ニュートン鏡とCCD



 口径・F値の違うニュートン鏡とKAF-400/1600シリーズで撮影したときの像評価を計算してみました。

スポットダイアグラムだと厳密に評価できないので、回折計算である点象強度分布(星の像と言ってもよい)を使った。
像高は、中心、4mm、8mm となっており、4mmはKAF-400の周辺像高、8mmはKAF-1600の周辺像高からきている。
左3つの画像は1マスを1ミクロンピクセルで計算し細部までわかるようになっており、右3つの画像は1マスをKAF-400/1600シリーズの9ミクロンピクセルに対応している。

計算波長は青を450nm、緑を550nm、赤を650nmの3波長を使っている。
副鏡や支持棒による遮蔽はなし。

20cm Newton鏡

20cm F=3.5
20cm F=4.0
20cm F=5.0
20cm F=6.0
20cm F=8.0


F値を小さくすると中心分解能が向上するが、周辺でのコマが大きくなる。 一方、F値を大きくすると中心分解能が低下するというジレンマがある。 総合的にみると、KAF-400を使用する場合、F値5.0〜6.0くらいが、KAF-1600を使用する場合、F値6.0くらいがベストのように見える。

30cm Newton鏡

30cm F=3.5
30cm F=4.0
30cm F=5.0
30cm F=6.0
30cm F=8.0


20cm鏡と同じで、KAF-400を使用する場合、F値5.0〜6.0くらいが、KAF-1600を使用する場合、F値6.0くらいがベストのように見える。

15cm Newton鏡

15cm F=3.5
15cm F=4.0
15cm F=5.0
15cm F=6.0
15cm F=8.0


15cmもまた、20cmと同じ結果になり、KAF-400を使用する場合、F値5.0〜6.0くらいが、KAF-1600を使用する場合、F値6.0くらいがベストのように見える。

 よく考えてみると、同じ光学系を拡大または縮小すると、幾何学的収差もまた拡大または縮小される。 たとえば、15cmニュートン鏡における像高10mmの幾何学的収差は、30cm鏡での像高20mmの幾何学的収差量の2倍のはずである。 ところが、ここでは同じCCDチップを使うことから、像高は固定されている。 コマは像高に比例して大きくなっていくので、15cmで像高10mmと30cmで像高10mmでは幾何学的収差量は同じになる。 ということは、口径ごとに計算することなく、F値のみの計算で収差の様子がわかることになる。 

ではF値を暗くすれば、同じ像高でもコマが小さくなるので高画質化が可能であるかというとそうでもない。 F値を暗くすれば像面上の分解能は低下するから、F値の明るい望遠鏡で撮影された画像に比べるとややボケた画像に見えるはずである。 公式めいた書き方をすると、良像範囲を中心分解能のある定数倍になる像高を半径とした円とすると、 良像範囲÷中心分解能=一定(F値に無関係) であるため、コマコレクタを使わない限り高画質化は不可能である。 画素サイズを大きくすれば収差の許容範囲は広がるが、画素が大きくなった分得られる画素数も減ってしまって、イタチゴッコである。

9,7,2000


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