ドンちゃん受けかぁ……
長い足を折りたたんで広げると、ドンの顔に緊張が込み上げる。ドンの顔を覗きこむようにしていたため、前のめりになっている胸を押されて、ダニーは口元をゆがめた。
「なんで? お前、納得したっしょ」
「……やっぱ……」
「はっ? やっぱ、って何? もうお前も、俺もヌード。場所はベッド。優しい俺の手には、ゼリー&コンドーム。これでやめろって言ったら、お前だってムカついてもう二度と顔を見たくないって思わない?」
ダニーは、強引にドンの足を二つに折りたたんで彼の腹へと押し付けていく。
「でも! こういうのってのは、どっちかが嫌だと思ったら、そこでやめるのが筋ってもんだろ!」
ドンも下半身に力を入れてダニーを押し返そうとするのだが、ダニーは自分の体重を利用する小狡さで、がっしりとドンを押さえ込んできているため、なかなか上手くいかない。
「うん。うん。そうだね。わかった。わかった。ドンはしたくないと。でも、そういいながら、前も、その前も、結構気持ちよくなっちゃったのは誰だった?」
ちゃっかり割った足の間に体を滑り込ませたダニーは、にやにや笑いながら、ダニーを蹴ろうとする膝を脇に挟んで防御した。身長では、ダニーにドンは勝つが、彼は、大学まで野球で鍛えた体をしている。未だ鍛えることに熱心で、腕などかなり太い。そして、現役の刑事は、ダニーほどの強引さを友人に対して出せない育ちの良さだ。
「お前さ、すっげー、いい体してんだから、俺に使わせとけって。なっ、俺も普段の2倍は熱意を持って努力してやってんだろ」
ドンはどろどろに汚されていく自分の尻が気になってしょうがなかった。ダニーがいかにも冷静な顔で慣れないドンの様子を確かめながら指が使うのが腹立たしい。いや、一番腹立たしいのは、尻の中を弄られて、もぞもぞと落ち着かなく腰を動かしてしまう自分だ。
酔ったはずみで、「やってみる?」と性質悪く笑ったダニーに乗っかったことまでは、ドンにとっても何とか珍しい経験をしたという程度で納得できることだ。そして、そのまま関係がずるずると続いたことも、はずみでなんとか処理できる。
けれど、気分の良い酔いに羽目を外すということは、たまに、最悪の事態を招く。
泣きじゃくる自分の頭を「いい子。いい子」と撫でるCSI捜査官に、ドンは犯された。
ダニーの宣誓つき証言によれば、全くの合意だったということだが、ドンは今だって信じられない。確かにドンの腹にはダニーに嵌められたままの自分が発射したらしい精液が盛大に飛び散っていて、ダニーがいちいち望遠レンズに銃のグリップがついたような形のRUVIS(反射紫外線画像化システム)を取り出して、精液の染みを浮かび上がらせてみせなくても、シーツには生々しい性交の痕跡が十分に残されていた。
正気づいた後も、「もう少しだけ我慢しといてくれ」と上気した頬をして少し苦しげに顔を歪めたダニーが、かすれた声で囁きながら腰を使えば、濡れた感触のものをどろどろと洩らしている尻に恐怖を覚えているというのに、ドンの中には擦られて怖くなるほど感じる部分があった。
けれど、それはドンの人生にとって全く想定外のことだ。
だが、ダニーは丸め込むのが上手い。
「悪くなかったろ?」「ちょっと、挿れるだけだから」「なんだったら、後で俺にも挿れればいいじゃん」
飲みながら自然にドンの体へのタッチを繰り返し、緩やかで拒むことも可能なキスをいくつか。そのうち、少し伸び上がるようにして首筋へとキスをしだし、手がドンの太腿のきわどい部分を撫でだす。手は、するするとシャツの内側にも入り込んで胸を撫でる。
酔った体を撫で回されるのは気持ちがいい。
「お前、こういうの好きだよな? マッサージサービス?」
にやにや笑うダニーは、酒を含んだ口でキスするサービスまで付加させて、そのうちにはドンの膝の上に乗り上げ、勃起したペニスをジーンズ越しに擦り合わせる。
「ドン。お前、かわいい顔してるな」
ドンがセックスへの渇望を感じ始めたところで、ダニーは舌を吸い上げるようなキスをして更に雁字搦めにし、ドンが年上をさらうようにしてソファーに転がそうとすると、にやりと笑って待ったと言う。
こんな時ばかり色気のある顔でドンの顔を見つめるCSI捜査官は、もう背中がソファーに着きそうになっているというのに、「ドンに俺が挿れて気持ちよくしてやりたいなぁ」と、囁きながら腰を擦りつけてくるのだ。
それから少しばかり押し問答があり、けれど小狡さにかけては、ドンの比ではないダニーがいつの間にか、年下を言いくるめている。
「なっ、ちょっとだけ挿れさせてくれるだけでもいいから」
何だかんだ言ったところで、ダニーのセックスは丁寧だ。ドンは自分がこれほどダニーに気を使ったことはないというのに、ダニーは経験の浅いドンへの気遣いを忘れない。これも、つい、ドンがダニーの口車に乗せられる原因の一つだ。認めるのも嫌だが、確かにダニーのセックスはいい。
手の中で暖めたゼリーで、まずはペニスを。それを十分にマッサージしながら、ダニーはもう一方の手を股の間を後ろへと伸ばしてくる。
べっとりと濡れた手で、股ぐらの毛を掻き分けたダニーの指が、ドンの肛口をほぐし始める。
それが嫌で、ぎゅっとドンが顔を顰めると、ダニーはいかにも嬉しそうに笑った。
「坊や。もうちょっと我慢。でも、前、握ってやってるんだから、そんなに気にならないだろ」
潜り込む指の感覚は、それに体が慣れるまでは異様だ。
「……気になる」
ダニーはドンの尻をゆっくりと広げ始め、指は、じわじわと奥へと進んでいく。ドンが見上げるダニーは、まるで証拠品を探している時の真剣さで、ドンの様子を見逃さない。けれど、そんなダニーの態度に感心や、感謝は無用だ。
「へぇ、そっか。じゃぁ、もっと念入りに開発してやらないとだな」
舌でぺろりと自分の唇を舐める捜査官は、へろりと物騒なことを言う。
「っぁ!」
確実に、ダニーはドンの快感を見つけ出した。
「ビンゴ!」
いいところを時々掠めて、指を動かされ、ドンは自分の尻穴がダニーによって、性器へと作りかえられていくのを悔しい思いをしながら胸を喘がせていた。
しかし、くやしいが、何度か唇を舌で舐めつつ、自分を見下ろしてくるダニーのセックスはいい。
だが、ダニーも、ドンの体に引き摺られるようにして、セックスにのめり込んでいた。
長くて邪魔臭い足を抱え上げて、腰を突き上げてやれば、顔の上半分を腕で隠したドンは腰を捩った。
半分など隠したところで赤くなった頬は見えているし、口からははぁはぁと息が漏れている。
普段はデカイだけの唐変木が、だらしなく口を開いたまま、はぁはぁするのが、これほどエロい悶え顔になるとは、ダニーも予想外だった。
尋問室で、犯人をリスキーなほど締め上げ吐かせる刑事は、尻のなかを抉るように突き上げてやるたびに、汗を浮かせた胸を反らせるようにして喘ぐ。
落ち着かない腰は、捕まえて押さえつけておいてやらなければ、思い通りに奥まで突き上げてやれないほどはしたなくふらふらと動き回り、嫌だ、止めろと言うくせに、それで得る快感をもっと味おうと、ぎりぎりまで射精を引き伸ばし、懸命に下腹に力を入れて我慢している。
「ドン」
奥でぐにぐにと軽く動かし、ドンが浮かべる汗を増やしていたダニーは、そんな生意気な年下の様子があまりにかわいくて、名を読んで注意をひきつけると、ずるりとペニスを引き抜いた。
「……ぁ」
「どした、ドン? そんな悲しそうな声だして?」
喘ぐ合間に、もう抜けと、ダニーをなじるくせに、抜いてしまえば、トンは思わず濡れた目をみせて、未練げにダニーのホットなペニスを見つめる。
「……ご要望を聞き入れてみたんだけど? ドン?」
しかし、ダニー自身、ぎりぎりで我慢している自分を自覚している。その位、ドンの中はいい。
ドンは、眼鏡の奥でニヤニヤと笑うダニーが悔しくて仕方が無かった。抜け。もう、抜けと、確かにドンは何度も言ったが、今は抜いて欲しくないのだ。いきそうな今、そんなことをするダニーを蹴りつけてやりたい。
しかし、今込み上げている射精感は逃してしまうのが惜しい良さで、ドンは仕方なく、ダニーの目の前で自分の手を伸ばしてペニスを扱こうとした。すると、ダニーは舌打ちしながら首を振る。
「わかってないなぁ。ダメだね。本当にドンは」
こういうセックスの最中、バカバカしいほど年上ぶるダニーは、ドンの手をペニスから引き剥がすと、左の膝小僧に一つキスをして、そちらの足だけを曲げると腕の中に抱え込んだ。
不自由な体勢にドンが文句をいう間もなく、ダニーの硬く勃ったペニスがずぶりとドンの尻肉に突き刺さる。パンパンと尻の肉が鳴るほど、強くダニーは突き上げ始めた。
「……っぁ、あ! ァあ!……っんぅ!」
「ん? 俺は、お前にちゃんと入れてくれってお願いするだろ? ん? そういうサービスは? ドン?」
「……、ぁ、っん、ん」
ダニーは、突き上げながら、ドンの肩に口付ける。
「ここ、擦られるの、すっげぇいいんだろ。いいじゃん。思い切り、いっちゃいな」
ペニスからだらだらといやらしい液体が漏れ出しているが、実際、刺激が強すぎて、ドンは苦しさのあまり、小さく何度も首を振った。
「……ダニー、……や、だ。……こんなんで、いっても、よく、ない」
「全く、こういう時、お前、すげぇ、かわいい顔すんのな」
ダニーは、手を緩めなかった。とうとうドンの両足を抱きこみ、腹に付く程腰を持ち上げ、年下の体が柔らかいことを幸いに大きく開かせると、腹でびしょぬれのペニスを擦るようにして何度も突き上げる。
ぐ、ぐっ、と、腹の奥まで何度も突き上げられると、ドンの体は反り返って痙攣した。
「あっ! ダニー!! あっ!」
ところで。ダニー・メッサーの証言
ん? だって、お前が興味あるって言い出したんじゃん。
ダニーはいつも気持ち良さそうでいいなぁとかなんとか言い出して、んじゃ、やるか?って聞いたらやるって。
俺は、バージンは面倒くせぇし、ほんとは遠慮したかったんだけどさ、まっ、普段、結構良くしてもらってるし? 仕方ねぇからやり始めたら、お前の尻、ちょうど良く締まるわ。肉はぬるぬるだわで、すげぇいいし。
なんかお前は、バックからガンガンやられるのが一番いいみたいだっただけど、アレ、俺、お前に膝立ちで這われると、位置が高すぎてムカつくしで、正常位だったわけ。体位変えたら、お前さ、やだ、やだ。泣いちゃってかわいかったぜ?
ん? 気持ちよかったんだろ? じゃぁ。いいじゃん。
END