3、 大船山(1,786.2m)2004/06/06(掲載8/8)
 

 九重山群の最高峰、言い換えれば九州本土の最高峰は実は何度か変わっている。

現在は九重中岳(1791m)が最高峰だが、その前は九重本峰(1786.5m)が最高峰であった。そしてさらにその前は今回紹介する大船山(1786.2m)がかなり長い間その座を占めていた。測量方法の向上とともに最高峰が変わっていくのは興味深い現象である。そういえば、あちこちの山に登ると山頂の標識があるところよりさらに高そうなところがあるのはよく体験することである、国土交通省の点の記を読むと必ずしも最高地点が三角点ではない理由はいくつか記されているが、主に測量の都合によるものが大きいようである。
 

大船山頂の岩場にけなげにしがみついて咲いていたミヤマキリシマ想い出のオオヤマレンゲ


 ところで、この山は九重山群の他の山々から離れているせいか、なかなか登る機会がない。わたしも、実に今回は16年ぶりである。なぜ正確に覚えているかというと、実は長女が生まれたときに家内が動けないことをいいことに、のこのこ出かけた山だからである。その際に撮影したのが大戸越しから段原に上がる途中に咲いている、オオヤマレンゲで、アマチュア無線のQSLカードに使った思い出深い写真である。そのときに生まれた長女も、すでに16歳、小児喘息でずいぶん苦労させられたが、無事に育ってくれて何よりである。 ちなみにこのオオヤマレンゲはいまだ健在で、今回もつぼみを(上、右の写真)見ることができた。
 

男池園地より大戸越方面を望む

 

 

 家を今回は少し早めの6:00過ぎに出発、ゆっくりしたペースで一路、大船山、平治岳の登山口のある男池園地を目指す。 熊本空港の横をすり抜け、ミルクロ−ド、筋湯、長者原を経て園地に着いたのが、9:00、すでに駐車場は平治岳のミヤマキリシマがお目当てと思われる人たちの車でほぼ満杯、どうにか隅っこを見つけて駐車し、 準備をして登山開始。男池園地に入るために、入園料(自然管理費)100円を支払い、美しく澄んだ川を渡って、登山道に入る。平坦で明るい林間の道を、お散歩気分で歩くこと25分で牧柵を超えると左手にかくし水がある。このル−トでの最後の水場であるのでしっかり補給すること。乾燥した年にはかれることもあるそうである(私は見たことはないが)


 

 かくし水で小休止して、おいしい水を飲んだら少しずつ急になる登山道を一歩一歩上ってゆくと、ほぼ30分で【ソババッケ】という盆地状の部分にでる。ヤブレガサが群生し、少し不思議な感じのする場所である。ここで大船山、平治岳方面は道が右に折れるので注意して進む。真っ直ぐ行ってしまうと、風穴から黒岳方面への道となるので迷い込まないように(私は一度迷い込んでしまい、風穴から大戸越しへ戻ったことがあります)天気のいいときはなんでもない分かれ道だが、ガスっているときなどは要注意である。



ソババッケより大戸越し方面を望む

 

  ここから急登になる、この日は前述のようにミヤマキリシマの開花を見るために有名な平治岳を目指す方々が多く、登山道は数珠繋ぎの状態で、自分のペ−スでは登れない。ゆっくりしたペ−スではあるが、これはこれで結構辛いものがある。この日の天候は今一つで、雨が降るわけではないが登るにつれて、次第にガスが立ち込めてただでさえ薄暗い樹間の道が、さらに暗く感じる。ほぼ、一時間で人の声が大きくなるとともに、いきなり視界が開ける。平治岳と大船山の間の鞍部、【大戸越し】である。平治岳にはここを右に進むと約40分で山頂に立てる。この開花の時期は登山道が登りと下りで分かれており、一方通行になっているので気をつけたい。 それにしても今年は花つきがよくない、害虫にやられているようで残念である。また、ここを真っ直ぐ進めば九州岳人の心のふるさとといわれる【坊がツル】に至る。今回は、大船を目指すので、 標識に従って、左手の道に入る。

 

大戸越し、右がソババッケ方向

 

 大戸越しの喧騒から離れ、北大船に登る登山道に入って驚いたのはその荒れようである。人の背丈以上に道が大きく谷状にえぐられ、歩きにくいなどといった生易しい状態ではない、まるで泥のあり地獄のふちを歩いているようである。登山ブ−ムは悪いことではないが、このような負の側面があることも理解していろいろと対応を考えていかなければならないと思わされた道であった。大戸越しから少し入ったあたりに冒頭で述べたオオヤマレンゲが可憐なつぼみをつけているのに出会い、思わず顔がほころぶ(^^)> 最初は樹間の道であるが、徐々に潅木となり視界が開けてゆく。苦しい登りを30分で稜線に出でるので、ここを右に北大船方向へ進む。このあたりはミヤマキリシマの大群落であるが、下の右写真のようにキシタエダシャクという虫に喰い荒らされて木全体が茶色になり、見るも無残である。しかし、稜線の反対側(風上になっている)は、左写真のように見事に咲いている。自然の現象なのでわれわれにはどうすることもできない(本当は温暖化の影響かもしれないが)が、実によく種の保存の仕組みは考えられているものだと感心する。

 

風上側は大丈夫風下側はこのように食害がひどい

 

 北大船を過ぎて数分で坊がつるより上がってくる道(かなりガレていて足元がよくない道です)と出会う、ここが【段原】である。多くの人たちが大船山までピストンをするため、ここに荷物をボッカしている。われわれは大事なお弁当が入っているので、そのまま登る。道がだんだん岩稜のようになる、これを登りきったところが大船山頂である。 12:30 あいにくの天候でガスっており眺望は得られないが、天候がよければ近くは久住山系、遠く阿蘇五岳や祖母傾山系と360度の大展望が得られる。

 

ガスの中でおとなしく・・・。大船山山頂

 

  山頂の先は、大きく瀬の本高原側に切れ落ちており迫力満点である。(落っこちないように)また、下から吹き上げてくる風が実に心地よい 。山頂の岩峰付近には岩にしがみつくようにミヤマキリシマが咲いており、実にけなげである(冒頭の写真)それ以外に、イワカガミやサラサドウダンツツジなど、まさに雲上の楽園といえる。当日はあいにくの霧にもかかわらず、山頂は多くの人でにぎわっていた。実は明日(6/7)はここ大船山の山開きであり、ものすごい人出が予想される。ときおり、霧の切れ間から見える坊がツルはすでにテントの花がたくさん咲いており、明日の賑わいはいかばかりかと想像させる光景である。

 

登山道の途中から垣間見た坊がツルの様子


 山頂 付近の岩場で昼食とビ−ルをいつものように堪能し、しばし雲上の楽園で憩う。よきかなよきかなである。一時間ぐらい遊んで山頂を後にし、先ほどの道をひたすら引き返す。

 下ってゆくとだんだんと霧が晴れてくる。この日は、下の写真にあるように山頂部分のみが雲に覆われていただけで、周辺はすばらしい晴天であったことが、長者原からの景観でよくわかる。

しかし、久々に登ったが、やはり山は昔と変わらずにやさしく包んでくれる。この思いがあるからこそ、また出かけようと思ってしまうのはきっと私だけではないのではと思う。

 

 

 

 

 

山行デ−タ:男池園地登山口(入山料100円) 850m → 25分 かくし水 970m 
      →
 30分 ソババッケ 1097m → 50分 大戸越し 1460m 

      → 60分 北大船山 1706m → 25分 大船山 1786.2m
      帰りは同じコ−スを利用して、2時間45分で男池園地

      
地図   :国土地理院 大船山 参照


温泉   :今回は、遅かったのであきらめました。
      近くには有名な【筋湯】【筌の口】などの温泉が沢山あります
      

同行者  :父

 

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