情報コラム 2006年2月19日 嘘をつくのはカメラなのか?


  今月の天文誌S&Tの冒頭の記事に非常に興味深い内容が書かれていた。 そのタイトルは 「カメラは常に嘘をついている」である。 この話題に関してはあるメーリングリストで 同じことを提唱するアマチュア天文家が日本もいる。

  一体どういうことかというと、最近のデジタル画像はソフトウェアの力を借りて いろんな処理が可能となり、偽の解像度を作り上げることも可能だということである。 これほどの 強力なソフトウェアは一種魔物であり、一旦使い始めると自分の映像的感覚を失って ついつい強調しすぎる傾向が多々見られる。

  この傾向がデジタル映像に特化したものかというとそうでもなく、たとえば 金星の太陽面通過時に起こると言われていたブラックドロップなどもフィルムの現像を強調処理しすぎたために 生まれた偽の現象で、天文学者すらだまされていた。

  大気の状態や光学系の状態によって劣化した映像を画像処理である程度修復することは 十分可能で、上手に使えばこれは真であると言えるくらいの映像ができあがる。 できれば ソフトウェアも映像の特性を評価する機能を持っていればいいが、プログラマからすると 強調する機能さえ備えていればソフトウェアとして満足しているだろうし、ユーザからすると 強調できるソフトウェアほどうれしいもので、両者の間に真実を求める意思はあまり見られない。  いい映像が撮れなくても撮れなかったこと自体が真であるというくらいの謙虚さを忘れては ならないだろう。

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