24小話 6
*CTUアンケート
「だから、ジャック。何度も言うのは嫌なんですが、あなたがこのままのやり方で捜査を続けるならば、僕はあなたからチームを指揮する権限を取り上げなければならないんです。そんなことになったら、あなたのチームの皆がどう思うと思いますか? なんだったら聞いてみたらいいんだ」
言い捨てるトニー自身、かなり辛そうだった。ジャックも、とっさに言い返せずにいる。
30分後、トニーのオフィスのドアが叩かれた。
不可解な問題を抱え込んだような顔のクロエが、ドアの内側に立つ。
「ジャックから結果を報告して来いと言われて来ました」
「なんだ?」
「『トニーの書く始末書の数が増えるだけ』だ、そうです。一体、トニーは何のアンケートをとったんですか?」
*それは、ちょっと、かわいそう
「ジャァァック! どうして俺を置いて行こうとするんです!」
ジャックの背中はもう廊下を曲がろうとしている。
「遅いからだ!」
「ちょっ、酷っ、ジャック! あなた、俺に全部用意させといて、俺のこと完璧なアホだとでも思ってますね!」
「チェイス。残念だが、何事にも完璧は、難しいよ」
すれ違うトニーが、ぽんっと、チェイスの肩を叩いた。
廊下に消えかけていたジャックの足すら、さすがに止まった。
*悪かった。だが!
今にも自分の意見を口にしそうなジャックをじろりと重く視線で押し留めたトニーは、ぐいっとコップの水を飲み干した。
「さて、今、僕はトランキライザーを2錠飲みました。この効き目が切れないうちにあなたの言い訳を聞かせてもらいましょう」
*それは、脅しですね?
「なぁ、ちょっと聞いたんだが、ワシントン支局に、新しい銃器が入ったらしいじゃないか」
「それは、自分にも寄越せってことですか?」
トニーは、デスクに尻を乗せるジャックを見上げた。確かに、ワシントン支局の備品リストは新しく更新されている。薄い唇に珍しく機嫌のいい笑みを浮かべたこの人は、こんなことだけは、誰よりも早耳だ。
「なぁ、トニー。よく考えてくれ。……ワシントン支局と険悪になるよりは、ずっと安上がりだと思わないか?」
*デート準備は万端に!
「ちょっと火を貸してくれ」
煙草を口にくわえたジャックがチェイスに近づいた。チェイスがポケットを探る。
しかし、膨らんだポケットから出てきたのは、3壜の咳止めシロップだ。
「どうした? お前風邪なのか?」
「いいえ、……今日は何度行っても、薬局の店員が女性なんです……」