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テロによる音楽業界への影響

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AMERICA: A TRIBUTE TO HEROES

9月21日の夜に2時間枠でABC、CBS、NBC、FOXの全米4大ネットワークから世界中に放送された"AMERICA: A TRIBUTE TO HEROES"
ブルース・スプリングスティーンの「マイ・シティ・オブ・ルーインズ」から始まったこの番組、ミュージシャンの演奏とハリウッドスターらのスピーチを交互に放送し、犠牲者らへの募金を呼び掛けるというチャリティーショウだ。
ニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドンからミュージック界を代表するスティービー・ワンダー、U2、ニール・ヤング、マライア・キャリーらが、ハリウッド界からはトム・ハンクス、ロバート・デ・ニーロ、ジュリア・ロバーツらがこの番組を通してアメリカの現在の心境をそれぞれの手段で訴えていた。
募金への電話受付にはウーピー・ゴールドバーグやジャック・ニコルソン、シルベスター・スタローンら豪華な顔ぶれが伺えたが、これらはもちろんすべてノーギャラで行われた。この番組では1億5000万ドル以上の寄付金が寄せられ、CD化もされるそうだ。
個人的にはリンプのフレッド、ウェスとグー・グー・ドールズのジョンがストリングスと12弦ギターでしんみりと聴かせたピンク・フロイドのカバー曲「あなたがここにいてほしい」、ボブ・マーリィーのカバー曲「リデンプション・ソング」を歌ったワイクリフ・ジーン、パール・ジャムのエディがニール・ヤングのピアノを伴い奏でた「ザ・ロング・ロード」、テロの犠牲になった友人に捧げたスティングの「フラジャイル」などが印象に残っているが、この番組に参加したすべての人たちは、自分たちに今何が出来るのかを考えて馳せ参じたのであろう。

全米での影響

今回の事件で全米の音楽業界も多大なる損害を受けているようである。全米中での飛行機の往来が史上初めて禁止されたのだから、コンサートの中止なんていうのは当たり前となり、デイブ・マシューズ・バンドがシングルとして予定していた"When The World Ends"が"Everyday"に差しかわり、ブッシュはテロリストを肯定するような歌詞を変更するはめになり、ラジオ局が作成した「放送するに相応しくない曲目」リストにはレイジの全曲が挙げられた。
ドリーム・シアターのアルバムは世界貿易センタービルや自由の女神が炎に包まれているジャケットのため、回収騒ぎに巻き込まれたりもした。

それぞれの形の救済

ジョン・レノンの妻のヨーコ・オノは9月25日のニューヨーク・タイムズ紙の一面広告にジョンの"Imagine"の一節"Imagine all the people living life in peace(想像してみよう、人々が平和に暮らすことを)"を掲載した。一面にたった8単語の文字が掲載されたこの広告の一節がジョンとヨーコの気持ちを代弁している。
大リークのメッツの試合前にはダイアナ・ロスが"God Bless America"を歌い、7回表ではライザ・ミネリが"New York, New York"を歌った。全米フットボール・リーグの試合ではボン・ジョヴィが国歌を歌った。
9月13日に行われたマドンナのコンサートでは星条旗のスカートに身を包んで登場。「今夜は平和への祈りをささげたい」と観客と一緒に、テロの犠牲者に向けて黙祷を捧げた。報復攻撃については「暴力は暴力を生むだけ」と反対の意思を表明し、「今日のコンサートは(苦しいことを)忘れてもらうためではなく、人生の素晴らしさを知ってもらうために行った」と語った。また、この日の収益金はテロで孤児となった子供たちのために寄付すると発表した。
カナダでは全米赤十字慈善コンサートにセリーヌ・ディオンやピーター・ガブリエルらが出演。
この他にも、コンサートの収益金を寄付するバンドなどが沢山出ており、アメリカではお互いを助け合うメッセージが至る所で聞かれている。
ホールのコートニーは、9月17日に取引を再開したニューヨーク証券取引所で20万ドルもの資金を米国のビジネスに投資し、米国経済を支援した。
U2のボノは25組のアーティストを集めマービン・ゲイの名曲「ホワッツ・ゴーイン・オン」をレコーディング。6500万ドルもの収益金を集めたUSA for Africaの再現を狙うマイケル・ジャクソンは新曲"What More Can I Give?”にブリトニー・スピアーズ、デスティニーズ・チャイルドらの参加を募り、それぞれ収益金を寄付すると発表した。
レイナード・スキナードは新曲"The Day America Cried"でテロで亡くなった人々に哀悼の意を表している。

Concert For New York City
United We Stand What More Can I Give?

ポール・マッカートニーが提唱者となり、テロ攻撃の現場で亡くなった消防士たちへの義捐金を集めるためにニューヨークのマディソン・スクエアガーデンで開かれたチャリティ・コンサート「Concert For New York City」が20日の土曜日に行われた。
消防士や警察官とその家族が特別に招待された今回のコンサートは、デビット・ボウイがサイモン&ガーファンクルのカバー曲「アメリカ」そして「ヒーローズ」の2曲を歌い幕を開けると、ビリー・ジョエル、エリック・クラプトン、エルトン・ジョン、この日のために再結成されたザ・フーら50人以上の大物ミュージシャンが5時間を越えるステージを披露。ミック・ジャガー、キース・リチャーズは「ミス・ユー」を歌い、キースが「この町はちゃんと立ち直れるみたいだな」と言うと、ミックは「今回のことで学んだことがあるとすれば、それは"ニューヨークには太刀打ちできない"ってことだ」と受けてみせた。
トリで出演したポールは「英国のため、米国のためにみんながしてくれたことに感謝する」とあいさつをすると、「イエスタデイ」や新曲の反テロソング「フリーダム」などを熱演した。最後には遅くまで残っていた出演者のオールキャストでの「レット・イット・ビー」そして再び「フリーダム」を演奏して幕を閉じた。
インターバルには俳優のハリソン・フォード、ジム・キャリー、メグ・ライアンやクリントン前大統領、ニューヨークのジュリアーニ市長や炭そ菌入り封筒を送られたダシュル民主党上院院内総務も参加し「テロにアメリカは屈しない」と訴えた。が、リチャード・ギアのみは、米英の報復攻撃に反対し、ブーイングを浴びる一幕も...。コンサートの模様はテレビとラジオで全国に生中継され、この模様は2枚組CDとして11月にも発売される予定。
また、翌21日にはワシントンのRFKスタジアムで「United We Stand What More Can I Give?」と題されたチャリティ・コンサートがマイケル・ジャクソン、バックストリート・ボーイズ、マライア・キャリー、ロッド・スチュワート、ヒューイ・ルイスらが出演して行われた。
ヒューイ・ルイスは、「テロの犠牲者とその家族のもとへ、我々の祈りを届けたい」とメッセージを送り、最後は全員で国歌を斉唱し幕を閉じた。
ライブの収益金はもちろん全額が慈善団体へ寄付される。


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