情報コラム 2006年8月1日 波長と分解能と電子顕微鏡


  天体観測の好きな人なら誰でも望遠鏡の口径が大きいほど分解能が高いことは 知っていると思う。 しかしその分解能が波長に比例していることを知っている人は そう多くないだろう。

  たとえば波長の長い赤い画像と波長の短い青い画像では、波長の短い青い画像のほうが 分解能が高いのである。 注意深く観察している人なら恒星像を見たときに 分解能の違いに気づいているかもしれない。

  波長というのは光に限った特別の物理量ではなく水面の波などにも使われる 便利なパラメータであり、物質や光が波の動きをするときのその長さを表す。   顕微鏡の世界でも分解能との闘いは熾烈で、望遠鏡でいうところのF値に相当する NAを大きくすることで分解能を上げるがそれでも限界がある。 

  電子を高速に飛ばすとものすごく短い波長が生まれることを利用したのが 電子顕微鏡で、光学顕微鏡では数千倍が限界であるのに対し電子顕微鏡は数十万倍まで 拡大して物を見ることができる。 波長が短いがゆえに分解能も高いというわけである。  先日博物館で珪藻の化石の電子顕微鏡写真を見てきたが とても神秘的であった。 機械加工で作ったような精巧で対照性のあるあの形は、 しばらくの時間自分を釘付けにするだけのものがあった。   

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