検証


先ほどのS/Nの結果を元にはじき出した露出時間を実際に撮影して検証しましょう。
もう一度復習しますと、露出時間比は次のようになっています。

Red Exp. = 1

Green Exp. = 16

Blue Exp. = 4


その比をそのまま分になおして撮影することにします。これだけをもって撮影効率が上がるかどうかを判断することはできないので、異なる露出時間比と比較することにします。比較する露出時間比は次の通り。

Red Green Blue

K: 1分 16分 4分 合計時間21分

J1: 7分 7分 7分 合計時間21分(同露出時間比)

J2: 3分 6分 12分 合計時間21分(RGB感度比)


撮影機材:
光学系:12.5cmライトシュミットカメラ F3.8 f475mm
カメラ:Meade Pictor416XT
赤道儀:タカハシ EM-200 + ST-4自動追尾
CCD温度: -5℃
フィルタ:Edmund 干渉型原色カラーフィルタ+干渉型赤外カットフィルタ

画像処理条件:
ダークノイズとバイアスノイズのみ差し引く。
γ特性変更無し
最後の段階で各画像色合わせ

1:16:4の方をK、従来(Juurai)の方をJと取って書き表すことにします。
この3つを比較しようと撮影したのですが、K法で赤が1分というは露出時間が短すぎて(スレッシュホールドに満たないのだったと思います)、ノイズが多く目だってしまいました。とうことで、露出時間を1分延ばして、2分にして撮影したのを比較することにします。そうすると不公平が生じるので、J2法の緑を1分伸ばして7分にすることにしました。従って、露出時間を書きなおすと次のようになります。

Red Green Blue

K: 2分 16分 4分 合計時間22分

J1: 7分 7分 7分 合計時間21分

J2: 3分 7分 12分 合計時間22分


J1法だけ合計露出が少したりませんが、改めて撮影しなおすほどの大きな違いはないので、ここままで比較することにします。
天体は比較的あかるく、かつ、黒体放射である銀河M81を選びました。天体の高度の時間的変化によって大気の吸収等で条件が変わるのをさけるために、色ごとに撮影しました。

左からK法、J1法、J2法

一見してK法が最もS/Nの高い画質であることがわかります。これは先に説明したように肉眼は緑にもっとも敏感に感じるので、緑でもっとも露出時間をかけS/Nを高くして撮影した結果です。J1もJ2も緑の露出時間が同じなので画質は同じように見えます。

結論を出すと、露出時間比は最初のシミュレーションと大きく変わらず次のようになります。

Red Exp. = 1

Green Exp. = 8

Blue Exp. = 2


途中1分であるべき赤の露出時間を2分に延長しましたが、これは先にも書きかましたが、露出時間が短か過ぎでスレッシュホールドに満たなかったのだと思います。数値をみててもそれを裏付けるほど小さい値しかありません。ですから、もしスレッシュホールドを満たすだけの光量があれば、恐らく露出時間は1:16:4でよかったかもしれません。1:8:2も1:16:4もそれほど大きな合計時間差は生じませんので、ここではシミュレーションの値よりも実写検討からの値を結果として残すことにします。

シミュレーションでも実写検証でも白に近い天体の場合にこの露出時間比が有効になることがわかりましたが、星雲などは輝線で光っており、露出比が変わってくるかもしれません。しかし、何度も述べてるように、緑のS/Nを高くするのが画質の向上に大きくつながりますから、星雲であろうと惑星であろうと、鑑賞撮影をする場合はなるべく緑に露出時間をかけるのがもっとも効率の良い撮影方法であると思います。

細かいことを言えば、3つの画像でホワイトバランスが正確に取れてないのと、合計露出時間が完全に一致していないことがありますが、これらが結果を大きく左右するほど違いではありません。

実際撮影していて、天体が彗星でもない限り、緑に最も強い強度を持った天体はあまり見当たりません。撮影したRやBの画像をその場で見たときはけっこうがっかりするものですが、この比較検討でみた通り、緑に時間をかけた画像が最も高画質です。ぜひ一度この露出時間比を使って撮影してみてはいかがでしょうか。できれば、自分が以前に撮影した天体を再度この方法で撮影するのがもっとも確認しやすいかと思います。



1999,5,24
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