CCDの選択



 冷却CCDカメラを購入するときに悩むのがCCDチップのスペックです。 CCDチップ単体で考えてもあまり意味がないので光学系との組み合わせで検討するのが一番よろしいのです。 このときどうしてもMTFというファクタを使うことになりますので、まずはそのMTFを説明しましょう。
 MTFとは映像を評価するファクタで、どのくらい細かい映像がどこまで再現されるかという指標です。 音楽のグライコと本質的にまったく同じ考えで、どの周波数でどのくらい再現されるかというものです。 映像の場合はこの周波数が像面上でどのくらい細かいかに相当します。
 たとえば、優秀な光学系を使えば像面上の星像は小さくなり、細かいものまで表現できます。 一方、プアな光学系だと星像は鈍ってしまうため、細かい部分まで表現できなくなります。 ではMTFのグラフを見てみましょう。

左:鋭い星像、右:鋭い星像のMTF。高周波まで伸びている(横軸が周波数、縦軸がMTF)

左:鈍い星像、右:鈍い星像のMTF。高周波まで伸びてない(横軸が周波数、縦軸がMTF)


これでMTFの基本的考え方がわかったと思います。要はMTFグラフが横に高周波まで伸びてるほど優秀な映像を結ぶことを意味するわけです。

 CCDも星像と同様、細かい画素ほど高い描写性を持ち合わせます。 銀塩フィルムでも粒子の細かいテクニカルパンが従来の口径以上の写真を作り上げたのと同じこと。 そこで星像のMTFを作ったのと同じように、CCDの画素の形・大きさを元にMTFグラフを作ることにします。 一般にCCDの開口は矩形なのでMTFのグラフは次のようになります。

左:CCDの開口(矩形)、右:CCDのMTFグラフ



 必要なMTFがわかったところで、次にこれらを組み合わせたときのMTFはどうなるかというと、これがまた簡単で単に2つのMTFを掛け合わせるだけでよいのです。 考えてみれば当然で、ある周波数の信号が光学系やCCDを通過してどんな信号になるかというと単に掛け合わせただけのことですよね。

 ここまでくれば後は何をすればいいか明確です。 大きさの違うCCDの開口とシーイングや焦点距離に応じた星像を用意し、それぞれのMTFを掛け合わせてどの組み合わせでどのくらいグラフが高周波まで伸びているかを比べるだけのことです。
CCDの開口の大きさには次の3つを選びます。
6.8 ミクロン KAF3200チップ
9.0 ミクロン KAF1600チップ
20.0 ミクロン KAF261チップ

光学系の焦点距離には次の3種類
500mm
1000mm
2000mm

最後にシーイングに応じた星の大きさとしてガウス型をした星の半値幅を
1秒角
2秒角
4秒角

とします。
ではそれぞれの組み合わせでMTFをみてみましょう。

半値幅4秒(平均的天体高度+日本の平均的シーイング)

左:焦点距離500mm、中:焦点距離1000mm、右:焦点距離2000mm

星像の半値幅が4秒角となる空では焦点距離1000mmより長い光学系は、KAF1600チップ、KAF3200チップどちらを使っても同じ画質が得られることがわかる。2000mm以上になるとKAF261で撮影した映像と同じになる。

半値幅2秒(日本の天頂付近における良好な分解能)
左:焦点距離500mm、中:焦点距離1000mm、右:焦点距離2000mm
星像の半値幅が2秒角となる空では焦点距離2000mmより長い光学系は、KAF1600チップ、KAF3200チップどちらを使っても同じ画質が得られることがわかる。KAF261との差も小さくなってくる。

半値幅1秒(ベスト分解能:天文台の平均的分解能)
左:焦点距離500mm、中:焦点距離1000mm、右:焦点距離2000mm
星像の半値幅が1秒角となる空であれば焦点距離2000mmの光学系を使っても十分チップの差が画面に現れてくることがわかる。

上のグラフを参考にして、ご自分の観測場所の平均的空の状態と所有する光学系の組み合わせから、どのようなチップ(画素サイズ)が適切かを知ることができます。 500mm程度の光学系であればシーイングにほぼ無関係でどのチップも能力を十分に引き出すことができます。 もちろん収差が大きい光学系ではだめですが。 自分の空の状態が分からない場合には、次のページから木星の映像状態とチャート映像を見比べて分解能をしることができるでしょう。 露出は最低1秒程度かける必要があることはおわかりだと思います。
木星チャート


2001,5,27

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