくないのか?」
ドンとは反対に楽しそうなダニーは、ドンを立たせたまま、年下のジッパーを下げ始めた。下着を掻き分け、取り出したペニスに唇を寄せる。ピンクの舌が、ドンを見上げながら、まず自分の唇を舐める。
「今回のことは、まっ、多少は俺も悪かったかもしれないから、特別に今日はドンの好きなようにさせてやろうか?」
本当に多少しか反省していない顔のダニーの舌が、手に握るドンのペニスをからかうようにチロチロと舌先で舐めた。
わざとらしく上目遣いに刑事を見上げたままフェラくる年上は、いやらしく見えることを知っていて大きく口を開き、ドンのペニスを頬張る。
ドンのペニスは、まだあまり興奮を示してはいなかった。けれど、熱く湿った口内で、包み込まれて扱かれれば、ダニーの思うままに大きさを変えていく。
ドンは、ダニーのせいできつく締まりすぎたネクタイをどうにか外し、Yシャツを脱ぎ捨てた。
肌が晒されるとダニーはペニスから口を離し、ドンの腹へとキスをする。
「許して。って言って欲しいか? ドン? その方が気分が出だろ?」
ドンは濡れたダニーの口元をじっと見つめた。ダニーは、じゃれかかるようにドンのペニスの先へとキスを繰り返している。
「お前が本当にそう思ってるんなら、聞きたいけどな」
そして、口を開く。ドンのペニスを口内深く、飲み込んでいく。
「そりゃ、無理だ」
大きく笑ったダニーを、ドンはベッドへと押した。
仰向けに転がって、まだ笑い声を立てている年上のジーンズを投げ出された足からドンが毟り取りとすると、ダニーは腰を捩ってドンを手伝った。下着を、ペニスが隠れるぎりぎりの位置まで下げて、腰を突き出し、ドンに脱がせろとポーズまで取る。
「ほら、ドン。早くしろよ」
ドンは、ダニーから下着を下ろしてしまい、年上の科学者を裸にした。欲望を形にして、誘うように足を開くダニーを見下ろしながら、ドンは自分もベルトを引き抜く。そして、そのベルトを手に、ダニーの腕を掴んだ。ダニーが思い切り鼻の頭に皺を寄せる。
「ダニーのお気に召すセックスをしなきゃ、俺たちのよりは元に戻らないんだろう?」
「お前、性格悪いね。飛びやすいから、嫌だって言っただろ?」
「それだけ、好きってことだろ?」
後ろ手に、ベルトで両腕を拘束されて、ベッドに座るドンのペニスへと舌を這わせるダニーを見下ろしながら、ドンは、このままどっちかが急死することになった場合、仲間たちは、自分たちのやり方について、意外だと評価してくれるだろうかと考えていた。
「さっきに比べて、すごく良さそうじゃん、ドン。やだね。お前、本物の変態だろ」
飲みきれなかった唾液を零し、顔の下半分をべったりと汚しながら、バランスの悪い無理な体勢のままドンを見上げてくるダニーは、きっと、仲間たちから、この二人ならありえると、思われるのが一番悔しいと言うだろう。そして、全てドンのせいだと言う。
ダニーの額はうっすら汗ばんでいる。
けれど、実際、ダニーには特殊な嗜好を窺わせる痕跡を体に残すようなことで興奮するところがあり、ドンは本来の嗜好から言えば、セックスの最中に人に苦痛を強いるのが好きではなかった。
「ダニー、もっと熱心にやれよ」
ドンはダニーに強要する振りで、開いた足で、不安定なダニーの体を挟み込むようにして支え、年上に負担が掛かり過ぎないよう加減をしている。それでも、ダニーは無理な体勢を支えている足が、そろそろ痺れてきだしたらしい。ペニスから口も離さず、ごそごそと位置を変える。鼻から息を抜く音が甘くなり始めているダニーは、拘束されたままの格好で年下の刑事へとフェラしながら、開いた股の間に勃たせたペニスを腹にくっつきそうなほど勃起させている。
ドンは、過去の栄光を示して太いダニーの上腕を軽く叩いた。
それだけで、ダニーを纏めたベルトはピクリと動き、もぞもぞと腰が動く。科学者だというのに、そのイメージを全く裏切り筋肉質に盛り上がるダニーの体は、動きが加わると更にセクシーだった。
ドンは、ペニスへとむしゃぶりついたままの金色の頭を持ち上げる。自分の匂いをさせる顔に顔を近づけ、口付ける。馬鹿みたいに、自分は、この最悪の年上が好きなのだ。ドンはそのことを自覚している。
興奮に眼鏡の目元を赤く染め、息を喘がせるダニーは必死に粘つく舌を伸ばして、ドンを求める。だが、ひとしきり熱心に続けられたキスに気が済めば、ダニーは目を開けにやりと笑う。
「ドン、なに? とうとう、おしおきターイムってか?」
つまりそれが、嫌な顔で笑う甘ったれた年上の次の望みということであり、ドンは、ダニーの体をベッドへとうつ伏せにして転がした。
ダニーは縛られたままの両腕もそのまま、丸く盛り上がった尻を見せてじっとしている。背中が緊張で固くなっている。
だが、ごくたまに、ドンはたまらなくこの年上が面倒くさくなる時があった。
ダニーがいつものように、ドンの存在を別の誰かとの邪魔になると言い出した4日前、ちょうどそれがドンに訪れていて、次のデートの日にちをきめていたはずの二人の会話は幾度目かの別れ話にシフトしていた。
「よし、じゃぁ、別れよう」
憎らしくも、にこやかに宣言したダニーは、振り返りもせず、部屋を出て行った。しかし、ドンも手を振り上げられることへの期待で、うつ伏せた胸を喘がせる年上をみつめていると、自分がどんな種類の愛情を抱いて、ダニーに接していけばいいのか不安になることがあって、二人の間に訪れた何度目かの破局に実は少しほっとしていた。
少なくとも、ドンがありのままに差し出す愛情を、ダニーは鼻で笑って馬鹿にする。
「ダニー、少し、尻を上げろ」
シーツの上に乗ったドンのシャツへとぐちゃぐちゃに皺をつけながら、ダニーは尻を持ち上げ、膝立ちになった。盛り上がった肩と膝から下で体を支え、ダニーの体が小さなスロープを作っている。シーツを踏みにじる足には緊張で力が入っている。
ドンは、シーツへと肩頬をつけているダニーの顔から眼鏡を外してやり、それから、勃起しているダニーのペニスへと手を伸ばした。ぬるりと熱い。ダニーは、声を抑えない。
「あっ! ドン、っん」
拘束されたままさせられたフェラで、十分に熱くなっていたペニスは、大きく尻を振るダニーの股の間で、ドンの手で扱かれ、ぐちゅ、ぐちゅと音を立てる。
はぁはぁと顔押し付けているシーツへと息を吐き出すダニーの目が、ねとりとドンの動きを追っていた。簡単に快感を得ることのできるペニスを扱かれることよりも、ダニーがねだっているものがあることにドンは気付いている。
ドンの手へと濡れたペニスを押し付けて、腰を揺すりながら、ダニーは、挑発して笑う。
「ドン。んっ、お前、こんなに、俺に、優しく、してて、いいのっ? っ俺、のこと、怒って、んだろ?」
自分は平気で二股をかけるくせに、別れたドンがデートの誘いに乗った途端に、物惜しむ年上の身勝手なら、ドンは確かに怒ってはいた。きっとダニーは、ジュエリーショップのブロンドと別れたといっても、ドンがデートにさえ応じていなければ、ドンからよりを戻したいと言い出すまで、ニヤニヤと動向を窺いながら、ラボで仕事を続けていたはずだ。
怒れよとねだり顔でダニーは誘う。けれども、ドンは、手を振り上げたところで、自分の苛立ちが解決しないことを知っていた。
ドンは、ダニーのペニスから漏れているカウパーで濡れた手で、年上の張り出した腰を押さえつけた。小さくため息を吐き出した後、思い切り尻を引っぱたく。
「痛ぇっ!」
続けざまに、ドンは二発目、三発目を打っていく。
「くそっ! ドンっ! てめぇ!」
「い、……っ痛ぇっ!! 痛ぇ!」
望むくせに、恥も外聞もなく、ダニーはわめく。痛みのあまり歯は食いしばられ、大きく開けた目には、涙が溢れ出す。
だが、一発目の痛みで、萎えたペニスは、ダニーの口がふうふうと熱い息を吐き出すようになり、尻が真っ赤になる頃には、また大きくなり、タラタラと先走りを垂らし始めた。
縛られた両手は、手のひらに爪を食い込ませている。涙の盛り上がった目を真っ赤にして、ダニーは鼻を啜っている。
逃げるように位置の下がった尻は、硬く勃起したペニスをシーツに擦り付けるように動いている。
「あんたのこの趣味だけは、絶対に理解できない」
ドンは、もう十分に奉仕したと、赤くなった手でダニーの腕へと巻かれたベルトを取り去り、年上を仰向けにひっくり返した。
大声でわめいたせいか、それとも、痛みにか、半ば意識を呆然とさせてしまっている年上の足を掴んで引き寄せながら、側のテーブルから取り出したゴムのパッケージを口を使ってあけた年下は、真っ赤に腫れた尻の肉を掻き分け、ひくついている尻穴へとゴムをかぶせた指を近づける。
ねじ込めばそこは先ほどの痛みの緊張を残して固く、ドンは、ジェルを引き寄せる。
溢れるほどに塗り込めた尻の穴が、ドンの指を難なく二本飲み込んで締め上げるようになると、ドンは自分のペニスにもゴムを被せて、ダニーの中を抉った。
「ほら、ダニー、もっと尻を上げろ」
入れてやれば、ダニーは、狂ったようにドンにキスを求めた。ドンが赤くなっている尻を突き上げるたび、痛いといって泣き喚くくせに、年下の腰に足を回して半狂乱の様子で引き寄せる。
「痛ぇ、ドン! 無理っだ!……くそぅ。ドン、てめぇっ!」
「あ、あっ、そこ、いいっ。あ、ドンっ! ドンっ! ドンっ!!」
尻に当たるドンの腰を痛がって、ドンを責め、時には殴りかかりもするくせに、ダニーは自分からドンへと尻を摺り寄せる。
「いいっ、……もっと、ドン、もっと!」
ドンの首を引き寄せ、濡れた自分のペニスをドンの腹に押し付けるように、年下の腰へと両足を巻きつけ、ダニーはねだる。
熱く湿った肉の間を、ドンが何度も抉ってやれば、ダニーは、ドンを噛みつく。
「嫌だっ、やめろっ、ドンっ、……もっと、そう、そこ、ンんっ、あ!」
ダニーは背中を反らして、ドンにしがみついている。大きな尻は、ぎりぎりとドンを締め上げている。
これがダニーの飛んでいる状態だ。
ダニーが望む暴力的なアプローチをドンが嫌がらずに、嵌めれば、大抵ダニーはこの状態に陥った。そして、ダニーはこの状態の自分が心地いいのだ。普通にするセックスの時と比べれば、熱烈にダニーがドンを求める。
ダニーは、ドンの顔を嘗め尽くすほど激しくキスしながら、口汚くドンを罵る。
突き上げられるのを泣いて嫌がりながら、尻の穴は思い切りドンを噛み、ペニスは垂れ流し状態だ。
くしゃくしゃに皺を寄せたダニーの額に浮かんだ汗を撫で取った、ドンは一旦腰の動きを止め、大きな尻を揺すって快感をむさぼりつくそうとしているダニーをじっと見つめ、キスをした。
「好きだ。ダニー」
泣き顔を隠しもせずダニーは、大きく口を開け、ドンへと齧り付く。
「俺も。俺もだ。っん、ドン!」
ダニーはベルトの跡を残し、赤くなった腕で忙しなくドンの手を捕まえ、自分のペニスを扱かせる。
「こんなに俺に甘い奴なんて、他にいないもんな。やっぱ、下手に別れて、他に持ってかれんのなんて、惜しすぎる。ん〜。ドン、好きだぜ?」
ビールを差し出されたダニーは、すっかり満足した顔で笑っていた。
そんな理由で惜しいと言われるドンの気分などお構いなしだ。引き寄られた年上とのキスは、ビールの味がして、僅かにほろ苦い。
脇机にあった眼鏡を掛け直したダニーは、ニヤニヤと人の気持ちを逆撫でするような笑いを浮かべて、ドンを見上げている。
ダニーは、ドンに聞く。
「ドン、お前も、俺のこと好きだろ?」
「多分……な」
ドンは、床に放ったままだった、捩れたネクタイを拾い上げながら、答えた。
END
萌えどころもない、激しく趣味に走った話ですみません。