情報コラム 2009年1月31日 皆既日食の撮影準備


  恐らく皆既日食の撮影ほど慎重を要する天体撮影は無いと思う。 たった数分の間に 露出時間を変えていかなくてはならないからである。 これに加え、焦点距離を変えたり 分光撮影をしようと思うと、行き当たりばったりではうまくいくはずがない。 初めての 皆既日食であれば緊張も大きい。

  では何が大切かというと、綿密な撮影スケジュールと徹底した練習である。 スポーツ選手にしても 漫才にしても、あの短い時間の間に芸術的な演技ができるのは練習の賜物であって、いくら天才であっても 練習なくして華麗な技はありえない。 撮影もまったく一緒でである。

  皆既日食になる直前までは肉眼でも望遠鏡でもNDフィルタが必要で、ダイヤモンドリング に入る直前にこれを取り外し、ほんの数秒間しかない接触時間はダイアモンドリングに集中し、その後 完全に皆既状態に入ったら多段階露光などを行う。 変則的な作業の後の皆既の1-2分間で段階露光を成功するには、 事前に時計とにらめっこしながら何度も同じ作業を練習する必要がある。 同じ作業を何十回と練習しておいても本番では 一瞬ビビることもあるかもしれないが、練習に支えられた自信が助けてくれる。 本番では何も考えずに ロボット状態で撮影できるようになれば合格であろう。 ただその代償として、皆既日食を「観る楽しみ」は あまり味わえない。 

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