24小話 7
*どっちがいい?
ジャックとトニーが新しい作戦についての意見の交換をしていた。無理を言って同席したチェイスは無視され、しかもチェイスの権限を越えた情報を元に二人が話しているため自ら口を挟むこともできない。
「……ジャック、そんなに俺のこと無視するなら、もう口を利いてあげませんよ」
ぼそりと口にしたチェイスの言葉すら上司たちは無視した。
そのまま、口を利くこともなく、チェイスは2時間を過ごす。
「黙っているのにも飽きました」
急にチェイスが声を出すと、ジャックが驚いた顔をした。
「忘れてた。居たんだったな。チェイス」
「……静かで良かったのに」
存在を覚えていてくれたトニーの方が、まだいい上司なのかもしれない。
*「いい加減にしましょうか、ジャック」
会議への出席のため出張中のトニーとジャックだったが、ホテルの手違いにより部屋が準備されていないことがわかった。
「誠に申し訳ありません。あいにくご希望のお部屋と同じタイプのものは本日満室のため、ご用意させていただくこともできず、そこで、スイートにお泊り頂くというわけには。ただし、こちらも本日は一杯のため、新婚用のスイートでのお泊りということになりますが」
ホテル側の申し出に、ジャックは困るを連発していた。しかし、満室である以上、それ以上の譲歩はホテル側にも出来ず、けれどジャックは譲らず、時間は無駄に過ぎていく。あまりに拒むジャックの態度が、次第にトニーの目を据わらせていった。
「ジャック、仮にですが、ホテルが代替として、ヤンキーススタジアムを用意したとしても、我々がそこで野球をして過ごさなければならないというわけではありません。つまり、新婚用スイートの使い方についても僕は同様に思う訳です。何をジャックが困ると言っているのか、僕は知りませんけど、どうでしょう? あなたが思うこの部屋に泊まるのが困難であるという理由をここではっきり口にして、僕が間違っているのかどうか、新婚用スイートを使用する以上、必ずそれをしなければならないのかどうか、ホテルの方に確認してみたらいかがですか?」
*後悔先に立たず。しかし、別のものは勃った模様。
夜更けのメキシコ。
ピッキングの道具を使ってドアをこじ開けようとしているジャックを、ラモン・サラザールが見つけた。
「何してやがる! てめー、やはり!」
焦ったジャックは床へと目を反らし、自分でも苦しいと思ういい訳を口にする。
「あっ、いや、何でもいいから、あんたのものが一つ欲しかっただけなんだ」
ジャックは、こんないい訳を思いついた自分を後悔した。
*アザド×ジャック
「然るに、我が祖国からテロリストを輩出しないためには、私がこの国の文化を肌で知り、そのことによって自然な敬愛を得てこの国の人間を朋友だと思えることが必要であって、そのためには、この国の人間との間に深い親和の情を抱けるような関係を結ぶ必要を感じており、しかも、それはこの国にとっても決して不利益なことでなく、それどころか、この国が私に自国のすばらしさを教えることができれば、これから起こり得るだろう両国にとって不利益な故意の事故は未然に防げるやもしれず、そして……だから……」
いつの間にか、ジャックはアザドにベッドの際へと追い詰められていた。
「つまり、私が深く感銘を受けた君の存在は、私が絆を感じるにまさしくぴったりだと思うわけだ。ジャック・バウワー君」
ジャックは、元カリスマ指導者など嫌いだと思った。
*アザド そのA
自爆テロの国の男が言う。
「私は、自分の意思を貫くために、命を懸けてきた男だ。今だって勿論そうする勇気がある」
屈辱に震える指でシャツのボタンを外すジャックは、アザドが更に嫌いになった。