情報コラム 2009年12月7日 画像のカテゴリ


  ようやく天文誌も画像処理のガイドラインについて取り上げているが、まずは議論の前に 画像にはどんな種類があるのかカテゴリを作るべきであろう。 科学的データとして厳密な 画像が得られてもそれが映像として美しく見えることはない。 人間の感じる基本的性質に あわせた加工がなされていないからである。 

  まず簡単にカテゴリを決めてみる。
■0次処理
得られたデータそのままでダーク・フラット処理すら加えない。 
■1次処理
オリジナルデータにダーク・フラット処理を加えて測定器の校正を行いより精度の高いデータとする処理。
■2次処理
1次処理した画像をRGB合成したり単純な関数によるトーンカーブ変換を行う処理。
ここまでは処理を行ったとはいえ、処理の逆関数が存在し元に戻すことができる。 可逆処理である。 ちなみに 私が今まで誌面に出した画像やギャラリーに使っているのは特別な場合を除いてここまでと決めている。

これ以降は不可逆処理となる。
■3次処理
アンシャープマスクやエッジ強調などの近隣画素の情報を利用した処理。 またLRGBも4つのデータから 3つの信号に落としているため不可逆になり3次として見なせる。 色彩強調もこの次元となる。
■4次処理
既知のマスクではなくユーザオリジナルのマスクやレタッチなどの処理。 

  以上のように手を加えるほど次数が上がり、より複雑な処理がなされていく。 測光で許されるのは 1次処理まで、学術的写真として許されるのは2次処理までであろう。 3次以降はアマチュアが画像処理としての 趣味を楽しむ範疇である。

  写真というからには真を写すことであり、同じ天体を撮影しても毎回違っているようでは 観測技術が未熟である。 同様に他の人が同じ天体を撮影しても同じような映像が出てくるのが 自然である。 英語で嘘を言うとは”Tell a lie.”、本当のことを言うは”Tell the truth.”と表現し、 嘘の場合"a"で本当では"the"が使われる。 嘘はいくつもあるが真は1つしかないことの違いである。 The Earthや The MoonにTheが付いているのも唯一のものであるからである。 同様に写真も唯一の姿である真を 写すのであれば誰がとっても同じ映像になるべきであろう。 画像処理を楽しむ人にとっては つまらないかもしれないが、それが真を求める天文家にはしっくりくる話であるに違いない。

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