何気なく載っていたので見逃すところだったが、回折レンズ搭載の望遠レンズで撮影した 天体写真が月刊天文の一眼デジカメのテストレポートに出ていた。 現在回折レンズを使った カメラレンズはキヤノンの400mmF4に搭載されているだけで、まだ他社は実用化にこぎつけていない。 そもそも回折レンズとは何か? 光を曲げるには、屈折・反射・回折・重力などが 挙げられ、屈折と反射は説明するまでもないだろう。 回折レンズとは輪帯状に回折溝を 形成したレンズのことで、色収差を補正する能力が非常に大きく、EDガラスと同等もしくはそれ以上の 設計効果を示している。 分光などで回折格子を使ったことのある人なら知っているように、波長によって 回折できる割合が大きく異なり、たとえば500nmで100%回折するよう設計されていても400nmでは 70%程度しか回折してくれない回折効率の問題が大きい。 屈折や反射で言えば、透過率や反射率が 著しく異なることに相当する。 しかも厄介なことに回折には次数が存在し回折効率が低いと 光はあちこちに散乱して迷光の原因にもなっている。 この問題の解決策があり、回折面を数〜数十ミクロン間隔で複数重ね合わせ回折効率を可視全域で 90%以上を確保することができる。 わかりやすく言えば、単層コートでは特定の波長域で反射率が 低くなるのに対し、マルチコートでは広い波長域で反射率が低くなっているのと考え方は同じである。 では実際の写りはどうかというと、写真が小さいためはっきりとしたことはわからないが、 色収差はきれいに補正されているようで、懸念されていた回折効率も悪くないようであった。 天文学の論文などでは回折レンズを使ったシュミットカメラなどの設計もあるくらい設計側としては 非常に有効なツールなので、今後どんな商品が出てくるか楽しみ。 TOP |