CCD Filters



フィルタの分光透過特性によって、どのように画像が変わってくるのかを紹介します。

まず、透過率の形に注目してみましょう。 あるフィルタはカットオフ波長で鋭く、あるフィルタではだれています。 分光特性が連続光であれば、この違いはあまり差が出てきませんが、輝線分光特性をもった天体には大きな違いがでてきます。
スペクトル結果を見てみましょう。
グラフは、透過率、感度特性(フィルタXCCD;WB済)を表しています。 CCDの分光特性には普及率の高いKODAKのブルーエンハンスCCDチップに良く似たものを採用しています。
画像は完全白色を与えたときのスペクトル像です。

 
左:フィルタ特性 、 右:感度特性

 
スペクトル画像



 
左:フィルタ特性 、 右:感度特性

 
スペクトル画像



歯切れが良いと、色の分かれ目がはっきりするのがわかります。 逆に鈍くすると、中間色がでやすいでしょう。
次に、IDASのタイプ3タイプのフィルタ特性の場合どのようになるか見てみましょう。

 
左:フィルタ特性 、 右:感度特性

 
スペクトル画像



赤フィルタの特性から短波長で紫色が発色していることがわかります。 肉眼で短波長で紫に見えるのと同じ現象です。
では、広帯域RGBフィルタではどのようになるかを見てみます。

 
左:フィルタ特性 、 右:感度特性

 
スペクトル画像



広いレンジで感光していることがわかります。 赤と青でピーキーな分布をしているため、スペクトル画像も強い部分弱い部分のコントラストが大きく出ています。

画像は横方向へ1ピクセル=1nm。



最後にもっとも関心の高いと思われる、星雲について調べてみましょう。

Hα、OIIIで撮影されたM27の画像を使って、フィルタ特性によってどのように画像が変化するか見て見ることにします。
OIIIの波長はちょうど緑と青のフィルタの境にあるため、この2つのフィルタの特性によって、惑星状星雲の写りは大きく変化します。 OIIIの強度が緑と青に振り分けられう割合に応じて画像を計算してみました。

青に80%の透過、緑に20%の透過のケース

青に50%の透過、緑に50%の透過のケース

青に0%の透過、緑に100%の透過のケース



私の経験ですが、銀塩フィルムで撮影すると下2つのケースに似ることが多いでしょう。 CCD撮影でGフィルタにOIIIの透過率が低いと一番上のケースになります。 
細かく言うと、光学系のF値によってフィルタへの入射角が変わってきますので、透過特性も変化し写りも変わってきます。 たとえば、OIIIの透過率がGとBで微妙な位置にある場合、シュミットカセグレインのFno=6.3で撮影したM27と、Fno3.8のライトシュミットで撮影したのとでは、写りが変わってきます。 Fno=6.3とFno=3.8での斜め入射による透過率特性の短波長側へシフトは、OIIIの波長で1〜2nmの差があります。 これにより、Fno=6.3で撮影されたG画像にOIIIの映像が写っていなくても、Fno=3.8で撮影されたものではOIIIが写ってきます。
 
光学系の違いによる比較画像

1つの天体でも十人十色で、様々な色をした画像を目にしますが、どの発色が「自然である」とか「本当である」ということはなく、光学系・フィルタ特性によって写りが変わってきます。 フィルタ特性通りに発色させるには、ホワイトバランスをとる必要があります。 どんな写りにするかは撮影者の意図で選択されたフィルタだけでなく、ホワイトバランスを崩したカラーバランスにも依存します。 鑑賞写真ではカラーバランスを変化させても良いですが、彗星など貴重なデータとなる天体には、ホワイトバランスを取る必要があるでしょう。

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