情報コラム 2006年10月6日 冷却カメラとデジタルカメラと価格


     これから天体写真を始める人にとって冷却カメラにするかデジタルカメラで 行くか大きな迷いがあると思う。 どのカメラにしようかという以前の大きな 選択で、冷却カメラを購入するには一大決心が必要で値段に見合った性能が 得られるのか疑問もあるだろう。 今日は長くなるがそのあたりを数式的に ご説明したい。

  美しい画像を決める要素は2つで、解像度とs/nである。 解像度に関しては どちらも1000万画素を超えているので同じと考えよう。 違うのはs/nである。

  s/nは次の式で与えられる。

            s/n = N / √( N + D + S + R^2 )

  ここでNは光の数、Dはダークノイズ、Sはスカイノイズ、Rは読み出しノイズである。  最近の電子回路設計は優秀なので鑑賞用写真であれば読み出しノイズは無視する。 Sのスカイノイズとは 空の明るさのことで、街明かりなどが原因でそれがノイズとなって写ってくる。 街中で 星が見えないのはそのためでもある。 しかし空の暗いところへ行けばスカイノイズも 小さくなっていくので、これも無視しよう。 すると複雑だった式は次のように簡素な ものへ変形できる。

            s/n = N / √( N + D )

これはつまり、s/nがダークノイズに大きく左右されるということを示しており、冷却 CCDカメラではD≒0と考えていいが、デジカメではDはNの数倍の値を持つ。 言い換えるとNとDの 比率が重要であることがわかり、F値が非常に明るいレンズであればDの存在は小さくなるが、 F値が暗いものではDがNの何十倍にもなってきて、結果冷却カメラとデジカメでは s/nの違いに数倍の開きが出てくる。

            冷却カメラ : s/n = N / √( N )
             デジカメ  : s/n = N / √( N + D )

  デジカメが10-30万円であるのに対し、冷却CCDカメラは100-200万円と高価であるが、 値段の比は数倍でs/nの違いと似ている。 したがって、高価ではあるがそれなりの 質が得られると考えてよいだろう。 

*注意)最終的な式は読み出しノイズや光害を無視した大まかな近似式で、カメラによっては または街中では上の式から大きく外れる。

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