夏の分光



 天体は非常に淡いためその色を直接みることはほとんできませんが、カラー撮影することで初めてその天体の色を知ることができます。 しかし、カラー撮影も慎重に行わないとカラーバランスを崩してしまいます。 そこで天体を分光することによって、色を正確に知るだけでなく、どんな物質がそこにあるのかを教えてくれます。

 夏の時期は観る天体は非常に多く、いくら時間があっても足りないくらいです。 それでも観る天体というのはある程度決まっています。 観やすい天体から見るということです。 その中の1つにM57があげられると思います。 写真でみるM57はピンク色ですが、眼視でみるM57は白っぽいような緑っぽいような色をしています。 M57に限らず、多くの星雲でそのような色に見えます。 では一体何を見ているのでしょうか? M57のスペクトル画像を観てみることにしましょう。

M57スペクトル画像


これでみてわかるように、OIIIが強く光っています。 Hβはあまり光っていないようです。 赤画像もHαよりもNIIが強く光っています。 肉眼の特性によって夜間の感度が青へシフトすることから赤い部分が見えずにOIIIだけが見えていることになります。


 M27も見てみましょう。 M57と同様なスペクトルを持っているようです。 星雲の大きさがあるために隣り合った波長と混在して良くは分かりませんが、OIIIやNIIの形がくっきりと見えています。
M27スペクトル画像


恒星はどうでしょう? 恒星のスペクトルを取るとその大気の様子がわかります。 恒星の光がその恒星の大気を通過する際にある特定の波長で吸収がおきます。 青白い星は水素の吸収線が良く見えるので、分光器を使えば眼視でもその様子がわかります。
ベガのスペクトルを見てみましょう。

ベガのスペクトル (強度校正していません)

水素の吸収線Hα、β・・・が見えています。 

白鳥座のデネブはどうでしょう?
ベガとはちょっと違う様相を見せています。 水素の吸収線が鋭く、他の吸収線もいくつか見えてます。 これは表面温度がベガとは違うために違う元素で吸収が目立っているためです。

デネブのスペクトル



今度はもっと低温の星を観てみましょう。 低温の星はいろんな元素の吸収線が見られます。

アンドロメダ β星のスペクトル分布


グラフ中のO2というのは地球の酸素分子による吸収です。 760nm付近の吸収線をみると2本に見えますが、実際には何十本という細い吸収線が分解しきれずにこのように見えています。 分解能1Åくらいになるとその様子がはっきりとわかってきます。 2000,10,14

Astronomy

TOP

mail