情報コラム 2007年8月12日 惑星向けの観測地は?


  望遠鏡は口径が大きいほど空間分解能が高く、遠くの物体を細かくみることができる。 しかしながら 実際には大気の揺らぎの影響で必ずしも口径の持つ能力をフルに発揮するとは限らない。 しかも 口径が大きいほど大気の揺らぎの影響は大きく受ける。

  例えば口径6cmくらいの屈折望遠鏡で恒星を見たとき、星の形はまん丸に見えときどきその星の位置が ふらふらと動いて見える。 この動きがシンチレーションという現象で、大気の光学的ムラによって 光線が振り回され星の位置がふらふらと移動するのである。 肉眼で星を見たときにはチラチラ 光って見えるのもシンチレーションである。

  口径が小さければ光線として考えることが出来るのだが、口径が10cm、20cm、30cmと大きくなるにつれ 単に光線と考えるだけではすまなくなってくる。 波面という考え方が必要になるのである。 波面とは 光線に垂直な平面を意味し、宇宙空間での波面は完全な平面であるが、光が地球大気に入ってくると その平面が乱れてくる。 スカーフのようにウェーブしていると思って良いだろう。 このウェーブの 大きさが口径より十分大きければ光線と考えてよく、ウェーブよりも口径のほうが大きい場合には 波面として考えなければならない。

  結果、口径が波面より大きい場合にはアイピースで覗いたときの星像はまん丸ではなくなり、 複雑な形をする。 しかも時間と伴にその形は変形し、雲のように2つとない形を永遠と見せてくれる。  では空の状態に合わせて口径を選べば良いのだろうか? 

  宇宙を見ているからてっきり空の状態によって星像の乱れ方が違うのかと思いきや、正確には 自分の望遠鏡の内部から空にかけての大気の状態に応じて乱れ方が違う。 しかも望遠鏡内部の 気流の状態や地表近くの空気の対流の影響が無視できないほど大きい。

  大気の状態を正確に測定することは非常に難しいので断言することはできないのだが、 経験的にはマンションの上層階の大気状態はとても良い。 近代社会では大気汚染やヒートアイランド 現象などといったマイナスの面がある一方、個人ではとても建設することの出来ない高層マンションも たくさん立ち並び、惑星観測などにはもってこいの環境である。 地表では口径20cmの望遠鏡の 分解能をフルに発揮するのは難しいが、マンションだったらディフラクションリングが綺麗に見えることが 多い。

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